第五話
二人の少年は、緑のアルストロメリアが飾られている扉の前に立っていた。
二人は意を決して扉をノックした。
封筒と指輪、そしてリボン、何かの紋章が描かれたブローチを持って。
ノックしてから少し経って、扉は開いた。
中からは淡い緑の髪に青の瞳をした女性が出てきた。
女性は、目の前にいる二人の少年の姿を見てとても驚いていた。
部屋の中に案内された。
その時、少年たちを見る目は優しくて、温かくて、愛で満ちていた。
二人の少年のうちの、少し髪の長い一人がお茶を用意していた女性に話しかけた。
「……えっと……えっと……か、か……母様?……」
少し髪の長い少年の言葉を聞いてその女性は固まった。
そして同時に、もう一人の髪が短い少年が手に持っていた指輪やリボン、封筒を目にした。
女性は気づいたら二人の少年を抱き寄せて泣いていた。
「ええ、ええ、あなた達は私とシアン様の子供ですよ……。二人が無事で良かった……。本当に良かった……。」
女性は左手の薬指に綺麗な指輪をつけている。
その指輪をよく見れば、文字が彫ってあった。
読むと『オムニシアン』とある。
そして、二人の少年は先程会った男、いや、父様から渡された指輪をよく見た。
すると、同じように文字が彫ってあった。
読むと『シャリテ』とあった。
女性は暫く抱き寄せたまま泣いていた。
抱き寄せていた腕の力が弱まると、その女性は二人の少年をよく見た。
「ああ……本当にシアン様によく似ているわ……。そして……二人が持っている物たちはなにかしら……?」
その女性は少年たちが手に持っているリボンに指輪、封筒、2つのブローチに目を向けている。
少年たちは女性に、いや、母親に色々なことを説明した。
母親はその話を聞いてまた、涙ぐんでいたが、指輪と封筒、そしてリボンを渡されたことで泣いてしまった。
それは、嬉しさのような、悲しさのような、なんとも言えない涙だった。
母親は静かに封筒を開いた。
封筒になんて書いてあったのかはわからない。
けれど、その封筒を読んだ母親は涙を目にしながら笑っていた。
少年たちはなんて声をかければ良いのかわからなかった。
母親は、笑いながら楽しそうに、でも泣きながら、思い出話をしていた。
封筒を読み終わった母親は二人の少年に体も目も向けた。
「二人とも、その2つのブローチは、ラ・ファンの正当なる後継者を表していて、王族の証なの。二人がラ・ファンの王族というのはその姿を見れば分かるのですけれどね……。銀髪に金の瞳はラ・ファンの王族の色ですから。」
母親は二人からブローチを受け取ると、それぞれの服につけた。
そして、そのブローチには文字が刺繍されていた。
少し髪の長い少年が『ルミエール』。
髪の短い少年が『エスペランス』。
「……ふふ……。シアン様にもこの姿を見せてあげたかった……。でも、二人の元にそのブローチたちがやってきて良かった。そのブローチは私とシアン様でつくったものなのですから……。」




