表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
954/982

九百四十三話 絶対無限の全知全能

 レイたちとシュヴァルツ達の戦闘が熾烈を極める一方、ヴァイスとゼウスの織り成す全知全能の衝突もより激化していた。

 既に複数の宇宙を崩壊させる規模で続いている戦闘だが、それがより激しくなると多元宇宙が再び危機に瀕し兼ねない程の余波が生まれる事だろう。


「相変わらず即死は効かぬか。能力を奪おうにも事前に防がれる。その無効化を無効にしても更に無効化されるだけだな」


「私としてもやり辛いね。油断も隙も皆無さ。攻撃のたびに即死。もしくは能力その物を奪おうとしてくるンだから」


 自分と対等。もしくは凌駕する存在を前にした時、一番的確なやり方は何か。

 それは単純明快。即死させるか根源となる能力を消し去れば良いだけ。その他にも死以外のやり方で行動不能にしたり存在その物を無かった事にしたりなど様々だが、全知全能ならその全てを無効化する事が可能。なのでゼウスはやり方を変えた。


「フム、それなら我を認知しただけで主の存在を消させるか」


「別の神の力だね。もうそれは無効化したよ」


「……。行動が早いな」


 ゼウスは全知全能。即ち全ての神々の力を容易く扱える。

 今使ったのは混沌の神にして原初の存在、カオス。とはまた違う、真の宇宙の創造主と謂われている存在の神の力で、この世の全てを生み出し混沌と破壊の入り交じった空間に居る神の能力。見ただけでその存在を無かった事にさせるが、その存在の消滅を無効にする事で未来永劫存在を消される事は無くなったヴァイスによって阻止される。

 同時にヴァイスもゼウスに向けて仕掛けた。


「神の力を使った全知全能との戦闘。うン、悪くないね。それなら私も神々の力でも使おうかな」


「ただ手っ取り早く終わらせようと思っただけだ。……それに、他の神の力と言っているが全知全能の我らからすれば他の神のやり方は参考程度にしかならぬ。それらも踏まえると紛れもない我らの力と見て良いだろう」


「ハハ、確かにそうかもしれないね。様々な力をその神固有のモノにしてしまうと、ただのパンチやキック。その他の誰でも使える攻撃方法は始めに使った誰かのモノとなってしまう。それはおかしな話だ。能力と言うものは生物の進化に合わせて使えるようになるモノ。それを使えるならその時点でその存在全ての能力と解釈出来る」


 能力は扱い方次第。誰がどんな能力を使おうとその者が使えるならそれで良い。ヴァイスとゼウスはその様な思考をしており、互いに今一度力を込めた。


「しかし主の力。不完全な全知全能だが、先代のゼウスよりは強い力と分かる。先代は全知全能とは名ばかりに何度か敗北しているからな。まあ、我もライにはやられたからその点は関係無い。……要するに、他人に与える力が欠如している事と矛盾を遂行出来ぬだけの全知全能という事だな。今回はあくまで主と我の戦い。その力はあまり支障をきたさぬモノのようだ」


「へえ。全知の君が態々(わざわざ)推察してくれるとはね。そンな情報、出会った瞬間に得られている筈だけど」


「そうだな。知ってはいるが、口に出すとまた違った感覚が生まれる。今一度主の力を確認した上で、我の方が優位である事を知らしめたに過ぎぬ」


「ふうン? そう言えば、君の力は何度か受けているけどまだ全知全能が完全なモノになっていないね。……成る程、私の生物兵器の能力は既に無効化されているみたいだ」


 ヴァイスには、というより、生物兵器の未完成品には相手の力を学習し、それを我が物にする能力がある。

 しかし今のゼウス相手ではそれは既に阻止済み。その事を考えていなかったので情報が入って来なかったが、どうやら戦い始めた時点で学習能力は消されていたらしい。

 確かにあらゆる面に置いてゼウスの全知全能はヴァイスの全知全能の上位に値すると見て良さそうである。

 もっとも、本物と同じ力を有するゼウスの、"弱った"分身から得た能力なのでそのうちなら本当の全知全能が手に入るかもしれないが、それはまだ遠い先の話だろう。


「さて、取り敢えずこの話は置いておこう。他の主力達は、既にある程度の決着を付けているようだ。と言っても主力の数が少ないだけだから一人の戦闘が終わっただけである程度と言えるのだがな」


「その様だね。そのうち此処に来るかもしれない。まあ、それを見れば良いンだけど、終わらせた一人……ライの能力で私の全知は無効化されている。ある程度は見えるけど全部見えないのは少し大変だね」


 ライに対する情報は、今のヴァイスではまだ完全に得られない。

 ライ自身の成長力が魔王の力と合わさる事で不完全な全知全能なら無効化出来ているようだ。

 それでもある程度の情報は得られるのだが、肝心な情報が得られないので少し困っていた。


「まあ、ライが来るにせよ来ないにせよ、主との決着は付けなくてはならないな」

「そうだね。それは当たり前だ」


 ──その瞬間、ゼウスがヴァイスに向けてビッグバンを放った。

 しかしそれも即死の技を当てる為の技。つまりビッグバンはそれを遂行する時、確実に当てる為に、ヴァイスを怯ませる為だけに出したモノ。宇宙誕生の際に生まれた大爆発ですら全知全能にとっては牽制にしかならないようだ。


「やれやれ。こンなモノを創ってしまって。新たな宇宙が誕生したらどうするつもりなンだい?」


「問題無かろう。誕生するよりよ前に主に破壊されるのは理解している。それは全ての時空でもそうだ。故に誕生する事は無い」


「断言したね。まあ、確かに宇宙崩壊規模の熱が直撃したら流石の私でも火傷しそうだ。ダメージを負わない能力でも纏おうかと考えてもそれを無効化されてしまうからね。出現した瞬間に掻き消すのが最善の策だ」


 ゼウスがいくらビッグバンを引き起こそうと、新たな宇宙が誕生する事は無い。本人が言うようにヴァイスがその前に全て消してしまうからだ。

 別に誕生しても問題はないが、何かと邪魔になりそうなので誕生しないに越した事は無いだろう。


「さて、更に仕掛けるか」

「"雷霆ケラウノス"。いきなり来たね」


 ビッグバンをカモフラージュに雷霆ケラウノスを取り出し、それを一閃。宇宙を焼き払い感電させるいかづちが放出された。

 ヴァイスは何でもないように話、その霆に片手を薙ぎ払って消し去る。それと同時にゼウスも踏み込んで加速した。


「近距離と中距離と遠距離。それらのどのやり方をもちいても容易く防がれてしまうな。今は使用頻度が少ない近接戦を中心に攻め立てた方が良さそうだ」


「フフ……どのやり方が適正なのかは分かり切っている筈なのにね」


「まあ、単純に考えて、触れると同時に攻撃が認定される時間差の少ない近接戦の方が全知全能相手には相応しいだろうな。これは全知でなくとも分かる事だ。遠距離や中距離の攻撃は到達する前に消されてしまう」


「そうだね。その通りだよ。その理屈から言えば全知全能の天敵はライって事だね。常に近接戦を仕掛けているし、ライ自身の成長力が計り知れない」


 ゼウス最善策を練り、隙の少なくなる近接戦を中心に戦闘を組み立てる事にした。

 本人も言っているように、自分が触れた瞬間に攻撃が成立する肉弾戦と触れるまで時間が掛かる遠、中距離では今のやり方が最適解だろう。

 本来はその者自身の出せる力以上の速度や威力で物が放たれるので遠距離や中距離のやり方が適正だが、物よりも遥かに強大な力を有する生身を持つゼウスやヴァイスからすれば自分から攻め立てた方が良いのである。


「……まあ、ライの事は一先ず置いておこうか。取り敢えず君が雷霆ケラウノスで仕掛けてくるなら、私も何か神話の武器でも使おうかな。さて、どれにする?」


「どうすると言われてもな。やり方くらい自分で選択すれば良いだろうに。それに、ライの事を置いておくと言ったが最初に話したのが主だぞ」


「ハハ、それもそうだね。じゃあ、今回は武器の方に集中しようか」


 それだけ告げ、ヴァイスは自分の周りに"グングニル"。"バイデント"。"トライデント"。"三叉槍トリシューラ"。"如意金箍棒にょいきんこぼう"。"金剛杵ヴァジュラ"など、様々な神話の武器を創造して眺めていた。

 それ以外にも"天羽々斬(あめのはばきり)"や"天叢雲剣あまのむらくものつるぎ"。"インドラの矢"など多種多様、どうやらこの世に顕在している全ての神話の武器を生み出したようだ。

 唯一勇者の剣だけは出しておらず、出せず、これらの武器をもちいてどうやって雷霆ケラウノスに対抗しようか悩んでいた。


「目には目を。歯には歯を。雷霆ケラウノスには同じ雷霆ケラウノスで挑ンだ方が良いかな? ……いや、全部で仕掛けよう」


「……疑問系で話ながら自己完結するか。確かにこの世には一撃で世界を揺るがす武器や使う者に必ず勝利を与える武器もある。……だが、残念だな。その全てがたった今消滅したところだ」


「あらら。本当にそうみたいだね。まあいいよ。どちらにしても世界を滅ぼす武器や、使うだけで勝利を与えてくれる武器。それらの能力は即座に無効化されてしまうのだからね」


 神話や伝承には、様々な武器が存在している。だが、その全ては一瞬にしてゼウスが消し去った。

 全知全能のヴァイスが創造した武器なので力も能力も全て同じ。完璧な存在だったが、やはり全知全能の前では如何なる力も意味無く終わってしまうようだ。


「さて、そうなると肉弾戦か。私一人じゃ大変だね。うン、良し。それならこうしよう」


「……。フム」


 武器が全て消されたその瞬間、ヴァイスが増えた。

 それは比喩ではなく、文字通り、読んで字の如くそのままの意味。ヴァイスは自分自身を増やし、仕掛ける態勢へと移行したのだ。

 その光景を見やり、ゼウスはヴァイス"達"に向けて言葉を発する。


「ざっと数十億人のお主か。その全てが全知全能。……いや、今この瞬間、更に増えたな。数十億の数十億乗。今も尚増え続けている。無限の無限乗。それを越えて絶対無限数の絶対無限乗と増え続けているようだな」


「ああ。その全ては全知全能の私さ。力も全て同じ。一人じゃ君を相手するのが大変だから絶対無限に増え続ける事にした。この空間に収まるかどうかは分からないけど、私が増えるたびに広がり続けているから問題は無さそうだね」


 全知であるゼウスやヴァイス以外には到底数え切れない数。それ程までにヴァイスが増殖していた。

 しかもそのヴァイスが全て全知全能と言うのだからたまったモノでは無いだろう。


「ついでに巨大化でもしようかな。その方が迫力あるだろう? まあ、上限が無いから絶対無限に大きくなり続けてしまうけど」


「巨大化するならまどろっこしい事はせずに一瞬でその大きさになれば良いだろうに。だが、例え巨大化したとしてもその大きさ相応の力には今のままでも到達出来るだろう」


「そうだね。その通りさ。だから言ったじゃないか。迫力を出したいとね」


「そんなもの、この数だけで十分だ。やれやれ。面倒だな。我も相応の数で対応するか」


 それだけ告げ。ゼウスは一瞬にしてヴァイスと同じ数になった。

 一人で相手に出来ない事も無いが、やはり数的にかなり面倒。一人のヴァイスすら仕留められていないのを考えれば同じ数になるのが一番だろう。

 もっとも、より有利に運ぶならその数を上回った方が良いのだが、それをすればヴァイスの数も同じになるだけ。意味がないので実行せずに同じ数でヴァイス達とゼウスたちが波のように攻め入った。


「「「…………」」」

「「「…………」」」


 無数の全知全能同士の衝突。周りを巻き込む可能性のある異能は使わず、肉弾戦が織り成される。

 しかしそれですら宇宙が崩壊の危機に瀕する破壊力。もはや異能の有無は関係の無い状態だった。

 ヴァイス達とゼウスたち。数え切れぬ程の人数となった者達の戦闘は、この世の全ての空間を埋め尽くさんとばかりに続くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ