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Big Wave ― 風を待つ僕ら ―

作者: tagu59
掲載日:2025/10/16

波の音が、胸の奥にまで響いていた。

朝の光が海を透かして、砂浜を黄金色に染めていく。


海斗はサーフボードを肩にかけ、水平線を見つめていた。

「今日、来ると思うんだ。Big Wave。」

隼人が笑う。「おまえ、毎日言ってんじゃん。」


だけど、今日は違う気がした。

潮の匂いも、風の向きも、すべてが変わり始めている。


浜辺で渚がスケッチブックを開いていた。

彼女の鉛筆の先が、空を描くように震える。


「ねえ、海斗。」

「ん?」

「あなたは、どうしてそんなに波を待てるの?」

海斗は少し考えて、笑った。

「たぶん、波の中に答えがある気がするから。」


潮風が二人の間をすり抜けていく。

渚は静かに笑って、ページに小さな字を書いた。

“風を待つ人”



そのとき、遠くで誰かが叫んだ。

「来たぞ!Big Waveだ!」


水平線の向こうから、巨大な波が光をまとって押し寄せてくる。

海斗は走り出した。

砂を蹴り、ボードを抱え、海に飛び込む。


風の音が変わる。

世界がゆっくりと回転していくように感じた。


波に乗った瞬間、心の中で何かがほどけた。

音楽が聞こえる。

誰かが見えないところでギターを鳴らしているみたいだった。


その音は、まるで――夏そのものだった。



夕暮れ。

海斗は浜辺に戻り、渚の隣に座った。


「乗れた?」

「……うん。たぶん、今のが俺の“波”だった。」


渚は微笑んで、スケッチブックを彼に見せた。

そこには、波の上を走る海斗の姿と、

空に溶けていく文字が描かれていた。


“We move with the tide.”

――潮とともに生きる。



【エピローグ】


秋風が吹くころ、渚は一人で海を訪れた。

波は穏やかで、空は透き通るように高かった。


ポケットの中に、小さなカセットテープ。

ラベルには、達筆な文字でこう書かれていた。


「BIG WAVE」


彼の声が、風と一緒に響いた気がした。

――「風を待つんじゃない。自分で起こすんだ。」


渚は微笑んで、海へとスケッチブックを広げた。

紙の上で、波が静かに揺れていた。



― END ―


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