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☆『いもうと』☆

 任務として訪れたそこは戦闘の最中だった。そこにいたのは鼠人間(プロトゥン)である。


「私達に任せて!」

「おう、片付けたら行く。あっちでは人間同士で争ってるみたいだし!」

「じゃあ任せる!」


私はどんどん走っていく。

 乱れた魔素は戦闘用のスキルを使用したからであろうか。

 戦闘は少し離れたところで継続されているらしく、未だに魔素の結合と分離が続いている。

 が、その魔素は見たことがあるものであった。

 胸をなでおろし、近づく。


「大丈夫ですか!」


私は敵を見つける。

 男性で短髪。手にしている得物は大剣のようだ。

 作ってもらった刀で大剣を受け流す。


「バス姉!」


その聞いたことのある声は、『いもうと』のものだった。

 バスというのは父が私に呼び始めたあだ名である。

 由来は全く知らない。

 

「マニューバ!」


 父に似た茶髪を靡かせている。

 貴族である彼女の髪は艷やかである。

 お母さんの空色の髪色に似た瞳は私を見ている。

 が、思い出したように、


「邪魔だよ」


と冷たく言い放った。

 私は呆気にとられる。

 そのまま手にした剣は水をまとっている。

 彼女はまだ11歳のはずである。なのに、ギルドの証のバッチを首から吊り下げている。しかもそれは紅。

 『ファイター 絢爛水舞(けんらんすいぶ)』は武具の創製と水のエンチャント。

 超回避と完全感知という権限を司り、敵にはまわしたくないスキル持ちなのだ。

 スキルに頼った戦闘ではあるが、敵を追い込んでいっている。 

 体力はいつか底をつくだろう。


「そんなの待ってられないよ」


敵のターゲットは明らかにマニューバになっていた。

 私はノーマークだったのだ。

 颯爽と裏に回る。そのままカタナを背中に刺す。

 貫通すると事情を引き出せないまま眠りの境界線を超えて逝ってしまう。

 そのまま蹴って地面に落とす。

 縄で簡易的に縛り付ける。

 

「じゃあまたね」

「……また」


そのまま担いでギルドへ向かう。

 の前に、鼠人間(プロトゥン)の死体を回収する。


「ごめん、ありがとう」

「いや、意外と手間取った……」


死体の数は山のように積み重なり、大繁殖していたのかもしれない。

 流石にこの数がこの周辺にいるとなると駆除は必須であろう。

 害獣に属するこのプロトゥンは倒した場合申請する必要がある。

 なので、人に近い姿のプロトゥンを回収しなければならないのである。

 本当に気分が悪くなる。ゴブリンくらい人外ですよオーラを放ってくれれば倒しても大丈夫ではあるが。

 亜空間に放り込んだプロトゥンは合計47体。

 そのまま拘束しておいた敵を亜空間にぶち込む。 

 そしてマリにまたがり、来た道を返す。

 



オリヴィアが到着する少し前。

 マニューバはギルドからきた依頼を元にこの場にやってきた。

 

「誰か……いる……?」


後ろ姿はわかるが、顔までは見えない。

 が、話し声ならば聞こえる距離だ。


「──君たちももう少しだよ。もうそろそろなんだ」


よく見ると話し相手は知能の低い鼠人間(プロトゥン)であった。

 そして、プロトゥンの一人がこちらに気づき、敵に教えてしまったらしい。


「盗み聞きなんて、やな趣味してるねぇ」


そう気味の悪い声で話しかけてきた。

 ゾクッとする。慌てて後ろに飛んで逃げる。

 プロトゥンの一匹が雄叫びを上げる。

 それの雄叫びが伝染する。

 スキルで剣を出して押し込む。

 プロトゥンは弱いのだが、囲まれると何もできずに殺される。

 数は力を体現するモンスターである。

 敵がパチンと指を鳴らすと炎が出現する。

 その炎が丸まり、発射する。

 慌てて避けると地面で爆発して雑草が灰になる。

 そのまま鞘からだした大剣を使い始める。

 もう一度ぱちんと指を鳴らすと大剣に炎が燃えはじめ、振る度に炎の斬撃が飛ぶ。

 あたりの気温が上がった気がする。

 避けるために大きく回避をする必要がある。

 斬りかかっても男相手であるため力で負ける。

 地道に相手の体力が尽きるのを待つしか無いかもしれない。

 だがその前にこっちの体力が尽きる気がする。

 ジリ貧とはこのことを指すと考え始める。

 気がつけば最初で争い始めた場所から大きく離れてきた。

 何分たっただろうか。

 口の中が乾く。喉が渇く。

 体に疲労感に疲労感が襲う。

 後ろで避けて地面をける度にあと何度ければいいのか、と考えてしまう。

 が、誰かきた雰囲気を感じる。

 その人物の顔を見て驚いた。

 正真正銘の『あね』であったのだ。

 雑用スキルに目覚め、母親に縁を切られた我が家の面汚しである。

 ここまで育つうちに何度『あね』の悪口を聞いてきたか。

 それが嫌でギルドに年齢詐称して入会したと言うのに。

 こんなところで合うことになるなんて。

 『あね』はよくできたカタナで私をかばう。

 その動きは慣れていて、無駄が少ない。

 ソレが、嫌だった。

 劣等種と教え続けられてきた『あね』に劣るなんて。

 雑用スキルの人間に、負けるなんて。

 貴族の補正を受けぬ『あね』に負けるなんて。

 認めない。認められない。

 『あね』から敵を奪い取ると『あね』は悲しそうな表情を浮かべる。

 少し心が痛む。

 だけど教えに背くなんて大層なこと私にはできなかった。

 生まれ持った才能が、積み重ねられた努力に負けるなんて嫌だった。

 だって、才能は最強だと思っていたから。

 最強じゃなきゃ、意味がないから。

 なんとか倒す。だけど鞘で叩かれた脇腹がとても痛む。

 もう、動けないくらい痛い。

 『あね』は、さっと縛り上げ、運び始めた。

 私は回復に努める。

 いつの間にかプロトゥンは全滅していた。




鼠人間(プロトゥン)

 

身長はおよそ1メートルほど。人型ではあるが、知能は低い。

 嗅覚が鋭く、農作物を食うため害獣扱いされている。

 特徴的なその姿はわかりやすくゲルドでも任務がよく出ているという。

 通常個体は素手だが、上位種になると棍棒のようなものを持つ。

 戦闘能力は低いが繁殖力が強く、一つのカップルで25頭ほどの子供を産み、家族内繁殖も可能。

 だが、除草剤などを食べ死ぬという例も多い。なお前歯が薬になり、比較的高く売れる。

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