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いったい何が起こったんだ?
オレは、ぼんやりした頭で考えた。
さっき、ものすごい衝撃とスパークがあったようだけど。
オレは頭を振り、身体を起こした。
何時の間にか床に倒れていた。
他にも制服姿の男子と女子とが床へ倒れている。……クラスメイトだ。
「おい、大丈夫か?」
オレは近くに倒れていた女子を揺り起こした。
「う…」
女子は唸って、身をわずかによじった。
ショートな髪にくりっとした大きな目。見た目は可愛いが、性格は考えただけで怖気がする。最悪ってことだ。
こいつは鐶。
家、となり。
幼稚園、同じ。
小学校、同じ。
中学校、同じ。
高校、同じ。
ようするに幼馴染だ。
「鐶、起きろ!」
オレは続けて呼びかける。
「……ん。カイくん、何?」
鐶はぼけっとした顔で、頭を起こし、オレを見た。
カイはオレの名前。
「……まあ、そんな。カイ君がこんなに積極的だなんて。あたしは構わないけど……」
鐶は恥らうような仕草をするが、
「誤解されるようなことを言うな」
オレは全否定。
ほっとくと止め処もなく幻想に浸り続けるからな、こいつは。
「……何だ、つまんないの」
鐶は醒めた表情で、さっと起き上がる。
こいつの家は武術を継承する家柄だ。それを修得しているので、身のこなしは男以上に凄い。
「で、何がどうなったわけ?」
「んーと」
オレは考えようとして、
「いや、オレに分かるわけないだろ」
何もつかんでいないことに気づいた。
自慢じゃないがオレの成績はよくない。むしろ悪いほうか。
「そりゃそうね」
鐶は納得。
いや納得すんな。
こいつは悪い性格とは正反対に成績は好い。
だからかもしれないが、なんかムカつく。
「それよりみんなを起こそうぜ」
オレは他のクラスメイトを見る。
「えー、カイ君といちゃついてるほうがいいよー」
鐶はあからさまにイヤそうな顔をした。
「殴るぞ」
オレは拳骨を固めてハーッと息をかける。
「はいはい、分かりました。……そんなに照れなくても」
「いいからやれ!」
「はいはい!」
てな具合にみんなを起こした。
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「漂○教室〜〜〜ッ!」
角刈りの男子が叫んだ。
「こらこら何を叫んでるかっ」
オレはとがめるように言ったが、その気持ちは十分なくらい分かる。
オレたちが起きた後、誰ともなく窓の外に広がる景色に気づいたのだった。
その景色は、いつものそれとはまるっきり違っていた。
いや、結論から言えば普通の景色なのだが、今まで見ていた町並みとか、田んぼとかがないのだ。
原生の林とでもいうのか。
「なんか野生の動物王国って感じがするっ!」
角刈りの男子が、喚いた。もう既に泣きそうである。
「おいおい、このぐらいで不安がるなっつーの、男だろ!?」
と角刈りをたしなめたのは、ロングな髪の女子。
高い身長。つりあがった目。
角刈り:始
つり目:美紀
紹介終わり。
「…男女同権」
「アホか」
「それぐらいにしろよ、ケンカしてる場合じゃねーだろ」
「うん、カイ君がそういうならぁ」
目にハートを浮かべ、美紀は両手を胸の前に組んでオレに擦り寄る。
そう、困ったことに美紀はオレにラブラブなのだった。
「こらあ、カイ君はあたしのもんだからね!」
鐶が間に割って入る。
「ちっ……カイばっかもてやがってよぉー」
始は別の意味で涙していた。