☆聖神の血☆
お姉ちゃんの心配を胸に氷の天使と向き合う。
堕霊たちには大丈夫だと伝えたから、今ここにいるのは私と、パウロだけだ。
なんとか私の中にいる空の天使を叩き起こせたらよかったのだが、お姉ちゃんの天使たちの顔をみる限り出てくれることはなかったかもしれない。
サヴダシクたちが三人で何とかしていると信じたい。でも、相手は強い。何とかなるのか心配だ。
できる限り早く片付けてお姉ちゃんのところに──いや、でも断られるだろう。
お姉ちゃんは弱いところを見せるのが苦手だ。だから一人で向かったのだろう。
「パウロ、さっさと片付けてセレイアさんたちと合流するよ!」
「了解しました、主様。スキル 黒・双雷!」
白い雷が落ちる。爆風で細かい砂のようなものが舞った。それはすぐに凍りつき、それすらも攻撃の一部になっている。
「聖遺霊 氷ノ残骸」
氷の礫が飛び散る。宙で体を回転させソレを避けた。
直剣をより強く握り直し、天使を見つめる。
「俺の話を聞く気はあるか?」
詠唱かと思った口の動きは何故か、私たちを諭しているような、宥めているような感じがした。
「言ってみなよ」
私の実力では彼と間合いを詰めるのは難しいと悟り、双鎌に持ち替えた。
懐かしいその鎌は個人任務の時も使い続けていて既に手に馴染んでいた。
「俺は俄には信じ難いんだ」
彼の足元の雲が彼の足に纏わり付くが、煩わしそうにそれを振り解く。
「なぁ、一緒に聖神を殺さないか?」
「巫山戯るな、そんな言葉を信じられるとでも? それも簡単に寝返るような奴のだぞ」
鎌を突き付ける。
彼はゆっくり私に近づいて鎌の刃を自らの首元に近づけた。
「信じなくてもいい。オレは死んでも良いんだ。アイツが死ぬのなら地獄に行ったって構わない」
私が鎌を少し引けば彼を殺せる。でも、私の手は惨めに震えていた。
「五輪を殺してメリットはあるか?」
パウロが私の手から鎌を取った。その行動は私の罪を被ることを意味している。
「────はぁ。あんた、人を動かすのがうまいね。堕霊みたい」
「あはは、褒め言葉として受け取るよ」
私のスキルは一つ余っている。だから、彼に管理を任せてもいい気もしてきた。
「契約だよ。聖神を倒しても私に従うこと。あなたの名前はオベイールよ」
「御心のままに、ウンディーネ様」
まさかこうなるとは思ってもいなかった。言い包められた感じが強いけど、まあ仲良くするしかない。
そしてこの戦場はあっさりと幕を下ろしたのだった。
目の前で水を放つ天使。ソレを軽々と避けてまた向き直る。
退屈なやつだ。苦戦のしようがないし、そもそも当たらない。まさに"無辺世界に飛んでいっている"といった感じだ。
なんだ、新参か? そう考えたら空いた『静空ノ五輪』の席を水で埋めたとも取れるのか。
となると、かなり人手不足を感じる。
例えるなら、上位堕霊に上がりたてくらいの力と言える。
「おい、まだ続けるのか? 飽きたぞ」
私は『豪水ノ五輪』にそう言ってやる。
戦闘経験も知識もろくにないようだ。
景気付けに一発放った朱い弓は天使の足を吹き飛ばした。弱い、弱すぎる。
「驕るなよ、螻蟻なる者」
水量を増した川のように感情が氾濫する直前のようだ。
でも、怒りはない。ただ、蔑みだけを抱いた薄い川。
「天地を区切り、満たす水を、穢れた悪魔に理解はできぬだろう」
致命的に頭が悪いようだ。
暇な言葉を一生懸命喋っていることにすら退屈し始めた。仕方なく、大事に取っておいていたオリヴィア様お手製のクッキーを口に入れる。
ザクザクとした小気味いい食感が感覚を研ぎ澄ませる。オリヴィア様の愛情の欠片を摂取して高揚してきた。
やはり、オリヴィア様は私の象徴だ。ここまで胸のざわめきが落ち着くとは。
「終わった? もう主様のご尊顔を拝みに行きたいんだけど」
クッキーの美味しさに感動して可愛らしい小袋を見つめる。そこに直筆で『ありがとう』。
「私にとって天使は、神はオリヴィア様のみ。いい?」
「食いながらしゃべるな。カスが飛ぶ」
確かに、それは困る。零した分だけ損をしてしまうのだから。
「本当に鬱陶しい。スキル 水ノ捌紀」
水のギロチンが作り出される。
「恐れているのか? 足が竦んでいるようだが!?」
水の天使の叫びとともにギロチンが落とされる。
全くバカバカしい。スキルを使うまでもない。
私に近づいた途端水が解け、威力を失って辺りに散らかった。
「お、お前、何を……?」
「私が何かしたように見えたか?」
私は実際何もしていない。
自動展開の権能『赦免』が、相手のスキルを赦さなかったのだ。
「私の愛を邪魔しないで」
水が雲に当たって弾ける。
でも、水の天使は恐れる様子がなかった。
まるで、恐れという気持ちを忘れてしまったみたいに。こんなんじゃあ、堕霊よりもよっぽど人間じゃない。
「スキル 水ノ捌紀!!」
扇状に展開した水は私にたどり着くこともできずに頼りなく散り散りになっていく。
「イオアンとやらを天使にする作戦はどう? 進んでる?」
私が揺さぶるために水の天使に聞いてみた。
「天使もいないのにスキルが進化してるもんね」
重ねて語りかける。だが、ずっと無言を貫いている。
「当たんないからムキになっちゃったかな。じゃあ死んでくれる? 裁きはお姉ちゃんのだから。故夢 生命断」
あっという間に、この戦いは終わったのだった。
聖神は思ったよりも強いらしい。
セレイアの弓を避けて高いところまで逃げていった。
「人の身で堕霊を三人も宿らせるとは……」
そう聖神が言った。別に直接宿っているのはサヴダシクだけだ。
そう言えば、戦い始めてから何分たったかは分からないが、サヴダシクの方は多分終わる頃合いだろう。
三人になれば勝機はあるだろうから。
「神ノ摂理 魅惑ノ甘言、『覚炎ノ五輪』」
彼の右腕に炎の塊が生じた。
今までの戦闘で理解したのは五輪天使たちの名前を呼ぶとそれに合った属性のスキルを使えるということ。
そして、一回唱えるとしばらく五輪天使たちの名前を呼ぶだけで天使の"魂の束縛"によって使えるということ。
「故夢 月魄屏」
フィヤルナが張ってくれた障壁のおかげで炎の放射は防げた。
「月魄……お前は沈界の月魄の国の民か……。そういえば迷い人たちが堕霊になるんだったな」
こいつも沈界について知っているのか。ならば情報を聞き出すためにゆっくり戦ったほうがいいのかもしれない。
「姉御、あいつを殺すよ」
その言葉にハッとした。確かに戦いが長引くことの言い訳を作ろうとしていたのかもしれない。
倒すという、もっと強く言えば殺すという命の取り合いの場においてそんな気持ちでいるなど言語道断だ。
「もちろんだよ」
気持ちを静めて、聖神をよく見る。
オリちゃんの父を殺すためにはコイツくらい簡単に殺せないといけないから。
「故夢 幻夢弓」
身体を宙に浮かせて弓矢を構える。
「神ノ摂理 魅惑ノ甘言、『豪水ノ五輪』」
体を傷つける水の刃を一切気に留めずただ弓矢に力を注いでいく。
「故夢 生命断」
サヴダシクが来てくれたようだ。懸念も払えた。
弦を握る手が震えないように気を付ける。
一瞬の聖神の停止を見つけた。弦を解放した。世界が反転した。
滝が裏返って滝壺にたまっていた水が溢れて落ちていく。
そして、矢は聖神の左半身を消して後ろの地面を求めて落ち続けている水の塊を一瞬で蒸発させた。
「『滞氷ノ五輪』」
なくなった左半身を氷で補った。
そして少しずつ氷が身体になっていく。
「ふふふ、面白い奴らだ」
睨みながらそう言っている。
「裏切り者が……。300年前裏切った天空の覇者も、時間の申子も……」
時間の申子? 確かではないが、妖器の在り処を教えてくれている声がそうなのかもしれない。
「もし私たちがすでに倒せてたらかっこよかったのにねぇ、そうでしょう、マニ?」
「遠かったんだけど。移動しすぎだよ」
愚痴りながらマニが参戦してきた。
「神ノ摂理 魅惑ノ甘言、『深雷ノ五輪』」
ドンッと爆音が轟いた。鼓膜があったら破れていたかもしれない。
そして、再び聖神を恐れた。
走れ、走らないと仲間が死ぬ。
もう嫌なんだ。お姉ちゃんが悲しんで、泣く姿をただ見ることしかできない無力感が。
私の胸を渦巻いた虚無感は誰にも打ち明けられず未だに"幸せ"がそこに吸い込み続けるから。
いつまでも収まらず、むしろ勢いを増していく。
でも、私なんかよりもお姉ちゃんのほうが余程苦しんでいるのだろう。気丈に振る舞うお姉ちゃんが何の夢を見ているのかは分からない。でも、時折汗をかいて苦しそうな寝顔を浮かべる。
ベッドに武器を置いて寝られると私がそこに入れない。お姉ちゃんを守るはずのそれが、私が守ることを拒絶するようで。
私を守ってくれるお姉ちゃんを守れない。寄り添えない。
もし私が今、最愛の仲間たちを失ったら何を感じるのだろうか。
頭をブンブン振る。髪の先が額に当たって痛みを感じる。"死"なんて、そんなこと想像したくない。
私は神なんだ。水の神様なんだ。なのに、なんで。自分から溢れる水すら操れないなんて。
お姉ちゃんがくれた服の袖を汚すわけにもいかず、手の甲でそれを拭う。
横を飛ぶパウロは何も言わずに前だけを見ている。とても愛おしく感じてその手を触る。
私の不安に気がついたのかパウロは私の手を握って飛ぶのをやめて走り始めてくれた。
「ありがとう」
「いえ、走りたかったので」
不器用なパウロが好きだ。
優しいパウロが好きだ。
可愛いパウロが好きだ。
好きなんて感情は邪魔にしかならないからやめろってお母様が言ってたっけ。
ごめんなさい、お母様。私、言いつけを守れずにたくさんの"好き"をしてるんだ。
「あ、来るよ」
誰かのスキルの影響か世界が裏返った。
少し遠くで朱い線が空に引かれた。
「さあ、私たちも参戦しないと」
空中に見えない地面があることに気がついて着地する。
そしてそこに水をはっておく。そうすればいつでも大規模なスキルを操れるだろうし。そうしていると、パウロが、口を開いた。
「スキルを使うのをやめても良いのではないでしょうか?」
少し時間が経ってしまったようだ。
いつの間にか涙がまた溢れ始めていたようだ。左手の甲で目を擦り、笑ってみせた。
するとパウロも安心したように笑ってくれた。聖神を倒したら抱き締めよう。
パウロの方から差し出してくれた手を握って走るとすぐにセレイアさんたちのところについた。
「もし私たちがすでに倒せてたらかっこよかったのにねぇ、そうでしょう、マニ?」
セレイアさんがニヤリと笑いながら私にそう言ってきた。倒せていたかどうかには触れずに、文句を垂れることにした。
「遠かったんだけど。移動しすぎだよ」
そして、聖神が唱える。
「神ノ摂理 魅惑ノ甘言、『深雷ノ五輪』」
『深雷ノ五輪』? トルンさんを喚ぶのか?
その疑問は次の爆音でかき消されていた。耳を貫くような轟音とともに体中が麻痺する。
これはやばい。間違いなくはやばい。
神になって以来、痛覚はほとんど無くなっていた。というのも、痛覚がなくても違和感で体の状態を把握できるからだ。
それなのに、今めちゃくちゃに痛い。すなわち許容量オーバーということだ。
「つぅ……」
血は出ないから外傷はほとんどないが服が破けてしまった。こんなことになるなら着てこなければよかったと後悔する。
「神ノ御力 蒼水ノ大槍!」
私が喚んだ水の大槍は聖神を掠めて消えた。
想定以上の脅威。
でも、お姉ちゃんに私は見せないといけない。だって、私は頼れると、私になら打ち明けられると思ってほしいから。
「神ノ御力 蒼・絢爛水舞!!」
水を蹴って聖神に近づく。みんなも各々のスキルで聖神の動きを邪魔してくれている。
攻撃をすべて避けて、リーチ圏内に入り込んだ。今なら行ける。
「弱い神の親を持つと大変だな」
やばい、防げない。両剣の攻撃が私の背中を貫かんと迫る。
だがそれをサヴダシクさんがスキルで弾いてくれた。
「ありがとう」
下がりながらサヴダシクさんに感謝を伝える。
「オリヴィア様がいらっしゃるまで耐久になると思うわ。だから、無茶な特攻は無しよ」
サヴダシクさんに釘を刺された。
「スキル 黒・双雷!!」
パウロの雷が真っ直ぐ聖神に落ちるが、あまりダメージはないようだ。
「故夢 月魄屏!」
「故夢 幻夢弓!」
「故夢 生命断!」
フィヤルナさんが皆にバリアを貼ってくれて、セレイアさんが弓を射ち、サヴダシクさんが光の太刀を振るう。
空気が揺れる。さすが『三大堕霊』と呼ばれるだけある。
とても強力なスキルを扱って戦ってくれる。
それでも敵は強大だった。何分も戦い続けている。相手は1人なのに。ふざけているのかと何度も思った。
こちらの戦力は大きい。だから、苦戦と言えど聖神側の小さなヘマから均衡が瓦解して優位に立てると思っていた。
そんなことはなかった。凄まじい実力で私たちの戦力を摩耗させていく。
「『地淵ノ五輪』」
岩が飛び散り私の皮膚を引き裂く。私の動きもだいぶ危うくなってきて、いつ大きな被弾をしてもおかしくない。
いつ、『滞氷ノ五輪』を突っ込むか。それによって結果が変わるだろう。
手札として温存したい気もするし、早く出して相手を疲労させるべきな気もする。
「下らぬ話だ。ワタシがわざわざ作ってやったというのにワタシを殺そうとする輩につくとは」
聖神は私を見ながらそう言った。気付かれている。
なら、早めに使おうか……。
(えっと、聞こえる?)
(聞こえています。出ましょうか?)
(うん、お姉ちゃんを連れてきて欲しいんだ)
(了解しました)
その返事に満足して、
「神ノ御力 蒼・絢爛水舞!」
水飛沫でオベイールの分離を隠す。水飛沫を貫いて伸びてきた岩の欠片を鎌で防ぐ。
「スキル 黒・双雷!」
黒い雷が再び聖神を襲う。
でも、あいも変わらずダメージが低い。
聖神はもはや当たることを気にしていないようだ。ならば、それをどうにかして火力を上げられれば。
「故夢 幻夢弓!」
「故夢 生命断!」
「神ノ御力 蒼水ノ大槍!!」
セレイアさんの矢が足を掠る。サヴダシクさんの光の太刀がぶれて髪を数本切る。私の大槍は触れることすらかなわないのに。
私は、役に立てないのかな……。
氷の天使に連れられてマニたちのところへ駆ける。
危うく殺すところだった。マニューバの残滓を感じるのがもう少し遅れていたら……。まあいい、過ぎたことだし。
それにしてもイオアン強かったな。多くの傷は癒えているが、疲労感だけが抜けない。
「貴女がオリヴィアさん、でしょうか?」
前を走る背中が聞いてきた。
「そうだよ。あふれ出る気品で気がついた?」
そんな冗談に彼は頷いた。そう返されるとどうも返答に困る。
気まずい空気が流れているまま、聖神を見つけた。
「スキル 掃除屋」
とりわけ傷があったわけではないが、一応回復をばらまいておく。私のスキルが発動して顔が綻ぶマニ。
「来たか、泣き虫!」
誰のことやら。私が泣いたことがあっただろうか。思い当たる節が2つくらいしかないぞ。
流石に2回程度で泣き虫の烙印を押されると困るのだが。アレ、3回だっけ?
まあ、変わらないか。
「神ノ摂理 魅惑ノ甘言、『深雷ノ五輪』」
『深雷ノ五輪』? 『深雷ノ五輪』と聞くとあの顔しか出てこないのだが。
そう思っていたら雷が炸裂した。危なく当たるところだった。
「『覚炎ノ五輪』」
今度は炎。あ〜、コレは完全に理解しましたわ。
天使に対応した属性の攻撃ができるってことね。
てかなんで使えるんだろう。『覚炎ノ五輪』も『深雷ノ五輪』もかなりの期間私の庇護下にある。なのにまだ使えるのはなぜだ?
そういうことも少しずつ考察しながら戦おう。
「『豪水ノ五輪』」
次は水か。存じ上げない天使の名だが、たぶんそういう人がいるのだろう。
どうしたらスキルを誘発できるだろうか。攻撃を挟みつつ、考えてみる。
刀で攻撃しても両剣で反撃が来る。スキルなら?
「スキル 掃除屋」
白い風が聖神目掛けて飛んでいく。
「『滞氷ノ五輪』!」
ああ、分かった。そして、違和感も。
アレは部下のスキルを利用して行う攻撃手段なのだろう。
つまり、ルーヴァたちのスキルに何らかの呪いが付着しているはずだ。
(ねぇ、3人ともスキルを浄化してもいい?)
ルーヴァも、トルンも、ヴィーヴルも素直に了承してくれた。
彼たちのスキルに付着した呪い。それを解呪している最中、聖神の攻撃が激化した。うん、合っているようだ。そしてそんな苦戦することもなく解呪が完了した。
コレのせいで彼らは外に出られなかったのだろう。
そして、停滞していた『グループ』が一気に流れ込んできた。
ルーヴァからは『グループ 朱輪』
1、朱色の最上位炎を喚び、操る。
2、相手を信じさせ、魅了する。
トルンからは『グループ 紫輪』
1、紫色の最上位雷を喚び、操る。
2、指定の位置に瞬間移動する。
ヴィーヴルからは『グループ 黄輪』
1、様々な地形を創造し、操る。
2、地理を把握し脳内マップを自動生成する。
「クソがっ!! お前、お前のせいで台無しだ!!!」
「弱いね。イオアンのがよほど強かった。だから魅了は嫌いなんだ。弱いからそれに縋る」
私が念じるのと同時に紫色の雷が落ちた。少し強かったかも。
それと同時に三人が飛び出した。ルーヴァ、トルン、ヴィーヴルだ。
「さあ、反撃だ〜」
私の間の抜けた合図とともに勢いに乗った私たちはスキルで追い込んでいく。
「故夢 幻夢弓!」
「故夢 生命断」
「神ノ御力 蒼水ノ大槍!!」
「星異物 雷ノ摂理!」
「故夢 月魄屏!」
「聖遺霊 氷ノ残骸!」
「聖遺霊 大地ノ虚虹!」
「スキル 掃除屋!」
「聖遺霊 聖炎ノ溶戮」
何が当たって何が当たっていないのかは全く分からなかった。でも、確かに大きなダメージを与えたことに変わりはない。
「神言 黒・双雷」
そして、パウロの雷が聖神をさらに追い込んでいく。
「バカが……、この程度で死ぬと思うなよ────」
「その程度じゃ死なないかもね。堕落能力 黒・料理屋」
腹に突き刺した片刃剣の色は分からない。炎の黒と、流れるはずのない血に阻まれて。
「偽物の神性に導かれて、死ぬが良い」
そして、聖神は事切れた。
マニューバの双鎌
マニューバが討ったヴェラの舞騎士が持っていた武器。蒼と朱の二色を持っている。
美しい紋章の刻まれた二振りの鎌は夫婦のように離れることはない。
争いを刈り取る鎌に踊りをさせたのはヴェラの狂い故だろうか。
私は妹を守るのだと。いつか誓った記憶がある。
天魔繋之両剣
蒼い空と怨嗟の地下を結ぶような両剣。妖器の一つ。
丁寧に彫られた文字は『天狗』。
蒼い刃と真紅の刃で構成された軽い両剣。
蒼い空に孤独でいた神様はいつしか地下に憧れを抱いた。
寂しさを紛らわすには仲間がいれば良いんだ、と気づいた。だが、神はだれでも魅惑するという能力をみな持つ。
魅了され、落とされた天使たちは彼の言いなりとなり、孤独が紛れることはなかった。
死にたがりの神様はもう居ない。
あそこでは、一人にならないことを私は祈る。神はもういないというのに。この手で、殺したというのに。




