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九百七話 ライ達vs魔王

「魔王と言っても、実力的には俺の方が上だろ!」


「ああ、魔王の力なら俺も宿している。違いと言えば相手の戦い方が変わっただけだ」


 ライ(喜)とライ(冷)は魔王ライに向けて踏み出し、言葉では言い表す事の出来ぬ速度で加速した。

 魔王が表に出て来たとは言え、実力的には確かに向こうのライ達が上。故に魔王にも見切れぬ速度だが、


【ハッ、テメェとは何度も一緒に戦っているからな。根本的には違う存在だが、動きを見切る事なら出来るぜ!】


「「……!」」


 ライ達が迫っていた方向に向けて魔王ライは両手を使い、そんな二人の腕を掴んで捕らえる。

 ライの動きは既に熟知している。例えそれが自分の宿るライでなくてもだ。

 だからこそ魔王ライは捉える事が出来、完全に見切って捕らえられたのだ。


【どんなに速くても、来る場所が分かってりゃ捕まえられんだろ?】


「成る程な。力自体はそのままだけど、それを経験でカバーしているのか」


「確かに確かな強敵だな。姿形はさっきと同じだけど、中身が違うだけでこうも変わるのか」


 捕らえられたライ達は魔王ライによって放られ、目にも止まらぬ速度で吹き飛ぶが即座に体勢を立て直してその力を推測。その瞬間で最善の策を講じ、魔王ライに向けて加速と同時に連撃を打ち付ける。

 魔王ライは二人の放ったその全てを片手で受け流して防ぎ、一瞬の隙を突いて腹部に蹴りと拳を叩き付ける。同時に二人の腕を掴み、互いの頭を衝突させて引き離し、魔力を込めて魔王の爆発魔術でその身体を吹き飛ばした。


「……ッ! 力自体はそのままだけど、本当に魔王の意志が宿っているんだな……! 魔術の質が向上している……!」


「ああ……! その魔術の質なら俺達よりも上かもしれない……! それに、耐久面は変わらなそうだけど、だからこそ正面から防ぐんじゃなくて受け流すような防御をしている……自分の力を過信せず、出来る範囲と出来ない範囲を見極めた攻防だ……!」


【ハッハ! 俺様の力を詳しく解説してくれるのは良いな! その力を警戒されるってのは悪くない気分だ!】


 ライ達が魔王ライの実力を推察し、それを聞いた魔王ライが気分良く笑う。

 魔王にとって警戒される事は自分の力を誇示出来ている証拠という事になる。基本的に事故顕示欲も高い魔王はそれが嬉しいのだろう。


「快楽主義者の魔王らしい考え方だな。少しの実力差なんて関係無いって言った雰囲気だ……!」


「厄介な相手だな……!」


 魔王ライによって少しはダメージを負ったが、まだまだ問題無い様子のライ達二人は魔王ライとの距離を詰める。

 またもや鋭く、言葉で言い表せない速度だが魔王ライは軽く身を捻ってかわし、二人の頭上にかかととしを食らわせた。


「「……ッ!」」


 それを受けたライ達は何処かの方向に落下し、その途中で身体を止める。同時に加速して迫り、再び魔王ライの眼前に迫った。


【ハッ、若干焦りが出てんな。動きに考えが無くなって単調になってるぜ? こうなったら直線的に攻めているのと同じだ。俺より速くても見切れる】


「「……!」」


 その様子からライ達の動きを魔王ライが指摘し、攻撃はかわして二人の鼻を拳で殴打する。即座に前髪を掴んで身体を引き寄せ、掴んだ手を後頭部に移し変えてより力強く寄せる。同時に顔へ膝蹴りを打ち付けて片方のライ(喜)をけ反らせ、ライ(冷)の腹部を蹴り抜いて吹き飛ばした。

 それによって二人は怯み、その隙を突いた魔王ライは魔力を放出。魔力からなる漆黒の塊が二人の身体を打ち抜き、魔力による爆発が巻き起こった。

 それはただの爆発ではない。魔王の魔力からなる爆発というだけでかなりの破壊力を誇るが、直接的な魔力による爆発。その威力は底知れず、宇宙を一つ破壊してもとどまらぬものだろう。


「今の俺達なら多元宇宙破壊規模の攻撃にも耐えられるけど……ハハ、流石にこの規模の攻撃となると少し痛いな」


「ああ。まだまともな一撃は与えられていない……これが魔王の実力か……!」


【ハッハ! 流石に頑丈だな! 大抵の奴なら消滅している攻撃だったが、まだまだ楽しめそうじゃねェか!】


 宇宙破壊規模の爆発によって少しダメージを負った様子のライ達。それだけなら何ら問題は無いが、ライ達は魔王ライに一撃も与えていない。それは二人にとってマズイ事だろう。

 と言うのも、単純に考えるとこのままの攻防が続けば地道にライ達は傷を負い、後々疲労なども集って動けなくなるのは目に見えているからだ。


「相手はまだ余裕……確かに俺達は少し直線的に攻め過ぎていたな。動きに変化を付けなくちゃならないか……!」


「そうだな。アイツの言葉に従うみたいであまり良い気分じゃないけど、やり方を変えるか……!」


 余裕のある魔王ライを見やり、ライ(喜)とライ(冷)は少し冷静になって行動を改める事にした。

 先程まで余裕のあった相手が急に倒し難くなった。それ故の焦りが生じて単調な読みやすい動きになってしまう。それでは相手の思う壺だろう。


「先ず……魔王は自分から仕掛けていない……基本的に俺達の動きをカウンターで返す感じだ」


「ハハ、そうだな。となると此方から積極的には仕掛けず、遠距離や中距離から仕掛けられる攻撃を行うのが良さそうだ」


「ああ。相手が来るのを迎え撃てば自ずとチャンスは掴める筈だ」


 魔王ライとライ(喜)とライ(冷)。三人の純粋な力で言えば二人のライが同じ程。そして一番下なのが魔王ライだが、二人のライ達は物の見事に翻弄ほんろうされてしまっていた。

 だがしかし、その辺は流石のライ達。即座に今の魔王ライの攻撃方法を理解し、攻撃のパターンを修正した。

 冷静且つ慎重に。魔王ライではなく、魔王を相手取るにはそれくらい無ければ到底及ばないだろう。


【ハッ、テメェらの作戦。こっからじゃ良くは聞こえ無かったが大体分かったぜ? 要するに俺が攻めて来るのを待ってんだろ? 唐突に攻撃の手を止めた今、推測するのは容易い】


「バレていたな。此処と彼処じゃ距離はある。だからまだ推測の範囲みたいだけど、どうする?」


「そうだな……まあ、だからと言って下手に動いたらやられる。待機が安定だろうさ」


 ライ(喜)とライ(冷)の会話は魔王ライには聞こえていなかったが、その動きの変化から何を目論んでいるのかは大凡おおよそ理解した様子の魔王ライ

 なので魔王ライは高らかに笑い声を上げて言葉を続けた。


【クッハッハッハッ! そう警戒すんなよ! お望み通り……正面から仕掛けてやるからな!】


「「……!」」


 その刹那、魔王ライはあるのかどうか分からない空気を蹴って加速し、別次元にある世界を崩壊させながら突き進んだ。

 その世界はゼウスの手によって直されるので気にする必要も無い。構わずけしかけ、二人のライはそんな魔王ライに構え直した。


「誘いに乗ってくれるのは有り難いな。んじゃ、遠慮無くやらせて貰うか……!」


「アンタの動きなら、やっぱり見切れるからな!」


 魔王ライが拳を放ち、ライ(喜)とライ(冷)も拳を放ってそれを受け止める。それによって正面衝突が起こり、外の世界が崩壊する。

 しかしそれは関係無く、ライ達三人は弾かれるように飛ばされた。


【ハッハ! イッテェ痛ェ! 外的要因による痛みは久々だぜ! やっぱ俺の力は良い力だな!】


「ハハ、自画自賛かよ……けど、まさか普通に受け止めるなんてな。触れた感覚の中に魔力の気配があったから、魔力を緩衝材代わりにして威力を弱めたみたいだ」


「普通の魔力ならまだしも、魔王の魔力からなる緩衝材……一筋縄じゃいかないか」


 手を払うように拳を振るい、笑いながら話す魔王ライ。二人はライの肉体で魔王(元)が如何様にして受け止めたのかを推測する。

 それは魔王の魔力からなるモノによって威力が弱められたと理解したようだが、逆に手強い存在だと改めて知ってしまった。


「それなら……何とかして防がれないように仕掛けるか。見切られたら十中八九防がれる。ほんのりとダメージはあるんだろうけど、それじゃジリ貧だ」


「そうだな。それが難しいんだけど、やらなきゃ勝てない……!」


 だが、こう言った性格も確かにライのようだ。

 仲間に関する感情は、片方は重く、片方は皆無。しかしながら戦闘に置いて諦めるという姿勢は見せない。

 元より純粋な力では現在のライ(喜)とライ(冷)の方が上。なので引き下がる必要も無いのだ。


【ハッハ! 諦めの悪さはまだ面白いな! だが、テメェらの中で一番自信がある"強さ"。それを正面から打ち砕いてやるよ!】


「舐めるな!」

「俺が強さを失ったら……もう何も残らない!」


 魔王ライはそんなライ達に向けて迫り、二人のライが構えるように向き直る。刹那に三人は互いの眼前に捉える。それと同時に拳が放たれ、多元宇宙が崩壊した。

 此処からでは外で何が起こっているのかは不明。しかし幾ら暴れようと問題が無い為、構わず三人はせめぎ合う。

 拳と拳がぶつかり合って衝撃波を散らし、ライ(喜)による拳を腕で受け止め、その隙を突いて放たれたライ(冷)の蹴りは見切ってかわす。そのまま受け止めた腕を掴んでライ(喜)を振り回し、鈍器のように扱ってライ(冷)にライ(喜)をぶつけた。


「「……っ」」


【ハッ! まだまだ足りねェぞ! テメェらはそんなに弱いのか!?】


「「……!」」


 魔王ライの言葉に反応を示し、空中で体勢を変えた次の瞬間に踏み出す。

 先程よりも素早く鋭くけしかけ、その全てを魔王ライかわす。同時に体勢を変え、後ろ回し蹴りで二人の身体を吹き飛ばした。


【その程度かよ。……道理で。そんなんじゃ、仲間を護れねェ訳だ。それに、仲間を欲しがらない理由も分かる。雑魚のテメェらに付いて行く存在が居る訳もねェからな!】


「「…………!!」」


 吹き飛ばすと同時に告げられた魔王ライの言葉。それを聞いたライ(喜)とライ(冷)は大きく反応を示し、眉間にシワを寄せて見るからに苛立つ。

 その言葉は二人のライ達にとって禁句。二人は一気に踏み込み、魔王ライに向けて加速した。


「仲間を護れ無いだと……!? 確かに大切な仲間は失った……だからこそ、この力を手に入れたんだ!!」


「雑魚だから仲間を欲しがらないだと……!? その逆だ! 最強は俺! だからこそ仲間なんて必要も存在も価値も無い!!」


【……ッ!】


 二人のライは先程よりも更に速い速度で迫り、そのまま魔王ライの身体を拳で貫いた。

 それを受けた魔王ライは空中に固定され、そんな魔王ライから拳を引き抜きそのまま蹴り飛ばす。

 魔王ライは鮮血の軌跡を描きながら吹き飛び、自身の魔術にて壁を形成。自分の動きを自分で止める。


【……ッハ……やるじゃねェか。んじゃ、後はこれくらいで良いか……】


「「……まだまだァ!!」」


 そんな魔王ライの元に二人のライが迫り、追撃しようと拳を突き出す。怒りによって力が更に上乗せされている現在、この一挙一動で顕在する全ての多元宇宙を消し飛ばしてしまうかもしれない。

 魔王ライ。もとい──ライはフッと笑って一言。


「ああ……ご苦労様。魔王……!」

「「……!?」」


 魔王への礼を言い、二人のライをカウンターのような一撃で吹き飛ばした。

 同時に魔力で傷を塞ぎ、二人に向けて迫り行き、言葉を続ける。


「感覚は分かったよ。お陰で二歩先に飛んで、今の俺はアンタらと同じくらいの力になれた……!」


「なんだと? そんな訳あるか! アンタの力は精々魔王の八割に匹敵する程度。魔王の全力に匹敵する俺達に、もう追い付いただと……!?」


「いや、有り得るかもしれない。考えてみれば、魔王に身を委ねる事で致命傷になら無い程度の攻撃を受けていた……。加えてそこから力の情報収集をする。動きも覚えた筈……俺ならそこから一気に向上するのもおかしくない」


 ライの言葉。ライ(喜)とライ(冷)に追い付いた。それは敵対していた本人からすれば有り得ない事。……でもない。

 ライは時折、一気に成長する事がある。

 地獄では魔王の四割に匹敵する力から七割へと飛び越え、ポセイドンとの戦いではそこから更に一段階上乗せした。

 故に、ライの無限の成長力なら強敵と相対する。それだけで一気に成長する事も出来るのだ。


「けど、アンタらの考えも良く分かったよ。アンタは仲間を失った……アンタは仲間と出会わなかった。それと引き換えに得た力……逆にそれが無意識のうちに障害になっているって事だ」


「……っ! ハッ、そんな事はただの推測だろ? 俺には関係無い……俺にもう仲間は居ない……! だからこそ、俺が世界を……! 宇宙を……! 全ての次元を平和にして存在の証明をするんだ!」


「俺は元々仲間は要らない! 仲間って言うのは、言い方を変えれば自分にとって都合の良い存在だ! いや、それが真理だ! だからこそ全てを切り捨て、俺は俺の道を行く!」


「じゃあ俺が……アンタらをその道から引き摺り出すとしようか」


「「ふざけるな!!」」


 ライの言葉にライ(喜)とライ(冷)は見て分かる動揺を浮かべながら一気に攻め立てる。ライはそれに向き直り、見切れるようになった動きを見切って迎え撃つ。

 魔王(元)のお陰で更に成長出来たライの織り成す、自分との対話(戦い)。それを終わらせる為にも、ライは全力を出して相手取るのだった。

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