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九百二十七話 シュヴァルツ、マギアvsラマーディ・アルドの主力

 ──"魔族の国・支配者の街・ラマーディ・アルド"。


「……。まさか、侵略者にこれ程の人数が加わっているとはな。二人と生物兵器の兵士は元から居たが……まさか支配者や幹部まで引き連れて来るか」


「他の主力は街の生物兵器達の相手で来れないだろうからな。シヴァさんが負傷して帰って来た時から色々と懸念はしていた。本格的な侵略活動が始まったという事か」


「困るわね。私たちだけで抑え切れるかしら」


「例えそれが無理でもシヴァ様が回復する時間を少しでも取らなくてはなりませんね。取り敢えず、気休め程度にしかなりませんが私が兵士を出しておきましょう」


 魔族の国、支配者の街である"ラマーディ・アルド"。そこではアルモ・シュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレドの四人が攻めて来たシュヴァルツとマギア。そして支配者のドラゴンを始めとした主力たちを前に話していた。

 その様子から余裕があるようにも見えるが、そんなものは微塵も無い。敵が敵。余裕などかましている暇も皆無だろう。


「いきなり支配者の側近達がお目見えか。ハッ、相手にとって不足はねェぜ」


「うーん……あの中にお気に入りは居ないかなぁ……見た目なら全員良くて力も申し分無いけど、何か違うなぁ。特に沢山の兵士を出したあの人……全体的に私と馬が合わなそう」


 シュヴァルツ達が連れてきた主力はドラゴン、斉天大聖・孫悟空、ハデスにポセイドンと確かな実力はあるが、魔族の国の幹部や個人的にマギアが気に入っているニュンフェなどは連れて来ていなかった。

 それは逆に正気に戻される事を懸念しての行動。残った魔族のアスワドやラビアはマギアのお気に入り。加えて前述したようにニュンフェもその一人。四神や"ヒノモト"の神々は本人達が戦った訳ではなくまだよく分からないので連れていないのだろうが、全体的にマギアの意思が尊重されたかのような布陣だった。


「生物兵器。テメェらは主力との戦いに手を出すな。邪魔な周りの兵士共を片付けていろ。クク……俺は俺なりに楽しむ……!」


『『『…………』』』


「取り敢えず私も出向こうかな。特に、兵士を沢山出しているあの人は私が直々に倒したい気分。ヴァイス流じゃなくて、私的には全体的に合格点は超越しているんだけど、なんか態度が気に入らない」


 シュヴァルツは生物兵器の兵士達を下げ、他の兵士達と戦わせる。他にも手出しするのはシュヴァルツとマギア、ハデスにポセイドンのみ。ドラゴンと孫悟空は一時的に待機させており、数では丁度合うように揃えていた。

 そんなマギアはというと、何となくシュタラを目の敵にするように構える。見た目も含めて全てに合格はしているのだが、何となく気に食わないとの事。

 その理由は定かではないが、本当にただ何となくというだけだろう。

 次の瞬間、先ずシュヴァルツが小手調べも兼ねて踏み込んだ。


「仕掛けるぜ! "破壊ブレイク"!」

「ならば防ぐか。"震動ハザ・オーリア"!」


 踏み込むと同時に破壊魔術を放ち、それをズハルが震動の災害魔術で防ぐ。

 空間を砕く破壊魔術と空間に干渉して震動を引き起こす震動魔術。それらは性質的に近いが近いからこそ相反し、二つの破壊によって空間が崩壊した。


「魔術は効きにくいか。なら体術だ!」

「……ッ!」


 破壊魔術が防がれ、隙を突かなくては当てるのが難しいと判断したシュヴァルツがズハルの腕を伝い、その側頭部に蹴りを打ち付けた。

 ズハルは咄嗟に腕でその蹴りを防ぎ、もう一度蹴って一瞬数センチ距離を離れたシュヴァルツが踏み込みと同時にその腹部へ蹴りを突き刺しその身体を吹き飛ばした。

 その後を追い、一瞬で追い付いたシュヴァルツは拳を放ち、その顔を殴打する。それによって吹き飛んでいたズハルは大地に埋め込まれ、巨大な粉塵と共にクレーターか形成される。


「ズハルさん!」

「貴女の相手は私だよ! 支配者の側近さん!」

「……っ! 速いですね……!」


 吹き飛ばされたのは一瞬の出来事。シュタラが反応を示した瞬間に粉塵が舞い上がっており、その眼前にはマギアが迫っていた。


「貴女、かなり好みの見た目だけど、何か気に入らないから倒すね! "女王の吐息(クイーン・ブレス)"!」


「……ッ! 理不尽な理由ですね……! 私、何かしましたか?」


 リッチとしての力を込め、シュタラに向けて放った風魔術。それをシュタラは魔力を込めた両腕でガードするが全身が包み込まれて吹き飛び、"ラマーディ・アルド"の街を粉砕しながら何処かへ着弾した。


「……」

「……っ。なんだ、コイツ……速い……!」


「……っ! 何処かで見た事があるような……!」

「……」


 その一方でウラヌスとオターレドがハデスとポセイドンによって襲撃を受けており、二人は何とか二人の動きに追い付いて魔力を込め、そのままけしかけた。


「一旦止まれ……! "重力ジャーディビーヤ"……!」


「ええ、落ち着きなさい! "洪水ファヤダーン"……!」


 そして放った、重力の災害魔術に洪水の災害魔術。その二つはウラヌスとオターレドに向けて直進していたハデスとポセイドンに直撃し、


「……」

「……なっ……!」


「……」

「まさか……!」


 容易く打ち砕かれ、二人の身体は蹴り飛ばされた。

 重力を抜け出したハデスはウラヌスの腹部に蹴りを放って吹き飛ばし、ウラヌスは吐血して街中に粉塵を舞い上げながら消え去る。オターレドも構わず蹴り飛ばされ、血を吐いて消える。同時に二人は今一度踏み込み、ウラヌスとオターレド目掛けて加速した。


「……ッ! だったら……! ブラックホールに匹敵する重力を……!」


「……」


 既に眼前にはハデスが来ている。ウラヌスは重力魔術を一点に集中させ、光をも捕らえるブラックホール並みの重力を形成して仕掛ける。

 本来ならブラックホール一つで一瞬も経たずに世界が崩壊する。しかしそうも言っていられないので放ったのだが、


「……」

「ガハッ……! これも……駄目なのか……!」


 ハデスは難なく抜け出し、そのまま腹部に拳を叩き付けてその意識を奪う。

 一瞬にして魔族の国の支配者の側近ウラヌスがやられてしまい、オターレドとポセイドンの戦闘も決着が付こうとしていた。


「そんな……魔力で強化した高圧水も水圧も雪崩も何も効かないなんて……!」


「……」

「……ッ! カハッ……そん……な……」


 様々な力をもちいて仕掛けていたが、それも全て無駄に終わる。元々オターレドは洪水。その洪水を生み出す要因である海の神であるポセイドンに勝てる道理など始めからなかったのだ。

 ポセイドンもオターレドの腹部に拳を打ち付け、整った顔で吐瀉物と血を吐いたオターレドは意識を失う。

 侵略シュヴァルツ一行。その強さは、もはや主力クラスですら遠く及ばぬ存在となっていた。



*****



「早くも決着が付いたみたいだな。まあ、ハデスとポセイドンが相手となりゃ、俺クラスじゃねェと瞬殺だわな」


「ハデスに……ポセイドンだと……!? そんな奴等まで仲間にしていたのか、テメェら……!」


「いや、仲間じゃねェよ。だからといって使い捨ての存在という訳でもない。ただ操っているだけだからな。実力的に言や、かなりのモノとだけ言っておくか」


 ハデスにポセイドン。その名くらいなら当然聞いた事がある。

 ズハルは驚愕の表情を浮かべ、シュヴァルツは返答と同時に構え直した。


「そいつら曰く、俺、神になったらしいぜ? 馬鹿馬鹿しい事だが、取り敢えずその力をテメェで試すよ」


「神に……? ハッ、確かに馬鹿馬鹿しいかもしれねェな。だが、前に感じた気配よりかなり強大な力になっているのは見て取れる。いつの間にそんな覚醒したんだテメェ」


「知らねェよ」


 シュヴァルツの言葉に返し、シュヴァルツの身体を蹴り飛ばして距離を置くズハル。確かに実力の向上は感じているようだが、イマイチよく分からない。本人からしてもである。

 故に、シュヴァルツは片手に力を込めた。


ー事で、有言実行を今やろう」

「やってみろ……返り討ちにしてやる……!」


 シュヴァルツの言葉に返答しつつズハルも力を込め、互いに向き直る。

 その刹那、二人は同時に込めた力を放出した。


「"惑星破壊地震ナジュム・タドミール・ゼルザール"!!」

「"空間完全破壊スペース・フル・ディストラクション"!!」


 放たれたのは、世界を崩壊させる震動と星その物を空間ごと破壊する破壊魔術。その二つが互いにぶつかり合う事で星への影響を弱め、次の瞬間に破壊魔術は震動をも破壊した。


「なっ……!」


 反応する間もなく、破壊魔術に飲み込まれるズハル。殺すつもりはないので殺傷力は抑えているが、それでもズハル最大の技を容易く砕いた。


「これでしめェだ。か、本当にかなり強化されてんな。俺」


 ズハルの意識は奪い、全くの負傷もせずに掴んだ勝利から自身の実力の向上を改めて実感するシュヴァルツ。

 ウラヌス、オターレドに続き、ズハルも戦闘続行が不可能になる。



*****



「はぁ……。本当に……一体何の恨みがあって私を? 正直言って迷惑です」


「恨みなんて無いよ。何となく気に入らないってだけだね。多分、これは私の憶測に過ぎないけど性格かな? 私と貴女の性格は真逆。だから気に入らないのかも。だけど出会い方次第なら親友になれるかな?」


「……。憶測も何も。貴女の感覚でしょうに。しかし、やられっぱなしというのは私も気に入りませんね。私もやれる全ての力をもちいて貴女を滅ぼします」


 それだけ告げ、シュタラは魔力から様々な武器を形成した。

 本来のシュタラは兵力を増やし、数で圧倒する戦い方だが、基本的に主力クラスには通じない。その為にも自分だけを増やす分身などもあるが、それもマギアには効果が薄いだろう。

 だからこそ残った全ての魔力を武器に変換し、様々な武器を生み出したのだ。


「剣に弓矢に銃に爆弾。後は光を熱に干渉させて切れ味を増幅させる特殊な剣に類似の光魔術を生み出す銃。アハハ、多彩だね♪」


 多種多様の武器。それを生み出す力はヘパイストスの力にも類似しているが、根本的な部分は違う。あくまで魔力から形成しているだけである。

 それを見たマギアは性格云々(うんぬん)て置いた称賛を与え、それに対してシュタラは苦い顔で返答する。


「いえ、これは私の力ではありません。この全てはこれから常人が生み出す武器です。今世界中の兵士達が使っている戦争の道具は全て力無き常人が生み出したもの。人災を司る私はこれからも争いが続き、武器が如何なる進化を遂げるのかもお見通し。最大級の破壊力を誇る武器はこの爆弾ですね」


「爆弾? 普通の爆弾よりは大きいね」


 シュタラの司る事柄から、シュタラは今後世界の進行によってどんな武器が生み出され、どんな人災が起こるのかも推測出来る。

 その中でも最大級の破壊力を誇るというそれに対してシュタラは説明を続ける。


「これは今から数百年後でしょうか……近い未来のうちに生み出される爆弾です。私の生み出した武器の中では真ん中くらいの年代ですけど、太陽に匹敵する熱量を誇り、その爆発から逃れた人々をも毒でむしばみ未来永劫苦しめる殺戮兵器です。純粋な破壊力では主力クラスの放つ力に遠く及びませんが……今、私の魔力で威力を増幅。この星をも崩壊させる破壊力にしました。故に、これで終わらせます」


「ふうん? この星諸ともねぇ。まあ、良いんじゃないの? 既に何人かそれを実行しているし、私が相殺する事を願って貴女は説明したんでしょ?」


「それについてはノーコメントで」


 おそらく常人が生み出すかもしれない兵器の中では最大級の威力を誇る兵器。今更太陽の温度や後に響く毒など大した事はないが、それでも常人が生み出すかもしれないという事にしては見事と言えるだろう。

 それはシュタラが更に強化し、周りに顕在させた武器と共に全ての銃口と剣尖をマギアに向けた。


「それでは……終わらせます……!」

「うん。さっき聞いた♪ ──"女王の微笑み(クイーン・スマイル)"!」


 そして放たれた、強大な破壊力を秘める武器と魔術。

 剣は槍のように突き進んで空気を貫き、矢や銃弾も一気に放たれる。だがそれらはまだまだ序の口。様々な爆弾による大爆発が巻き起こり、最後に最大級の破壊力を誇る爆弾によって半円形の巨大な爆発が包み込んだ。

 しかしマギアの魔力はそれら全てを包み込み、所々に空いた穴からまるで魔力が笑っているかのような形となり、全ての破壊を吸収。その瞬間、シュタラの全身もそのまま覆い尽くされた。


「……!? まさか……!」


「そう。女王は全ての愚行を笑って許して上げるよ♪ だって人災が生み出す全ての破壊は──全部自分に返って来るからね♪」


 マギアが放った魔術は反射技。全ての破壊を吸収し、飲み込み、それを繰り出したシュタラをも包み込む。その瞬間、魔力の中ではその全ての破壊がシュタラの身体に刻まれた。

 女王は自ら手を下さない。何故なら、下さず笑っているだけで勝手に相手が自滅するのだから。


「さて、"回復ヒール"。このままだと死んじゃうからね。女王様は貴女を生かしてあげるよ。アルモ・シュタラちゃん。何となく気に入らないだけで、嫌いって訳じゃないからね♪」


 放っておけばシュタラは今の攻撃で死していた。故にマギアは意識が戻らない程度の治療を施し、シュタラを生かし続ける。

 これによってシュタラの出した兵士達は全てが消え去り、シュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレドの四人は全員が意識を失った。

 そしてシュヴァルツとマギアと操った主力たち。"ラマーディ・アルド"の出入口付近での戦闘は早いうちに決着が付く。

 ヴァイスに続き、街を護衛する主力を倒したシュヴァルツとマギアも従来の目的通り支配者の元に向かうのだった。

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