☆三色丼☆
オーク。それは豚と人を混ぜたような外見の魔物である。
脂の乗っていて美味しいのは間違いない。
基本的に臭みはあるが、そもそも肉が高いため、一般市民では誕生日などのご馳走になる。
毛皮は丈夫で保温性があるため、コートなどになる場合がある。
もちろん比較的安めではあるが。
そんなオークは駆け出し冒険者にとっては強い敵である。
知能があり、群れで怪力任せの攻撃を喰らえばたまったものではないだろう。
実際中級冒険者のオークによる死者は一定数いる。
オークは人類という扱いではない。
野生の猪の進化個体と言われている。
上質な筋肉を持つほど強さ旨さともに上がる──。
──頬に感じる違和感。
ザラザラとした暖かい舌が私の頬を舐めているようだ。
「おい! 今日もマリか!」
「ふん! オリも小汚いオスの狼に舐められたいワケがないでしょう?」
「おいおい。マラもマリも落ち着いて。起きたから、オリ」
おお。マルは理性を保っていたらしい。
まぁ、その舌から垂れてるよだれがなければね。
そして、私が起きたことを確認するとマラとマリは人化する。
ホントに犬みたいだ。
そして私のことをオリと呼んでくれていることに驚きを隠せない。
もうちょっと渋るかと思っていた。
「今日の朝ご飯は楽しみ!!」
マリが手を合わせて心の底から楽しみだと言うことを体現している。
ずっと肉を焼いて食べていたのだが、そろそろ手料理を振る舞おうということだ。
私のスキル『ユニーク 料理屋』を使えば調理は簡単である。
バフというのだろうか。スキルの補助効果により料理に行動の最適化。
料理に関する著作物を完全網羅。
網羅というよりは検索開示といった感じだ。
例えば──。
トントン。
ドアをノックする音が部屋に響く。
「はい」
私はドアに向かう。3人は人化して渡しについてきた。
「おはよう。オリヴィアさん」
「おじさん!」
「肉出来たぞ。ここに置いておいていいか?」
「はい!」
スキルの準備をする。
空間収納だけは特殊で、多少の準備がいるのだ。
そして異次元につながる道を作って肉を放り込む。
「新鮮で良い肉取れたんだわ! 個体の筋肉量も高いし、さぞ強かったろ!?」
んぇ? そんな強い感じはなかったよ?
「どこで見つけた個体なんて言う野暮なことは聞きやしねぇよ! ほら、ギルド行きな!」
口調が砕けた感じがする……。
教えても全然いいんだけど。そもそも倒したのはマラマリマルである。
彼らが強いという事だろう。
それにしてもいい肉なのかぁ。それは楽しみだなぁ!
最近は乾パンや、野草スープなどの質素なものが多かった。
だからより楽しみなのだ。
「はい。その前にまだ朝ご飯を食べれてないので……」
「おぉ、そうか! そう伝えておくわ!」
ニカッという擬態語が似合いそうな表情で返事をしてきた。
私がうなずき返すと部屋を出ていった。
「じゃあ、早速作りますか!」
腕まくりしてさっきしまったばかりの肉を取り出す。
今回の料理は『オーク肉の三色丼』にしようと決める。
まずは『ユニーク 料理人』のスキルで検索をかけて入手した醤油を取り出す。
マジで高かった。貴族の料理に多少使われる醤油であるが、流石に高い。
銀貨800枚って。
舐めてみるととてもしょっぱい。
驚きである。塩以外にしょっぱいものが希少なこの世界により多くの調理法を届けてくれる醤油を最初に発見した人を尊敬する。
あとは、任務の途中で訪れた街で売っていた砂糖。
そして酒とみりん。
主な調味料の準備が整ったら、肉の下処理を済ませる。
今回は挽き肉にする必要があるのだが、そこは大丈夫である。
一定量を挽き肉にするようギルドに追加で頼んでおいたのだ。
フライパンの下に『ユニーク 料理屋』で火を起こし、挽き肉を炒める。
そしたら、料理酒とみりん、砂糖、醤油を混ぜた最強の液体を入れて汁気が消えるまで火にかける。
できるまでに野鳥の卵をフライパンに6つ落とす。
そして、砂糖と醤油で軽く下味をつけ、スクランブルエッグの容量で作る。
が、さらに加熱を続けてポロポロになる。
最後は香草を茹でる。
それを米 (この世界で言う米は所謂麦米)にかける。ちゃんと配置に気を使う。
『オーク肉の三色丼』の完成だ。
鼻をかすめる甘じょっぱい匂い。
作っているときもそうだが、完成品が目の前にあるとより食欲がそそられる。
「できた?」
マラがテーブルにお皿を置く音で気がついたようだ。
残りのお皿を持ってテーブルに運んでくれる。
「うん。じゃ、たべようか!」
というと、二人が慌てた様子で寝室から出てきた。
「待ってた!!」
「それじゃ……」
「「「いただきまーす!」」」
スプーンを差し込んで口に運ぶ。
その瞬間に匂い通りの甘じょっぱいタレを染み込んだ肉と米。それに独特な香りの香草がアクセントになって美味しい。
あっという間に平らげ、おかわりへの対応をする。
一心不乱に食べる三人は誰が見ても気持ちの良い食べっぷりであろう。
いつのまにか食べ終わり、
「じゃあ、ギルドに行くんだね?」
とマラが声をかけてきた。
「うん。いこうか!」
さっと準備を整えギルドへ向かう。
ギルドにつくなり、
「あのっ。任務に行ってほしいんですけど、良いですか!?」
なんでぇ。
また長い一日になりそうだ。