アゲハ☆
ピピピピピピピ………
「………んんぅ〜」
目覚まし時計で目が覚める、よくありがちな一日の始まり。大きく背伸びをして一息つくと、真新しい制服が目に入る。
「今日から俺も高校生か…」
そう、今日はこれから俺が通うことになる未空学園の入学式だ。
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入学式の準備を済ませて外に出ると、澄み渡った空が俺を迎えてくれた。春の訪れを感じさせる暖かな空気………思わずため息が出てしまう。大きく息を吸い込み全身で春を感じていると、とととっ、と小さくて華奢な人影がこちらに走って………いや、飛んできた。
「カラスーっ!!!」
「ん?おぅアゲハ、おはよ………っ!?(ゴンッ)」
春休み明け早々、俺にクリティカルな頭突きを決めたのは俺の幼なじみ、上波知未だ。くりっとした黄色い瞳とぴょんぴょん跳ねた黄色のショートヘアが印象的で、意味がわからないくらい活発なときがある。普通にしてたら結構かわいいんだけどなあ。
「おはよっ ねぇ、頭で挨拶ってアリだと思わない?」
「頭突きはない………てかナシにしてほしい」
少しフラフラする頭を手で押さえながら答えた。頭で挨拶もあるのかもしれないが、それは額と額をちょっとくっつける程度のものだろう。痛みを伴う挨拶はお断りだ。
「ところでカラス、アゲハの紹介してるでしょ?自分の紹介はしなくていいの?」
そう言って、首を傾げて微笑みかけてくる。
「紹介って………誰に?」
コイツはいきなり何を言い出すんだ。アゲハの前で自己紹介してどうする?それより…
「…ってかどうして俺がアゲハのこと考えてたってわかったんだ!?」
俺は一言も口にしていない。まさか、頭突きされた拍子に思ってることが頭から漏れ出しているんじゃなかろうか………そんなことを考えているとアゲハは子どものように無邪気な顔をして答えてくれた。
「カラスのことはなんでもお見通しだよ?」
「…おっと」
頭を撫でようとするアゲハの手を咄嗟に防ぐ。なんでもお見通しだよ、なんてよく言えるな?でも思っていることを知られたのは事実。本当に見通されてるのではないかと不安になってきた。
「マジでお見通しなのか………?」
「へへっ 嘘に決まってるじゃん 心配しないで―――」
そっか、やっぱり嘘なんだ。
「―――頭から漏れてるだけだから。」
ダッ!!!
近くにあった窓ガラスにダッシュした。自分を映して確認してみる。頭から漏れ出して………はいない。くそっ アゲハめ、遠くでこっち見ながら笑ってやがる。
「おーいっ 早くしないと遅刻しちゃうよ?」
笑いを堪えているからか、声が小刻みに震えている。ったく、なんてマイペースなやつなんだ。初日から振り回されてる………うぅん、これは悔しい、悔し過ぎる。
「おぃ、ちょ待てって!」