放課後プログラミング
日直の当番でいつもよりも遅くまで残っていた小学6年生のとある女の子。
友達は先に帰ってしまったので、女の子は一人退屈そうに廊下を歩いていた。
(いつもみんなと一緒だから、一人で歩いてるとなんだか寂しいなぁ)
そんなことを考えて3年生の教室の前を歩いていると、教室の中に男の子が一人椅子に座っていた。
女の子は何をしているのか気になり、教室にいた男の子に声をかけた。
「何をやってるの?」
男の子は顔を上げると、女の子は男の子が涙目になっていることに気がついて更に声をかけた。
「何かあったの?」
すると男の子は、うつむきながら小さな声で答えた。
「宿題、やってくるの忘れちゃって...」
夕日の差し込む教室で二人きり、男の子が泣きそうにも関わらず女の子は少しドキドキしていた。
「私も手伝うよ!」
男の子は再び顔を上げ、今度は少し嬉しそうな顔をしていた。
女の子が男の子の机を覗き込むと、そこにはJavaで書かれたプログラムがプリントにギッシリと書かれていた。
「そっか、3年生はJavaモダンプログラミングが必修になったんだっけ」
女の子は幸い親の手伝いでJavaを書いたことがあったので、男の子が解いてる問題はすぐに理解する事が出来た。
男の子が悩んでいた箇所は、Java9で導入されたdefaultキーワードだった。
「defaultっていうのはinterfaceに実装を加える事が出来るようになるキーワードだよ」
「え、でもそれじゃあinterfaceが抽象じゃなくなっちゃうんじゃないの?」
「ううん、defaultキーワードを使うのはinterfaceとして使うんじゃなくてmix-inを実装するためなんだ」
「みっくすいん?」
「そうだよ、mix-inっていうのは簡単に言うとあるクラスに機能をくっつけられる特徴を言うの。それにdefaultキーワードがあってもinterfaceは具象化出来ないから抽象は保ったになるんだ」
男の子に説明していると、自分の理解も更に深められた気がしてなんだか楽しくなってきた。
そんな話をしていると廊下から足音が聞こえてきた、多分男の子の担任の先生だ。
このままでは宿題を手伝ったことがばれてしまう、そう思った女の子はすぐに教室のカーテンに包まって隠れた。
先生が教室に入ってくると、男の子を見て口を開いた。
「なんだ、まだ残ってたのか?」
「宿題、やってたから...」
「今日はもう遅いんだから、宿題は明日でいいぞ」
そう言い残し、先生は教室を後にした。
その様子を見ていた女の子はこう言った。
「良かったじゃん、怒られなくて」
「うん、でも明日までには終わらせないと」
「大丈夫、またわからないことがあったら私が教えてあげるから!」
「ほんと?」
「まかせて!これでも私Go○gleでAndr○id開発に携わってたこともあるんだから」
そう言って男の子の目を見ると、男の子は恥ずかしくなったのか目をそらしてしまいました。
その仕草がとても愛らしく感じて、女の子は元気にこう言いった。
「じゃあ、また明日放課後でね!」
これは放課後の教室で残って宿題をやっている男の子と、たまたま教室の前を通りかかった女の子との出会いの話。
そして、夕日と共にコンパイルされる、淡いプログラミングの話。