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八百二十九話 百鬼夜行の対策

 ──"人間の国・ヒノモト"。


「さて、そろそろ堅苦しい言葉遣いも必要ありませんね。まあ、話し方自体は変わっていなかったのですけど、圧を込めた声音……とでも言っておきましょうか」


 貴賓室にて、話し合いを終えたアマテラスは砕けた声音に戻して言葉を発した。

 従者なども居ないのに他人の前では主神として恥ずかしくないこの様な態度を取る。本人の性格とは少し違うのでよくやっているものである。


「ハハ。そう言えば、従者や側近のような者は居ないのですね。貴女が大丈夫と判断したからと言っても、外部から来た俺たちをもてなして良いのですか?」


 そしてライは、その事について気に掛けていた。

 ライたちは"ヒノモト"の住人ではない。加えて今現在の人間の国は侵略者騒動で大変な状態にある。にも関わらずライたちを受け入れた事は不思議だろう。

 対してアマテラスは笑みを浮かべながらライの言葉に返す。


「フフ。それはですね、この衣装に着替える時にモバーレズさん達の事を御伺いしたのですよ。ザラーム・モバーレズさん。斉天大聖・孫悟空さん。ユニコーンことユニコさん。いずれも魔族の国と幻獣の国の幹部。この城の皆さんにも御客人が来ていると言われており、宣戦布告などの様子も無いので信用していました。それで、そんな方々と知り合いならライさん達も悪い御方ではないと判断した次第です」


「成る程。確かに一国の主力が来て、敵意が無いなら問題無いと判断しますね。それでですか」


「はい♪」


 どうやら今着ている十二単じゅうにひとえに着替える時、その時は居たと思われる従者達からモバーレズたちの事について詳しく聞いていたらしい。

 モバーレズたちは他国の主力であり敵意はない。ライたちはそんなモバーレズたちと親しげ。それらを踏まえて問題無いと判断したようである。


「さて、今度こそある程度の話し合いも終わりましたね。まだ話足りないかもしれませんが、一先ずは切り上げましょう。私も百鬼夜行について個人的に色々と調べたいところですしね。他の主力たちもおりますので、"ヒノモト城"の探索や"ヒノモト"の街の探索など御好きに過ごしていてください」


「はあ……。街は兎も角、城の中の探索とか……その、良いのですか?」


 話し合いは終わった。アマテラスはこれから百鬼夜行について少し調べるらしいが、ライはこの城での自由を許していいのか訊ねた。

 城というものは謂わばその街の本拠地。大元。拠点。それ相応の情報もある筈なのだが、信頼してくれるとは言え自由に行動して良いというのは疑問だろう。

 しかし対するアマテラスは何でもないように言葉を返した。


「フフ、構いませんよ。このお城に機密情報などはありませんからね。まあ、私はこの城で雇っている身ですので従業員の給与などが所謂いわゆる機密情報になりうるかもしれませんが」


 曰く、この城には機密情報が無いらしい。あったとしても雇っている従業員関連の事くらいとの事。

 もしかしたら何か裏があるかもしれないが、どうやらその様な雰囲気でも無さそうである。アマテラスは他人を騙すような者では無さそうだ。

 何はともあれ、それならばとライはアマテラスの言葉に返した。


「そうですか。それならお言葉に甘えましょう。城に居る者達から情報を得られるかもしれませんし」


「ええ。それはいいですね。あと、普通にこの城を見学してみるのも良いですよ。見所はありますから」


「はい。他の主力からある程度話を聞いたら行動してみようと思います」


「フフ。先程も言ったように、この城と街を楽しんで行って下さいね♪」


 アマテラスの他に居るという主力達から話を聞く事と"ヒノモト城"の探索。まだまだやる事は残っている。百鬼夜行の事を調べるのも踏まえ、今日はまだこの城にて行動を続ける事にした。



*****



 その後、アマテラスは百鬼夜行について調べる為に貴賓室を立ち去り、貴賓室にはライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤンの五人とモバーレズ、孫悟空、ユニコの三人。計八人が残った。

 主力探しなどが今回の目的だが、それ以外には特にやる事が無い。なので一旦八人でどの様な行動に移るかなどを話し合う事にしたのだ。


「それで、百鬼夜行についてはアマテラスが調べてくれるみたいだけど、俺たちはどうする? 主に今夜以降の話でな。と言っても基本的に夜中の見張り役はどうするか。みたいな感じの話になりそうだ」


 百鬼夜行の目撃証言は夜。なのでライたちは今夜にでも調べてみようと考えているようだが、エマは兎も角ライたちが一晩中起きている訳にもいかない。だからこそ今は夜中の見張り役についての話し合いがメインである。


「まあ、先ず簡単に考えるなら私以外は夜通し過ごすのは難しいだろう。この街の幾つかの場所に二人以上の見張り役を付けて互いに仮眠を取りつつ行動を起こす……というのが基盤になりそつだな」


 百鬼夜行を見張るに当たって夜なのは確実。なのでエマが各種で何人かを配置につけて仮眠を取りつつという妥当な案を出した。

 ライたちもそれには同意のようであり、その言葉に頷いて返す。


「ああ。先ずはそんな感じになりそうだな。まあ、二人ずつって言うのも少し辛いかもしれないけど、結構な広さを誇っているこの街。最低限がそれだな」


「うん。私も賛成。まあ、翌日に眠るって事も出来ない訳じゃないし、それくらいで十分じゃないかな?」


「ああ。斉天大聖。お前も別に必ず睡眠を取る必要があるという訳では無いだろう?」


『まあな。別に惰眠をむさぼる事も出来るが、神仏の俺たちにとっちゃそれは娯楽のようなモノだからな。アンタの言うように必ず寝る必要は無い』


 二人は少ないかもしれないが、この街の広さから考えて妥当。レイの言うようにその気になれば次の日に寝ても良いので睡眠に関しては問題無さそうである。

 そしてフォンセが言ったように神仏という立場の斉天大聖・孫悟空には睡眠はあまり必要な事ではない。なので夜の行動ではエマと孫悟空が中心になりそうである。


「となると、後は誰が何処に付くかの配置だな。俺たちは八人。アマテラス達が手伝ってくれるとしても、取り敢えず今はその八人で考えよう。単純に分けるなら二人ずつの四組みが出来る訳だけど……」


「私と斉天大聖なら一人でも問題無さそうだな。二人ずつなのはあくまで仮眠を取る為。私たちは全員、百鬼夜行に簡単にやられるような柔な存在ではないからな。私と斉天大聖は一人として考えれば二人の余裕が出る。その二人がチームを組めば五組みに数を増やせるぞ?」


『ああ。俺も一人で問題ねえ。神仏だが奴等と同じ妖怪だからな。此方にも色々と考えはある』


 単純に考えれば八人を二人ずつの四組みに分ける方向だが、エマと孫悟空が一人で良いのならその数を更に一つ増やす事が出来る。

 二人。二人。二人。一人。一人の計五組み。たった一組み増えるだけだが、主力の一組と考えればかなりのものだろう。最も、一人の時点で既に"組み"では無いのだが、それはて置く。加えてこの街のアマテラス以外の主力が手伝ってくれるかもしれないなら、更に余裕は増す筈だ。


「そうか。確かに二人なら心配は無さそうだな。百鬼夜行の注意するべき主力は総大将のぬらりひょん。そして最高幹部の大天狗、九尾の狐、酒呑童子だな。幹部に居る河童達にも注意は必要だ」


「うん。特にぬらりひょんは自分を相手に味方だと思わせるからね。私たちの中だとライ以外での対策は何かあるかな?」


『俺の仙術も正体を見破る一つだな。今はライが居るから使う必要は無いが、完全に分かれるよりも前なら見破る事が出来る』


 何より厄介なのはぬらりひょんの自分を味方だと思わせる力。ライには通じず孫悟空なら仙術で見抜けたりするが、それ以外での対策のしようが無いのはかなり厄介だろう。

 それに対してフォンセたちも言葉を発する。


「その様な力を無効化する魔術でもあれば良いのだがな……。少しずつ魔王の力(自分の能力)が上がっている私自身もぬらりひょんに対してはどうかまだ分からない」


「私の剣もどうか分からないかな。夜の見張りを行うとして、ライや悟空さん以外の所にぬらりひょんが混ざっていたら危険だね」


 魔王の子孫であるフォンセや勇者の剣を持つレイならばもしかしたらぬらりひょんの力を無効に出来るかもしれない。

 前までは出来なかった事だが、ゴルゴーン三姉妹の石化やアフロディーテの催眠も無効化にした二人。成長も実感出来る現在ならもしかする可能性はあるだろう。


「レイさんとフォンセさんにも何らかの当てがあるのですか?」


 そして、勇者や魔王の事を知らないユニコが小首を傾げて二人に訊ねた。しかし二人の言葉は間接的に言ったものであり、まだ誤魔化せる範囲内だ。というより元々それが狙いである。

 なのでレイとフォンセの二人はユニコの言葉に頷いて返した。


「ああ、そんなところだ。まあ、可能性があるから私、ライ、レイ、斉天大聖の四人は別々になった方が良さそうだな」


「うん。確実じゃないけど、ぬらりひょんが相手ならそれでも行動した方が良いかも」


 勇者の剣と魔王の力。二人のそれは目覚め立てでまだ確実ではないが、ぬらりひょんが相手ではその力に頼らざるを得ない。なので今夜に向けてのチーム分けを行うなら、確かにライ、レイ、フォンセ、孫悟空の四人は別々の方が都合が良いだろう。

 そんな二人の元に割って入るよう、リヤンも言葉を発した。


「私も……もしかしたら仙術が使えるかもしれない……だから……私たち五人でチームを分けたらいいかも……」


「リヤンさんも?」


 それは、リヤンの持つ神の力。

 神単体の力ではなく、この世界に生まれた者の力なら人間・魔族・幻獣・魔物問わず全ての生き物の能力を使える力についてである。確かにそれらの中には仙術の使い手も居る筈。孫悟空や大天狗もその一つだ。なのでもしかしたらリヤンにもぬらりひょんが紛れ込んでいた場合にその存在を明かせるかもしれない。

 それに対してユニコはリヤンに訊ね、リヤンも頷いて返す。


「うん……。私……色々出来るから……だから私、ライ、レイ、フォンセ、孫悟空さんの五人でチームを分ければ対策は出来るかも……」


「成る程……。皆さんの力はある程度理解していましたが、この数ヵ月で更なる力を身に付けていたのですね。実力を知っているからこそ納得出来るモノがあります。それに、チーム分けでぬらりひょんに紛れ込まれる可能性が少なくなるならそれに越した事は無いでしょう」


 ユニコはライたちの実力を理解している。なのでその様な力を使えるようになっていたとしてもあり得ると判断したようだ。

 何はともあれ、ある意味百鬼夜行で一番厄介な存在になりうるぬらりひょんの対策が出来るのはライたちにとって都合の良い事。寧ろ最良とも言える。この街の主力達の実力はまだ定かではないが、百鬼夜行の対策を練るなら頼もしい者達の筈だ。

 そこにエマは挙手する。


「しかし、私は一人だからな。別に無効化出来る五人に分かれる事は無い。一人という事が分かっていれば例え誰か仲間が入ってきたとしてもその者がぬらりひょんだと見抜ける」


 それは、エマは元々一人で見張る予定なので五人居る必要が無いとの事。

 確かに一人だけなら関係無いかもしれない。仲間を名乗る者は来させないとすればぬらりひょんが紛れ込んでいるかも直ぐに分かるからだ。

 そんな言葉にリヤンと孫悟空が言葉を続ける。


『なら、俺たちが何らかの仙術を掛けよう。一人に姿を見破る術を掛けるのは容易い。まあ、それは一人に限った話だから全員に掛けるのは難しいがな』


「うん……。仙術は使った事無いけど……それが出来るなら私にも出来るかも……皆にも能力は分けられるかも……」


 それは、孫悟空とリヤンによってエマに正体を見破る力を与えるとの事。

 しかしそこまで都合は良くなく、掛けられる人数は限られているらしい。が、エマ一人なら問題は無いようだ。それなら都合が良いとエマは言葉を返した。


「そうか。それは有り難い。それならその案に乗るとしよう」


 断る理由は皆無。エマは甘んじて受け入れる事にした。人数が限られていたとしても他の者たちには見破れる可能性のある他の主力が付く予定。なので全く問題は無かった。

 それによって大分話が纏まった所でライが(シメ)に入る。


「じゃあ、決まりだな。取り敢えずチーム分けは夜の本番にするとして、今はこの街の主力達の確認を取ろうか」


「うん。どんな人達が居るのか気になるからね。主神がアマテラスさんならそれ関係の神様達が居るのかな?」


「それの確認も踏まえての行動だな。私たちも私たちで行動を起こすとしようか。固まっている必要も無いからな」


 ライ、レイ、エマの言葉に他の者たちも頷いて返す。今夜百鬼夜行に備えるにしても、この街"ヒノモト"の主力達の確認は重要だろう。団体で行動する必要も無い。なのでライたちは個別に行動を起こす事にした。

 アマテラスとの話し合いは終わった。そのまま百鬼夜行についての対策も上々。よってライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、モバーレズ、ユニコ、孫悟空の八人は各々(おのおの)で行動を開始するのだった。

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