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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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六百三話 魔族の支配者・幻獣の支配者の決戦

「"惑星創造(ナジュム・カラク)"!」


 一つの声が届き、天に複数の惑星が創造された。

 その惑星は複数個浮かんでおり、今にも下方へ放たれんとばかりのものだった。それは"世界樹ユグドラシル"の周囲を廻る太陽によって様々な彩色を醸し出し、赤、青、緑。色鮮やかな星々となる。

 それらは大気の変化やその星の天候。その他様々な理由によって変わる色だが、それが現在映し出されているという事は惑星の創造者──シヴァは確かな環境を星に創り出しているのだろう。


「おやおや、これは絶景だ。一つ、二つ、三つ……全部で八個か。これ全部、どうするつもりなンだい?」


「ハッ。言わなくても分かってんだろ。全部テメェに叩き付けるんだよ。これだけありゃ、幾らかは当たるかも知れねェだろ?」


「へえ? 確かに当たるかもしれないね。けれど、そんな事をしたら周りに大きな被害がいってしまう。それはどうするンだい? 魔族の国の支配者さン」


「大丈夫だ。もう既に移動は完了した」

「成る程ね」


 空に浮かぶ、八個の惑星。それを見たヴァイスが訪ね、シヴァが返す。

 そしてその瞬間、シヴァ、ドラゴンとヴァイスは数億キロ離れた場所に来ていた。

 秒も置かず、刹那に移動したシヴァたちとヴァイス。方法は簡単。訪ねられた瞬間に惑星を浮かばせながら大地を蹴り、文字通り移動した。移動させたという事。

 シヴァに蹴られた大地は巨大な亀裂と共に先程の場所から離れ、一瞬で移動を完了したのだ。範囲はシヴァ、ドラゴン、ヴァイスの居た半径数百メートル程度。それでも数億キロの範囲を移動すれば衝撃だけで広範囲が消え去る筈。仲間たちも居るであろうその範囲が消えなかったのは、蹴ると同時に場所を創造して被害を最小限にとどめたのだろう。

 通常では考えられない御技だが、それを実行してこその支配者という事だ。


「まあどちらにせよ、此処なら周りに気遣いをしなくてもそれなりの力でれんだろ」


『ああ。その様だな。戦闘が始まってからかなりの時間が経過している。奴も更なる進化を遂げそうだ……!』


「フフ、そうだね。私にはまだまだ伸び代がある。ライ達の成長速度と幹部や側近達の成長速度がね。それらを応用すれば、入手していない支配者の力も使えるようになるかもしれない。実際、創造の力は少し身に付いたからね」


 戦いの最中にも成長し続ける現在のヴァイスは、大分前に畳んだ翼を再び広げて空を舞う。

 何の障害の無い空に行けばヴァイスの不利になるかもしれないが、ヴァイスは敢えてそれを選んだのだ。

 ヴァイスがライたちを見て分かった事がある。それは、ピンチに陥ればピンチに陥る程力が増し更なる進化を遂げるという事。つまりヴァイスは、たった今からそれを模倣しようというのだろう。


「さて、始めようか」

「一体何を企んでるんだか」


 しかし、シヴァから見ればただ空を飛んだだけ。その様子から何かを考えているのは分かるが、その"何か"は分からない。

 だが警戒は高め、上空へと一瞬で舞い上がったヴァイスに向けて八個の惑星を隕石のように落下させた。

 その惑星は"世界樹ユグドラシル"の宇宙に造ったモノであり、落下と共に"世界樹ユグドラシル"にある大気によって燃え上がる。惑星一つ分の範囲でも凄まじいが、惑星複数個分の範囲となれば此処まで移動していなければ多大なる被害を生み出していた事だろう。


「八つを連続で砕くのも面倒だな。"魔王の剣(シャイターン・セイフ)"!」


 先ず落下してくる一つの惑星。それをヴァイスはブラックの剣魔術で切り裂き、一刀両断した。

 その惑星は二つに分かれ、大きな爆撃のような衝撃を散らしながら落下する。

 そしてそこに畳み掛けるよう、他の惑星が次々と降り注ぐ。


「これでは駄目か。なら──」


 それだけ呟き、降り注ぐ様々な惑星を次々と破壊していく。魔族幹部たちの技は惑星を砕く事も可能なものが多い。同じ魔族であるシヴァの創造を身に付けようとしている手間、同じ種族の技をもちいる事で感覚を研ぎ澄ませようとしているのだろう。

 瞬く間に八つの惑星を砕き終え、爆炎と粉塵に包まれる数百万キロ程の範囲を見渡してシヴァを探す。


「この程度じゃ大したダメージにはならないか。成長するにはまだまだダメージが必要かもしれない」


 忙しなく翼を羽ばたかせ、空を飛びながら呟くヴァイス。確かに惑星サイズの隕石は強力な技だが、星を砕ける今のヴァイスにはそれを防ぐのは造作も無い事。

 簡単に防ぐ事が出来、ヴァイスに宿るヒュドラーの耐久からして直撃しても大したダメージを受けない今の状態。本人は成長をしたいらしいが、逆に成長しにくくなってしまったのかもしれない。


「ハッ、成る程な。テメェが目立つ空に移動した理由はそれか。なら、成長する前に倒さなくちゃならねェな?」


 ──その背後からシヴァが現れ、回し蹴りの要領でヴァイスの身体を吹き飛ばした。

 蹴られたヴァイスは勢いよく光の速度を超えて落下し、巨大な粉塵とクレーターを造り出して着弾した。

 粉塵から立ち上がるヴァイスは頭から出血しており、今の蹴りには惑星破壊以上の威力が秘められていたと窺えられる。その傷も直ぐに癒え、ヴァイスは不敵な笑みを浮かべながらシヴァの方に視線を向けた。


「やはりアナタなら強靭な身体となった私に確実なダメージを与えられる。数時間戦い続けても息一つ切らしていない……私にとって、まだまだ成長。進化。発展の余地は無限にあるね」


「ハッ。一気に成長すれば普通は劣化も早まるが、テメェは不死身の身体を手に入れていたな。多分不老も入ってんだろ。不老不死にして完全消滅させなきゃ無限に強くなる存在か。面倒極まりないぜ」


 口では軽く言うシヴァだが、内心では少しばかり焦っていた。

 というのも、シヴァとドラゴン。支配者二人が全力では無いにしても数時間倒し切れていない。その現状に焦りを見せているのだ。

 始めは軽い気持ちで戦っていたが、成長すると分かってから力も上げていった。現在では本物と同じ質量を持つ複数の惑星を叩き付け、確実に仕留める方向で動いている。それでもなお耐えるヴァイスの存在。明らかに最初よりも爆発的に圧倒的力を有している証拠だった。

 シヴァは始めから全力でやらなかった事を後悔する性格でも無いが、少しだけヴァイスを脅威的な存在であると見ている。


『なら、その面倒な存在をさっさと倒さなくてはならないな。俺も少し力を上げよう……!』


「そうだな。俺も、もう数十光年離れたら超新星爆発でも仕掛けてみるか」


 ヴァイスは警戒に値する敵である。なのでドラゴンが光速でヴァイスに向かって進む。

 シヴァの場合は破壊の範囲がどうしても大きくなってしまう為、数億キロ程度の距離では力を出し切れないので更にヴァイスを離すらしい。

 シヴァが実行しようとしている恒星が消え去る程の超新星爆発は、数光年から数十光年をも飲み込む程の破壊力を秘めている。なので出すに出せないという事だ。


『ハッ……』

「おっと……光速を見切るのはまだ少し難しいかな……」


 その穴を埋める為に光速で進んだドラゴンはヴァイスに突進をけしかけ、ヴァイスはそれをかわした。かわされた方向へ尾を放つが、それもしゃがんで避ける。

 ダメージを求めるヴァイスが今回の攻撃をかわした理由は、光速反応がまだ慣れていないからのようだ。動体視力も身体能力も凄まじい成長を遂げたヴァイスだが、慣れない事はしないのが慎重な性格のままという事である。

 となるとシヴァの攻撃だが、シヴァの攻撃は光速を超えていた。ヴァイスの反応も間に合わない程の攻撃だったので、敢えて受けたのでは無く受けてしまったという事が正しいだろう。本人からすればダメージを負えるという発見があったので良いらしいが、まだまだシヴァとドラゴンの方が様々な力を手に入れたヴァイスよりも上のようだ。


『カッ!』

「"完全防御パーフェクト・ディフェンス"」


 刹那に炎を吐き付け、また少し違った防御で防ぐ。

 炎は灼熱の波となって広がり、周囲を大きく焼き尽くす。しかしヴァイスは無傷だった。それに加え、やはり身体が完全消滅し兼ねない炎は受けないらしい。

 といっても、今のヴァイスならば太陽の核に入っても肉体が残るだろうが、ドラゴンの炎はそれよりも遥かに高温の熱だったので防御したのだ。


「"惑星落下(ナジュム・サカット)"」


 次の瞬間、新たな惑星を創造したシヴァがその惑星をヴァイスに向けて叩き付けた。今度は放った訳では無く──自分で(・・・)持ち上げて(・・・・・)叩き潰したのでヴァイスにも避け切れなかったようだ。

 ドラゴンは既に光速で惑星の落下地点から離れており、巨大な惑星が"世界樹ユグドラシル"の大地とぶつかり合う様を遠方から眺めていた。


「凄まじい破壊力だ。惑星サイズの物体を光を超えた速度で叩き付けるとはね。規格外にも程があるよ、支配者さン。けれど、ギリギリで反応し切って破壊出来たから良しとしよう」


「光速を超えて迫る惑星サイズの物質をギリギリで破壊するテメェも十分規格外だ。さっきまで反応が遅かった光速領域にも、もう適応したか」


「ああ。私も驚きだ。まさかこンな短時間で此処まで成長するとはね。ライ達の成長力……敵ながら末恐ろしいものだ」


 そしてヴァイスは、惑星と"世界樹ユグドラシル"の大地にある境目から姿を現した。

 次の瞬間に惑星は消え去ったが、身体を粉々に砕いたヴァイスが再生しながら現れた事に変わりは無い。直前で破壊出来ても惑星程の範囲。今のヴァイスでは完全に防ぎ切る事は叶わなかったのだろう。


『倒し切れないのなら、倒し切れる場所に連れるとしよう』


「……!」


 ──その瞬間、遠方から光速を超えた速度のドラゴンが突進し、ヴァイスの身体を大きく吹き飛ばした。

 シヴァとの会話に夢中だったので隙が生まれ、この一撃を与えられたのだろう。ヴァイスは瞬く間に消え去り、シヴァがその後を追う。その数秒後にヴァイスは、数十光年離れた場所へと運ばれていた。

 そこから更に吹き飛ばし、光速を超えた速度で惑星恒星サイズの山々を貫通して打ち砕く。最終的に停止したのは、研究施設跡地から数億キロ離れた場所。そこから更に数十光年。そしてその場所からは数光年離れた場所だった。

 此処ならば数十光年に及ぶ超新星爆発を起こしても、目映い光が目に映るだけで味方に悪影響は及ばない事だろう。


「おやおや。まンまと連れて来られてしまったよ。けどまあ、リスクは大いにあるけど、なるべく本気に近い攻撃を受ければ致命傷になり兼ねない事を踏まえてその分大きく成長。進化出来そうだ」


「ハッ、随分と傲慢な発言だな。そりゃつまり、俺たちの攻撃を耐えられるっー事だよな?」


 支配者たちの攻撃は耐えられる。その発言にクッと笑ってシヴァが訪ねた。

 確かに本気に近いといっても宇宙や多元宇宙を破壊する程の攻撃は出さないのだろうが、銀河系や銀河集団を消し去る程の攻撃はもちいるだろう。それを耐えると述べるヴァイスの発言は、ヴァイスの実力からしても少々身に余るものだ。

 しかしその本人はフッと笑い、呆気からんと応えた。


「ああ。むしろ、それくらい耐えられなくてはこれから敵にしなくてはならない強敵達全員に勝てないだろう。世界でも圧倒的上位な存在の君達支配者に勝ったとしても、ライやオーディン。人間の国の支配者が残っているからね。最悪、選別を邪魔されるかもしれないから天界の神々とも一戦交える事になりそうだ」


 それは、支配者やライたちのみなず天界なども選別をするかもしれないという発言。

 確かに支配者やライたちと天界の神々は近しい力を持つだろう。彼らを倒せるならば、天界も支配出来るかもしれない。

 だが、その発言は余りにも無謀極まりない。それに対して冷や汗を掻きながら、ヴァイスに向けてドラゴンが口を開いた。


『……。この世界は上を見上げても上限が存在しないが……貴様は存在しない上限を狙っているのか? 全宇宙のみならず、多元宇宙。異世界。過去未来。全てを支配すると言っているようなものだぞ……!』


 そう、この世界に上限は無い。上を見ればそれは多元宇宙を含めた全宇宙よりも高く、下を見れば多元宇宙を含めた全宇宙よりも低い。全てに置いて限界の無い世界で上限を狙うという事は、最早言葉では表せない程に身の程知らずな事柄だ。

 ヴァイスの示す"天界"がこの世に数あるどの"天界"かは分からないが、全てを支配するという事は全ての次元を支配すると同義である。対するヴァイスは笑って返した。


「フフ。だから、"最悪の場合は"だよ。本来の目的は元の世界の者達を選別する事。より良い世界を創造する為にね。だけど、元の世界が変わってしまえば天界にも何らかの影響は及ぶかもしれない……そうなった時、流石に天界から下界を見下ろしている神様達も黙っちゃいないと判断した次第だ」


 そう、悪魔で、"最悪の場合は"。

 本人からしてもそれは望んでいないらしく、相応の覚悟はあるという事を告げた。

 それは強力な力が手に入り、高揚感が増しているので何となく発してしまった言葉かもしれない。しかしヴァイスからは、嘘偽り無い発言という事が窺えた。


「ハッ。全宇宙や天界、多次元を支配するか。それに比べりゃ規模は圧倒的に小さいが、世界征服を豪語する奴も居たな。だが、だったら教えてやるよ。今のテメェにゃ、そんな事を出来る力は無いって事をな……!」


「ああ。是非教えてくれ。今の私は、世界から見てどれ程の立ち位置に居るのかを……ね?」


 その発言に対し、世界を征服すると告げた魔王を連れる少年を思い出す。そしてクッと笑うシヴァが魔力を込め、力を入れた。その一方でドラゴンも全身に力を込め、射殺すような視線を向けて構え直す。

 そんな支配者たちを前にしたヴァイスは相変わらず無表情で淡々と返し、再び翼を広げて仕舞った尾を垂らす。牙と爪を剥き出しにし、全身を鱗が覆う異形な姿となって構える。

 邪魔だから使っていなかったそれらのパーツだが、更なる進化を遂げる為には全身に経験を積ませた方が良いと考えたようだ。

 支配者のシヴァ、ドラゴンと生物兵器のヴァイス・ヴィーヴェレ。大きな野望を秘めたヴァイスを阻止すべく、一人と一匹は限りなく本気に近い力を醸し出す。

 本気になったヴァイスと本気に近い一人と一匹。此方の戦闘は、"ヨトゥンヘイム"と研究施設跡地から数十光年離れた場所にて続くのだった。

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