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七百五十六話 中心街の戦い

 ──"ポレモス・フレニティダ・中心街"。


「オラァ!」

「そらっ!」

「ダラァ!」

「……っ」

「ハァ!」


 至るところで戦闘が終わった現在、残る主力達の戦い、中心街での戦闘はより一層激しさを増して続いていた。

 ライが自身の魔王の四割に匹敵する力で殴り付け、それをグラオが軽く受け止める。そこに炎と雷撃を纏ったゾフルがけしかけ、メソンが辛うじて耐える。そこにヘルメスがハルパーで斬り込み、五人の身体は一気に吹き飛んだ。


『『『…………』』』


 そして吹き飛んだ先には生物兵器の兵士達がおり、ライ、ヘルメス、メソンのグラオ達に仇成す者を討たんとばかりにけしかける。


「邪魔だ!」


 その生物兵器を全て消滅させたライは音速を超えて駆け出し、街中を第四宇宙速度で進んでグラオとゾフルの元へ向かう。それによって生じた街の破壊も致し方無い事だろう。ヘルメスとメソンも生物兵器の兵士達をいなしたのか、グラオ、ゾフルも含めた五人は再び相対した。


「ハハ。流石だね、君達。吹き飛ばされても直ぐに戻ってくるよ。まあ、主力クラスがあれだけで倒れたら拍子抜けもいいところなんだけどね」


「ハッ、ライやヘルメスとやらの事は分かっていたが、もう一人の頭。テメェも中々やるじゃねェか」


「そう言うアンタらも吹き飛ばされていただろ。まあそれはどうでもいいや。無駄話は後で、また仕掛けさせて貰う……!」


 ライ達に笑い掛け、楽しそうに話すグラオ。ゾフルはメソンを気に掛けており、中々やると見直していた。

 だがそんな会話は無駄である。そう判断したライは適当に返事だけをし、第四宇宙速度でグラオ、ゾフルに肉迫する。


「侵略者達に遅れは取るなよメソン」

「心得ている……!」


 そんなライに続くよう、ヘルメスとメソンが超速で向かう。一瞬にして音とその先を置き去りにした二人もグラオとゾフル、そしてライに迫り、五人が再び衝突を起こす。


「っと……!」

「ハハ……!」

「フム……!」

「「……ッ!」」


 激突の際に複数回のせめぎ合いは織り成した。それによってライとグラオがその場で立ってこらえ、ヘルメスが少し飛ばされて背後の建物にヒビを入れる。ゾフルとメソンは完全に吹き飛ばされてダメージを負い、この五人の実力にもやはり差というものがあるのだろうという事が窺えた。

 支配者クラス二人に幹部一人。元幹部の側近にして幹部クラスの実力者が一人。そしてチームの頭にして幹部の側近以上、幹部未満の実力者が一人。

 全員世界的に見て上位の実力者だが、存在が存在。その実力に差が出るのも仕方無い事である。


「やっぱりライ。君が頭一つ……いや、足元くらいまでずば抜けているみたいだね。他の人達に比べて余裕がある。まあ、他の皆もまだまだ余裕がある雰囲気だけど」


「ハッ、そう言うアンタもな。やっぱりこの程度の力じゃ全く通じないみたいだな。既に中心街も崩壊し掛けているし、無闇矢鱈に仕掛けるか?」


 現在のライは、街へ及ぶ影響も考えて魔王の四割に匹敵する自分自身の力を使っている。しかしそれでは決定的なダメージが与えられないだろう。街も砕けてきている。それを踏まえ、"ポレモス・フレニティダ"を潰す勢いで行こうかと考えていた時──一つの影がライとグラオの間に割り込んできた。


「ハッハーッ! ようやく出番だ! 俺様も混ぜやがれ!」


「アレス……!」


 無論、それはこの"ポレモス・フレニティダ"幹部にして軍神のアレス。

 武器である槍を振り回しながらけしかけ、ライはアレスの槍を正面から受け止めた。

 その衝撃と風圧で周囲の建物が崩落し、その瓦礫が天を舞う。全力では無いにせよ、この街の事など全く考えていないような一撃だった。


「ようやく来たのかよ。もう数時間は戦ってっぞ」


「ハッハ。俺様の前座ご苦労。華麗な真打ちが華やかに登場だ!」


「華麗でも華やかでもないだろ、アンタ」

「ハッ、だったら試してみるか? そして花のように散りな」

「何で急にポエム調なんだよ……」


 そんなアレスに話し掛けたのは、アレスと同じく幹部という立ち位置に居るヘルメス。当の本人は余興のように扱っており、わざとらして登場したようだ。

 その会話はライの言葉と同時に終わりを迎え、アレスが槍を薙いでライを払う。同時に大地を踏み砕く勢いで駆け出し、槍を構えてけしかけた。


「楽しんで行こうぜ!」

「楽しめるか!」


 高速で槍を突き、それをライは紙一重でかわす。同時に横へ薙いで仕掛け、ライはそれをしゃがんで避ける。薙ぐ事によって生じた風圧で更なる建物が崩落し、軽く回して竜巻を形成しながら怒濤の連続攻撃を嗾ける。


「そらそらそらそら!」

「……滅茶苦茶だけど……狙いは的確だな……!」


 突き、振り回し、薙ぎ払う。シンプルながらも槍の特徴を最大限に生かし、高速かつ重く的確に打ち付ける一撃は避けるのも中々に大変である。

 しかしライには余裕があり、アレスの攻撃を全てかわしていた。


「ちょっと! 僕も楽しんでいたんだから邪魔しないでよ!」


「「……!」」


 ライとアレスによるせめぎ合い。というよりもアレスの一方的な攻め。それを見たグラオは痺れを切らして駆け出し、ライとアレスが丁度重なったところに蹴りを放った。

 二人はそれに気付いて避け、グラオは着地する。その余波で周りの建物が崩壊した。


「あーあ、惜しいな」

「ハッ、なんだテメェもんのか?」

「当然。と言うか、君がいきなり割り込んできたんだよね?」


 刹那、グラオの拳とアレスの槍が衝突した。それによって先程崩れた全ての建物と足元に広がる石造りの道が抉れて吹き飛び、その風圧でゾフル、ヘルメス、メソンが必死に堪える。

 そんな破壊エネルギーが充満する中でも何でもないように立っているライは二人が互いの攻撃によって止まったのを見計らい、二人に向けて攻め入った。


「じゃ、俺はアンタら二人を纏めて打ち倒せば良いって事だな」

「うん。そうなるね」

「ハッ、確かにそれが合理的だな」


 自身の力を魔王の六割に匹敵するものへと引き上げ、光の速度で拳を放つ。それを二人はかわし、互いに距離を置いてライに向き直った。

 互いが互いに相手の実力は理解している。しかし両方とも倒さなければこの場は収まらない状況。中々に大変だろう。


 他の頭のように協力してヴァイスの仲間達を討てるならそれが良いのだが、生憎あいにく此処に居る"ポレモス・フレニティダ"の主力達にライの存在は気付かれている。つまり四面楚歌、全員がライにとって敵という事だ。

 しかしヘルメス、ゾフル、メソンはグラオ、アレスに比べたら比較的、あくまで比較的だが大した事は無い。ライが魔王の七割に匹敵する力を使えば解決出来る相手。問題はやはりそのグラオと軍神を謳われるアレスの存在だろう。

 同じ幹部でも伝令神と軍神では差が大きいもの。中々に厄介な状況である。


「こりゃ、始めから俺としての全力は出した方が良さそうだな……」


 そう考えた結果、ライは自身の力を魔王の七割に匹敵するものへと更に引き上げた。

 魔王の力はまだ使わないが、惑星や恒星、最大で太陽系は破壊出来る力を秘めた現在のライ。一挙一動で世界が消し飛ぶ危険性はあるが、敵が敵であるが為に致し方のない事だ。


「悪いけど、周りの有象無象はさっさと倒す事にするよ」


「ハッ、それって俺の事かよ。ムカつくじゃねェか……!」

「有象無象。まあ、確かに私はそうかもしれないな」

「一応幹部なんだが、そう言われると腹が立つな」


 先ず向き直ったのはゾフル、メソン、ヘルメスの三人。当然グラオとアレスも警戒しているが、一先ずは比較的簡単に倒せる者から始めるらしい。

 一応訂正を加えればこの三人もかなりの実力者である。しかしグラオ、アレスを相手にしなくてはならない現状、数を減らすのが第一優先という事だ。


「ハハ、君に出来るかな? ゾフルは一応仲間だから、止めさせて貰うよ」

「じゃあ、慈愛の神様よりも慈悲深くてかなり優しい俺様も、ヘルメスとメソンを助けるていでアンタに挑むとするか!」


 そんなライに向け、グラオとアレスが理由を付けてけしかける。背後から迫る拳と槍を置き去りにし、ライはゾフル、ヘルメス、メソンの元へと駆け出した。

 光を超えた現在のライにとって数百メートルは距離じゃない。定義で言えば距離という事に変わりは無いのだが、距離に感じない程のものであるという事だ。


「そらよっと!」

「……ッ!」


 先ず狙ったのは一番最初から戦っていたゾフル。魔王の無効化の力のみを使い、そのままゾフルの顔を蹴り抜いた。

 それと同時に体勢を変え、蹴られたゾフルが吹き飛ぶよりも前に空中へ蹴り上げ、下から更に差し込むように蹴り抜いて天空高く舞い上げた。


「ガハッ……!」

「トドメを刺す……!」

「チィッ……ざけんなァァァ!」


 ライはトドメの為に上空高くに居るゾフルを追い越し、空気を蹴って急降下。そこから隕石のような蹴りを打ち出し、やられっぱなしのゾフルは炎と雷を降り交えて迎え撃つ。

 上空でライの蹴りとゾフルの属性技がぶつかり合い、爆発のような衝撃が巻き起こって下方の大地が抉れた。


「次は……どっちだ?」

「俺様だ!」

「アンタはまだ早いだろ!」

「……ッ!」


 空から降り立ち、次の標的を定めるライ。そこに飛び込んで来たのはアレスであり、アレスの振り回す槍を片手で受け止めてその腹部に蹴りを放った。

 蹴られたアレスは肺から空気が漏れ、少し血を吐く。ライは同時にかかととしを放ち、アレスの頭を地面に埋め込んだ。


「あらら、ゾフルはやられたのかな? まあ、最初からそれなりのダメージは負っていたみたいだから意識を失ったなら逆に休めて良いかもしれない。さて、じゃあ僕は君達を相手取ろうか?」


「「……っ」」


 ライとアレスのやり取りを横に、ヘルメス、メソンへ視線を向けるグラオ。二人の戦いを見て触発されたのだろう。どの道全員と戦うつもりなので、ライやアレスが最初じゃなくとも良いのである。

 グラオの標的にされたヘルメスとメソンは身構え、次の瞬間に二人の視界からグラオの姿が消え去った。


「……!?」

「上だ!」


 そう、別に完全に消えた訳では無い。消え去ったと錯覚する程の超高速移動で視界から消えたのだ。

 しかし速さには自身のあるヘルメスはその速度を見切り、グラオが何処に移動したのかを確認出来た。それに反応を示した瞬間、頭上から降り立ったグラオが着地と同時に回し蹴りを放ち、ヘルメスとメソンを吹き飛ばした。


「……ッ!」

「……っ」

「へえ? 流石は幹部……耐えたね」


 それによってメソンの身体がボールのように軽く飛ばされ、瓦礫の山を築きながら遠方で粉塵を舞い上げる。

 ヘルメスはハルパーをもちいて何とか受け止められたらしく、身体に重い衝撃はあれど立っている事が出来た。


「彼はどうなったか分からないけど……まあ合格者だから死なないだろうね。さて、僕の暇潰しの相手は君だ」


「暇潰しになると良いな。俺の身体が持つかどうか……難しいところだ……!」


 軽く構え、不敵に笑うグラオとハルパーを握り直して肩で息をするヘルメス。ヘルメスにはグラオのような余裕などある筈もなく、少し後ろ向きな考えとなっていた。

 "ポレモス・フレニティダ"中心街にて行われる戦闘。ライ、グラオ、ゾフル、ヘルメス、メソンの戦いにアレスが参戦し、ゾフルとメソンが離脱。それによって四人となったこの戦いは、ライとアレス。グラオとヘルメスに分担されつつ、依然として続くのだった。

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