☆命の果汁☆
※閲覧注意:今回のお話は特に腐敗、血、その他不快感を覚える可能性のある描写が含まれます。
二つの通話を終えてついに城へと向かう。
体力のある今のうちに井戸へ向かおうか。
それを周りの人たちに伝える。
「早く行こう、オリちゃん」
「そうですね、早く行きましょう」
セレイアもサヴダシクもワクワクを隠す気がない。
そして堕霊信仰の彼らもまたどきどきわくわくを抱えているようだ。
ヴェレーノを地下に誘う。
「え、いいの? バレないうちに早く行こう」
コソコソと私に返事をするが、ざんねんながらラミエルにバレた。
「ん?」
その一文字はヴェレーノを震わせるのに十分だったようだ。
「暇そうだな? 捕虜がまた来たらしい。神の光に照らされて傷もひどいから刺激しないようにな」
それに追撃をマルが決める。
仕方ないからヴェレーノを諦めて井戸の方へと向かう。
井戸周辺をくまなく探していく。なぜか魔力感知がほとんど効かず、捜索はかなり手間がかかりそうだ。
そう思っていたのだが、本当に井戸の直ぐ側、厠の隣の地面に切り込みを発見したようだ。比較的最近開けられたようだ。
「ここじゃない!?」
私は駆け寄って見つけた青年とハグする。
無理やり引っ張って開けると中は暗いが、比較的出入りはあったようだ。
少しずつ中に入っていく。
そして思いついた。
「ねぇ、セレイア。半分くらい連れて城の中にあるらしい地下経路の探索してくれない?」
「……わかった」
地上のセレイアの返事を聞いて満足して中へと進んでいく。
壁を手でなぞりながら降りると階段が終わり、少し広い通路に出た。すぐ隣にはドアがあるが鍵がかかっていて開かなかった。
正面の衛兵をサクッと倒す。遺体をあさるが特に何もなく通路に置いておくことにした。
順路通りに進むとすぐに人の気配を感じて後ろに警戒を促す。
コツコツという音が遠ざかるのを感じて顔を出す。
「やめで!! 私は何も゛知らない!」
悍ましい絶叫とあとに響く鈍い打撃の音。
「痛゛い……」
本能的に飛び出し前を歩く兵士の頭を蹴る。もしかしたら死んだかもしれないが、死んでたらその時に埋めてやろう。
そして薄明かりの中に大きな部屋が姿を現した。
大監獄のような沢山の檻と腐臭。
「ここか」
一つだけ扉が空いてそこから血の匂いとともに、新鮮な血が流れ出している。
背後から兵士の甲冑を刺し貫く。
そのまま持ち上げ、体を放り投げる。
心の奥底に何かを感じる。最近そうなのだ。殺したとき、死体を見た時に何かを感じる。スキルの覚醒が近いのかもしれない。
「何があったか分かりますか? あなたは、誰ですか」
怯えきった女性は痩せこけ、皮脂と血で汚れた髪は元の色がわからない。
「……女帝様……」
女帝? 女帝といえば『悪魔女帝』か。
「その使者だ。我らが『悪魔女帝』様の信徒たる貴方がたを救いに参った」
私がそう言うと彼女は錆びた鎖を大きく揺らしながら頭を垂れる。
「ありがとうございます……」
「だが、感心しないな。『悪魔女帝』様の信徒に似合わない汚れ具合だ」
水を彼女にかける。
治癒と鎖を切っておく。衛兵の持ち物をあさりながら、
「なんで拷問なんてされてたんだよ」
私は堕霊ぽさを演じつつも情報を聞き出そうとする。
周りの声や匂いに煩わしさを感じる。
「『悪魔女帝』様を信仰しているので。こんな悪を認める上に改宗などできません」
意味がわからないがそういうものなのだろう。
だからこの島でも一度、堕霊の討伐をさせられたのかな? 堕霊の存在が広まらぬように。
そして鍵を見つけた。
「華美な装飾ですね。まあ城の鍵ですし当然と言えば当然ですね」
ビックリした。私の肩の上に顎をおいて鍵を見つめるサヴダシク。
「あ、失礼致しました」
ゆっくりと私から離れ一礼する。距離感を感じるが最初の命令のせいかもしれない。
「問題ないよ」
特段気にしてない。寛大に許してやるとしよう。
「……この方は? 母上の信者ですか?」
「うん、そうみたい」
返事をして気がついた。
「母、上?」
隠してるの言ってなかったわ。
慌てて私が言い訳を考えていると、
「そうですよ。私は『三大堕霊』が一柱。この方は私が仕える偉大な方なのです!」
あ〜あ、間に合わなかった。
自慢げなサヴダシクは周りを見ずに大きな声でそう言った。
言い訳の前にこいつに伝えておけば良かったのか。
「そのような方だったのですか……!? 思いもよらず、失礼しました!」
ほら、こうなるから。
「気にしてないよ。傷口は治った?」
「はい、貴方様のおかげです! ですが、代償となるものがなく……。命や血ならあるのですが」
なんで私が命を奪わなきゃいけないんだ。そんな事言いながらなんでアンタは幸せそうなんだ。
「要らないよ。貴方たち、保護してあげて」
後ろに控えていた二人が彼女の体を支え地上につれていく。
痛いという声がだんだん少なくなって、感謝の声が聞こえてきているから、他の人たちの救助が進んでいるのを感じる。
「オリちゃん!」
振り向くとセレイアがいた。堕霊連中はそれが好きらしい。
2度も同じ手にかかると思わないでほしい。ただ私の魔力感知をかいくぐるような技術は素直に尊敬する。
「あれ? もう攻略終わったの?」
「それがつながってたの。後で説明してあげる」
穴を開けて無理矢理繋げていたら後で怒ろう。
「あとこれ」
手渡されたのは鍵。
温かい血はぬるりとしている。
「落ちてた」
手と鍵をスキルで出した水で濯ぐが、なぜか取れず、しかも血の中から焦げたナニかが出てきた。
セレイア? これ、血で洗ったな。
「オリヴィア様。救助完了致しました」
あっという間に終わったなと思ったが、20人近くが集まったらそこそこ早く終わるのか。
もしかしたら鍵を洗うのに時間がかかっていたのかもしれない。
「オリちゃん、こっちよ」
セレイアの案内についていく。近づくにつれ嫌な匂いと、そして羽音が聞こえる。
あの兵士が出た扉はセレイア達が開けたらしく彼の身体から剥ぎ取った2つ目の鍵は使わないで済みそうだ。
薄ら明かりに照らされた食べ物はより汚く視えた。
高く積まれた食べ物の山にスコップが刺さっていて、汚れたバケツもあった。
そして、瓶詰めされた、腕。息を呑むほど凄惨な景色だ。
そんなときセレイアの声が聞こえる。
「ここ」
小さな入り口から梯子が見え、セレイアが飛び降りる。
私も飛び降りるが、ビチャっと何かが飛び散った。壁は鱗のようなものに覆われているようででこぼこしていた。
何かに沈む脚を何とか前に進める。
「ここだよ」
するりとセレイアははしごを駆け上る。はしごの近くはより高く何かが積まれていた。
綺麗に整頓された食べ物が目の前にある。
足を見るとぬちゃりとひっついた泥のような何かが靴を汚染させていた。床にくっつき、足を上げると糸を引く。
周りの食物の匂いと混ざって吐き気がこみ上げる。
軋む扉を押し開けると明るい廊下に出た。右に進むともう一つ食糧庫があり、そこにはメモが壁に命の果汁のソースで太く、濃く矢印が書かれていた。
その下には朱いソースが垂れたメモが落ちていた。
『外が騒がしい。このメモを見ている君がここの食品を上へ運んでほしい。この部屋の扉の正面の壁を押せば隠し扉が現れる。貴賓のために頼んだ』
私はそのメモを見てその料理を手に持とうとして、やめる。
扉を開けて、メモのとおりに壁を押すと知らない部屋に着き、左に階段が見えた。
私はため息をつき、セレイアとサヴダシクとともにまた階段を駆け上る。
井戸地下階段横の鍵
兵士が持っていた鍵。彼は痩せていてとても持ち上げやすかった。
『悪魔女帝』を信仰すれば逮捕、拷問を受けるという。
ルトナの闇であり、その闇に『夢想ノ使者』は惹かれ、それを避けるために『悪魔女帝』を信仰する。
この国は革命を求めているのだろう。
私たちはただ叫べば良い。"黒を灯せ。革命のために"
食品廃棄室の鍵
兵士が持っていた鍵。腐りかけの食べ物が乱雑に置かれた部屋。
牢屋に住まう人たちのご飯はここの食品らしい。
この部屋には地下通路があった。隠された通路の床は暗く見えなかったが、柔らかく、ヌルヌルしていた。
文書庫の鍵
2階にある文書庫を開くための鍵。生暖かい血がベッタリとこびりついていて、セレイアがどのように手に入れたのかよく分かる。
いろいろな文献があり、この大陸の外のものも数冊あるようだ。
これだけ学び、知っているのに愚かな政治はなぜ始まったのか。
私は今もなお分からずにいる。




