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魔法少年ボタニカル★フレンズ  作者: 九JACK
アマリリスの魔女編
29/72

アマリリスの魔女の欠点

 アマリリスの魔女。姫川のように知らない者もいるが、ロスト討伐に携わる者ならある程度は知っている呼称だ。オータムコンプレックスを抱える紅葉寺も例外ではないだろう。

 それこそ、アマリリスの魔女がどこの何者かわかれば、紅葉寺家に嫁がせようとするかもしれない。できないとすれば、紅葉寺に今男児がいないという手痛い事実だろうか。

 それはさておき、ロスト討伐ができる魔法発症者の研究をしているのなら、アマリリスの魔女は恰好の的だろう。紅葉寺じゃなくても好奇心を向ける者は多くいる。アマリリスの魔女が使う言語を理解したい言語学者やら、ロストを対話で解決できるのなら、アマリリスの魔女をクローニングすればいいのではとか考える科学者やら。

 とにかく、紅葉寺が食いつくのは間違いないだろう。

「で、マリさんのことを明かすと、紅葉寺はどう動くと予想しているんだ?」

「紅葉寺はオレたちがアマリリスの魔女の子孫だと知ったら、とりあえずすり寄ってくるだろ。そのとき真っ先に矛先が向くのは明葉の許嫁であるシュウだと考えている。他者をつついている間は守りは薄くなる。シュウから提案すれば、あっさり同居もできたりしてな」

「それは考えが甘いのでは?」

 姫川がずばりと言った。

「仮にではありますが、いないはずの子どもを世に出さないように育てているのなら、家に上げるというのは敷居が高いはずです。そうなると、一緒に住むのも難しいのでは?」

「ま、その通りだわな」

 緋月はさらりと認める。それを柊兎が引き継いだ。

「マリさんと資金援助の手札を使って家に上がらせてもらいます」

 緋月家ならでは、というか、緋月家にしかできないやり方が上がった。俗っぽい言い方をすると、職権乱用というやつだ。

 資金繰りの部分では、どうしても紅葉寺は緋月に頭が上がらない。ここで絶対的な上下関係ができているわけである。そこにアマリリスの魔女の情報を乗せれば、同居まではいかなくとも、家に入るくらいは許されるだろう。

「紅葉寺に潜入するのはいいとして……ずっと気になってたんだが、件の女の子が魔法使いだってわかった理由はなんだ?」

「花紋が見えたんです」

 花紋。それは草花魔法使いにのみ現れる紋様である。司る花の形をしている。

 ただ、杉原が首を傾げた。

「え? 花紋って魔法使ってるときしか出ないんじゃないの?」

「いんや」

 舞桜が即座に否定する。姫川もそれに同意するように頷いた。

 姫川は掌を開いて見せる。そこには何もない。が、次第に菖蒲のような紋様が浮かんでくる。

「花紋は普通に出したり消したりできんだよ。花紋も魔法の一部っつうことだな。ただ、花紋が出てた方が魔法が使いやすいのは確かかね」

「私のように正体を隠したい魔法使いが隠していることはよくあることだと思う。ただ、花紋が見えてもあまり意味がないからみんな出していないのだと思うわ」

「あと単に魔法使い慣れてないだけ、とかな」

 草花魔法使いはここには二人だけだ。そうなのか、と思うより外ない。

 けれど、やはりまだ引っ掛かる部分はある。

「舞桜さんは? 花紋が出てたなら、桜の魔法使いじゃないことはすぐわかったはずでしょう?」

 舞桜は苦い顔をする。杉原からわかりやすく目を逸らした。

 舞桜は美桜が桜の魔法少女として覚醒するまで桜の魔法使いだと思われている。つまり、少なくとも二年は桜の魔法使いだと思われていたのだ。

 姫川は代わりに口を開いた。

「花紋については慣れていないと『常に花紋が出ている魔法使い』と『常に花紋が隠れている魔法使い』に分かれるの。私は後者だったわ。おそらく、夜長先輩も後者なのだと思う。紅葉寺の女の子は前者だったのでしょうね」

 魔法という病気にはまだまだ未知の部分、一般的にはなっていない部分が多いのだとわかった。

 花紋は草花魔法使いと樹木魔法使いを見分ける目印である。何故そうなのかはわからないが、おそらく、花だけで言ったら形が似ているものはごまんとあるからだろう。菖蒲と杜若でさえ見分けがつかないのだ。桜草は桜に花の形が似ていることからその名がついた。木に咲く花か、地面から生えて咲くかの見分けくらいはつくようになっているのだろう。自然の配慮かもしれない。

「話戻すぞー。シュウが見たのは彼岸花の花紋らしい」

 緋月の言葉に杉原たち三人は顔を見合わせた。

「彼岸花の魔法使い? 聞いたことない」

「俺も見たことないな」

「私もありませんね」

 そんな三人に柊兎が告げる。

「彼岸花魔法の発症例は少ないようです。マリさんも二回しか見たことがないそうです」

 大還暦を二回過ごしている人物が二回しか遭遇していないというのは相当なレアケースではないだろうか。

「症例が少ないため、どんな魔法なのか不明瞭で……マリさん曰く、植物性が高い魔法なんだそうです」

「あの、その植物性って何?」

 緋月もちらりと言っていたが、マリは「植物性」と「人間性」という表現を用いる。どうも食用油や性格を表すものではないように聞こえた。

 植物と人間で浮かぶのは自ずと樹木草花魔法使いたちになるのだが。

 柊兎は兄を見た。それで了解したらしい緋月が説明する。

「言葉で表すのはムズいんだけどな。まあ、魔法発症者ってのは、大まかに『植物的な部分』と『人間の部分』が混ぜ合わさってるみたいなんだよな。かなり大雑把に言うと、『人間』ってベースの体があって、そこに植物が寄生してる? みたいな?」

 人間の体に植物が寄生、というと、自然と脳裏に浮かぶのは桜の魔法少女、美桜の姿である。体表に現れていないだけで、魔法発症者は悉くあのような感じということなのだろうか。

「そうそ。その体内に寄生してる植物の部分のことを植物性と呼ぶんだと。んー、紅葉寺の研究みたいな表現になると、植物細胞? みたいなもんだ。で、植物細胞じゃない部分、人間の細胞の部分を人間性って呼ぶらしい。で、あとはお察しだと思うが、植物細胞が多いと、魔法は強くなる。ロストと対峙することが多い魔法使いや元の植物が樹木で、大きくなるのに養分をより多く必要するやつらは植物細胞が増えようと懸命だから、植物性が高い、みたいな感じらしいぜ」

 植物細胞といっても光合成をするわけではない、と添えられた。まあ、人間として生活しているので、光合成で生きていけるとはとても思えない。

「マリさんって、その植物性云々で話す相手決めてるの?」

「決めてるっつうか、植物性高くねえと言葉が通じねえからな。ロストも元は魔法使い(ボタニカル)、自然から生まれたものだ。それと話ができるっていうのはそういう言語形態の変化が必要だったんだろ、たぶん」

 たぶん、というのは、アマリリスの魔女の仔細を緋月家ですら完全には理解していないということらしい。緋月家は代々魔法使いを輩出しているが、緋月家の全員が全員魔法を発症したわけでもなく、魔法を発症したとして、植物性が高かったわけでもない、ということらしい。

 緋月はそもそも魔法は治らなくてもいい、自然のままに、という意識で過ごしているため、そこを深掘りして来なかったというのもある。

「マリさんの欠点とも言えるが、利点でもあるんだよな、これが」

「利点? 人と話せないのがか?」

 舞桜が疑問を向けると、緋月は悪戯っぽく人差し指を唇に当てて、にやりと笑った。

「内緒話してても紅葉寺には聞き取れない」

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