☆バジリスク☆
バジリスクは美味しいのだが、強いモンスターである。
魔法を使うモンスターは例外なく強いのだが、炎系統であるため炎熱カット防具ではないと一瞬で炭化してしまうのだ。
そしてバジリスクは晴れた野原に現れるため天候という運要素も必要となる。
まぁ、今日がたまたま晴れているから派遣されることになってしまったのだが。
「さぁ、行こう!」
素早く私を乗せる体制を取り、彼女にまたがる。
「れっつごー!」
私の掛け声に応じてすぐに最高速度になる。
その速度で流れる風は振り落されそうになるほどである。
できる限り前屈してお腹をマリの背中にくっつける。
あったかい。
いつの間にかついていたようだ。
このだだっ広い草原は過去に黑位を名乗る英雄が悪魔女帝を討ったとされ、短い草の生えた土地になっているらしい。
その土地の名を『オグロー』という。
「さてと、ここらへんに大型の巣の発見情報が……?」
鳥のくせに地面の中で暮らすバジリスクは大きな穴を掘り、そこに住まう。
バジリスクがいなくなるとその巣は雨水が染み込みまくるため落とし穴になる。
大きめの鳥であるため範囲も広く骨折などの被害が多く起こる。
いる間は一匹が蓋の役割を果たし、背中で入り口を塞ぐのだ。
そのため背中はとても硬く、魔法を常時発動できるようになっているのだ。
「うわ……!」
気を付けていたのだが、間違って背中を踏んでしまったらしい。
言わんこっちゃないと自分を戒め、後ろに転がって距離を取る。
地面と同化するよう羽が土色なのだ。
「いこう!」
「おお!」
マラ、マリ、マルが巣から出てきたバジリスクを次々と相手取る。
そして私は周囲を警戒する。
入口も多数持つのだ。
「ギャルルララ!」
低い鳴き声が響き炎が出る。
落ち着いて避けて、刀を構える。
近づいてきたバジリスクをジャンプして飛び越え羽を切り落とす。
そして怯んだ他の食物を狩る。
背中は硬いがお腹は柔らかいため、お腹を狙っていく。
青い血が飛ぶ。
簡単に処理できるように首を狙い、血抜きの下準備も同時に終わらせたらいいなぁ、的な感じで行こうと思う。
「こっちは終わった!」
私は手を合わせ、首を裂いて血抜きの準備をしながらそう言った。
「こっちも────」
そこで気がついた。こんなところに巣を作る理由に。
巣を作るというのは労力を使うものだ。
知性のあるバジリスクは狩り場のそばに作ることが多い。
が、ここは生物はまるでいない。
つまりここに作るのは監視もしくは、隙を狙ったのかもしれない。
その正体はいま、マルの後ろにいた。
「『氷鱗蜥蜴』!?」
蒼い鱗に身を包んだサウルスである。
氷属性であり、腹を除くどこにおいてもダメージが通らない。
スキタイは、完全な初心者が何もできずに死にゆく強い敵である。
氷のトゲを撒き散らすため空を飛ぶバジリスクとも戦えるのだ。
マルは尻尾の攻撃をしなやかに避ける。
撃破方法はいたってシンプルだ。
ひっくり返してお腹を狙うという作戦をより高確率に、より正確にしていくのであった。
氷鱗蜥蜴
体長3メートルほどの亀形。
甲長は2メートル半ほどであり、そのまま大盾になる。
氷魔法にたいする耐性がとても高く、倒した報酬は見合うと言えるだろう。
尾は石の塊がくっついたようになっていて、容易く大岩を砕く。
温厚な性格であるが、襲ってきた相手の顔を覚え執着する。
肉は固くあまり食べるのには向いていないが、保存食として利用される。
繁殖期には川の底に巣穴を作り、子作りをする。
川の上流に氷の魔法を使って巣穴を閉じるため、水が冷たくなる。