洗剤ウォッシュ、洗われる
『洗剤ウォッシュ』のその後を書きました
某日昼下がり、清潔青年『洗剤ウォッシュ』は、いつものように住居や企業での汚れ回りを巡回していた。
持ち前の嗅覚センサーを駆使して、油汚れ臭や、生物臭等の痕跡を探索している最中だった。
その道中、街を騒がせている『汚し隊』と遭遇してしまったのだ。
『汚し隊』とは、街じゅうを▲▲▲まみれにする人々の嫌われモノのである。
何をどう考えればそうなるのか、『汚し隊』の三体は、自身らを正義の味方だと思い込んでいる。
(私の……洗……剤スープが……)
三体の『汚し隊』に▲▲▲をぶっかけられた『洗剤ウォッシュ』の全身は、無惨にも黄土色の液状化したブツにまみれていた。
汚れを身に纏い、『洗剤ウォッシュ』の力は0へと減少していく。
(私はもう……駄目……だ。
人々の役に……たてな……い……)
ヨレヨレの体でふらつきながら歩く『洗剤ウォッシュ』の前方から、顔馴染みのマナブさんが駆け寄ってきた。
マナブさんは街でスーパー銭湯を経営しており、『銭湯ウォッシュ』は彼の店の常連客だった。
「『洗剤ウォッシュ』!連絡を受けて来たよ!
今、うちの店で洗ってやる!」
「マナブさん……私は今……▲▲▲まみれ……」
「かまやしねえよ!
一緒に風呂、へえるぞ!」
江戸っ子口調で云うと、マナブさんは『洗剤ウォッシュ』を背負い、自身が経営するスーパー銭湯へと向かっていった。
スーパー銭湯に着くと、街の皆が『洗剤ウォッシュ』を出迎えてくれた。
「『洗剤ウォッシュ』、ワシが体を洗ってやろう!」
「新しい服を用意しておいたわよ」
「なんなら、浴場コンプリートして良いんだよ!」
日頃から台所の汚れを洗浄してくれている『洗剤ウォッシュ』に対して、心ばかりのお礼を人々はしてくれた。
「皆さん……有り難うございます……!」
汚れた体を洗われて街の人々と湯船に浸かりながら、『洗剤ウォッシュ』は泡の涙を流したのだった。
マナブさんも、皆も幸せそうに笑う。
「はっはっはっ!
まるでアメリカの泡風呂だなぁ!」
貴重な体験をしたとばかりに、マナブさんは豪快に笑い声を響かせた。
「これからも、街の汚れを洗い流していきますね」
『洗剤ウォッシュ』は、この日の出来事が一番幸せだと湯船の中で静かに感じていた。
泡風呂、ドラマでしか見たことはありません




