ハンガー欲しい。
「なあなあ、ケンさん」
「なんだい、ナツさん」
「最近思うことがあってですね」
「ほう、聞こうじゃないか」
「もうそろそろ春じゃないですか」
「そうだね、12ヶ月のうち残り半分をそろそろと表現できるかは置いておいて。」
「つまり私の誕生日が近づいていると言っても過言じゃない」
「半年後の誕生日はギリ過言の分類に入ると思う」
「誕生日に欲しい物があることをアピールしてみようと思います」
「先にクリスマスプレゼントで渡すことになると思うけど、聞いておこうか」
「ハンガーが欲しい」
「100均で買え」
「100均のやつだと入らないじゃん」
「そんな小さいやつを掛けるつもりなのか?」
「小さい方だけど、だいたい8mくらいのやつ入れようと思ってる」
「小さいなら8とmの間のcが抜けてるぞ。何処ぞの巨人じゃねぇか」
「ピンキリであるからね」
「ハンガーの守備範囲がそんなに広いとは知らなかった」
「いくら100均でもね」
「じゃあ、自分で作ってみたらどうだ?」
「いや難しいでしょ。大工さんじゃないんだからさ」
「ハンガーくらい日曜のお父さんでも午前中には出来るわ」
「だいたい、作るにしてもいろんなものが必要じゃん」
「針金とペンチくらいじゃないのか?」
「壁とか扉とかどうすんのさ」
「どの部分までハンガー認定してるだよ!」
「そりゃ吊るせる場所は必要でしょ。あと持ち上げるためのジャッキも」
「持ち上げるのにジャッキが必要な重さの物ってなんだ?鉄の鎧か?ハンガー使うか?」
「そりゃ使うよ。いくらふわふわ浮かんでるように見えても止まってたらただの鉄の塊だからね」
「とりあえず、ジャッキは後回しにして良いんじゃないか?最低限、吊り下げる機能があれば」
「そうだね、あとは土地ぐらいかな」
「不動産までハンガー認定し始めたな。つーか、誕生日のプレゼントねだるにしてはスケールが石油王すぎねぇか?」
「欲しいんだもん」
「可愛く言ってもダメ。俺ら高校生だぞ」
「まあ、ハンガー欲しいって言っても、免許持ってないんだけどね」
「ん?うちの母さんはどんな免許持ってハンガー使ってたんだ……?」
「さぁ?いくつか種類あるらしいし、1個ぐらいは持ってるんじゃない?」
「母ちゃん、俺の知らない所で運転免許証以外も持ってたのか」
「そりゃ、無免許運転はダメだからね」
「洗濯の自動運転機能なら、ボタンひとつで始まるけどな。その運転要素がどんなのか想像つかない」
「見た事ないと分からないよね。ボタンの数ならゆうに300は超えるよ」
「うちの母さんすげぇ!」
「帰ったら褒めてあげるといいよ」
「おう、そうだな!じゃあそろそろ終わる為にツッコむぜ!」
「――ハンガーの前にセスナ買わなきゃね」
「石油王再び!?どういうことだ?」
「だから言ってるじゃん」
「航空機格納庫欲しいって」
「……いや分かるかい!」