信頼★
「ねえカラス。一つ聞きたいことがあるんだけど………」
「何だ?」
保健室を出て歩き始めると、アゲハが口元に指を当てて尋ねてきた。
「飛鳥さんが『僕が考えたいのは必勝法です。』って言ったときにカラス笑ったじゃんね?そんな笑っちゃうような要素なかったと思うんだけど」
「アゲハ、ものまね下手だな………悪い」
アゲハの胸元にあったはずのボールペンはいつの間にか俺の首を捉えている。日の光がペン先を反射して、その輝きは今にでも喉を貫かんばかりの鋭さを物語っていた。
「あのときはな、自分がおかしくて笑っちまったんだ。」
「自分が?」
「ああ。なんか『僕が必勝法を考えてくる。』って聞いたとき、妙に身体が震えたような気がしてな。まだ会って間もないのに、飛鳥なら何でもできちゃうんじゃないかって思えてさ。不思議だよな」
「………カラス」
「ん?」
「カラスもものまね全然上手くないじゃん!しかもセリフも違うし」
「なっ!?別にいいだろ!」
「これならアゲハの方が断然上手だね!」
「言いやがったなコイツ!」
逃げるように物理室の方へと駆けるアゲハと、それを追いかける俺。みんな、廊下は走っちゃいけないからな。