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九百六十二話 世界征服・完了

 ──"パーン・テオス"。


 ヴァイス達との激戦から、早一週間が経過していた。

 世界中は復興の為に忙しく、戦闘の後遺症でゼウスの全知全能の力やライたち主力の力も制限されているのでまだ街は直っていない様子。

 そんな復興途中の"パーン・テオス"にはある程度治療を終え、万全ではないにせよ動けるようになった全世界の主力たちが集っていた。


『──"戦争報告"。

──"過激派侵略者組織首謀者の生死"。

・首謀者、ヴァイス・ヴィーヴェレ。死亡。


──"首謀者の仲間の安否"。

・シュヴァルツ・モルテ。死亡。

・マギア・セーレ。自害。

・ゾフル。死亡。

・ロキ。消滅。

・グラオ・カオス。行方不明。

・尚、上記以外の仲間であるハリーフは既に死亡済み。


──"被害状況"。

・人間の国、半壊。

・魔族の国、半壊。

・幻獣の国、半壊。

・魔物の国、半壊。

・人間の国、支配者ゼウスによって修繕された世界だったが最後の衝突によって半壊。幸い死傷者は無く、戦争によって負傷した全主力達も自ずと合流する模様。


──"特例報告"。

・もう一つの侵略者組織、穏健派のリーダー。ライ・セイブルを世界の支配者に任命。

今回の戦争によって戦えなくなった支配者を始めとした主力達の代わりにヴァイスら組織を撲滅した功績により、全支配者と幹部、側近が同意済み。               』


「……。さて、報告書はこれくらいで良いか。我らより上は存在しない。これは報告と言っても国民たちに与えるもの。厳密には書かない方が良いだろう」


「ああ、そうだな。後は国民たちがライたちを支配者……まあ、厳密に言や征服者だが、それを認めてくれるかどうかだ」


『まあ、問題は無いだろう。少なくとも、最後の征服に乗った我ら幻獣の国の民たちは少年……いや、ライたちの性格などを知っている。恩義もあるからな』


『そうなると問題は人間の国よの……この国の国民共はライたちの事を詳しく知らんだろう?』


 そんな主力たちの中、世界を統べる支配者が全員揃って世界中に征服の証明書を送る準備をしていた。

 征服の証明書ではあるが、表面上は戦争報告の纏め。そこにライを"支配者"という形で書き記したが、世界中の者たちが納得するかは分からない。

 正面から征服され、国民たちも知っている魔族の国と魔物の国は問題無いだろうが、残る人間と幻獣の国が一番の問題。ドラゴン曰く幻獣の国の国民たちはライたちの事を知っているのでそこまで荒れる事は無いと言うが、幹部や側近以外に大きな関わりを持たなかった人間の国がどう転ぶかは誰にも分からなかった。

 それをテュポーンが指摘し、ゼウスが腕を組んで話す。


「そうだな。どうなるかは我にも分からぬ。ヴァイス達との戦闘で全知全能の力が使えなくなった今、それを知る者は的確な未来を読める者だけだろう」


 戦闘の後遺症で全知全能の力が使えぬ今のゼウスにそれは分からない事。主力たちが賛同したという事で賛成してくれる者たちは多いだろうが、当然反発する者も現れる筈。

 それどころか、支配者制度に疑問を抱いている者も居るかもしれない。国を動かすのは主導者ではなくその国の民。主導者の存在次第で反乱なども起こりうる事柄。反乱が起こっても幹部や支配者には到底及ばないので今は平和の形が保たれているが、時と場合では命を捨てても起こす存在が現れるかもしれない。少なくとも、平和主義者ではない野心家も多く存在しているだろう。

 故に、侵略者という脅威的な存在が居なくなった今、真の平和の為に国を、世界を創って行く必要があった。


「そうか。まあ、未来予知はて置き、問題はライたちが穏健派とは言え侵略者だったって書いて良かったのか? そりゃ事実だが、色々と問題は起こるだろうに」


「だがまあ、書かぬ訳にもいかないだろう。国中に広がっている侵略者組織の存在は二つ。そのうちの一つが崩壊したとしても、もう一つがあるだけで民は不安となる。何処ぞの存在を侵略者に仕立て上げて処刑し、侵略者という存在を隠蔽する事は容易いが、そんな事をしても何の意味もないからな」


「そりゃそうだ。隠蔽するってのは必ずしも悪い事ばかりじゃねェが、基本的に自分が大事……自分だけが大事な存在のやる事だからな。男なら男らしく堂々としなくちゃならねェ。女もだ。考える力があるなら、悪い事はしかと自覚しねェとな。……ま、そう言う事なら仕方ねェか。この結果が悪い方向に転ばねェ事を祈るだけだ」


 ライたちが侵略者であるという事は、大きな不安もある。少なくとも、事情の知らぬ者が直ぐに受け入れる事は無いだろう。

 だからと言って汚いやり方で隠蔽工作するのには抵抗があるシヴァ。知らなくて良い事実もあるが、今回は知っていた方が良い事実。この報告書が出回った時、どう転ぶか、それはその時にならなければ分からないだろう。


『さて、後はもうやる事も無いか。動けるようになった主力たちは既に自国の復興に勤しんでいる。俺たちも行動を起こさなくてはならないな』


『まあ、余の国は文字通り自然故に、全てが自然に戻る。幻獣の国もほぼほぼ自然だろう。確か、主の国の主力は主に人間と魔族の国の復興にあてがっているのだろう?』


『ああ。古来より幻獣は両種族と親しき中にあったからな。まあ、魔族の国とはあまり良くない時期もあったが、取り敢えず人々の役に立てるならそれに越した事は無い』


『やれやれ。よくもまあ、そんな面倒な事が出来る。もはや素直に称賛してやろうぞ』


『ふっ、そうか』


 これにてある程度話は纏まった。

 今現在は幻獣の国の、動けるようになった主力たちは他国の復興を手伝っているらしく、その人の良さ。もとい、獣の良さに呆れて肩を落とす。

 確かにテュポーンからすれば面倒な事だが、それが幻獣の性質なのだろうと称賛した。

 何はともあれ、終わりは終わり。支配者たちは席を立ち、シヴァが軽く伸びをして更に続けた。


「んじゃ、アンタらは復興の手伝いをするんだな? テュポーン以外。今日はこの辺で解散か?」


「ああ、そうだな。だが、我はまだ手伝いは出来ぬ。ライたちと話があるからな。まあ、ライたちも病み上がり。我らより重傷だったのだから当然だ。あまり重い話はせぬ」


『そうか。それなら俺は変わらず人間の国と魔族の国の復興を手伝おう。俺自身も物運びは得意な方だ』


『余はどうするかの。まあ、気が向いたら色々やるとしよう。今回の一件で数の重要性も知った。魔物の国の主力でも増やそうかの。"世界樹ユグドラシル"の時に知り合った妖怪達にでも交渉してみよう』


 各々(おのおの)にもやる事がある。国の復興。ライたちとの会話。戦力の補充。

 なのでそれらを遂行する為、シヴァたち支配者は"パーン・テオス"の城にある貴賓室を後にした。

 ヴァイス達との戦闘が終わった今も、まだまだやる事は残っていそうである。



*****



 ──"パーン・テオス・ゼウスの城・特例負傷者専用部屋"。


「居るか? お主ら」


「よっ、ゼウス。ああ、全員居るよ」

「ゼウスさん、おはよう御座います」

「ふむ、珍しい客人だ」

「そうだな。一体何事か」

「……」


 支配者同士の会議が終わった直後、ゼウスはライたち。ライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤンの五人が居る部屋に来ていた。

 ライたち五人は一番傷が深く、全主力の使える治療の力が無かったので緊急処置としてこの部屋に運ばれ、そこで集中治療を受けていたのだ。

 それもあってライたちはもうほぼ動けるようになっていた。お見舞いなのか、清潔なベッドの近くには果実や花など色々と置かれている。

 それが幹部や側近、支配者や王からの贈り物なのでVIP客でもそうそう受け取れない品々だろう。


「それで、何か話でもあるのか? あ、適当に座ってくれ。っても、ゼウスの城だから全部ゼウスの所有物なんだけどな」


「フム、ならば座って話すとしよう。主らは動けると言っても、基本的にベッドでの生活だからな」


 ライに言われ、ゼウスは病室とは思えない豪華絢爛な椅子に腰掛ける。

 当然城には医療室もあるのだが、他の主力や一般層の為にそれらは全部使用済み。なので有り合わせで緊急処置室を作った事もあって似付かない物も置いてあるのだろう。


「先ずは簡単な報告だ。世界征服を終えた主らだが、世界中には"世界の支配者"という名目でその形を作った」


「そうか。それは助かる。アンタたちの著名が無けりゃ、中々認められないからな」


 先ず話したのはライたちの処遇について。

 処遇と言っても悪い事ではない。寧ろ、支配者という形で君臨出来るのだからライたち的には有り難い事だろう。

 それで、とゼウスは改めて言葉をつづった。


「さて、此処からが本題だ。単刀直入に言おう。主らは聖域へ行くのだな?」


 本題。それは聖域について。

 予言というより、ゼウスの視た世界でライたちは聖域に行く事が確立されていた。それがどうなのか、答えは分かっているが改めて訊ねたのだろう。

 ライは頷いて返す。


「ああ、行くつもりだ。謎の老婆に貰った物と勇者の剣。聖域を開く鍵は揃っているからな。それに、何であの時勇者とかつての神が出て来れたのか、その本人に直々に訊ねたい」


「成る程な。あの時……ヴァイスの全身全霊の一撃を主力たちで防いだ時の事か。確かにそれが良いだろう。あの時点で我の全知も消え掛かっていた。その答えは分からぬままだからな」


 無論、ライは聖域に行くつもりだった。

 聖域に入るのに必要な物は既に持っている。なので後はそこに行くだけ。レイたちからも異論は上がらず、全員が聖域に行く事を決めている面持ちだった。

 それに対して納得するゼウス。ライは更に続ける。


「それに、これは個人的な好奇心だけど世界の成り立ちについても詳しく知りたいからな。実はヴァイスに色々聞いてて、気になっていたんだ。征服を終えた俺たちの世界。正史と"異"なる今の"世界"。──異世界じゃなくて、本来の世界が気になる」


「フム、そうか。その知識なら我も覚えているが、自分で行くのも良いだろう。答えを知るのも悪くないが、自分で行き、聞く事で意味を成す。世の中には必要な事だ」


 ライの、もう一つの目的。それは世界について。

 ヴァイスと戦っている時に高層建造物が立ち並び、灰色の地面が連なる世界でその世界が現在の本来あるべきだった姿た知った。しかしヴァイスには調弄はぐらかされてしまった為、自分で答えを見つけようとしているのだろう。

 分かった事はかつての神が世界を海に沈めようとした事。今の世界より科学方面で発達している事。詳細を思い出せばまだまだ発見があるかもしれないが、それを踏まえた上で聖域に居る勇者に色々聞きたいのだろう。

 今は全知全能の力が使えないゼウスだが、使えた時に得た情報は覚えている。しかしライの好奇心を優先し、その事は話さなかった。


「さて、これくらいだな。我が聞きたかった事はお主の意思だ。他の者たちも行くのだろう。彼処は別に危険ではないが、まあ、無理はするな」


「ああ。まあ、俺も話を聞きたいだけだからな。あの時介入したのが本物の勇者なら、多分争いにはならない筈。傷も大分癒えたし、そろそろこの街を出るさ」


「成る程な。確かに勇者は温厚な存在。自分から仕掛けなければ問題無い。それに、その傷も神の子孫が力を使えるようになれば直ぐに癒せる。もうこの街に居る道理も無いか」


 ライたちはある程度治った。後はフォンセ、リヤンが力を使えるようになれば主力全員が完治する。それによってゼウスが全知全能を取り戻せば世界も安泰だろう。

 なので治り次第、ライたちは聖域に向かうようである。


「では、邪魔したな。先程も言ったようにもう聞きたい事はない。しかしまあ、あまり焦らずに治療すると良い」


「ああ、分かったよ。ゼウス」

「じゃあねー」

「まあ、まだ暫くは世話になる」

「ああ。世話を掛ける」

「バイバイ……」


 ゼウスは部屋を出る。聞きたい事は聞いたので、後はライたちを安静にさせようという魂胆なのだろう。

 何はともあれ、これにて大方の事柄が終わった。


 世界を征服し、一先ず四つの国からなる世界その物は纏まる。しかし小国などの問題も残っているので、まだまだ事は終わらないだろう。



 ライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤンによる、世界征服の旅。ヴァイス討伐と共にそれを達成し、この世界。正史とは"異"なる"世界"。異世界で見ていない場所は聖域のみとなる。

 ライたちの旅は目的を遂げ、旅の終わりへと向かうのだった。



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