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魔王軍は学校へ進軍開始した。
大隊規模に更に有人ゴーレムが数体。
有人ゴーレムが魔力を増幅するので、1体でもかなりの戦力になるのに数体である。
これでは向こうには勝ち目はない。
「ふはは、相手を打ち破れ!」
魔王は正面から押す気である。
有人ゴーレムを先頭に、歩兵部隊が両脇と後方を固めている。
魔王自身は参戦する気はないようだった。
やはり、先の戦いで魔力を使い過ぎたのがあるのだろう。
それはオレも同じだと思うが。
「それぇ!」
魔王が軍配みたいな物を振ると、それを合図に全軍が進撃。
学校を占拠した。
占拠してしばらくすると、鎧姿の男たちが現れる。
恐らくエリック男爵の兵士だ。
兵士たちはさっと陣形を展開し、警戒態勢に入った。
その様子から、魔王軍がいることは分かっているようだった。
エリザベス、バークレーの姿も見えた。
あと、誰だっけ、みたことのあるオペラ歌手みたいな濃い顔の人。
ブォー
ブォー
わー
わー
魔王軍が角笛を吹き、兵士たちが声を上げた。
それを合図に、グラウンドに布陣していた魔王軍が前進する。
正門の当たりで陣形を取っていた兵士たちも迎え討とうと前進する。
たちまち交戦状態に入った。
まずは有人ゴーレムが魔法を撃ち込む。
エリック男爵の兵士たちはマジック・スクリーンやシールド魔法を張って防御態勢を取る。
が、増幅された魔法を防ぐのはかなり厳しいらしい。
かなりの兵士が転倒したりしている。
そこへ魔王軍の歩兵が突撃した。
「ひるむなー!」
エリザベスが叫んで剣を振る。
「プロテクション!」
バークレーが防御魔法を掛けていた。
某RPGではス○ルトという呪文だな。
エリック男爵の兵士たちは起き上がりながら、なんとか魔王軍の兵士を迎え討った。
剣戟の音が聞こえ始め、雄叫びが上がる。
戦いは乱戦の様相を呈してきた。
「チクショウ、ここから出れたら…」
オレは歯がみしたが、魔法を封じられていてはどうにもできない。
「……」
アクールも諦めているのか、体育座りをしている。
「カイ様、カイ様」
ふと小さな声がして、オレは振り向いた。
そこにはシェリルがいた。
日光を避けるようにして日陰の場所に佇んでいる。
「……!」
オレは声を出さないように口をつぐむ。
シェリル!
ナムール領から戻ってきてたのか。
よく見ると、シェリルの他にも鐶、美紀、ヒルデ、デュランデュランが校舎の影から顔を出していた。
おお!
これは逆転できるかもしれない。
魔王とその取り巻き連中は正門付近で行われている戦いに注目している。
オレはシェリルたちの邪魔をしなければそれでいい。
ヒルデ、美紀は非戦闘員だから期待はできないが、シェリル、鐶、デュランデュランは戦闘力は十分だろう。
「ハッ」
「そりゃ!」
鐶とシェリルが後方から魔王と近衛隊へ襲いかかる。
「それ!」
少し遅れて、デュランデュランも突撃する。
「うわ!?」
近衛隊は不意を突かれて、浮き足だった。
なまじ優位に立っていたため、魔王軍はまったく警戒をしていなかった。
奇襲が成功する条件が整っている。
「ハーッ!」
鐶が星形鉄球のついた紐を振り回して、近衛隊の隊員たちの方へ突っ込んだ。
「とりゃ!」
「ほい!」
シェリルとデュランデュランがその隙を突いて隊員たちを昏倒させてゆく。
彼女らの腕力だと、打撃だけで昏倒させられるのだろう。
ちなみにシェリルはフードを被って日光を遮っていた。
手には手袋を付けている。
その視界でよく動けるなと思ったが、なんか魔力か何かで感知してそうな気はする。
「なっ!?」
遅れて気付いた魔王が驚いて喚いている。
「お前ら!」
きーっと言わんばかりに叫んでいる。
「悪く思わないでください!」
「右に同じ!」
シェリルとデュランデュランは言った。
言いながら、近衛隊を倒してゆく。
「うわー!」
「こんな風に倒されるのイヤー!」
「もっと見せ場をー!」
なんかぶっちゃけて倒れていく。
「くっ…」
魔王は椅子から立ち上がり、杖を手に取った。
漆黒の樹木で出来た杖らしい。
その間に、美紀とヒルデがこっちに来た。
鍵は事前に見つけていたらしく、カゴの錠前を開けた。
「サンキュー、美紀、ヒルデ」
「無事で良かった」
『ぷ、カゴに入れられるとかかっこ悪い』
美紀とヒルデは対称的なセリフ。
うるせー、ヒルデ。
「後ですんごいエロいことしてやるんだから!」
『べー』
ヒルデはあかんべをしてる。
チクショー、可愛いぜ。
オレは思ったが、それよりアクールだ。
「アクールも出してやってくれ」
「ほいほい」
美紀が鍵を使ってアクールのカゴも開ける。
「ありがとう、ミキさん」
アクールはお礼を言っている。
「キーッ!」
向こうでは、パトラが喚いていた。
「あんたら、魔王様に歯向かうとか! 裏切るとか! いい加減にしなさいよ!!」
一応、鎧と曲刀で武装している。
「おらー!」
パトラは曲刀を振った。
シェリルが腰に差していた短剣2本を抜いて、曲刀を受け捌く。
デュランデュランは丸腰なので、距離を取った。
「デュランデュラン!」
そこへ魔王が立ちはだかる。
「私を裏切るとは何事だ!?」
魔王は杖を打ち込んでくる。
デュランデュランは体捌きで躱した。
「ハッ!」
鐶が星形鉄球を飛ばした。
くるくるくるッ
杖に紐が巻き付く。
「うぬっ」
魔王は呻いた。
鐶が紐を力一杯引く。
「ぐぐぐ…」
魔王も力一杯引っ張る。
拮抗したため、2人とも動けなくなっている。
「ほい、王手」
デュランデュランがどこから出したのか、剣を魔王へ突きつけていた。
「チッ…」
魔王は
「リータ様!」
パトラが戦いながら叫ぶ。
「パトラ、リータ様を傷つけたくなければ降参しなさいな」
シェリルが防ぎながら言った。
「……分かった」
パトラは素直に従った。
曲刀を手放して両手を挙げる。
「形成逆転だね、魔王さん」
鐶が笑いかける。
が、
「それはどうかな?」
魔王は不敵に笑いを返した。
ん?
なんだ、この魔王の自信……?
オレは嫌な予感。
「ギマーギマー、レドモニトモ!」
魔王が叫ぶと、
シュミミン!
光が鐶を包んだ。
*
突然、先生たちが光に包まれた。
先生たちの頭部から光の輪のようなものが現れ、
すーっ
と頭頂まで昇っていったかと思うと、パッと消える。
「あ、あれ?」
「オレ何をしてたんだ?」
「……あー、頭イテェ」
次の瞬間、先生たちは言葉を発し始める。
正気を取り戻したのだった。
これに気付いたのは、近くにいた生徒だった。
生徒たちは隠れていた。
戦闘には関わらないようにしているのだった。
「あっ、先生!」
「お、おまえらその格好は?!」
「しゃべってる!」
「ど、どこだ、ここは?」
急にしゃべり出した先生たちに生徒は驚いている。
「話せば長いんですけど…」
「はあ? なんだそりゃ?」
*
光が鐶から消える。
ザザッ
視界の中で、鐶の姿がモザイクに包まれた。
すぐにモザイクが消え去り、黒髪のショートヘアの女の子が現れる。
顔形はほぼ同じだが……。
あれ?
誰と同じなんだ?
オレは混乱した。
混乱しつつ周囲を見回すと、ヒルデの隣に長髪の女の子がいた。
筋肉が発達しており、角が生えている。
え?!
なんだ、これ!
2人の事が思い出せない。
てか、こんなヤツ居たのか?
何が起ってるんだ!?
「ふふふ、驚いたか!」
魔王は高笑い。
「これぞマギーの一族に伝わる潜入の秘術!」
「……あー、リータ様」
ショートヘアの女の子は、目覚めたばっかりという感じで言った。
「あれ、私どうしてたんだろ?」
長髪の角のある女の子も同じような感じだ。
「マギーもクララもご苦労、さて、形勢逆転だな」
魔王は言った。
「私に加勢せよ!」