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魔法少年ボタニカル★フレンズ  作者: 九JACK
アマリリスの魔女編
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生きるということ

 杉の魔法使いと共に過ごすのは、楽しかった。

 ロストが出るたび、杉の魔法使いに置いて行かれるのはつらかったが、魔法花が咲いている自分たちを思ってのことだと思うと、マリもナギも何も言えなかった。

 杉の魔法使いは特殊らしく、いくら魔法を使っても体が植物化することはない。そのため、負担を一人で背負っていた。

 杉の魔法使いが強いことを知っているから、マリもナギもロストに関しては安心して任せられたし、屋久杉のところにいれば、人から後ろ指を指されることもない。まるで桃源郷だ。

 こんなときが、永遠に続けばいいと思う。それと同時に本当に永遠に続いてしまうかもしれないという不安が生まれた。

 永遠に、この安穏の中に閉じ籠っていていいの、という疑問が湧く。それは恐怖に近い感情だった。

 安穏に閉じ籠っていれば、永遠の楽園で暮らせる。けれど、マリは思う。

「力があるのに、安穏に閉じ籠って、自分だけ平和でいいの?」

 このまま閉じ籠っていれば、杉の魔法使いがマリもナギも守ってくれるだろう。マリやナギは魔法を使わなければ植物化が進まず、生き続けられる。マリはナギに生きていてほしいし、それでいいと思う。

 けれど、いいのか? 本当に?

 自分たちさえよければいい、という考え方なら、魔法使いを白い目で見たり、お前ができないからと責める他の人間と同じではないだろうか。それに、杉の魔法使い一人に人任せにするのも良くない。

「ナギ」

 マリは隣に座って、自分から生える枝を編んでいたナギに声をかけた。声が震える。どうしようもなく怖い、怖い決断だった。

「杉の人のところに行こう」

「マリ……」

 ナギはマリの腕に這う赤い花を見つめていた。

 植物化がこれ以上侵攻しない方がいいのは、マリも同じである。マリが物言わぬ花になってしまったら、それは美しくて残酷だ。だからナギは嫌だった。

 けれど、いつかは、遅かれ早かれ二人のどちらかが立ち上がって、一緒に歩き出さなければならないことはわかっていた。ナギはそれから逃げていた自覚がある。

 自分だけが苦しむならよかった。でも、マリを巻き込んでしまって、マリと出会ったことに後悔はないのに、「出会ってしまった」と感じている。悲しくて仕方ない。

 だから……ナギはマリに微笑んだ。

「行こう」

 自分が悲しくてつらいことなんて、自分一人で背負えばいいのだ。自分が笑顔でいれば、マリが躊躇うことは少なくなるだろう。

 お互いがお互いの依存を知っていた。


 杉の魔法使いを探すと、今まさに飛び立とうとしているところだった。

「杉の人!」

「マリ!? ナギまで、どうしたの?」

 マリとナギの姿に驚いたようだった。マリもナギも、留守番をするのが常だったからだ。

 マリは少し息を切らしながらも、杉の魔法使いにしがみついた。そうでもしないと、魔法使いはマリたちを置いて行ってしまうだろうから。

「私たちも連れてって! 私たちだけ、ここで平和に暮らすなんて嫌!」

「マリ……」

「今まで守ってくれてありがとう。でも、もう大丈夫。ぼくたちも戦う。戦える」

「ナギ……」

 杉の魔法使いは二人の言葉に泣きそうな表情になった。出会ってからどれくらい経ったか、もう時間の概念が曖昧だが、杉の魔法使いが老いることはなかった。だから、マリやナギの何倍も生きて、マリやナギのような子どもを何人も看取ってきているのだろう。

 その悲しみを完全に理解することはできない。けれど、想像することはできる。杉の魔法使いはいいよ、とは言わなかった。ただ、駄目だよ、とも言えなかった。

「魔法という病気はね、魔法を使わなくても、侵攻するんだ。少しずつ、少しずつ、発症者を植物に変えていく。……だから僕らはいつか、植物になる。僕は侵攻が遅いだけ」

「侵攻を遅くする方法はないの?」

「僕は……」

 杉の魔法使いの声が震える。顔色が良くなかった。

 もしかしたら、思い出したくないことなのかもしれない。言いたくないことなのかもしれない。それでも、「方法がある」かもしれないのなら、それはマリとナギにとって、一縷の希望だ。

 杉の魔法使いは、呼吸が浅くなるのを落ち着けて、おもむろに言う。

「あるよ」

 それはとてもいい方法ではないのだろう。表情を見ていればわかった。マリとナギはそれ以上聞けなくなってしまう。

 杉の魔法使いが泣くのを、見たくなかったから。

 ふよ、と二人の体が浮き上がり、杉の魔法使いと共に空を飛んでいく。

「これからも、二人を守るから。だから、一緒に生きようね」

 二人は頷く。

 戦うごとに、植物に侵食されていき、死に近づくけれど、そう、自分たちは鳥籠の鳥ではないし、温室の花でもない。

 精一杯、生きるために戦うのだ。

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