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八百五十四話 斉天大聖の分身、ユニコーンvs巨大骨・決着。斉天大聖vs総大将・続行

 ──"ヒノモト・竹林"。


『『『"妖術"』』』

『『『"過重の術"!』』』

『……!』


 様々な場所で戦闘が終わりを迎える一方で、孫悟空の分身たちはガシャ髑髏ドクロに向けて質量を上乗せした拳を放ち、その身体を吹き飛ばした。

 吹き飛ばされたガシャ髑髏ドクロは竹が無数に立ち並ぶ竹林を突き進み、砂塵を舞い上げながら停止する。


『どうせ直ぐに再生するんだろ?』

『そうだろうな。簡単に終わる訳がねえ』

『生物兵器の応用だしな。再生力はさっきも見た』

『攻撃自体はちゃんと当たるんだけどな』

『そう言った方面で面倒だな』


 孫悟空たちの予想通り、倒れたガシャ髑髏ドクロは再生しながら起き上がる。

 起き上がったその瞬間に巨腕を振り下ろし、竹林に大きな砂塵を舞い上げた。

 見ての通り、現在孫悟空たちとユニコーンは"ヒノモト"に顕在する竹林に居た。ガシャ髑髏ドクロとの戦闘で街中から此処まで移動したが、戦闘の余波に場所はあまり関係無い。強いて言えば人が居ない事が利点だろう。


『やはり私は力不足のようですね。しかし、何をするべきでしょうか……』


 孫悟空たちとガシャ髑髏ドクロの戦闘を見やり、ユニコーンは獣の姿になったは良いがあまり役に立っていない事を気に掛けていた。

 素早く力が強いとされるユニコーンだが、それはあくまで通常サイズの人間やそれと同等の大きさを誇る者に対してのみ有効。巨大で頑丈。再生力も高いガシャ髑髏ドクロ。ユニコーンの大きさでは戦い難い相手だった。


『取り敢えず、なるべく破壊くらいはしておきましょうか』


『……!』


 踏み込み、疾風の如き速度で加速する。一瞬にしてガシャ髑髏ドクロを通り過ぎ、その巨躯の身体を貫通して振り返る。


『やはり再生はしますね』

『……』


 風穴が空き、一度は崩れ落ちたガシャ髑髏ドクロ。しかし次の瞬間には再生を開始しており、骨体は何ともなかったかのように元通りになった。

 そんなガシャ髑髏ドクロに向けて孫悟空たちが再び迫り、数十人で一気に蹴りを放つ。


『『『オラァ!』』』

『……!』


 そんな孫悟空たちの蹴りを受けたガシャ髑髏ドクロは今一度倒れ込み、上から無数の孫悟空が落下して一撃を与え粉砕した。


『……』


 そして再生する。しかし今度は再生中にも隙は見せず、無数の骨の欠片が弾丸のように孫悟空たちとユニコーンに向けて放たれた。

 それらを孫悟空たちとユニコーンはかわし、その様子を窺う。


『骨の弾丸ってどういう原理だよ……』

『確かに至るところに骨の欠片は転がっているけどよ……』

『自由に操れんのか?』


『……。もしかしたら妖力で操っているのかもしれませんね。あの身体、百鬼夜行の妖力が使われていると言っておりましたし妖力で操作している可能性があります』


 骨の弾丸。何故ガシャ髑髏ドクロにその様な力があるのかは分からないが、妖力があるのなら何らかの理由はあるのだろうと納得する事にした。

 ともあれ、何度も再生するが為にキリが無いガシャ髑髏ドクロの存在。早いところ何とかして孫悟空の本体の元に行って手助けでもしたいところだが、この巨体で暴れられてはたまったものではない。


『……。ふむ、何度かやっているように物理的な力じゃ話になりませんね。という事で、封印をしてみるというのはどうでしょうか? 無論、分身の貴方たちが使える封印術は限られています。暫く閉じ込めるという方面での封印を施しませんか?』


 ガシャ髑髏ドクロは倒せない。本来の斉天大聖孫悟空なら倒せると思うが、分身とユニコーンでは荷が重いという事だ。

 それならばとユニコーンは倒すのではなく閉じ込める方向で話を進めた。分身では完全な封印術は使えないが、閉じ込めるだけなら可能と考えたのである。


『閉じ込める封印か。悪くないな。それならガシャ髑髏ドクロを無効化出来る』

『そうだな。確かにその通りだ』

『よし、それに乗ろう』


 それは名案。孫悟空たちは口を揃えてユニコーンの言葉に乗り、ガシャ髑髏ドクロを閉じ込める方向に持っていく事にした。


『じゃあ、先ずは動きを止める。その後で閉じ込めっか』

『『『よっしゃ!』』』

『分かりました!』


 策が決まるや否や、半数の孫悟空たちとユニコーンはガシャ髑髏ドクロの動きを止めるべく駆け出した。その間に他の孫悟空たちが分身の少ない妖力を込めており、一気に仕掛ける。


『取り敢えず、また身体をバラバラにするぞ!』

『『『応ッ!!』』』

『ええ!』


 妖力は封印班の元に回し、半数の孫悟空たちは妖力を使わず肉体的な力でけしかける。

 ガシャ髑髏ドクロの動きは鈍い。妖術を使わずとも何とかなりそうだ。


『『『オラァ!』』』

『ハァッ!』


 分身たちは力を合わせてガシャ髑髏ドクロの頭を殴り付け、ユニコーンが高速で突き進んで貫く。それによってガシャ髑髏ドクロの身体は砕け、音を立てて崩れ落ちる。

 生物兵器の応用だからか、攻撃は単調なもの。なので苦も無くかわす事が出来、攻撃を当てる事も出来ていた。この様に無機質な存在。さっさと片付けた方が得だろう。


『……』

『また再生してるぞ!』

『構わねえ! 動きを止めるのが目的だからな! 術の準備が出来るまで壊し続けろ!』

『『『オラァ━━ッ!!』』』

『私もお手伝いします!』


 砕かれても再生するガシャ髑髏ドクロ。しかしそれはどうでもいい事。孫悟空たちも言っているように、あくまで動きを止める事だけが目的だからである。

 孫悟空たちは近接戦で身体を砕いていき、ユニコーンは角をもちいての頭突きに背面蹴りで粉砕する。その様なやり取りが暫く続く中、孫悟空の分身たちは徐々に妖力を高めていた。

 分身同士なら妖力を分け合う事も出来るので、仕掛けている分身たちは自分の存在を維持する為の妖力しか残していない。時間が経てば経つ程に攻めている方の分身が消え去って行く。


『まだか!?』

『そろそろ限界だ……!』

『あれ程の巨体だからな。完全に封じ込めるとなると、数分は要する……!』

『数分か。十分は無くて本来なら短い時間だが、今は中々面倒だな……!』


 封印術は使えないが、封印術に匹敵する妖術を使う予定の孫悟空たち。ガシャ髑髏ドクロを閉じ込める程の大きさを有するモノとなると、そこそこ時間も掛かるのだろう。

 なのでそれまでの辛抱ではあるが、少し大変である。


『ま、耐えるっきゃねえな!』

『ああ。そうしなくちゃ、無駄な戦いが長引くだけだ』

『何の利益もない、本当に無駄な戦いだな。ガシャ髑髏ドクロとの戦闘は……!』

『いや、コイツを阻止するだけでそれなりに利益は生じるかも知れねえだろ?』

『そうだそうだ。何かの利益はあるって考えなくちゃ妖力の無駄遣いってなっちまう!』

『そ、そうか。悪かったよ、俺』


『……。同一人物同士で賑やかですね……』


 分身たちの会話とユニコーンのツッコミ。それはて置き、数分(こら)えるだけでこの場を抑えられると分かった今、やるべき事はその為の時間稼ぎである。

 孫悟空たちとユニコーンは再びガシャ髑髏ドクロの元に突き進み、分身たちが何体か消え去りながらも破壊を繰り返し動きを止めていた。


『……!』

『『『……っと……!』』』


 だが、無論の事ガシャ髑髏ドクロも反撃をしない訳が無い。

 基本的に破壊しているので粉々の状態が多いが、先程のように骨の欠片を弾丸のように飛ばしたり再生途中ながら巨腕をもちいて仕掛けたりしている。それもあって時間稼ぎも楽という訳では無かった。

 だが、前述したように分身とは言え孫悟空たちやユニコーンにとってその動きは鈍い。楽では無いが、苦痛という訳でも無かった。


『待たせた! 妖力は込め終わったぜ!』

『ああ! 『バッチリだ!』

『これで封じられるかは分からねえけどな!』


 ──そしてその様なやり取りをしていた時、妖力を込めていた半数の孫悟空たちから声が掛かった。仕掛けていた分身は既に半数の半数が消え去っている。ユニコーン以外全滅も時間の問題だったが、同じ一刻を争う戦い。どうやら此方こちらの目的の方が早く達成されそうだ。


『後は完全に砕くだけ!』

『任せとけ!』

(シメ)の大仕事ですね……!』


 準備が終わったなら話は早い。残り僅かな孫悟空たちとユニコーンはもう一度ガシャ髑髏ドクロを砕き、封印の下準備を此方こちらも終えた。


『『『──"妖術・土壌封印の術"!』』』

『……!』


 終えた瞬間、刹那の時に土の波がガシャ髑髏ドクロに押し寄せ、その巨体を飲み込んだ。

 土壌というのは本来柔らかい土のある土地の事を示すが、だからこそそれによって波を作り出して飲み込んだのだ。

 その波を中心にガシャ髑髏ドクロの足元が泥濘ぬかるみ、徐々に身体を沈めて行く。孫悟空たちは最後に一言。


『『『続くぞ! "固化の術"!』』』


 土壌を固め、ガシャ髑髏ドクロの身体を完全に封じ込めた。その硬度は定かではないが、それなりの力を誇っているガシャ髑髏ドクロが自力で抜け出せないくらいではあるらしい。


『……!』

『『『……!』』』


 だが次の瞬間、そんな地面からガシャ髑髏ドクロの白い腕が生え、地上に居る数人の分身を消し去った。

 そこから連なるように白い骨が木々のように咲き誇り、暫く出現し続けて停止した。


『成る程。強固な大地も、鋭利な骨ならある程度は貫けるという事でしたか。しかし何重にも重なった土。流石のガシャ髑髏ドクロでも抜け出せないようです』


『まだ生きてんな。まあ、それはしょうがねえ。不死身だからな。……取り敢えず、残った力でこの上に土を重ねて更に封じるか』


『『『おっしゃ!』』』


 脳のないガシャ髑髏ドクロだが、方法を変えて攻めて来る行動を見せていた。

 どうやら学習するらしく、成長するタイプの生物兵器だったのだろう。しかし完全に姿を現す事は無く、残った孫悟空たちが最後の力を振り絞り、土壌の上に土壌を被せて封じ込めた。

 元々消え掛かっていた孫悟空たちは元の髪の毛に戻り、ユニコーンだけが残って辺りは静寂に包まれる。


『皆さん消えてしまいましたか。さて、私も早いところ本体の元に行かねばなりませんね……!』


 賑やかだった孫悟空たちの分身。たった一匹になったユニコーンはガシャ髑髏ドクロの埋まった地面を一瞥だけし、美しいたてがみなびかせながら疾風のような速度でその場から移動した。

 孫悟空たちとユニコーンが織り成すガシャ髑髏ドクロの戦闘は分身たちが犠牲になる事で決着が付く。残る戦闘はおそらく孫悟空の本体とぬらりひょんのモノだけだろう。



*****



『オラァ!』

「……っ!」


 孫悟空の分身たちとユニコーンによるガシャ髑髏ドクロとの戦闘が終わった頃、本体の斉天大聖孫悟空はぬらりひょんに向けて拳を放った。

 それをぬらりひょんは紙一重で避けるが孫悟空はそんなぬらりひょんの死角に回り込み、流れるように回し蹴りを打ち付けた。ぬらりひょんは咄嗟に刀で受け止めるがその衝撃を殺し切る事は出来ずに吹き飛ばされ、そこへ次の攻撃を放つ。


『伸びろ如意棒!』

「ぬぅ……!」


 放たれたのは亜光速で伸びる神珍鉄からなる如意金箍棒にょいきんこぼう。あと数撃食らったら敗北がほぼ確定するぬらりひょんは受ける訳にはいかないが、追撃に次ぐ追撃によって対処するのが困難を極めているようだ。それならこの隙を突くのが最善の策。孫悟空は攻撃を受け続けるぬらりひょんに向けて連続でけしかける。


『"妖術・石弾の術"!』

「それも妖術か?」


 遠距離なら自身が妖力からなる石を弾丸のように放ち、それを刀で受け流すぬらりひょん。そう、"受け止める"のではなく"受け流している"。

 それは孫悟空の実力を警戒しての事。態々(わざわざ)攻撃を受け止めていてはそれによって生じる衝撃で僅かな隙が生まれる。ぬらりひょんにとっては不都合だろう。なので受け流す事で次の攻撃に対応しようとしているのだ。


『ハッ、面倒だな。……つか、周りの爆音がほとんど聞こえなくなってやがんな。ある程度の戦いは終わったみてえだ』


「その様じゃな。まだ至るところで気配は感じるが、ワシの部下たちも何かと戦っておるのかのう」


 ふと耳を澄ますと、辺りで行われていた戦闘音は殆どが消えていた。その事から孫悟空は大凡おおよその戦闘が終わっていると理解し、ぬらりひょんも周りの音に耳を澄ませる。

 だが全ての戦いが終わった訳ではないらしく、主力程の強い気配ではないが小さな争いは行われているらしい。なので孫悟空は一言。


『んじゃ、それら全てをさっさと片付けるか』


「儂も気になるの。その様子ではお主らに心当たりが無い事も分かる。別の刺客かの」


『ハッ、利害は一致した。つまり互いに互いをぶちのめせば良いって訳だ』


「そうじゃな。それが一番手っ取り早い」


 孫悟空とぬらりひょんにとって心当たりの無い戦闘。気に掛ける二人は互いを打ち倒す事で確認しようと改めて構え直す。

 実力では孫悟空が一枚上手だが、ぬらりひょんも既に策は練っている筈。経験は互いに数千年。同じようなモノなので実力と策によって雌雄が決するだろう。

 孫悟空の分身たちとユニコーンはガシャ髑髏ドクロとの戦闘を終え、孫悟空とぬらりひょんの戦闘も決着に向けて進むのだった。

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