エピローグ
間違い、トラウマ、絶望。時にそれらは僕の人生に現れては悲惨な結末にする。しかし、僕はそれも含め人生だといまは受け入れることができる。
開き直りではないが、間違っていれば少しずつ直せばいい。トラウマがあれば、無理に向き合う必要はなく、数歩下がって見つめ続けていればなにかが見えてくる。絶望した人生でも生きている限り、執拗に纏わりつく時間はいくらでもある。何度だって考えることができるイマがある。
何度も挫けたり、彷徨って道から逸れたとしても「幸せ」は人の数だけあって、正解は一つではない。瞬間の積み重ねが経験となり僕をつくるけれど、これまで嫌っていた苦しみや悲しみを受け入れていこうと思えた。
「綾、愛している。嫉妬していたりするのかな……。ズルいかもしれないけど、生きているときに言えなくてごめんな。いまでも、ちゃんと愛している」
毎年の夏、綾の命日に墓前で僕は愛を告げている。嘘の涙なのかどうかなんてどうでもいい。スッと流れる涙は熱い。
人は失敗をする生き物だ、完璧な人なんていない。後悔は心の狭間を住みかとしている。いままで知らないフリをしていたけれど、そろそろ帰ってみることにした。
綾の墓前で手を合わせる僕の少し離れたところで、川島先生が僕らを見守っていた。