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魔法少年ボタニカル★フレンズ  作者: 九JACK
アマリリスの魔女編
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魔法悪化因子

 それにしても不思議だ、と杉原は首を傾げた。

 舞桜がこの言葉を使っていたときは全く意味がわからなかったというのに、マリの言葉は理解できる。アマリリスの魔法だからだろうか。

「大丈夫ですかね?」

 そこへひょこっと人を掻き分けてやってきたのは、陽葵だった。菅が「生陽葵ちゃんだ!!」と興奮しているが、放っておこう。

「陽葵ちゃん」

「杉原くんではないですかね! この子体調不良ですかね?」

「うん」

「だ、大丈夫……」

 大丈夫とは言うが、紫は顔色が悪い。陽葵はそんな紫ににっこり笑った。

「お任せくださいね! 元気になーれ!」

 陽葵の掌に向日葵の花紋が浮かぶ。柔らかい光が、紫の胸の辺りを包むと、紫の体から力が抜けていき、杉原の方に倒れてきた。

 杉原はおっと、と言いつつも、紫を支える。

「魔法も行き過ぎれば毒になり得ますのね。アマリリスの魔女はかろうじてロストになっていないだけで、敏感で繊細な人には効きすぎる薬みたいになりますのね」

「ええと、陽葵ちゃん、それは……」

 色々陽葵に聞きたいこともあるが、まずは紫をどうにかしなければならない。

 すると陽葵はこっち、と杉原の裾をちょんちょんと引く。陽葵の案内に従っていくと、休憩所が設けられていた。

 そこには柊兎がいた。杉原はびっくりする。特別課外授業は高等部の一年だけのはずだ。

 すると、柊兎は杉原の表情だけで察したのか説明する。

「この植物園は緋月家の所有物です。マリさんの影響で管理は必要ありませんが、特別課外授業でもしものことがあった場合に備えて、僕がいます」

 もしものこととは何だろう、と思ったが、色々あるだろう。マリを傷つけようとする輩や緋月を良く思わない輩。マリはロスト相手にはいくらでも力を発揮できるが、ただの人間の前には無力だ。

 柊兎の魔法、柊魔法はそういう意味ではマリの魔法より使い勝手が良い。攻撃してきた相手がロストだろうが人間だろうが、確実に反撃をできる。後だしじゃんけんにはなるが。

「公休扱いなので、授業には何も支障はありませんよ」

「ひょえー」

 杉原が驚いているうちに、柊兎は紫を受け取って寝かせた。

「それに、去年の課外授業でも、マリさんに充てられて体調不良を起こした生徒はいましたから、救護係は必要です」

 ああ、と杉原は魔法という病気について思い出す。魔法を発症する素質のある者が魔法発症者の近くで魔法を目の当たりにすると、魔法を発症しやすくなる。魔法を既に発症している者同士、特に樹木魔法使いの場合は魔法が悪化しやすい。これは桜の魔法少女と共に過ごす上で注意を受けていたことだ。実際、樹木魔法使いの症状が悪化するところも、見たことがある。

 銀杏の魔法少年白銀杏也があんなに早く魔法花に侵食されたことについて、杉原は責任を感じていた。誰も杉原のせいだ、なんて責めたことはないけれど、杉魔法という強力な魔法を発症している杉原が、杏也の近くにいたから、杏也はあんなに早く、魔法花に押し潰されなくてはならなかった。魔法の悪化とはそういうことだ。

「はあ。杉原さんは平気なんですね」

「え、うん」

「いいな。やっぱり体が頑丈だと違うのかな。ちっちゃい頃は、僕もよく倒れてたんですよ」

 ああ、そうか。柊は樹木魔法だ。柊兎は今でこそ普通にマリと対話できるらしいが、そうなるまで、苦労は多かったことだろう。

「陽葵さんもありがとうございます」

「いえいえなのね!」

 どうやら、陽葵には事前に救護係として頼み事をしていたらしい。陽葵の魔法は似せ物を生み出さない限りはバフ魔法である。少し応用すれば、回復に近い効果も出せる。

「紫ちゃんにしたのは自然治癒力向上のバフなのですね」

「あ、それ、漫画でも聞くやつだ。自然治癒力を向上させると怪我も一瞬で治るっていう」

「さすがにそこまで便利(チート)ではないですね。あたしの魔法にも限界がありますからね。自然治癒力を向上させたために、負荷のかかっていた紫ちゃんの体が選んだのが『睡眠』という回復方法なのですね」

 なるほど、となる。魔法も使いようだ。というか、陽葵は魔法の応用能力が高い。まあ、性質上易々と明かすわけにもいかないのだろうが、思うより色々考えながら使っているようだ。

 舞桜とはどういう関係を築いていたのだろう? 立場は舞桜が上であることは明らかだが、上下関係というにはフランクな二人だ。後で聞いてみようか。

 考えながら会場に戻ると、ふと見覚えのある顔が目についた。青い髪をしている少女。あまりいい記憶がないので、思い出そうとも思わなかったが、かつて杉原の記憶を奪った勿忘草の魔法少女にして、紅葉寺を慕う少女、夏森玲奈だ。

 何故目に留まったかというと、玲奈がものすごい表情をしていたのである。憎らしげで悔しげな嫌悪に満ちた表情。

 注意しておこう、と杉原は玲奈のいる方角からの空気に注意を払った。これは口では説明しにくいのだが、杉原は空気や風の揺らぎから、感情を読み取ることができる。風は杉魔法少年の杉原にとって、友達のようなものだ。形容できる形はないけれど、気を向ければ、杉原に警鐘を鳴らしてくれるし、吉報を知らせてくれる。

 おそらくだが、察しよく、篩にかけられたことに気づいたのだろう。勿忘草は草花魔法。樹木魔法と違い、植物性は高くなく、ロスト討伐に関わりのない魔法だ。マリの言葉を聞き取れなかったにちがいない。

 紅葉寺の側にいれば、ロスト討伐に役に立つ能力を、と求められるだろうに、玲奈は勿忘草。使い方によっては、ロスト討伐に役立つ魔法使いを探すことができるだろうが、それだけだ。それでも役に立つだけ紅葉寺にとってはまだまし。ただきっと、玲奈は情報源以上の価値を自分に見出だしてほしいのだろう。紅葉寺を様付けで呼ぶくらいの心酔者だ。

 他にも同じような空気を出している者がいないか、探すことにした。トラブルを未然に防げれば、緋月に恩を売れるし……誰が敵対者かわかるのは大きい。

 杉原が風に聞こうとしたそのとき。

「おやめなさい、杉の子よ」

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