第0.9話「双子」(追加された第2の第1話)(読まなくても〇)
ビルの上、2人の子供が星空に浮かぶ地球を見上げていた。
「さっき見た時と向き違うよね?」
「違うね!やっぱり回ってるんだ!!」
首を傾げる少年の横で、少女が明るく笑う。
「グルグルなんだね?ふふふふ……!」
「そう!グルグル!!あはははっ!」
笑いあう双子の後ろに、誰かが忍び寄る。
純粋で気持ち悪いその好奇心の存在を知らせてくる目に、笑みを浮かべていた少年が力を入れた。
瞬時に飛び上がった少年が冷たい空気を放ち、紫色の宝石を捻じ曲げ始めた。
「【フォーバマイン】。」
自身の身長と同じくらい大きな鎌を作り上げた少年が、少女の背後へ伸びる手をその刃で阻んだ。
「ひっ!?嘘だろぉ……ス、スリエル……な、なんでしょうか!?!?」
「コッチのセリフなんだけど?君でしょ……ミカさんが話してた、皆を後ろから押して落としまくってる奴ってさ。」
少年と少女とほとんど同じ服を着た子供が、先ほどまで少女を突き飛ばそうとしていた手を震わせている。
「え、あ……。」
「落とされた皆、怪我もしてなきゃ死んでもいないけどさ……怖かったって言ってたよ?」
「ちょっと前にね、ミカさんに見つけたら連れてこいって言われてたんだけどね……アスク、ミカさんの所に連れてく前にこの子にちょっとお仕置きしちゃおうよ!スリエルの仕事!!」
少女が飛び上がって、少年と共にフードをなびかせた。
「や、やめて!殺さないでください!?!?」
「……どうしよう?」
「うーん……殺しはしなくていいと思うよ!でもね、怖い思いを皆にさせたのって自分がその怖さを分かってないからだと思うから……お仕置きはやっちゃお!!!!」
少女に手を握られた少年が嬉しそうな顔を浮かべる横で、いたずら好きの子供は胸を撫で下ろす。
「こ、殺されないなら良かった……お仕置きは……受けます、受けますよ。」
――――――――
少しして、ビルの下を歩いていた子供達が足を止めた。
「……なんだこの針山。」
ビルの上で少年に持ち上げられている子供が泣きわめく。
「殺さないって言ったじゃん!!殺さないって言ったじゃん!!」
「だから殺さないよ?死ぬほど怖い目にはあってもらうんだけどね?……本当は殺したいよ。だってさ、僕の親友に……リプラにイタズラしようとしたんだもん、指ちぎって足ちぎって腕ちぎってたくさん泣かせた上で粉々にしてやりたいけど、リプラは殺さないって言うからさ。」
ビルの下に形成した紫の宝石でできた針山の先端をまっすぐとした、『ひし形模様の入った目』で見つめながら、少年は力いっぱい腕を振って子供を投げ落とした。
「嫌だぁぁぁぁ!!!!」
「……。」
子供が何とか進路を変えられないかともがきながら、針山の中央へゆっくりと落ちていく。
「こ、怖そうだね……。」
「ねぇ、次はお空に飛ばしてお手玉にしよう?次は吹っ飛ばすイタズラをするかもしれないから……抑止力みたいに。」
「いいね!私も同じ事しようか迷ってた!!」
「ふふふふ。」
「あははは!!」
「ふふふふふふふふ……。」
「あははははははははっ……ねぇ、そろそろ取りに行ってあげよっか!」
ビルの壁を見つめながら、少年少女が肩を組んだ。
体をくっつかせた状態で、2人はゆっくりと壁に足をかける。
「うん!」
走るようにして落ちていく2人はビルの壁を蹴ることで加速し、やがて落下中の子供に追いついた。
「あ……あっ……たっ助け……。」
「「……。」」
落下中の自身へ手を伸ばすこともなく、透き通った紫色の瞳でこちらを見つめ続ける双子達に、いたずら好きだった犯罪者は涙をこぼしながら声を漏らす。
「あ……あの――」
再び壁を蹴った双子が更に加速し、犯罪者よりも先に針山の横へ着地を決めた。
「え、あっ……やだ……やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ!!!!」
紫色の鋭い針が、死の冷たさをまといながら犯罪者を待ち受け続ける。
重力も、双子も、誰も何もが子供を助けようとは思っていなかった。
空中でもがく中、逆さまになった子供の視界のほとんどがとうとう無数の針に覆われた瞬間、針山が瞬時に少年の首元へ消え、ただの小さな宝石の欠片として煌めく。
重力によって穏やかに地面へ押しつけられた子供が、大きく震えながら顔を上げた。
「ひ……ひぃ……ご、ごめんなさ――」
都市の中で快音が響く。
蹴り飛ばされ、顔を抑える子供の前で少女が勢いよく振った足を下ろしながら歯を食い縛る。
「……突然どうしたの?リプラ。」
「もし私が落ちて死んでたら、もうアスクと話せないし、遊べないし、アスクはすっごい悲しむ。そういう事想像したら、何かすっごいムカついてきちゃって。」
真顔で犯罪者を睨みつける少女の腕に少年が震えながら抱きついた。
「それは……怖いね?すっごい……嫌だ。ずっと一緒じゃなきゃ。」
「だよね……アスク、やっぱりコイツ蹴り転がしながらミカさんの所に連れてこ!」
笑いながら犯罪者へ近づいていく少女と少年を、周りの子供達は微笑みながら見ていた。
「さすがは『太陽の双子』。」




