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Ⅲ
「こりゃたまげた……嬢ちゃん、なかなかの目利きだね」
袋詰めしてくれつつも褒めてくれたのが嬉しかったのか、シリアはにっこりと微笑み返した
「実はわたし、メイフェルベリー領から来たんです。キルカの実も大好物なので」
「おっと、地元の人だったか。そりゃ俺より目利きが優れてるわけだ。はい。銅貨2枚だよ」
店主がにこやかに小袋を手渡してくれるのを受け取ると、彼女は外套の下から銭袋を取り出して代金を支払った
「はい。なので、ついうれしくなっちゃいました」
我慢がしきれなくなったのか早速袋から赤錆色の実をひとつつまみ上げると殻を剥いて口へと運ぶ
途端口の中に広がる甘みとほんのわずかな渋みにシリアは顔を綻ばせた
「ん〜!!! おいしいです!!!」
「そいつは何よりだ」
そうしてまたひとつ、またひとつと実をぱくりとする少女を店主は微笑ましげに眺める
「メイフェルベリーのものは結構届くんですか?」
「あっちの方だと商隊が5日おきに行き来してるから、到着次第卸して貰ってるんだよ」
「へぇ……結構頻繁なんですね」