表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/72

60

60


オレたちはニダヴェリールからアスガルドへ。

とんぼ返りである。

「ニダヴェリールの名物とか食べたかったのに…」

鐶は少しむくれている。

聞いた話では、ニダヴェリールには石炭の他にトカゲの丸焼きという名物料理があるらしい。

(いや、別にトカゲとか食べたくないんだが…)

オレは心の中で言ってみた。

言ってみただけ。


デュランデュランは、途中ずっと蒸気機関車と有人ゴーレムについて話していた。

まあそれはいい。

なんで、シェリルが一緒についてくんだよ?

「あら、いいじゃないですか」

シェリルはフンとそっぽを向く。

「デュランデュランが入ったら、ただでさえ機会の少ない私が更に機会少なくなるでしょう?」

ゆらり。

と、ドス黒いオーラを放っている。


(でもそれって、現地に残ってるアクールは更に機会少なくなるよな…)

オレは、ふと思った。

(今度会ったら、もっと苦労を労ってやろう)



アスガルドについた。

宿についた途端、美紀とヒルデが駆け寄ってきた。

さらにデュランデュランとシェリルが増えてる。

シェリルはコウモリの姿でいた時間が多いので、生徒達にはあまり覚えられてない。


「よ、ただいま」

生徒達の白い目に耐えながら、オレは美紀とヒルデに挨拶。

「この人がデュランデュラン?」

『眼鏡美人ね』

美紀とヒルデが嫉妬の眼差しを向ける。

「お初にお目にかかる、今後ともよろしく」

どっかで聞いたフレーズを言うデュランデュラン。

「シェリルさんもいますよー」

アピールする吸血鬼。

コイツ、性格明るすぎない?

吸血鬼のくせに。

「ま、話は中で」

オレたちはゾロゾロと食堂へ入っていく。


「……やっぱ、工房へ行こうか」

しばらく話した後、オレはつぶやいた。

デュランデュランと会話をしても相変わらず技術的なことばかりなので、このメンバーでは答えられないのであった。

「そうね」

鐶が同意した。

一応、デュランデュランの部屋を決めたり、宿で生活するためのルールなどを伝えている。

まあ、効果はないんだろうなぁ。

魔王軍でも好き勝手やってたとか言うし。

「じゃあ、ちょっと行ってくる」

「いってら」

『あんまり遅くならないでね』

美紀とヒルデが、ちょっと艶っぽい表情を見せる。

まるで奥さんだぜ、デュフフ。


ゴスッ

ドガッ

バキッ


「ぐふっ…なんでデュランデュランまで!?」

鐶、シェリル、デュランデュランが一撃ずつオレに叩き込む。

「これはアクールの分ね!」

シェリルがもう一撃。

「ぐへッ!?」

オレは呻いた。

が、ちょっと呻いただけで終わった。


「…明らかに耐性がついてるね」

鐶が睨み付けるように言う。

「え? そうかな?」

オレはきょとんとしてる。

「今後はもっと力配分を上げないとね」

鐶はしれっと言った。

「は?」

「今までは30%くらいまでだったから、今後は50%くらいまで。レベル2からレベル3ね」


えー…、なにそれぇー


オレはアングリと口を開けている。

てか、鐶の暴力ってレベル分けされてんのかよ。


「ふー、アガるー!!!」

デュランデュランは拳を握って、叫んだ。

顔が上気している。

歓喜に震えているようだった。

ドSなヘンタイというのは本当らしい。



早速、アラン司祭の工房へ。


「蒸気機関の仕組みはだいたい分かった」

デュランデュランは言った。

しきりにうなずいている。


分かったら、今度は作りたくなるんだろうなぁ。


「是非、作らせて欲しい」

デュランデュランは言った。


そして結局、泊まり込みである。

あー、面倒くさい。

しかも美紀とヒルデに怒られる。

一応、伝令は走らせたけど。


デュランデュランは筋金入りの技術屋で、同じ技術屋のアラン司祭とその仲間とは通じ合うらしかった。

蒸気機関から有人ゴーレムまで、今我々が持っている技術を吸収していった。


「お返しに我々の技術を見せよう」

デュランデュランは黒い木材を取り出した。

南方産の漆黒の樹木というヤツだ。

「あれ? どっから取り出したの?」

オレが疑問を口にすると、

「収納魔法だな」

デュランデュランは空間を操れるようだった。

そういや、最初現れた時も瞬間移動してきたっけ。


「漆黒の樹木はその特性はユグの木とほぼ同じだ」

デュランデュランは言った。

「でも、重いんでしょ?」

オレが茶々を入れると、

「そこ、うるさい!」


ゲシッ


教育的指導が入った。



それから、デュランデュランはしばらく工房へ入り浸った。

オレらは他の仕事もあるので、アラン司祭に任せて帰ったが。

デュランデュランは、漆黒の樹木で有人ゴーレムを作ってしまった。

ただし重量がありすぎて実用性には疑問が残る。


ぬかるんだ地面、砂地など踏ん張りの利かない足場ではただの的になる。

その上、重いので動きが遅くなる。

やはり的でしかない。


「動きは遅いが、頑丈だ」

アラン司祭が言った。

「頑丈でも、多勢に無勢で集中砲火を受けたら潰されますよ」

バークレーがツッコミを入れる。

様子を見に来たのだった。

よく分からずに受け答えしている。

「確かに地形には弱い。が、開けた平地では敵なしだろう」

デュランデュランが言った。

「火力を持たせたら…」

「横一列に並ばせれば…」

アラン司祭と工房の神官たちがアイディアを出してゆく。


火力についてはダーク・ロータス系列のやり方を踏襲。

どうせ重たいのだから、肩に砲台となる棒状の木を2本設置した。

そして、背中にマジックポットを10個乗せた。

重さに見合うだけの火力を持たせようという考えだ。

装甲板はゴムと鉄の複合板を前面に取り付けた。

真正面からの撃ち合い、打ち合いに特化した形になる。


「これ、一個小隊だけでも相当な戦力になるんじゃないか?」

オレは思わず汗を垂らしていた。

「かも知れない」

デュランデュランはうなずいた。

「さっそく戦わせてみたいな…」

「おいおい、物騒だな」

オレは苦笑。

デュランデュランはとにかく自分に正直というか、欲望に合わせて現実を弄ろうとする性格だった。

「激しく同意」

アラン司祭は親指を立てて言う。

(コイツら、バカなんじゃ…)

オレはちょっと頭が痛くなって、ため息。

「どったの、カイ君?」

鐶がオレを見る。

「いや、別に」

オレは惚けた。


兵器を使いたいから戦争をしてみました。

……なんてのは本末転倒なんだよな。

ただ本当にそういう例はありそうだが。


デュランデュランはしばらく工房と宿の2カ所へ言ったり来たりという生活が続いた。

オレたちも公務をしながら、それに付き合う。

あっという間に漆黒の樹木製有人ゴーレムができあがった。



「有人ゴーレム・ブラックと呼ぼう」

「なんか仮面を被ったバイク乗りみたいな名前だなぁ」

鐶はジト目でオレを見てる。

「お、鐶もそんなの見てるのか?」

オレが言うと、

「バカだね、見てないよ」

鐶は頭を振った。

「話を聞いただけ」


オレと鐶とデュランデュランは宿へ向かっている。

歩きではなく馬車を借りていた。

色々と物騒な世界だというのもあるが、逆に鐶とデュランデュランから人々を守るためでもある。

だって、この2人、犯罪者とか襲撃者が来たら殺してしまいそうなんだもん。


「なんの話か分からんが、ともかく満足のいく研究ができてる。礼を言う」

デュランデュランは頭を下げた。

「いや、改まって言われると照れるな」

オレはテレテレになる。

「つきましてはお礼として、カイ殿とイチャつきたいのだが」

「それはダメでーす」

デュランデュランが何やら言ったが、鐶が遮った。

「順番がつかえてんのよ」

「そうか、なら先は譲ろう」

デュランデュランは肩をすくめて、先を促した。

「存分にイチャつきたまえ」

「……」

鐶は頬を染め、視線を逸らした。

「ヘタレだな、君は」

デュランデュランは呆れたようだった。

「ちょっと、そういうのは宿に帰ってからにしてくれ」

オレは2人の間に割って入る。

「てか、オレらは健全だぞ」

「ふーん、随分と奥手なんだな、君達は」

デュランデュランは上から目線。

シェリルの時もそうだったが、この愛人さんたちって相当ディープな事してそうだなぁ。

魔王とメッチャ愛し合ってそう。


「ご想像の通りだけど」

デュランデュランは臆面もなく言う。

「おうふ、オレみたいなチェリーボーイには刺激強いッス」

オレはオフーと息を吐く。


11年振りに更新しましたw

他サイトでも掲載中です。https://novelpia.jp/novel/1050

3話ほど差がつきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ