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☆オークと商人☆

彼らは小刀と服を気に入ってくれた。

 親の皮を使った服を受け取ってくれるか心配だったが、感謝してくれた。

 服をさすっている。触り心地は見た目よりも大事だよね!!

 戦闘のじゃまにならない軽さ。

 なのに普通の罠位の攻撃は完全に防いでくれる。

 

「あとは、換金したからな。素材は次の魔物武具製作の時使う」


良かった。意図を察してくれたらしい。

 子供の前で親の肉を食うなんて事ができるわけがない。

 少なくともそんなことをするほど性格悪くないし。

 私は新しい服をちゃんと着る。


「いくらですか?」


私は財布を取り出して聞いた。

 冒険者の給料はとても高い。低ランクで新人でさえ平均賃金よりも高いのだ。

 高ランク帯になれば毎月別荘を買えるほどの給料になる。

 命をかける仕事なためである。

 給料が高い反面シビアな職務であり、原則として低ランク保持者が3日連続で冒険者の仕事をしなければ降格。

 そのあとは1日毎に一つずつ降格し続け、最後に除名される。

 再試験の難易度は上昇し、不利になってしまうのだ。

 もちろん大怪我を負った場合や、高難易度の迷宮をクリアした際には特別休暇を得られる。

 仕事の難易度により変動する給料はその日のうちにもらう事ができる。

 そのお金の殆どが武器代や遠出での移動代や宿代になったりする。

 そもそも自由に使えるような暇などもらえないが。

 

「あぁ、要らんよ。月給ギルドから貰っとるかんな」

「いや、でも……」

「受け取ったときのみんなの顔がやりがいなんよ。だから、いらん」


それは優しく、だがブレない芯のある言葉だ。

 それは心の底から仕事を愛しているから出る言葉に違いない。

 そう感じさせられた。




今日もギルドに向かう。

 今日の掲示板に貼られている任務を眺める。

『ゴブリン討伐!!30個の角でクリア報酬』

『クリアで1ランク上昇クエスト、下位風竜(ローウィンドドラゴン)!!詳細は裏面で』

豚人(オーク)討伐!!耳10セットで報酬。追加報酬もあり』

などなど書かれている。その中で選ぶのだ。マルが、


「良いですね……、豚肉とか……」


食べる前提なのは狼だった頃の影響だろうか。

 もちろん人間でも食べるのだが、オークは個体数も多く複数で襲ってくるため高いのだ。

 そのかわりめっちゃうまい。

 ジューシーで柔らかい肉質は角煮にしてもとてもうまい。

 さっと紙をちぎり、受付に持っていく。


「オリか! これうけるんだな。いってらっしゃーい!!」


手を振ってギルドを出る。

 私は南西の方向に向かう。我らがステージ人民王国の南西に位置しているアゴーン森林。

 ちなみに3人を仲間にしたのは街に近い林の中だ。

 この大陸は大きく分けて5つの大きな島が近くにあり、大陸から見て北西、南西、北東、南東、南である。

 国が11国ありステージ国とだけ隣接する国が一つ島を保有する。半島の半分以南と南の島を主体とするのだ。

 まぁ、そんなのはアゴーン森林とは関係ない。

 話を戻そう。アゴーン森林には食人植物(ヒトクイラフレシア)や、毒吐蝙蝠(ポイズンバット)呪肉鬼(カースゴブリン)など多数生息し、極悪地帯である。

 だから、オークはアゴーン森林の周辺に生息しているのだ。

 ここからだと歩いて2時間半くらいだろうか。




……ナメていた。

 3時間ほど歩いたのだが、まだ半分ほどだ。

 遠くない? いや、遠い。


「……乗ります?」

「ちょっと、それは傲慢すぎない?」


マリが私に聞いてきたのだが、マラがそれを止める。

 私は疲労困憊だ。3人は疲れないのか顔色一つ変えてない。

 

「いいの……?」


私がそう聞くと顔を輝かせて一瞬で狼の姿に戻っている。

 胴を地面につけ、乗りやすいような姿勢を取ってくれている。

 その上にまたがり、疾走する。

 早い。流れる景色が速い!!

 その流れる景色を眺めているといつの間にか森の周辺エリアに到着していた。

 

「ここらへんにいるはずなんだよね……」


スピードを落としてオークを探す。

 そして森の周辺を回るように探すと群を見つけた。

 そして聞こえる悲鳴。


「マリ、行くよ!!」

「はい!」


体に当たる風。マリにしがみつき、風圧に耐える。

 そして身体に浮遊感が襲う。

 隣で並走していたマラとマルは既にオーク達を倒している。

 そして人化し渡した武器を手に握っている。

 そしてマリはしなやかに着地して私が降りやすくしてくれる。

 私はマリにお礼を言って腰の刀を取り出す。

 私は空を舞ってオークに近づく。

 さっと首を狩り、数は足りそうだと考える。

 

「ごめんね。勝手で」


回転斬りを叩き込んで太い棍棒持ちのオークを3匹まとめて狩る。

 そして集まってきたオークをジャンプでその場から離れる。

 幼少期に練習した瞬発力が役立った。

 そして集まったところにスキルで火を付けようとしたが、焼き豚になられたら倒さなければならない量が増える。

 オークが気づきこっち側へ来る。

 その背後からマラが背中を裂く。


「ありがと!」


私がマラにそう言うと嬉しそうな顔をしている。

 私がナイフを創生して投げる。

 それはオークの体内に潜り込んで体内で消える。

 それは心臓をくり抜いたのか傷口から大量の血が溢れてきた。

 血抜きする必要がないのは素晴らしい。

 創生したナイフをお腹を狙って投げていく。

 地面は赤く染まっていく。職業柄血には慣れているといっても気分は悪い。

 最後の一体をいつの間にか倒していた。

 いつの間にかっていうか気がついたら最後の一匹だった。

 襲われていたのは商人らしく荷物は破損していた。


「……あぁもう!! 最悪だッ!!」

「大丈夫でしょうか?」

「小ぎたない雑用スキル持ちが話しかけるなよっ!!!」


慣れた文句だ。スキル観測という魔法は大雑把な分類しかわからない。


「この誠意の欠片もないおっさんどう殺めます?」


マルがそういうと、


「全身の骨を抜いて──」

「なら足からだね。その後腕かな?」

「歯からじゃない?」


そんな物騒な会話をマラとマルが永遠と続けていく。


「良いよこいつは放っておこう。だけど『商人認定証剥奪』で」


その言葉は魔法通信でギルド本部へ届く。

 そして正当性が是認されれば正式に剥奪される。

 今回の場合は『緊急時要請責任放棄』つまり、襲われた場合に要請する責務があるもの。

 それに『冒険者能力観測禁止法』これは冒険者の能力(スキル)を観測することを禁ずる法律。

 『冒険者侮辱禁止法』これは冒険者の正当な行動に対して侮辱や気分を害する発言をしたときに効果を成す。

 この全ての該当が認められ次第剥奪という被害者からの罰則が科せられるのだ。

 

「はぁ!? 調子乗りやがって……!!」

「では、お気をつけて」


もう助ける義理などない。私は3人に声をかけ、来た道を返す。

 マリにまたがって駆けていく。


「よろしいのですか?」 


暫くたった頃マラがそう聞いてきた。

 よろしい、というのはさっきの処置の話だろう。


「うん。まぁ認められないと思うけどね」

「どうして……」

「んー? そんなに保証されるのは高位冒険書だけだよ。正確には紅位(レッド)くらいからかな?」


低位冒険者は価値が低い。どうせ間引かれる人材が多く、そこまで福利厚生をする必要もないからである。


「しかしそういう保証がついているのではないのですか?」


今度はマリがそう聞いてきた。


「あるよ。でも、国として世界として保護する必要は無いしって言う話だね」


それを聞いた3人はもう聞いてこなかった。

 不愉快なのはわかるし、対等な扱いをすべきだという意見には心の底から同意したいが、そんなことになってしまうと級位(クラス)を上げる必要がなくなってしまうのだから。


「ギルド直行でもよろしいですか?」

「うん。そうしてくれない?」

「お任せください」

「……敬語じゃなくて良いよ?」

「いえ、尊敬の意を示すには──」

「んー、じゃあ命令してもいい?」

「「「はい。御心のままに」」」


3人の声がハモる。


「敬語禁止で!! あと、私も命令はしない。するとしたらお願いくらい」

「う……。敬語はやめましょう。なんとお呼びすれば……?」

「ん? オリで良いよ!!」

「はい。わかりまし──わ、わかった」


言い換えてくれたマリに微笑む。


「2人もだよ?」

「……はい」

「はい」


前々から思っていたのだ。仰々しすぎる、と。

 あくまでも12歳。敬語を使われるほどのことなど無いのだ。


「これからは主と配下じゃなくて親友! それで良い?」

「わかりました。実際は配下であります。ですが表面上は友、ということで」

「まぁ認めてくれたなら良いか……?」


そして走り始める。蹴って舞った土埃が後ろに脈々と続いている。

 風に煽られ拡散していく様はまるでこの大陸の情勢のようだ。

 ──なんでそんなことを思ったのかよくわからない。

 それはただの直感であり、根拠などなかっただろうに。

 なのに狂いゆく歯車はもうまるで直しようがなくなっていた。




ステージ国政権の中心で。


「国がますます貧しくなってゆくぞ」

「鉱山資源はとうの昔に掘り尽くしたのですぞ!? 今更何を仰る!」


最初に喋った経済大臣は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 輸出で潤っていたステージ国の経済状況はいわゆるモノカルチャー経済であった。

 枯渇することなど何度も進言されたが、無視していた国王の責任である。


「土地も水産資源も乏しくなっておる。軌道に乗ったのは農作物。だがもう危機的状況だ」

「国際的な立ち位置も弱くなるなど言語道断ですぞ!」

「我が国に接するヴェラ国は戦争を企てているとか……」

「なに!?」


さりに雰囲気がピリつく。

 ステージ国の北西に隣接する国家であるヴェラ社会主義国。貴族制度を廃止し、身分格差をなくした。

 唯一ある身分は聖職者のみ。

 その神の名はシヴァ。

 実在すると言われていて、唯一神としてシヴァ教を国教と定めている。

 そのため王国ではなく神の名で各国民に配られる社会主義国なのだ。

 事実上の最高司令部は預言者である。

 神の言葉を預かるため、鶴の一声で国の方向を操れるのだ。

 

「またイルヤのせいか」


ヴェラから言葉を預かる際に多少の脚本をしたのか。


「理解した。その情報が正しいと確認次第緊急事態宣言を発令して国中の兵力を掻き集めろ」

「「「は!!」」」


この場はそれで閉幕したのだ。




街についた。

 早速倒したオークの身体を異次元収納から出す。

 『ユニーク 掃除屋』の効果である。


「すごい……。損失が小さくて量もある。数えますね」 

「お願いします!!」


受け付けの人に渡し、ギルドの中にある座席で休憩する。

 すると、


「あれ、オリヴィアちゃん?」 

「あ、トレートルさん」


艷やかな銀髪をショートヘアーにしている。翡翠の瞳は切れ長で童顔なため、18歳くらいに視える。実際は26歳くらいだろうか。


「ヴェラの動きが怪しいね」

「ヴェラ……、あぁ、ヴェラ国ですか」

「そうそう。まるで戦争の準備をしているかのようだ」

「そうなんですか、新聞に乗ってます?」


少し興味が出てきた。戦争の相手国はどこのなのか。


「それがね、この国らしいよ」


きれいな唇を私の耳に近づけ、そう囁いた。


「この国、ですか?」


そんな対立もしていない。戦争をする理由など無いだろう。


「それが、直接的な目的は……わからないんだよね」


途中で少し不自然に言い換えていた。

 が、理由など一国民が知っているはずもなく知らないのは全くおかしい話ではない。


「農作物が有名な国ですよね」

「あぁ、社会主義国を名乗っているからな」


社会主義、が何たるかは知らないが農作物で潤っている国というのは間違いなさそうだ。


「オリヴィアさんー。終わりましたよー!」

「あ、もういかなきゃ。ありがとうございました」

「おう。また今度」


急いで受け付けの下まで行く。


「今回倒したことが確認された個体数は32体でした。解体屋の方へ回しましたが、オークでなにか欲しいものありますか?」 

「肉だけくれればそれ以外は売却したいです」

「わかりました。そのように伝えておきます」


そしてクリア報酬のお金をもらう。

 700枚の銀貨 (1000枚の銅貨で1枚の銀貨。1000枚の銀貨で1枚の金貨。1000枚の金貨で1枚の魔貨)。

 更に追加報酬で540枚の銀貨と1枚の金貨。

 一匹あたり70銀貨らしい。 


「明日、届かせますので」

「良いんですか!? お願いします!」


ギルドを出ると外に3人が待っていた。

 

「どうだった?」


マラがそう聞いてきた。


「特に何も。お小遣いがたんまりもらえたよ!」


マルは、


「肉は?」


と人間の姿で口の端からよだれを垂らしそうになっている。


「肉は明日届くって!」


正直めっちゃ楽しみである。

 そして夜空に輝く月の光に照らされて帰るのだ。

先週投稿したつもりになってました。ホントにすみません!

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