秘密★
そういえば、朝からいろいろやられたせいで身体の節々(ふしぶし)が傷んでいる。別に忘れていたわけではなく、タイミングを逃し続けていただけだ。今なら大丈夫だろ。
「保健室行ってくる」
「アゲハも付いてくよ。アゲハのせいで怪我しちゃったんだし」
犯行を認めやがった。だったら俺のことはどうでもいい。速やかに自首すべきだろう。
「いや、俺は一人で大丈夫だから、アゲハは警察言って来い」
罪を償ってほしいという理由もあるが、何より今日のアゲハは危険だ。一人で行った方が安し………ん?足に違和感が………何か乗ってる。アゲハの足だ。無言の脅迫か?無言の脅迫なのか、これ?『アゲハを連れてかなきゃ、足どうなってもしらないよ?』とでも言わんばかりの威圧感。
………しまった!今日のアゲハは危険なんだ!なのに俺はそんなアゲハの気遣いを流してしまうとは、なんて命知らずなんだ。
「アゲハが一緒に来てくれるなんて嬉しいなあ」
「感謝するんだよ?それじゃあケンケン、すぐ戻るからお留守番よろしく!」
「うん、行ってらっしゃい。」
(今日だけだ今日だけだ今日だけだ今日………)
物理室を出て、人気の少なくなった放課後の廊下を歩く俺とアゲハ。アゲハが何か俺に話していたが、そんなのは無視して小声で自分に暗示を架けていた。サバイバルで生き残るだ?そんなの無理に決まっておろうが。今後こんな日が来ないように祈ることしか俺にはできない。
あっ、そういえばアゲハに聞きたいことがあったんだ。
「あのさ、アゲハ」
「ん、何?」
「俺がこの世界のことを天音と健斗に話そうとしたら吹っ飛ばされたじゃん?二人も同じ科学部のメンバーなのに話しちゃいけなかったのか?」
「うん」
アゲハは顔色一つ変えずに答えた。悪気があったら今の俺の言葉を聞いて『申し訳ございませんでした』な表情をするだろうに、一切顔色変えないってことはコイツ、俺を突き飛ばしたこと何とも思ってないのか?
「あのことは絶対に話しちゃダメ。カラスには話しておかないと科学部に入ってくれない可能性があったから。美来ちゃんは飛鳥さんがいれば大丈夫だし、ケンケンはカラスがいるからついてくるって分かってるから、二人には話す必要はないんだよ」
「なんか引っかかるな」
話したらいけないことに引っかかっているわけではない。俺に健斗がついてくるというのに何か寒気を感じたんだ。健斗は俺とただ仲良くしていたいだけだよな、きっと。うん、そうに違いない。じゃあこの嫌な感じは何だ?
そうこうしているうちに、俺たちは保健室の前まで来ていた。