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そんな感じで段階を踏んでいき、大司教とも面会をこなした。
大司教とは和平の条件について詰めていった。
「ダグにございます」
大司教は謁見の間を訪れていた。
「おお、大司教殿。魔王軍との面会はどうじゃった?」
ジョージ13世は待ちかねていたぞ、といった感じで聞いた。
「はい、概ね、こちらの要望は通らせております」
「それは重畳」
ジョージ13世はうなずく。
「ところで、私はそろそろ引退したく考えておるのですが…」
大司教は言った。
天の御使いたちとその領導であるカイが失踪してしまった責任を取るつもりなのだ。
「またその話か、そちの責任ではないと申しておる」
ジョージ13世は眉を潜めて、手を振る。
「しかし、世の中に顔向けできませぬゆえ」
大司教は頑固だった。
しばらく押し問答してゆくと、
「どうしてもと言うなら、仕方ない」
ジョージ13世はついに折れた。
「申し訳ありませぬ」
大司教は頭を下げる。
「早い内に後継者を指名せよ」
「はい」
大司教はうなずいた。
「では、私はこれで」
「うむ、今までご苦労であった」
ジョージ13世は労いの言葉をかける。
大司教は謁見の間から去りかけたが、ふと王の方を振り返る。
「そうそう、魔王軍の大使がこう言っておりました」
「ん?」
「『愛しのヘレンちゃんによろしく』と」
「ファッ!?」
ジョージ13世は驚いた。
*
その後の交渉も上手くいった。
ジョージ13世の後押しがあったのだった。
和平は成り、今の所は戦がなくなっている。
オレはアスガルド王に挨拶をすることになった。
魔王としてアスガルドに赴く。
もちろん、愛人さんたちも全員ついてきている。
ヒルデ:
『カイ…じゃなかったリータ様。これ、アスガルドで買いたい物リストね』
ヒルデが紙切れをオレに渡す。
びっしりと品物名が書き込んである。
「うわ、随分とあるな…」
『だって、ムスペルヘイムじゃ手に入らない物が多いんだもの』
ヒルデはフンとそっぽを向く。
マギー&シェリル:
「カイ君…じゃなかったリータ様。私は護衛でいいの?」
マギーはオレの傍らにいる。
普段はシェリルと一緒に暗躍しているので、あまり会えないのがちょっと寂しい。
やっぱ護衛として抜擢しようかなぁ…。
「もちろん、お前以外には考えられないだろ」
オレは言った。
「久しぶりだね」
マギーはニコニコしている。
その顔を見てると、アスガルドでの日々を思い出す。
いつもオレの側にいてくれた。
「ああ、オレの側にいれくれ」
オレが言うと、
「……うん」
マギーは顔を赤らめた。
「あー、顔真っ赤」
シェリルがからかうように言った。
「うっさい」
マギーはそっぽを向いた。
「シェリル、お前も護衛として警戒してくれ」
オレは指示する。
「了解、カイ殿…じゃなかったリータ様」
シェリルは悪戯っぽく敬礼して、
「ねえねえ、マギー、リータ様と夜伽した?」
「……な、何を言ってんの!?」
あ、また収拾着かなくなるヤツだ。
マギーとシェリルは仲が良い。
クララ&パトラ
「私は近衛隊を率いればよいですか?」
「それは私が!」
クララとパトラが言い争っている。
またか……。
この2人はいつもケンカしてるなぁ。
「近衛隊はクララが。パトラはオレの秘書官」
オレが言うと、
「はい! カイ殿…じゃなかった、リータ様!」
クララはデカい声を張り上げる。
「声うるっさ、リータ様の名前を間違えるとかあり得ないわね」
パトラはブツクサ言っている。
「クララ、頼りにしてるぜ」
「……ハ、ハイ」
クララは頬を染めている。
「パトラ、いつも事務処理ありがとう」
「いえ、リータ様のお役に立てれば本望です」
パトラはふにゃふにゃになって、オレに抱きついてくる。
「あ、ずるい!」
「なによ!」
ギャーギャー。
この2人も大概仲が良いよな。
アクール:
「カイ様…じゃなかったリータ様!」
「お役目ご苦労さん」
オレはアクールに向かって言う。
アクールは有人ゴーレム隊を率いている。
こちらで開発した技術とあちらの技術を見せ合う事になっている。
「いえ、当然の事です!」
「相変わらず生真面目だな、アクールは」
「え、はあ…」
「だが、アクールはそれが良い」
「……」
オレが言うと、アクールは顔を真っ赤に染めた。
「お、アクール顔真っ赤」
マギーが様子を見に来て、言った。
「姉様! 余計なお世話!」
アクールは恥ずかしそうに走り去ろうとする。
「あ、こら、待ちなさい!」
「イヤ!」
この2人も仲が良い。
デュランデュラン:
「よ、研究中に悪いな」
オレが言うと、
「構わないよ」
デュランデュランは肩をすくめた。
「アスガルドでは工房を訪問できるし」
「だな、アラン司祭も楽しみにしてるだろうしな」
オレはうなずく。
「私はカイ殿…じゃなかった、リータ様とイチャつきたいのだが…」
デュランデュランはド直球。
アラン司祭に可能性はないようだった。
「おふぅ、ちょっと待って」
オレは後ずさったが、
「リータ様」
「どこへ行こうと?」
「逃げるの禁止」
「ダメ」
「絶対」
『呪うわよ?』
愛人さんたちが勢揃いで退路が断たれたのだった。
*
アスガルド。
「久しぶり、エリザベスさん」
オレは気さくに声を掛けたが、
「こら、お前カイじゃなくて、魔王の立場だろ!」
エリザベスは咎めるように言う。
相変わらず生真面目だな。
「まあ、宮殿では魔王の正体は公然の秘密みたいになってますからね」
バークレーが間延びした感じで言った。
変わらんなぁ、この2人。
アスガルド王との謁見をして、アラン司祭の工房を訪れたり、色々と旧交を温めた。
オレは引き続き、尽力することになるだろう。
そう、この世界に平和をもたらすために。
それがオレの使命だ。
学校を召喚しよう! 完