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 ブロード豆は、アルブレヒトが豆を取り扱ってる商人から買い入れる手筈になった。

 で、ハルバート家だ。

 ヒルデにはちゃんと話しといた方がいいよな。

『ふん、まだ残ってたのね』

 忌々しそうではあったが、ヒルデは意外に落ち着いてた。

『代替わりしてるし、子孫には罪はないわ』

 はい、ごもっとも。

「今はオレらが優位だし、言うこと聞かせられる立場だ。だから、もういいだろ?」

 オレは、ヒルデを抱きしめた。

『うん』

 ヒルデは、うなずいた。


 えーと、やっぱボコられ。


 ******


 アルブレヒトのつてで、ハルバート家の当主と面会する手配をつけた。

 もちろん、相手をヴァルハラへ呼びつけてる。

 地位のなせる技だ。


 んで、当日。

 神殿にて面会。

「お初にお目にかかります。ジョンハルバートと申します。ハルバート家の当主を務めております」

 ハルバート家の当主は普通のオヤジだった。

 若干、緊張気味。

 小肥りで、人の良さそうな顔だ。

 陰湿な感じはしない。

 狡猾そうでもない。

 抜け目なさそうでもない。

 ……つまり商売人らしくない。


 普通に家業を受け継いで、普通に商売を続けました。

 ただ、ご当主はホントに普通の人だったのです。

 って感じ。


 うーむ。

 ハルバート家が他に圧されてるってのも良く分かる。

「カイと申します」

 オレが挨拶すると、

「お会い出来まして光栄です。先日はお助け頂き、大変ありがとうございます。このジョンハルバート、いかようにご恩に報いればよろしいか分かりません」

 ジョンは、深々とお辞儀をして感謝の意を現した。

「そのような事は良いのです……と言いたいところですが…」

 ちらり。

 オレは、ジョンをみた。

「はい」

 ジョンは恭順さを顕して頭を垂れていた。

「実は、お力添えをお願いしたく考えてます」

「どのような事でしょう?」

「ムスペルヘイムのマハラジャとのつてをお持ちですね?」

「はい」

 ジョンは、オレの意図が分からず困惑しているようだった。

「マハラジャに接触したく考えてます」

「……」

 ジョンは、しばらく無言。

「それは、どういう意味でしょうか?」

 やっと絞り出した言葉がコレ。

 ……要は頭の巡りが鈍いんだな、当主にしては。

 演技でなければ、見かけ通り普通のオヤジなんだろう。

「我が国は周辺諸国、特にムスペルヘイムの事情に疎いところがあります。

 諸国の事情をよく知るのが、国を守る第一歩です」

「はあ」

「次に物流。

 交易を通じ物の流れを作ってゆく事で、経済が潤います」

「はい」

「その為にマハラジャの領地内にハルバート家の商館を置いて欲しいのです」

「ハアー?」

 ジョンは、すっとんきょうな声を上げた。

「しょ、商館ですと?」

「そうです。

 あなた方の家業をもり立てる事にもなりますよ」

 オレは、いたずらっぽく言った。

 なんたって、国がバックアップすんだからな。

 その分リスクもあるが。

 でも、ジョンには、そんな余裕はなかったようだ。

「そ、そのような大仕事は考えた事がありませんで……」

 ジョンの声は震えていた。

「即答しなくても構いません。よく考えてみてください」

「はい」

 ジョンは気落ち。

 この手の人種に「早く決めないと他所に取られちゃうよ」的な話し方をすると、ガチで諦めたりするので禁物だ。

 自分自身が納得し、苦手意識を克服するなりして結論を出させないとな。

 商館の話をロンドヒル公爵に持ち掛けなかったのは、公爵が国政に関わっているからだ。

 表向きには政治に関係ない、ただの市民でないと。

 ジョンは、とぼとぼ帰って行った。


 アルブレヒト情報では、ジョンハルバートの妻は夫とは正反対の性格で、妻の尻に敷かれた状態だという。

 うーん、そこだけは親近感っつーか、同じだ。(恐)

 商売は、実質、妻が動かしてる。

 ジョンがこの話を断らなかったのは、妻の反応を恐れたためだろう。

 商売人が商売的に益のある話を断るはずがない。

 それが分かっているからだ。

 問題は、どんなリスクが考えられるかだ。

 ジョンの奥さんもそう考えるだろう。

 リスク分析ってやつか?


 他国だから、安全面→まずマハラジャに約束を取り付ける。次に自衛のための軍隊を置く。クリア。


 利益面、旨味のある商売か?→これは言い替えれば売り買いする物があるか、だ。

 ヨツンヘイムの時と同じくプラント販売戦法だな。

 酒ではなく衛生管理設備がもたらす衛生環境か。

 ハルバート家は他家に圧されてる。

 ならば、とことんベンチャービジネスに走らなきゃならない。

 誰も開拓してない処を押さえて独占するのだ。

 幸いオレらにも蓄えはあるし、パイロット的にオレらが投資して、権利を売り渡そう。クリア。


 ていうか自国でもやるか。

 オレは、案を練り始めた。

 やはり、リスク分析の手法を取る。

 目標は、人がちゃんと生活できる衛生環境を目指すと。

 で、衛生環境を阻害する要因を挙げる。


 病気、貧困、飢餓、治安。

 まずはこんなとこか。


 病気には、治療と予防。

 既に病気の人は治してやり、そうでない人は病気にならないようにしてゆく。


 貧困には、食い扶持だな。

 金や換金できる物が手に入れば自然と解消されてゆく。


 飢餓は、食料を自給できる仕組みを作ってやればよい。

 それまでは与えると。


 治安は、今現在いる賊を討ち、警察組織を作ってやる。こちらの部隊も協力する。


 こんなもんでいいな。

 後は肉付けしてゆこう。


 まてよ。

 パイロット的にやるんなら、ヨツンヘイム西部があるな。

 気候は真逆だけど、彼方にも商館を建てて交易をしつつ、衛生環境改善にも取り組もう。


 病気、貧困、飢餓、治安。

 寒い土地だから、農作物が育ちにくく、食料が豊富じゃないと。

 病気は、感染症もあるけど、満足に食べられない事からくる栄養失調が考えられるな。

 寒くても確保できる食料って……家畜?

 牧畜は今でもやられてる、だからここは革新だな。


 乳製品。

 保存の利く物って言えばチーズか。

 また発酵食品かよ。


 チーズ市場の現状把握をし、産業として成り立つかどうかを見よう。

 もし、見込みがあれば、生産量を増やす事により雇用を確保し、交易により外貨を稼ぐ。

 産業化により、家畜数が増えれば食料も増える。

 利益が出れば医薬品、当地で生産できない食料などを買う金も捻出できる。

 さらにインフラの整備をして、雇用を拡大してもよい。

 あまりやり過ぎると、ミッドガルドを追い越される可能性もなきにしもあらずなんで、ほどほどで止めよう。

 とにかく、まずは資金捻出。

 次に目標達成に向け作業。

 それがさらなる資金を生み、続けて規模を拡大してゆける、つまりサイクルを紡げるようになる。


 それと魔王軍の対応だが、これといって目立った動きがない。

 動きがないのは逆に不安を掻き立てる。

 水面下で何かが進行してるっぽい。

 ここは一つ、探りを入れるのが良いだろう。

 ハルバート家に催促を入れ、ムスベルヘイムのマハラジャに繋ぎを取ってもらうか。

 でも、こちらの思惑をマハラジャに伝えないとな。

 現地の動きを見張るのも必要だ。

 となると、最適なのは……シェリルか。

 ムスペルヘイムに詳しく、単独で行って、任務遂行し、戻ってこれる。

 デメリットは、魔王軍に戻ってしまう可能性。

 だが、他に使えそうな人材がない。

 ……うーん、まあ、戻っちゃったら仕方ない。

 諦めよう。

 はい、決まり。

 魔王にウソの処刑情報がバレてもいいや。

 あ、でも肝心の仕事ができてないか。

 じゃあアルブレヒトんとこの商人頭……いまいちこちらの意図を理解できないだろうな。

 つーか、彼等は通常業務で手一杯か。

 やっぱシェリルだな。

 彼女を信じよう。

 オレは部屋に戻り、

「相談があんだけど」

 天井にぶら下がるコウモリに話しかけた。

「はい、どうぞ」

 コウモリ……シェリルはキィキィ声で答える。

「あのな、ムスペルヘイムに行って欲しいんだ」

「はい?」

 シェリルは聞き返した。

 当然の反応だな。

 オレは事情を説明する。

「あたしが戻って来ないかもって思わないんですか、カイ様?」

「いや、それは簡単」

 オレはさらりと答えた。

「お前を信じてる」

「……魔王様は言わなかったわ、その言葉」

 シェリルはつぶやいた。

 そして、


 ぼわん。


 コウモリから、人の形態へ戻る。

 あ…あれ?

 アクールの封印は?

「あの娘ごときの魔力じゃ、あたしを封じられないわ」

 いや、つーか、いつの間にアクールが魔法封じのブレスレットを外したんだろう?

 今更だが。

「ミキとタマキが外してたわよ」

「なぬーっ」

 あいつらオレに断りもなく!

 後でスンゴイエロい事したるんだから!

「カイ様……!」

 シェリルが強引にオレの顔を固定。


 ぶちゅうっ。


 強引に唇を奪った。

 何かこの娘には奪われてばっかだなぁ。

 逃避する間もあればこそ、


「ごるあっ!」

「死ねィッ!」

「コロスッ!」

「ストレス解消!」

 何か最後だけ変な掛け声だけど、いつもの如くバタンキュー。


 ******


 でも、すぐ復活さ。


 ……て事は、シェリルと夜やらしー事できる?!


 オレが気付いた瞬間、


「させるか!!」

「そうよ!」

「アクールちゃん、今だよ!」

「プロテクション・ピンク!!」

 バリ力の入った気合いとともに、アクールの指先から、ビビビと光線が飛んだ。

「きゃー?!」

 シェリルは身構えるが、何も起こらない。

「?」

「カイ様、シェリルに触れて」

 アクールの回避不可能なご指示。

 オレは、恐る恐るシェリルの肩をつつく。

 ……何も起こらない。

「もっといやらしく!」

 アクールが言った。

「えっ?」

 真面目なアクールがそんな事を言うとは!

 オレは嬉しいけどね。

「ちがくて!」

 アクールは、憤怒と気恥ずかしさで真っ赤。

 冗談じゃんか。

 真面目過ぎ。


 で、オレは再度シェリルに手を伸ばす。

 やらしーと言えば、胸だ!

 おっぱいだ!

 と短絡思考で、シェリルの膨らみに触ろうとしたら、


 ぐわん。


 何かに弾かれて、オレの身体が宙を舞っていた。


 ぐしゃ。


 オレが壁に貼り付いた音。


 ひどい。


「痴漢撃退用に開発したバリア魔法」

 アクールがつふやく。

 な、何て余計なものを開発しるかな、君は。


 ******


 具体的な方案は以下。


 ・ヨツンヘイム西部に拠点を置く。

 ・ムスペルヘイムに拠点を置く。


 どちらも現地資源を利用した生産及び交易を行って資金確保し、衛生環境改善を実施してゆく。

 ヨツンヘイム西部は、フォー教とニドヘグを利用。

 フォー教には、新たな布教の地。ニドヘグには、領地を授ける事で動かす。

 ムスペルヘイムは、ハルバート家を利用。

 商館を設置。

 全面的にバックアップ、新たな商売開拓につながるという事で押す。

 同時にシェリルを派遣し、ムスペルヘイム内の動向を探らせるとともに、マハラジャを口説き落とす手助けをする。

 ……本当に口説いたらやだけど。

 いや、シェリルはオレんだ!

 大司教、ジョージ13世に説明し、承諾を得た。

 シェリルが生きてるってことは伏せて。

 では、まずニドヘグを口説こう。

やっと更新です。。

最終話目指してガンバロー。>オレ

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