六話 世界の支配者・新たな目標
──十六夜の月が真上から移動していた。
この森に入ってから時間も大分経過した事だろう。
ライは先程レイに聞かれたことを説明する。
「先ず、俺が魔族ってことは、実は俺も今日……いや、もう昨日かな。……に知った事で、自分でもよく分からないんだ」
「昨日? それってつまり……今までは魔族としての自覚なしで生きていたってこと?」
「まあ、そういう事だな」
実際、ライが魔族と知らされたのは、十数年間生きた中で、最近知った事だ。
なのでまだ本人も、魔族という自覚が少ない。
「そして世界征服の事だけどそれは……──」
そしてライは続けるよう、エマに説明したように、自分の夢を語った。
「──で、平和な楽園を作るってこと」
「…………」
レイはその話を真剣に聞く、ライはそんな真剣に聞かれるとは思っていなかったので素直に嬉しいようだ。
そしてそれらを話したあと、ライは言いにくそうに頭を掻いて言葉を発する。
「だから……さっき旅に誘ってくれたのは嬉しかった。……けど、俺の最終目標は世界を支配すること。レイが旅する目的は分からないが、そんな危険極まりない旅に身体がただの人間であるレイを参加させる訳にはいかない。……もう一度言う。危険過ぎるんだ。──……それに、魔族やヴァンパイアと旅なんて嫌だろ?」
「…………」
淡々と言葉を綴り、苦々しそうに話すライ。しかしそれを聞いたレイは無言で首を振る。
その事にライは目を丸くして驚き、レイに問う。
「おいおい……一体どういうことだ? お世辞は要らないぞ?」
「違う……お世辞じゃない。だってライが私を心配してくれたことは事実だし……ヴァンパイアも私を助けてくれた」
レイが綴る言葉、それはライとエマが自分にしてくれた事。
その事に対し、エマは目を丸くしながらソッポ向いて腕を組みつつ答える。
「な、何を言っておる。私は元々お前ら二人の血を吸うつもりだったんだぞ? 返り討ちにあったが、私が勝っていたら今頃、お前ら二人はこの世にいなかったんだぞ!?」
エマが少々早口になり、ライとレイに向けて言う。どうやら命を狙った自分は感謝される筋合いが無いとの事。
その言葉に対し、レイは笑顔で返す。
「そんなの関係ないよ。私はアナタたち二人に助けられたも同然だから。そして、私よりも遥か上を行く二人に着いて行って、私自身を高めたいの!」
グッと、握り拳を作り、覚悟を決めた表情で言葉を続けるレイ。危険は承知しているが、自分が成長する為にも先へ進みたいのだろう。
それを聞き、これ以上は止められないな。と、ライが手を差し出す。
「分かった。レイは自分を過小評価しているようだけど、潜在能力は凄い。だから俺も、レイが世界征服の仲間になってくれるのなら心強い!」
そして次に、ライの言葉に続くようエマも手を差し出す。
「ふん。私的には餌が増えただけの事だ。途中で力尽きたらお主ら二人を美味しく頂いてやるから安心しな」
そして、ライの世界征服の旅に二人の仲間が増えたのだった。
*****
それから休むことにした三人。
広場から少し進み、良さげな場所でライとレイは横になる。エマは、昼間に寝ていたから一週間は睡眠を取る必要が無いとか。
ふとライは思い出したようにレイに言う。
「そうだ、レイ。俺も聞きたいことがあったんだ」
「……? ……何?」
レイは、フワァと欠伸しながら眠そうな目を擦ってライに返す。
そんなレイを見たライは少し考え、
「いや……まだ良いや。お互い疲れているし、今日は休もう」
「そう……お休……み……」
肉体的には普通の少女であるレイはもう体力が限界に近いのだろう。日が昇ってから話を聞こうと考えるライ。
もう寝息が聞こえる。幾らなんでも早過ぎだろ。と、ライが考えていた矢先。ライも相当疲れているようで、眠気が襲い来る。
薄れ行く意識の中である疑問が浮かび、何とか眠気を堪えて言う。
「……そういえばエマ……。ヴァンパイアって日光に当たったら灰になってしまうんじゃ……?」
それはエマの事だ。
古来よりヴァンパイアというものは、"十字架"・"ニンニク"・"日光"etc.が弱点とされている。
厳密にいえばヴァンパイアを死へと追いやれるのは"日光"・"銀"・"心臓に杭"だ。他にもあるが、誰でも知っているのはこれらだろう。
ヴァンパイアは日光に当たると灰になり、消滅すると謂われている。
ライは眠気よりも先に、その事が気に掛かっていたのだ。
「なんだ、その事か。心配するな。私が何千年生きていると思ってる。そうだな……──力は半分以下に下がったり、日射病に近い症状が起こったり、風邪見たいな症状も出たり、その他にも諸々の不調は起こるが……まあ多分、私自身が日光による不調以外で弱っていたり、気を抜かなければ、太陽の下でも消滅したり死ぬということはないだろう。……多分」
そうか……。と、安心するように頷くライ。だが、体に色々な悪影響も出ると知り、やはり心配になる。最後の多分という言葉も。
しかし、どうやらライは自分が思っている以上に疲れているようだ。
祖母との永遠の別れ、生まれ育った地を自らの手で砕き、オーガやヴァンパイアとの戦いを行った。
この日だけで色々あり過ぎた。
深い水の中に沈むように静寂な空間に吸い込まれるライ。
(……あ……魔王の事をレイとエマに言うの忘れてた……教えなきゃな……共に世界征服をする仲間なんだ……)
【今は休んどけ。ヴァンパイアの奴も裏切って襲い掛かる。……ってことはしない様子だしな。寧ろ安眠出来るように辺りを警戒してらあ……。義理は通すらしいな】
(……そうか…………)
──途端に意識が遠ざかる。
風が通り過ぎ、木々が擦れ合う。夜行性の生き物が発する鳴き声が子守唄となり、ライを微睡みへと誘う。
*****
──翌日、爽やかな朝の日差しがライとレイに降り注ぐ。
昨日の就寝時間が遅かった割には随分と早起きのライとレイ。
「……おはよー」
「……おーっす」
欠伸をしながら言うレイに、目を擦りながら返すライ。
そんな二人は数分ボーッとしたあとにようやく立ち上がる。
そのように、起きたのを確認したエマは二人に近付き、苦笑を浮かべて言う。
「まだ疲れが取れていないんじゃないか? お主らはまだまだ若いのだから二度寝三度寝とすれば良いのに」
その言葉に、両手を空に向け、背伸びをしているライが返す。
「いや、こんな風に休んでいる間でも苦しむ人々や魔族。魔物に幻獣が居るんだ。早いとこ世界を征服して楽園を築き上げなきゃな」
「そうか。ならば何も言うまい」
ライの言葉に対し、ならば仕方無いと諦めるエマ。
それから、そんなエマがライへ向け、昨夜よりも詳しく自分の使い方を説明する。
「……今一度言っておくが……知っての通り私の力は昼に弱くなる。なるべく日が出ているうちの戦闘は避けたい。国へ攻め込むのなら夕刻が良いだろう。私が夕刻から朝方まで敵を出来る限り減らしておく。昼間はライとレイに頼る事になるだろう」
「オーケー。昼に戦う事があったら俺が前線に出る。エマとレイは後方でサポートを任せるよ」
「私も後方……? ……いや、そうだね。私たちじゃライの足元にも及ばない。悔しいけど、ライを精一杯サポートするよ」
レイも話に参加し、国へ攻める時の戦略を練る三人。エマはヴァンパイアなので昼間に攻めるのは中々にキツいらしい。
話が纏まりかけた時、ライがレイに尋ねる。
「そうだ、レイ。俺も昨日……いや、今日か……? まあいいや。聞きたいことがあるって言ったよな?」
「え? ああ、そうだったね。何が聞きたいの?」
レイは一瞬忘れかけていた様だが、直ぐに思い出し、ライへ返答する。
ライはそれを見て話を続ける。
「俺が気になるのは、その剣についてなんだ」
「これ?」
カチャ、と腰に当てている剣を左手で触り、小首を傾げて話すレイ。
ライは頷き、気になった理由などをレイに言う。
「その剣って……何処で手に入れたんだ? 俺が見る限りじゃ、その剣の強度は半端無い……。昨夜オーガを吹き飛ばした時にやり過ぎたと思ったけど、その剣より向こうは無傷だった……。何か特別な加工でもしているのか……って思ってな」
ライの言葉にレイは、特に考える素振りを見せずに応える。
「えーと、これは私のご先祖様が使っていた剣だ。ってお爺ちゃんから教えて貰ったよ。木々を薙ぎ払うのは私の力じゃなくて、この剣その物の力だって事も言ってた」
「先祖……? へえ。じゃあその剣は代々受け継がれて来たってことなのか。そして単体で森や林を薙ぎ払えるのか。凄いな。何だそれ?」
感心するように言うライ。レイはその反応を見、照れるように頬を掻きながらライへ言う。
「アハハ……まあそうなるね。私の両親は旅に反対だったんだけど、どうしてもって言うならこの剣を持っていきなさいって」
つまりレイは、御守り代わりになるように剣を持たされたとの事。
ライは話を聞きながら何気なく言う。
「その剣って、名高い戦士とかの剣なのか?」
「えっとね……──昔に世界を救ったって謂われてる勇者の剣。ってお爺ちゃんは言ってたかな……?」
「へえ。……………………え!?」
レイからサラッと凄まじいカミングアウトが聞こえた気がした。
暫し間を置いたあと、少し考え、ライが──
「オ、オイ! レイ!? つまりそれは勇者の、神話!? 英雄伝!? とかまあそんなのに出てきたあの剣なのか!!? という事は、……レイの先祖は……!!」
「ひ……! ……そ、そうだよ……私の先祖は勇者……様?」
ビクッと肩を竦めて返すレイ。
レイの話を聞いたライは興奮している状態だった。
しかし無理もないだろう。いきなり、"私の先祖は世界を救った勇者です"。と言われれば、殆どの者はライと同じ状態になってしまう事だろう。特にライは、そもそも勇者に憧れて世界征服を目論んだのだから。
エマも内心で驚いているような表情をしているが、少し経って落ち着いたライがレイへ言う。
「ああ、すまない。ちょっと興奮しちゃって……しかしレイの祖先が……」
「アハハ……」
レイは笑うしかない。先程のライが示した反応は、出会って数時間だが、ライらしからぬ物だった。
実は素があれなのかな? と考えるレイ。
そして、二人の様子を見計らい、エマがライとレイに言う。
「レイと言ったな……まさか勇者の子孫とは……奴もやることはやったらしいな」
「え? ……ああ、うん……?」
「いや、何でもない」
エマが言った言葉の意味を、よく分からなかったレイ。
エマは知らぬなら良い。と、話を進める。
「私が話したいのはレイの先祖や、ライの力の元手ではない。これから、『どうやって世界を支配していくのか』……だ」
「「…………!」」
一転して真剣な顔付きをするライとレイ。
それを確認し、エマは言葉を続ける。
「世界征服を目標とするのなら大国を打ち崩すのが手っ取り早い。しかし、世界を纏める程の大国となると、無論、力のある奴が必然的に多くなる。かつての魔王レベルも居ると聞く」
ゴクリ。と唾を飲み込むライとレイ。
レイは話でしか魔王の存在を知らないが、ライは自らに魔王を宿している為、その強さを文字通り、身を持って実感している。
緊張が走る中、エマが淡々と続ける。
「ライ、レイ。……お前たちはこの世界の上位に君臨する実力者をどれ程把握している?」
唐突にエマは二人に質問した。
それは恐らく話を行うに連れて重要な事なのだろうと、聞かれたライとレイは少し考えて答える。
「実は……よく分からないんだ。外の世界を本でしか知らないから……魔物や幻獣の知識や、たまに逃亡してくる奴隷達の証言で悪名高い国はそれなりに知っているんだけどな……」
「私もよく知らない……。でも確か……世界を大きく左右する国は四つあるって聞いたことがあるよ?」
ライとレイは、詳しくは分かっていない様子だった。が、二人の知識があれば説明するのは容易だと考え、エマは言う。
「ふむ……まあそれだけでも分かっていれば簡単に纏められる。心して聞くが良い」
「「はーい」」
ライとレイは返事をし、近くの石に腰掛けて話を聞く体勢に入る。
対するエマは立ったままであり、近くの木に寄りかかって話す。
「まずはライ。お前が言った事についてだ」
「…………」
コクリと頷き、真剣な顔で話を聞くライ。
そんなライを見たエマはフッと笑い、言葉を続けて話す。
「まず、悪名高い国というものは存在する。それには同じ人間ですら嫌気が差している者も多いという。風の噂では生き物を使った兵器を作っているとか……。まあ、反対する者の殆どはその兵器によって、自分が苦しい思いをするのが嫌だとかだろう。中には良い奴もいるんだろうが……まあ知らぬがな」
「生物兵器……」
淡々とエマが続ける言葉にライは握り拳に力を入れる。
レイはレイで、生物兵器という単語に引いている様子だ。
「まあ、ライ的には生物兵器以外に、生き物を傷付ける為の色んな実験をしている国々から潰した方が良いか?」
「ああ、そうだな。生物兵器とか、奴隷制度とかそれだけじゃなく、あらゆる意味での悪名高い国を中心に狙っていく!」
ライの力強い言葉にエマは笑う。
そして次にエマは、レイの方を見て話す。
「次がこの話の中で最も重要な事だろう。世界を支配するということは、必然的に争うことになるからな」
「「…………」」
再び真剣な顔つきで話を聞くライとレイ。
エマも真剣な顔付きとなり、更に続けて言う。
「四つの国が世界を左右するといったが、その中に人の国は一つしかない」
「……そうなのか!?」
ライの反応にコクリと頷いて返すエマ。
ライはてっきり、人が全てを支配していると思っていたような表情だったが、どうやら違ったようだ。
「逆に聞こう。何故人が大部分を支配しているにも関わらず、街と街との距離が離れていると思う? 人の数も数千年前に比べたら爆発的に増えた。ならば森や草原を開拓し、住み家を増やせば良いだろう。……しかしそれをしない。どう思う? ライ」
寄りかかっていた木から移動し、ライの元へ寄るエマ。
ライは成る程、と納得したように言う。
「つまり、人間・魔族・幻獣・魔物。それらが各々で群れをなす事によって、それぞれの棲み家が……『自然と分担されている』……」
即ち四つの国とは、知らず知らずのうちに、種族が違う生物達のみで創られた国ということ。
人間は人間の国、魔族は魔族の国、幻獣は幻獣の国、魔物は魔物の国。
それぞれの縄張りがあるため、どの生物も迂闊に手を出す事が出来ないのだ。
その為、人間の国に住む魔族や、魔族の国に住む人間は大抵の場合処刑される。
「つまり、世界を支配するって事は、四つの国全てを手中に収めないといけない事になる。その四つの国に君臨する支配者が現時点で、その種族に置いて一番強い存在……か……」
「そういうことだ。まあ、それ以上の実力者もいるが、表には出てないしな。どの道、ちょっと強いだけの人間や魔族ではそれらを打破できない事となる」
話を続けるライとエマ。そこにレイが挙手して質問する。
「でもそれって、支配者は一人? 一匹? だけなんだよね? じゃあ一番数の多い種族が生き残っちゃうんじゃないの?」
当然の疑問だ。
何にせよ支配者が一人だけならば、その支配者の手や足となり動く者達……つまり支配者の手下が多いものが、数で圧倒すれば他の支配者を押しきることが出来る。
その事にエマはフッと笑って応える。
「いや、さっきも言ったように、ちょっと強いだけの手下が束になろうと支配者には勝てんよ。支配者に勝つ可能性があるとしたら、それは支配者だけだ」
「……何を根拠に?」
訝しげな表情のレイ。ライもレイに同調するように頷く。
エマは笑みを消して続ける。
「四つの国を収める支配者という者は、私が先程言った事だ──かつて世界を支配していた"魔王"や"神"に……『匹敵する力を持つ』……と謂われている。これは事実だ」
シーンと、辺りが静まり返る。
まあ、ライ、レイ、エマしか話していなかったがそれもさておき、エマの話を聞いて、ライとレイは顔が青ざめる。
確かにエマはさっき、"魔王に匹敵する力を持つ者も居る"と言った。
しかし、それが二人と二匹も居るとは思っていなかったのだ。
「そういった支配者は、他者から"人神"・"魔神"・"神獣"・"神魔物"と呼ばれている。神を付けただけの安直な名だが、実力は本物だ。星程度なら軽く砕けるだろう。そして、かつての魔王も"魔神"と呼ばれていたが、控えめだったのか、自らで魔神という名を消して魔王と名乗ったらしい。詳しくは知らぬがな」
「へえ……(そうなのか?)」
【さて、どうだったかな……。昔過ぎて覚えてねえや】
エマの説明を聞き、魔王(元)に尋ねるライ。しかしはぐらかされてしまった。
そこでライはふと思い付いたように質問する。
「そうだ、エマ。……支配者に勝てるのが支配者だけなら、サポート役か何かを引き連れて、支配者自身がその国へ乗り込み戦争を仕掛けるとかする奴もいないのか?」
それは支配者同士の争いについてだ。
支配者の強さが、かつての魔王レベルあるのならば、世界を滅ぼすのは容易いこと。
強さに溺れ、世界そのものを我が手にする魔王のような思考の持ち主がいないかを尋ねるライ。
エマは応える。
「ふむ……面白い質問だ。確かに自分の欲を満たす為に世界を欲しがる輩もいるだろう。しかしそれは、"しない"ではなく『出来ない』が正しい答えだ」
「出来ない? それってどういうことだ?」
訝しげな表情で聞き返すライ。そんなライに対し、エマは軽薄な笑みを浮かべつつ言う。
「まあ、言ってしまえば。……支配者も自分の命が大事……ということだな。支配者に唯一対抗できるのが他の支配者。つまり、自分自身が負ける可能性もあるという事だ。自分が負けてしまえば、戦争を仕掛けた自分が処刑されるのはほぼ確実。そうなってしまえば、一つの国が敵の手に渡る。"国民の為にも何とかしなくては"……──というのが『建前』」
「何っ?」
ライは、国民の為に争わないのか。良い奴等だなー。と考えていたが、どうやら違ったらしい。
エマは言葉を続ける。
「本当の理由は、『折角自分が手に入れた土地が敵に渡ってしまう』。その事を懸念しているのだろう。支配者という者は自分勝手で我が儘で、気紛れ。自分の思い通りにならない事が一番許せないのさ。しかし支配欲を持っているのは人間と魔族くらいだ。まあ、『一部を除く』支配者も、『暇潰しに他の国を焼き払ったり、破壊したりして遊んでいる』自分の国は関係ないと、自分と同種族を殺されても飄々としている者が『殆ど』だがな」
「……やはり人間だけが悪という訳じゃないのか……。そして魔族も人間社会に似たような事を……。……一部を除く? ……殆ど?」
先程も言ったが、ライは人間が全てを支配していると思っていた。しかしそれは間違いだった。
確かに大部分は人間が支配しているが、他の生物も自分の国を持っており、殺戮を繰り返しているという。
話を聞いて眉を顰めるライとレイ。
しかしライは、二つの言葉が気に掛かる。
それを見かねたエマは、もう一つ言う。
「……風の噂では……支配者の中にはお前と同じような考えの持ち主もいると聞いたな……」
「……! そうなのか!? だから『一部』や、『殆ど』という表現を……!」
驚きながら返すライ。
頷くエマは、面白い反応をするな。と、軽く笑いつつ言葉を続ける。
「うむ、しかし他の支配者の力が強すぎるあまり、表に出すことは出来ぬとか……」
それを聞いたレイが、少し考えてボソリと呟くように言う。
「じゃあ、もしかして……仲間に引き入れる事も……?」
レイの言葉に、フッと笑い、エマは返す。
「そうかも知れんな」
もしそうならば、凄まじい戦力が手に入る。その種族が丸々味方になると考えてもおかしくはない。
そうすれば、世界征服も楽になる。と、考えるライにレイ。
そしてエマは話を纏めに入る。
「で、どうするんだ? 敵はお前たちが思っている以上に手強い。それでも世界征服は諦めぬか?」
ニヤリと、牙を出して笑いながら問い掛けるエマ。
まずはレイが応える。
「……私の気持ちは変わらない。自分自身を強くするためなら茨の道でも構わない……! ……本当は怖いけど、ご先祖様が救った世界を変えるのは子孫である私!」
勢いよく立ち上がり、力強く言うレイ。
ライも続くように立ち上がる。
「俺の目的は変わらない。だったら四つの支配者を纏めてしまえば良い! その内一つが味方になる可能性もあるのなら、尚のこと良い。楽園を創るのは容易ではないって事は始めから分かっていた事だ!」
要らぬ心配だったか、と小さく笑うエマ。
ライは言葉を続ける。
「良し! そうと決まれば三つの神を倒すだけの事だ! さっきの噂が本当なら、仲間になってくれる奴か交渉する! 無理なら仕方ない! 噂が嘘なら他の三つと合わせて倒す! 小さな国から大きな国まで(悪名高ければ)潰してやる!」
そして新たな目標を見つけ、旅を再開するライ一行だった。