朝の景色と夢に
犬の甘える声とゲージの中を歩き回る足音に、休日の朝寝の衝動と折り合いをつけて、結局、早朝から起きだして散歩へと向かいます。
目覚めない寝ぐせ頭と、着込んだだけのセンスのない服装と、いっこうに開かない目の3点セットで家を出ます。
東の海の上に黒く垂れこめた雲があり、地面は濡れています。昨日、夜半に雨を降らせた雲は東に抜けたようです。その雲と海の間の帯状の隙間が茜色に染まって、朝日が昇る時間だと知らせてくれます。
そう言った印象を、寝ぼけた頭の中に記憶していきます。歩きながら、ただ、引っかかった風景をそのままこころに書き留めていきます。やがて、書き留めた風景の中に、その風景と紐づけられた感情を、心の奥から引き上げて、浮かべてみます。浮かんできた感情の意味を探っていきます。そうしながら、犬と追いかけっこをして、息を切らします。
歩いていると、頭の中の余分なものが抜け落ちて、そこにいろんな事柄が流れ込んできます。
たぶん、こんな時間に詩を書いているのだなあと、改めて想います。
そう言えば、昨日、久しぶりにきみの夢をみました。君が待っていて、それを知っている僕は、きみが待つ場所へと向かいながら、同時に、その途上であれこれと踏み迷うのです。
何だ、いま見ている風景は、結局、そこに結び付いていくんだ。そう思いました。
散歩の途上にみる景色は、覚めない夢の途中にあるものなのかもしれません。
昨日の雲は東へと 流れて、空は晴れたるも
風が遠くの雨を呼び、時に、冷たく頬を打つ
雲と海との挟間には 茜の色の差し始め
耳に微かな波音の 寄せ来て、朝を知らしめる
風が唸れば笹の啼き けれども、揺れる草の下
枯れ葉に埋もれ虫たちは 遠い春をば夢にみる
夢に繋がる道ゆえに 眠らず歩む人たちも
惑いたたずむ人たちも みな、途上にて踏み迷う
道を辿れば、冬枯れの 枝には柿の落ちかねて
我も同じと、この想い 地に落ちぬまま萎ませる
誰しも夢を捨てそこね 誰かは夢をしぼませて
地に落ちたれば、新たなる 夢に繋がることさえも
知らずに、いまを辿りゆく