表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

「作品とグスタフと仲間と。」

中也ちゅうやは、その宿場しゅくば、「旅籠はたご・木の葉亭このはてい」のすすけた板間いたまに、胡坐あぐらをかいていた。

彼は、ついいましがた完成かんせいさせたばかりの異界いせかい小説しょうせつの「総括°(そうかつ)」を、一葉いちよう原稿げんこうに、愛用あいよう万年筆まんねんひつで峻烈°(しゅんれつ)にまとめていた。

「…この異界いせかいの様々(さまざま)ななやみの物語ものがたりは、我々(われわれ)、現実世界げんじつせかいきる人間にんげん論理ろんり美学びがくをもってのみ、るであろう。小説しょうせつとは、すなわち、この世界せかいまれた欠陥けっかんへの、きびしき審判しんぱんなのだ。」


その鬼気迫ききせま集中しゅうちゅうぶりを、宿やどあるじであるグスタフが、カウンターからじっと見ていた。

「へえ、旦那だんな随分ずいぶん熱心ねっしんつづってるね。何かえらくむずかしいもんだろう」

中也ちゅうやは、そのいかけに、かおげた。そのには、創作そうさくほのお宿やどっている。

大傑作だいけっさくさ!わたしいま万感ばんかんおもいでこれをげたのだ。ああ、けている、というこの充実感じゅうじつかん!これこそが、わたしがこの異界いせかい召喚しょうかんされた唯一ゆいいつ理由りゆうだと、確信かくしんしているのだ!」

グスタフは興味きょうみをひかれ、し、原稿げんこうのぞもうとする。

「ほほぅ、どんなはなしだい。おれにもませておくれよ」

しかし、原稿げんこうかれているのは、かれ異界いせかい住人じゅうにんには読解不能どっかいふのうな、見慣みなれない文字もじ、すなわち日本語にほんごであった。

「…むう、何語なにごだ、こりゃ。まるで象形文字しょうけいもじのようじゃねえか。すまねえが、さっぱりわからん。」

グスタフはがっかりしたような様子で作品を後にした。

中也ちゅうやあとでグスタフに内容(内容)をおしえようとした。

そのとき、ソフィアというの、りんとした美貌びぼう女性じょせい冒険者ぼうけんしゃが、おおきなけんに、店内てんない見回みまわしていた。

宿やどきゃくでごったかえしており、彼女かのじょすわるべき空席くうせきは、中也ちゅうや占有せんゆうしているおおきなたくの、かいがわのみであった。

ソフィアは仕方しかたなく中也ちゅうやせきちかづき、

相席あいせきしてもいいですか?」

と、みじかたずねた。

中也ちゅうやこころようなずく。

ソフィアがたくにつくと、否応いおうなしに中也ちゅうやひろげている異質いしつ文字もじくされた原稿げんこうはいった。

(この文字もじめないけど、このひと真剣しんけんかおつきからして、ただごとじゃない。なにかすごい内容ないよういてあるにちがいない)

彼女かのじょ冒険者ぼうけんしゃとしてのかんが、この「意味不明いみふめい書物しょもつ」への強烈きょうれつ興味きょうみてた。彼女かのじょは、どうしてもこの作品さくひん内容ないようんでみたいとおもっている。

ソフィアは、けっしたように中也ちゅうやかおけた。

「あの、貴方あなたいているその異国いこく文書ぶんしょ一体いったいなんですか?めないのに、すごく只者ただものではない雰囲気ふんいきがあります。」

中也ちゅうやわるくないとばかりに、したしみげにうでんだ

「ほう、あんた、すじがいいな。これはな、この世界せかいゆがみをただす、小説しょうせつだ。だが、残念ざんねんながら、あんたの世界せかい言語げんごじゃあない。」

ソフィアは真摯しんし見返みかえした。

「だったら、わたし手伝てつだわせてください。貴方あなたのその仕事しごとわたし冒険者ぼうけんしゃです。貴方あなた思索しさくふけ雑用ざつようすべける。野営やえいでも、モンスターにおそわれそうになれば、たたせる!そのわり、いつか…この文字もじかたとその内容ないよう機会きかいわたしにください!」

中也ちゅうやは、その美貌びぼう似合にあわない剛胆°(ごうたん)さと、純粋じゅんすい知的好奇心ちてきこうきしん興味きょうみをそそられた。

「わかった、いいだろう。」

かくして、中也ちゅうやはソフィアを仲間なかまにした。

中也ちゅうやは鷹揚°(おうよう)にわらい、のこりのめしたいらげた。

総括そうかつ

全体ぜんたいのまとめ。全体ぜんたいひとつにまとめること。


峻烈しゅんれつ

非常ひじょうきびしく、はげしい様子ようす


•鷹揚に(おうように)

ゆったりといていて、ちいさなことにこだわらない様子ようす


剛担ごうたん

度胸どきょうがすわっていること。大胆だいたんで、おそれや脅迫きょうはくどうじないさま。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ