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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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六百四話 魔族の支配者・幻獣の支配者の決戦・決着

 ──複数の惑星が天を覆い尽くし、次の刹那にそれら全てが放たれた。それを狙われた張本人であるヴァイスは次々とかわして行き、その方向に待ち構えていたドラゴンが尾を払ってヴァイスの身体を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたヴァイスは山々を砕いて停止するが、そこにシヴァが現れ頭上から勢いよく踏みつけた。それによって惑星程の範囲を誇るクレーターが造り出され、大きく陥没して砂塵を舞い上げる。


「そこだ……!」


 そのクレーターの中心に向け、シヴァが新たな惑星を創造して叩き落とす。そのまま大地がめくり上がり、惑星の光速落下による熱と衝撃によって焼失した。

 そこから更なる爆発が巻き起こり、惑星一つ分の範囲が消え去る。


『──カァッ!』


 その爆風を切り裂き、焼き払う轟炎がドラゴンによって放たれた。

 粉塵をも焼き尽くす程の炎は消え去った惑星一つ分の範囲を全て覆い尽くした。それはさながら一つの太陽のようだが、大きさは太陽よりも小さい。しかし確かな高熱と威力を秘めている事だろう。


「それが本気に近い力かい? 冗談はしてくれ。アナタ方ならまだまだ力を出せるだろうに」


「ハッ、誤ってこの"世界樹ユグドラシル"を破壊する訳にもいかねェからな。元々崩壊の途中……これ以上やったら全員の避難が終わる前に消えちまう」


 シヴァとドラゴンの後ろから、翼を羽ばたかせて不敵な笑みを浮かべるヴァイス。

 あの惑星の衝突とドラゴンの炎から抜け出したらしく、殆ど無傷の状態だった。しかし癒えている途中の傷もあり、完全な無傷ではなかったらしい。


「けどお陰で、また少し成長出来たかもしれないな」


 そして魔力を込め、ヴァイスは岩石を集める。瞬く間に巨大化し、その魔力は大きな山となって空中に漂っていた。

 シヴァの惑星創造から見出だした方法のようだが、まだ発展途上なので山程度しか造り出せないのだろう。それでも十分だが、本人の目指す上からすればまだまだである。


『フン、この程度なら恐るるに足らんな。しかし、大岩から数時間で山へと変化した。やはり侮れん』


「おやおや、酷い事をするね。折角造った山を壊すなんて。君は子供が造った砂の山も壊すのかい?」


『規模と悪意が違うだろう。貴様の場合、子供の遊びのように可愛いのあるものではない』


 造り出された山。それは一瞬にしてドラゴンが破壊し、ヴァイスを上から睨み付ける。

 ヴァイスは相変わらずの軽薄な態度で返しているが、やはり末恐ろしいものだろう。


「下手に技を見せるのも相手にヒントを与える事になっちまうか。なら、悪魔で肉体的な攻撃をした方が良いのかも知れねェな」


「それも良い。技を真似るのは上手くなったけど、肉体的な力はまだイマイチ分かっていないんだ。今の人としての姿ならライの力が一番上かな……?」


 ──"人としての姿"。

 翼や尾。爪に牙。混沌とした体色や眼。それを踏まえて人と言うのは少々違和感があるが、本人がそう言うのなら幻獣や魔物の力よりも人間・魔族としての力が基本となっているらしい。

 生物兵器が吸収。コピー。学習した数で言えば魔族たちのモノが多い。なのでそれが元となっているのだろう。


「ハッ。俺の力に、試行錯誤している発展途上のテメェが追い付けるのか?」


「フフ、それはやってみなくちゃ分からないだろう。常に成長し続ける私が耐え抜けば、アナタ方を抜けるかもしれないのだからね。力の差があってもやる前から諦めるのは良くない事だ」


「テメェの言い分にゃ概ね同意だな。だが、追い付かれたら俺たちが困る。追い付く前に何とかしねェとな!」


 シヴァが踏み込み、光の領域を何百何千段階も飛び抜けて加速した。

 その衝撃で広大な範囲が消し飛んだが、最初の一歩で消し飛んだのはシヴァとヴァイスが数万回程ぶつかり合った後だった。

 その直後にヴァイスの身体が勢いよく吹き飛ばされ、大地を貫通して既に消え去った泉地帯へと落下する。それすらも通り抜け、宇宙とも言えぬ"無"の空間に到達したシヴァとヴァイスは更にぶつかり合う。


「言うだけの力はあるか?」

「よく言うよ。私は受けるので精一杯だ」


 ヴァイスの顔面を殴り付け、無の空間を光を超えて下方へ進む。次の瞬間にその背部を蹴り上げ、刹那に数万回死ぬ程のダメージを与える。

 その肉体はバラバラに崩れるが即座に再生し、細胞一つ残らず消し去らせる暇を与えない。まだシヴァの速度に追い付く事は出来ていないので隙があれば狙いたい所だが、身体は追い付かずとも黙視は出来ている。故に、今細胞を消し去る攻撃を放ったとしてもギリギリでかわされ、身体の一部を残してしまうだろう。

 纏めて全身を消し去る事。それを狙うのがシヴァの目的だった。


『ハァ!』

「……! 次はドラゴンか……!」


 再生するヴァイスに向け、全身で突進するドラゴン。そのまま炎を吐いて牽制し、巨腕をもちいてその身体を切り裂いた。同時に尾を放って吹き飛ばし、無の空間の更に下方へ向かわせた。

 それでも、例え何億光年離れていようと、複数の宇宙程の距離が離れていようと"テレポート"を使えるヴァイスは直ぐに戻ってくるだろう。なので距離を離すのにあまり意味は無いかもしれないが、存分に力を振るう。その為に離したのだ。


「当然、俺も居るぜ?」

「ああ。元々最強クラスの一人と一匹が相手……知っているよ」


 両手に二つの惑星を創造し、ヴァイスに向けてシヴァが放つ。それをヴァイスは正面から拳で迎い撃ち、貫通してシヴァの前に姿を現した。

 二つの惑星を完全に破壊した訳では無いが、する必要もないのでただ貫いただけなのだろう。


「近距離なら、アナタの側近の技を使ってみるのも悪くないね。"震動(ハザ・オーリア)"!」


「震動の災害魔術か。確かに近距離なら内部から破壊するその魔術は有効だな……!」


 無の空間に存在しているか分からない空気を揺らし、シヴァに迫るヴァイスだがシヴァはそれをかわした。その瞬間に蹴りを放ち、無の空間を吹き飛ばす。

 衝撃を和らげる物質も何も無い空間故にシヴァの蹴りは直に食らうが、その身体も再生した。


「やはり防がれ、私自身に何億倍にもなって返ってくるか。大変だな」


 ヴァイスは吹き飛ばされる最中、岩を創造してそれにぶつかり勢いを殺す。

 シヴァの蹴りによって飛ばされたヴァイスは恒星数十個分の障壁が必要だったが、風魔術や"サイコキネシス"などその他にも様々な方法で勢いを殺したので止まる事に成功したのだ。


「このまま此処でっても良いが、無限に広がるこの空間。テメェは帰れるとして、あまり離れ過ぎると俺たちが帰れなくなる。吹き飛ばし過ぎるのも問題だな」


「だから──銀河系を(・・・・)創造した(・・・・)……か」


「ああ。数え切れない程の惑星群に加えて、複数の恒星。そしてそれらを遥かに凌駕する量の小さな星々。これだけありゃ目印になんだろ」


 無の空間へ何時の間にか現れていた、銀河系。

 この空間は無限の距離が存在している。瞬間移動や"テレポート"。様々な移動術を使えるヴァイスは何処へ行っても一瞬で帰れるのだろうが、そういう術を使えないシヴァは迷ってしまうかもしれない。なので目印として、軽く銀河系を創り出したのだ。


「まあ、銀河系を創ると管理も面倒だし、天界の奴等に文句言われる事もあんだよな。一応生態系が完成しつつある星々も幾つかあるが、知的生命体が産まれればまた新しい神々や悪魔がその星で誕生しちまうかもな」


「破壊神にして創造神のシヴァ。宇宙を創れるらしいから、銀河系を創ってもおかしくは無いね。けど、生態系のある星々を創ったとしても私たちの戦いの余波で消えてしまうのではないかな?」


「大丈夫だ。この広い銀河系。生物の居る星を見つけるのも面倒。戦いの最中で見つけられりゃ上々だ。それに、生態系があってもまだそこまで進化してねェ生物だ」


 生物が生まれるという事は、新たな神話が生まれる可能性もある。それに伴って天界にも新たな神々や地獄に悪魔が生まれる可能性もある。

 創ったばかりなので生物の居る星があったとしてもまだ微生物くらいしか居ないのだろうが、数億年後までの管理を踏まえて神々に文句も言われるらしい。創造神というものも中々大変である。


「私も大概規格外って思っていたけれど……アナタに比べたらまだまだみたいだね。創造神とは言っても……神まで生み出せるとは」


「生まれるか生まれないかは、まだ分からねェってんだろ……!」


 飛び出し、光を超えてヴァイスを吹き飛ばす。それによって生まれたばかりの星々を貫通して砕き、勢いが弱まりつつダメージを負った。

 そこにドラゴンが追撃し、ヴァイスの頭を巨腕で握り潰さんとばかりに鷲掴む。そのまま惑星を引きり──惑星ごと(・・・・)吹き飛ばした(・・・・・・)

 惑星とヴァイスのめり込む惑星が衝突して衝撃を放ち、核が露となる程に巨大な爆発を起こす。その爆発をドラゴンが爆炎ごと焼き払い、シヴァが畳み掛けるように焼き尽くす。

 ヴァイスはそこから抜け出して背後に回り込んでいたが、その背後には先程まで炎を吐いていた筈のドラゴンがおり、尾で全身の骨を折る程に締め付ける。そのまま固定し、シヴァがヴァイスに狙いを定めていた。


「これで終われば上々だ……! "超新星爆発アルティラ・ナウファ・インフィジャール"!!」


 ──そして起こった、宇宙を照らす恒星の終焉を告げる大爆発。

 重力崩壊や熱核融合の暴走によって生じる、星の最期を飾るモノ。

 その光は一瞬白く輝き、刹那に様々な色へと変化してマッハ1000以上の速度で熱と衝撃波が広がった。

 それはさながら、シヴァの手によって新たに生まれた銀河系に空いた裂け目のよう。時空の歪みによって異空間のような光が覗き、全て終着地点へといざなう破壊が瞬く間に数十光年先へと広がる。

 そしてこの瞬間、数十光年に渡る星々が塵も残さず消滅した。



*****



 全てが消え去った場所に、再び姿を見せるシヴァとドラゴン。光の速度よりも遅く、ゆっくりと広がる爆発故に一人と一匹は抜け出せたのだ。

 しかしこれは元々シヴァの魔力からなる爆発。自分たちが抜け出した瞬間にその速度を光を超えたモノに変え、確実にヴァイスを飲み込んだ。

 なので数十光年の距離も数秒で進み終え、今に至るという訳である。


「さて、それなりの攻撃を放ったが……敵はどうなった?」


『さあ、分からんな。生きていたら逃げた可能性もあるし、何処かに潜んでいる可能性もある』


「オイオイ。塵も何もかも爆発の衝撃で消え去ったんだぜ? ドラゴン殿。何処かに潜んでいたら分かる筈なんだがな。……まあ、透明になる事くらいは出来そうだけどな」


 そんな場所にて、一人と一匹はヴァイスの姿を探す。

 細胞一つ残らずに消え去ったのならば見つかる筈も無く用も無くなるのだが、超新星爆発だけでは倒せた気がしていないので捜索しているのだ。

 といってもこの広い数十光年。簡単には見つかる訳も無いだろう。


「ああ。不可視の移動術の応用で隠れていたよ。再生に数分掛かる程の大ダメージだったからね。お陰様で、まだ調子が悪い」


 ──向こうから姿を現さなければ。

 シヴァとドラゴンは特に驚きもせずそちらを見やり、肩を落とす。そこに居たのは、両手を失い脇腹が消え去っているヴァイスだった。

 それらも当然再生中だが、シヴァの超新星爆発によってかなりのダメージは負ったらしい。


「折角隠れていたのに姿を見せるのかよ?」


「ああ。アナタ達が少しその気になれば、私程度なら容易に見つけられると判断したからね。それでも隠れていたら追撃は免れない。……だから、敢えて姿を見せる事で時間を稼ぎたかったのさ」


「ハッ。確かにそうかもな。何の時間稼ぎかは分からねェが、どうせ今俺たちが仕掛けても直ぐに逃げるんだろ?」


「御名答。他の支配者クラスやライならば超新星爆発程度では大したダメージを受けない……けど、私はこの有り様。このまま戦うのは得策じゃないと判断した次第さ」


 それだけ言い、ヴァイスは姿を消し去った。どうやら"テレポート"を使い、完全に逃げたらしい。

 話している途中に攻撃しても良かったかもしれないが、例えそうしてもヴァイスは逃走するだろう。再生とその準備が出来たから姿を現したのだ。

 余裕が無ければそう簡単に姿を現す訳は無いと、容易に推測出来る事柄である。

 なので一人と一匹は振り向くと同時に肩を落としたのだ。


「さて、俺たちも帰るか。元の場所、どれくらい離れていたか覚えているか?」


『聞くまでも無かろうに。まあ、此処から真っ直ぐ十光年くらいの距離だ。直ぐに戻れる』


「ハッハ。そうか。……いや、そういや此処は元々"世界樹ユグドラシル"の下に広がっていた空間……別に銀河系を創らなくても、上に行けば帰れたな」


『今更それを言うか、シヴァ殿』


 帰り道をドラゴンに訪ね、うっかりしていた事を話すシヴァ。ドラゴンはそんなシヴァに呆れており、そそくさと翼を羽ばたかせて移動した。

 何はともあれ、この戦闘はシヴァとドラゴンの勝利だろう。

 幻獣の国と魔物の国。魔族幹部。支配者の側近たちの戦闘に続き、この決戦にて生じたシヴァとドラゴンたちの被害状況。


 ──支配者たちの被害、意識不明の者がゼロ。両者共に好調。

 ──ヴァイスに与えたダメージ。再生が遅くなる程の破壊と、それによって本人は逃走。

 此方は第二層から更に下方の場所に移動した為、第二層の世界にもあまり大きな影響は与えなかった。強いて言えば惑星複数個分の穴だろう。

 そして支配者の側近たちと同様、特に大きな被害を及ぼさずにこの決戦は終了した。


 "世界樹ユグドラシル"の第二層にて行われる"終末の日(ラグナロク)"。途中から移動したが、移動地点にてシヴァとドラゴン、ヴァイスによる戦闘が終わりを告げた。

 残る主力の戦いはとうとう一つ。

 ──ライたちとグラオ、テュポーン、オーディン、ロキ。


 後一日未満に崩壊が迫った"世界樹ユグドラシル"。現在ついに、四つ目の戦いが終了する。

 残り一つとなった戦いを残し、長かった"終末の日(ラグナロク)"は終幕の一途を辿るのだった。

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