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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第四章 科学の街“イルム・アスリー”
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六十五話 フォンセvsスキアー・決着

 隕石が消し飛ばされ、"イルム・アスリー"の上空から消え去った。

 しかしそんな中、フォンセとスキアーは隕石へ気に掛けず戦闘を繰り広げていた。


「オラオラオラァッ!!」


 タタンと、テンポ良く銃を放つスキアー。

 その銃弾は真っ直ぐにフォンセへ向かって突き進む。


「"土壁(ランド・ウォール)"!」


 その銃弾を、フォンセは壁で容易に防いだ。


「またその技か!!」


 そして同じような守り方しかしていないフォンセに向け、スキアーは剣を振り下ろして土の壁を切断する。


「オラァ!」


「……ッ!」


 そのまま流れるように回転し、回転切りを放つスキアー。

 フォンセはそれを避けたが、頬に小さなかすり傷が出来る。


「本当に良く切れる剣だな。刃こぼれしてもおかしくないぞ?」


 フォンセはフッと笑い、剣の頑丈さと切れ味を称賛する。


「ああ、良く言われ……ねェな……」


 そしてその事に対し、ケッと吐き捨てるように言うスキアーは連続して剣を放つ。

 フォンセはその太刀筋を見抜き、紙一重でかわした。


「やるじゃねェか……。魔術師の割にはそこそこの動きを持つ。……まあ、意味無ェけどな?」


「……!」


 スッと懐に手を入れ、何かを握るスキアー。

 その何かを理解したフォンセは、直ぐにスキアーから距離を取った。


「チッ、ちょっとバレバレだったか?」


 ダンッ! と、バレても尚スキアーは、懐に忍ばせていた銃を何となく放つ。

 無論それは当たること無く、風を切ってフォンセの横を通り抜けた。


「だな。少し隙が大きいぞ? 何を考えているのか手に取るように分かってしまうからな」


 フフ、とスキアーの言葉に同意するように笑うフォンセ。

 スキアーはそれを聞き、はあ。とため息を吐く。


「やっぱりそうかよ。……まあいいか。これが終わったら少し不意討ちを練習するかァ!!」


 次にマシンガンを放つスキアー。マシンガンは銃口から火花が飛び散り、一つ一つの弾が空気を切り裂いて直進する。

 先程は防げた物だが、土魔術で壁を創るとスキアーにとっては的が作られるような物。

 恐らくフォンセが壁を創る事を狙っているのだろう。

 スキアーが唯一フォンセにダメージを与える事が出来たのは先程の回転切りくらいだ。

 なのでフォンセは、


「"土の針壁ランド・ニードル・ウォール"!!」


 土魔術で壁を創り、その正面を針のように鋭く尖らせる。

 そう、マシンガンの弾丸ごとスキアーを貫通させようと考えたのだ。

 マシンガンの弾丸は全て針に貫かれ、勢いを殺された。

 そしてその針はグンと伸び、スキアーに向かって突き進む。


「チッ、魔術っつーか……どっちかと言うとありゃ強度のある粘土だな……!」


 針に貫かれ無いようにスキアーは跳躍して避け、針の先端じゃない横の方に立つ。

 しかし次から次に針は来る為、跳躍して避け、跳躍して避けを繰り返すスキアー。


「ピョンピョンと、まるで蛙か飛蝗バッタだな……」


 跳躍するスキアーを眺め、フォンセはフッと小さく笑う。

 そして、スキアーに一言。


「あ、そうそう。足元にも注意しとけよ?」


 その刹那、スキアーが空中に浮いている一瞬の間に足元から鋭利な土が生えてくる。


「……ッ! んだとォ!?」


 スキアーは驚くが、空中で身を捻り、なんとかかわした。


「随分と不自由そうだな? 空中ってものは……"ファイア"!!」


 そしてかわしたスキアー目掛け、フォンセが炎魔術を放つ。


「……ッ!!」


 身動きを取れない空中で炎を受けたスキアーは燃え上がり、なす術なく地面へ落下した。


「ああ……熱ィじゃねェかよ……!」


 しかしスキアーは炎を消して直ぐに起き上がり、再びフォンセに構える。ダメージというダメージも無く、焦げ目があるくらいだろう。

 そして、フォンセはそんなスキアーを見て言う。


「まあ、お前の場合は炎による直接的な熱さではなく、『お前が纏っている鎧か何か』が熱せられた熱さだろ?」


「……!」


 フォンセの言葉に眉をピクリと動かして反応するスキアー。

 それを見たフォンセは淡々と告げる。


「……むしろ、バレていないとでも思っていたのか? 自慢じゃないが、私の魔術はそれなりの力を持っていてな。その魔術を受けても尚、ほぼ無傷……。……まあ、それほど頑丈な肉体をしているという可能性もあるけどな?」


「……ほーう?」


 フォンセの言葉を聞き、感心したように相槌を打つスキアー。

 スキアーはクククと笑ってフォンセに返す。


「中々鋭いじゃねェか……。違う……。って言っても信じねェだろうしな?」


「…………」


 そしてフォンセは、また不意討ちでもしようかと考えたが、それは成功しないと確信する。

 今のスキアーには隙が無いのだ。


「……流石に連続の不意討ちで警戒を高めているか……?」


「まあな。あんだけやられりゃ嫌でも警戒しちまうぜ?」


 フォンセの言葉に軽薄な笑みを浮かべて返すスキアー。

 仕方がないと悟ったフォンセは、正面から仕掛ける。


「"加速風(アクセル・ウインド)"!!」


 足に魔術を掛け、風を放出して加速するフォンセ。

 フォンセの身体能力は魔王の子孫という事もあってそれなりに高いのだが、近接戦闘を専門とする訳ではない為、魔術で身体を強化して戦闘を行うのだ。


「ハッ! 魔術にはそんな使い方もあるんだな! まあ、見たこと無いって言ったら嘘になるが!」


 スキアーは両手を広げ、片手に剣、片手に銃をたずさえる。

 剣と銃は日の光に照らされてキラリと輝いた。


「俺も行くぜェッ!!」


 そして、大地を蹴ってスキアーも加速する。


「オゥラァッ!!」


「…………!」


 スキアーは剣を振り下ろす。身体を横に捻ってそれを避けるフォンセ。

 フォンセは捻ったそのままの状態で身体を回転し、風を放出して回転力を上げる。


「はあッ!」


「……ッ!」


 その回転力を利用し、自身に竜巻を纏ったのだ。

 その竜巻でスキアーは浮き上り、吹き飛んでしまう。至近距離で竜巻が発生したのだ。当然だろう。


「中々の風力だ……! だが、ダメージを受けるほどじゃない……!」


 その回転に流されながらスキアーは剣を横に突き出し、回転しながら空気を切り裂きいてフォンセに刃を向ける。


「私も易々とダメージを受ける訳が無いだろ?」


 フォンセは竜巻を上空に離し、そのまま爆散させる。

 その衝撃によって周りの建物は大きく揺れた。


「ハッ、ダメージを与えなきゃ勝ちにならねェだろ? 簡単にいかなくともそれなりに与えるつもりだぜ?」


 スキアーは話しながら銃を放つ。


「やってみるが良い」


 無論、その弾丸はフォンセによって防がれる。

 しかし、スキアーはニッと笑って言葉を続ける。


「そう、地形や建物を利用してな?」


 タンッ! と一発。その銃口をフォンセではなく、"イルム・アスリー"の建物に向かって放つ。


「……?」


 フォンセは一瞬、スキアーの企みを理解できなかった。がしかし、次の瞬間に理解する事となる。


「……! まさか……!」


「ククク……理解したか……? まあ、そうだろうな。お前は中々鋭い。……この建物……『大分ダメージを受けている』からな?」



 ──次の刹那、銃に撃たれた衝撃で建物が音を立てて崩れ落ちた。



 そう、"イルム・アスリー"にある建物の殆どは隕石の衝撃とライとゼッルの攻防、ライの仲間vs幹部の側近によるダメージを多く受けていたのだ。

 それらが衝突したとなると、レンガで造られた建物など簡単にもろくなってしまうだろう。

 ちょっとした衝撃でも崩れ落ちる程に。

 要するに、スキアーはボロボロになった建物へ銃を放つ事によってそれを崩し、建物の瓦礫でフォンセにダメージを与えようとしているのである。

 瓦礫の落ちる場所は推測しか出来ず、確実な場所が分からない為、狙って銃を当てるより効果的なのだ。


「やはりか……。……まあ……」


 そして崩れ行く建物の下、フォンセはそれを眺めて呟く。


「……全て吹き飛ばせば問題ないな」


 フォンセが言った瞬間、ゴオッ! とフォンセの足元から強風が巻き起こった。

 それによって視界が無くなる程砂埃が舞い上がる。


「"強風ゲイル"!!」



 ──次の刹那、一気に風が吹き渡り、建物の瓦礫を吹き飛ばした。



「……チッ! これも防ぐか……! なら……」


 そして、それを確認したスキアーは瓦礫を蹴り、フォンセに向かって落下する。


「やっぱ直接()るしかねェかァ!!」


 懐から銃とロケットランチャーを取り出し、その二つをフォンセへ放つ。

 銃とロケットランチャーからは火花が散り、ドン! という爆発音と共に大きな弾と小さな弾が放出される。


「…………」


 だがフォンセはそれを防がず、スキアーの方に向けて駆け出した。

 フォンセは駆け出しながら二つの弾を避け、その銃弾と砲弾はフォンセの背後で爆発する。


「……?」


 その意図を理解していないスキアー。

 フォンセはそれに構わず真っ直ぐスキアーへ向かう。


「……ま、近くで攻撃しようって感じだろ?」


 適当に推測したスキアーは、地面に足を着け、フォンセを迎え撃つ体勢に入る。

 フォンセはスキアーを見て笑いながら話す。


「まあ、おおむねそんなところだな。だが……私はお前にトドメを刺すために近付いている……!」


「……ほおう?」


 フォンセはスキアーとの対決を終わらせると言う。

 スキアーはそれを聞いて大声を出して笑う。


「ハッ! それは良い! 俺もそろそろ決着を付けたいと思っていたんだ!! とっとと終わらせちまおうかァ!!!」


 スキアーは通常のロケットランチャーよりも一回り以上大きな物を取り出す。


「これは何とかかんとかって言うロケットランチャーだ!! 通常よりも遥かに威力を上げてある!! 爆発すれば半径数キロは吹き飛ぶぜ!!」


「そうか。なら、その爆風に当たらなければ良いんだな?」


 フォンセは淡々とつづり、スキアーに言う。

 スキアーは近付いてくるフォンセにロケットランチャーの砲口を向け、フォンセはそれなりに大きな魔術を纏う。


「食らいやがれえええェッ!!!」


「"紅炎プロミネンス"!!!」




 そして轟音を立てて二つの火炎がぶつかり合い、"イルム・アスリー"が──




 ──『消し飛んだ』。




 街全体が消し飛んだという訳では無く、フォンセとスキアーが居た範囲が消し飛んだのだ。

 空気が燃え、フォンセとスキアーの視界が消し去ったのだった。



*****



 ゴウ……と、遠方からほんのりと暖かい風が吹いてくる。

 少し火薬が混ざっているようで、普通の風とは匂いが違かった。


「……? 隕石が消えたと思ったら次は爆発音が聞こえたな……何処かで勝負が決まったのか……?」


 "イルム・アスリー"の外に居たエマは、風と同時に爆発音を聞き、遠方に上がった煙を確認した。

 因みにエマは木から降ており、地面に足を着けている。


「……まあ、例えあの場所での勝敗が決まっていたとしても……街中あそこ全体の中ではその一つを含めても……精々二、三人しか勝負が決まっていないだろうな……?」


 訝しげな表情で戦闘状況を推測するエマ。

 そして、そんなエマの周りには一〇〇人程の魔族が倒れていた。


「つ……強ェ……」

「まさか……111人の部下のうち……一〇〇人を……」

「がっ……グハッ……」


 何処かで聞いたような言葉をを放つ魔族達。

 恐らくそれしか言う事が見つからないレベルで完膚無きまで叩きのめされたのだろう。

 何と言うか、エマに挑んだ時点で自業自得としか言いようが無い。


「……まあ、結果がどうあれ……ライたちが負けるのは少々考えがたい事だがな」


 それをさておくエマは、空を見ながらフッと笑い、傘をクルクルと回転させながら呟くように言葉を発した。

 戦いが気になっても参加できず、見ているしか出来ない事がもどかしかったが、魔族の手下が勝負を仕掛けてくるので暇潰しには最適だった。

 しかしエマにとってその者達は弱過ぎる。

 なので、もう少しこの場で怠惰に過ごすしか無いと考えつつ、苦笑を浮かべるエマだった。



*****



 場所を戻し、フォンセとスキアーが居た場所。

 その場所の視界はようやく明るくなった。


「…………」


「…………」


 ゆらゆらと、陽炎のように揺れる人影。

 その影の持ち主はフォンセとスキアー。互いの技がぶつかり合い、周りには何も残っていなかった。

 頃合いを見てスキアーが一言。


「……俺の……負けか……」


 吐き捨てるように言ったあと、バタンと倒れるスキアー。

 確かにスキアーのロケットランチャーは壮絶な威力を誇っていたが、フォンセの魔術には押し負けたらしい。


「……そうだな……。まあ……私も酷い火傷を負った……。見ろ……顔の肉が焦げている……というか溶けている……。……もしも私が人間だったら確実に死んでいたな……」


 フォンセはスキアーに顔の反面を見せて言う。

 何はともあれ、確かに一歩間違えれば致命傷に成りうる傷を与えられたフォンセ。


「……まあ、顔の皮程度なら応急措置で何とでも出来る……。今にも意識を失いそうだが……話していれば問題無さそうだ……」


 スキアーに淡々と話し、何とか意識を保つフォンセ。

 スキアーは寝転がりながらクク……と笑って言う。


「……ハッ……そうかい……。なら……負けたとしても……相討ちに近いモノだ……ろ……?」


 何とか身体を動かし、うつ伏せよりは息するのが楽な仰向けになるスキアー。

 フォンセはフッと笑って応える。


「……いや……ちゃんと両足で立っていなければ駄目だろ……。……お前……今……目を瞑ったら……確実に……気を失……う……だろ……?」


 クラッ……と倒れるようにしゃがみ、膝を着いてスキアーに話すフォンセ。

 スキアーは自分を楽にする為、身体中の武器を捨てながら話す。


「ああ……そうだな……だが……それは……お前もだろ……? ……まあ……俺は……少し休……む……応急……措置……くらい……は……してくれや……」


 カチャ……と金属の音が鳴る……。そして意識が消え去ったスキアー。

 フォンセは自分の顔に手を当て、残り僅かな魔力で回復しながら言う。


「……そうか……なら……私の勝ちだな……応急措置くらいは……してやらない事も無い……。……まあ、私の魔力が残っていたらだがな?」


 顔の傷を治療し、少しずつ話す元気を取り戻したフォンセ。

 完全に治療は出来ず、火傷の痕などが残っているが……それは戦闘ゲームが終わってからでも良いだろうと考えるような表情。


「……だが……お前達の科学では私が創り出した自然に勝てなかったようだな……。……まあ、私たちのリーダーはその自然まじゅつすらをも打ち砕くが……」


 スキアーの傷を少しだけ回復させたフォンセは、フッと笑って言う。



 こうして、フォンセvsスキアーの戦いはフォンセが勝利したのだった。

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