「馬車と過去の話と事実と。」
長距離馬車に揺られながら、ソフィアとハルは、中也への疑問を口にした。
「ねぇ、中也さん。改めて聞くけど、中也さんは一体どうして、旅をしているんですか?」
ソフィアが尋ねた。
ハルもで頷く。
「そうだ!中也さんの主題って、何?」
中也は、窓外の流れる景色を一瞥し、ぼそりと答えた。
「ふむ……私の旅の目的か。他愛も無いことだ。単に魔王に会いたい。それだけのことよ。」
「えーっ!魔王!?」
ハルが驚きの声を上げ、ソフィアは顔色を変えた。
「何を言っているんですか!魔王を倒しにいくってことですか?」ソフィアが尋ねた。
「倒す、だと?まさか。そもそも、この異界に私を召喚した王様が、こう言ったのだ。『魔王を討伐すれば、貴様の元の世界に帰してやろう』とな。」
中也は鼻で笑った。
「しかし、どうにも胡散臭い(信用できない)話でな。私のような文人の魂は、自らの目で、その真偽を確かめずにはいられぬ性分でな。故に、旅をしているという次第だ。」
ソフィアとハルは、ハッとした。
(召喚者……そうか、中也さんは勇者として呼ばれたんだ!)
ソフィアが、その推測を確かめるように口にした。
「もしかして、中也さん、貴方は勇者なんですか?」
中也は、またしても鼻を鳴らし、忌々しそうに言った。
「ふん。勇者、だと?
とっくの昔に追放されたわ。あの大衆好みの王は、私のような哲人の思想を理解できず、『無能な怠け者』と断じたのだ。ま、今日日の世間はそういうものさ。」
ソフィアとハルは、世界を変える力を持つかもしれない中也が追放された勇者であるという事に、憤りを覚えた。
「何ですか、それ!最低!」とハルが怒鳴り、ソフィアも大きく拳を握った。




