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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百七十七話 魔族・幻獣・魔物の幹部たち

 ライたちとグラオ、テュポーン。シヴァたちとヴァイス。

 各々(おのおの)の相手が見つかり、次々と戦闘が行われている中、孫悟空たちも出口を捜索していた。

 というのも、積極的に戦闘を挑み敵の主力を抑える役割は主にライたちへ委ねられた課題。ライたちならば、支配者クラスが相手で無ければ多数の主力を足止め出来ていた事だろう。


『此方に主力が複数居んな。ライたちが囮部隊として先に進んだ筈だが……失敗に終わったか。支配者が居ねえって事はつまりそういう事だろ?』


『ああ。テュポーン様とグラオ殿が侵略者の元へ行ったからな。邪魔にならぬよう、残り物達は我らが相手取る所存だ』


『成る程。実質、幻獣の国と魔物の国の主力戦争って訳だ』


 グラオ、テュポーン、ロキによって足止めを食らっているライたち。

 確かにその状態で他の主力を足止めするのは至難の技。孫悟空はアジ・ダハーカを前に、ライたちが止め切れなかった説明を聞いて納得した。カオスと支配者の存在が大きく関与していたのだ。

 そして此処に居る主力は、幻獣の国のドラゴンを除いた全主力と魔物の国のテュポーンを除いた全主力。それは幻獣と魔物。その二種族の全面戦争と同じだった。


『これは元々戦争だろう。我ら魔物の相手がたまたま幻獣で、お前達幻獣の相手がたまたま我らだったに過ぎん』


『ハッ。そうかもな。まあどちらにせよ、もう止められねえ戦いだ。るなららなきゃな』


 如意金箍棒にょいきんこぼうを振り回し、アジ・ダハーカへと構える孫悟空。

 それに続き、幻獣の国の全主力も構えた。魔物の主力達も戦闘体勢へと入り、辺りに張り詰めた空気が立ち込める。

 カラカラと瓦礫の破片が瓦礫の上から転がり落ち、それが地面へと着いたその瞬間──


『伸びろ、如意棒!』

『ハッ!』


 ──如意金箍棒にょいきんこぼうが亜光速でアジ・ダハーカに向けて伸び、アジ・ダハーカは巨腕でそれを受け止めた。

 その衝撃で周囲の瓦礫が舞い上がって消し飛び、全ての主力が一斉に駆け出す。


「はあ!」

「はっ!」


 ニュンフェがレイピアを構えて放ち、それをブラッドが己の肉体で受け止める。

 レイピアの鋭利が剣尖がブラッドのてのひらを貫通して腕まで達するが、ブラッドはそのまま受け止めニュンフェの腹部へ蹴りを放つ。それを受けたニュンフェは口から空気が漏れるが吹き飛ぶのを堪え、レイピアを横に薙いでブラッドの腕を縦に裂く。そのまま回転して斬り付け、ブラッドの頭を斬り飛ばした。


「素早いな。だが、確かなダメージは入った筈だ」


「……! まだまだです……!」


 頭が無くなり、ブラッドの身体は倒れる。

しかしブラッドは即座に首から下を再生させ、片手に差した傘を持ち替えて構えた。

 傘の影が無くなった元の身体は消え去り、その場に完全に再生したブラッドが残る。


『俺の相手はお前か、ヨルムンガンド。兄弟で戦う事になるとはな』


『フン、何を今更。前にも相対した事があるだろう。……そう言えば、この世界には父上も居るらしいな。ヘルを含め、親子が揃ったか』


『まあ、母上はこの世界に居ないがな』


 孫悟空とアジ・ダハーカ。ニュンフェとブラッド。その戦闘の横にて、フェンリルとヨルムンガンドが向き合っていた。

 この二匹が戦ったのは一度だけだが、互いに強敵であるという事は知っている。油断ならない相手だろう。

 そしてロキが居るこの世界。フェンリル、ヨルムンガンド、ヘル、ロキとこの世界に親子が揃った。もしかすればこの戦争中、親子で戦う事になる可能性もあるかもしれない。


『俺の相手はテメェがするのか、ワイバーン』


『ああ。そうだな。我が相手をしてやろう。同じ龍族にして、姿形と言い似ている所があるからな』


『そうか? まあ、蛇と蜥蜴……似てるっちゃ似てるかもな。テメェの場合、蜥蜴要素は尾だけだが』


 一方で向き合うワイバーンとニーズヘッグ。

 両者龍であり、悪のような存在。少々無理矢理感は否めないが、ワイバーンはそれを戦う理由に使っているのだろう。

 元々これは戦争だが、龍として戦う理由が欲しい。戦争というだけでは野蛮なモノだからだ。なのでそれを理由として相手にするらしい。


『神鳥ガルダ。相手にとって不足無し、俺の相手をして貰う』


『ヴリトラ。全てを憎み、宇宙そらを塞ぐ者。障害の具現化した存在か』


『久々に会ったというのに、その言い草は無いだろう。ガルダよ』


『さて、会った事なんて無い気がするが』


 そして向き合う、ガルダとヴリトラ。

 実はこの一人と一匹、同郷の存在である。なので過去。何百年も前に出会った事があるのだ。

 そんなガルダの様子を見、ヴリトラは言葉を続ける。


『お前が知らなくとも、お前とは少々因縁がある。お前の友人と俺は過去に何度も殺し合った事があるからな。まあ、俺は殆ど敗れてしまうのだが』


『……。帝釈天……いや、インドラか。それならば相手を変えた方が良い。私はインドラにすら、一度も負けていない。何度も敗北したお前では到底敵わないだろうからな』


 ──インドラ。帝釈天とも呼ばれる、天神や軍神。

 ヴリトラが何度も戦い、何度も敗北した神がそのインドラである。

 ガルダとは交友関係にあるが、ヴリトラの天敵とも言える存在だ。


『フッ、確かに俺はインドラによって何度も殺された。だが、一年ごとに力を付けて蘇るからな。最近は魔物の国の幹部業が忙しくて会っていないが、確実に以前よりは強くなっていると自負している』


『そうか。確かに私も最近インドラとは会っていないな。まあ良い。今はドラゴン殿たちの障害になりうるお前を排除するだけだ』


 因縁はあるが、今の状況にインドラはあまり関係無い。

 その因縁をさておき、ガルダとヴリトラ。その一人と一匹も相手に向けて構えた。


『次々と戦う相手が決まっているな。お前達はどうする?』


『そうだな。昨日は決着が付かなかった。今日こそ倒してみるか』


『ブヒ。数的にも僕たちの方が多いからね。君には僕たち二人を相手して貰うよ……!』


 そして此方では昨日戦いが行われたがほぼ何事も無く終わった沙悟浄、猪八戒と牛魔王が構えを取る。

 当然昨日はライたち以外にも戦闘が行われていた。だが、途中で終わりを迎えたので決着は付いていないのだ。


『炎の巨人……何やら因縁を感じますね。貴方は私が相手を努めて差し上げましょう』


不死鳥フェニックスか。自分の相手として不足は無いが……自分の方が強いと思うがな』


『純粋な力でしたらそうでしょう。けれど、貴方に不死身の力はありません。粘り続ければ倒せると思いますよ』


『成る程、厄介だ』


 炎の不死鳥、フェニックスと炎の巨人スルト。

 純粋な力では確実にスルトが上だが、フェニックスにはそれを補う再生力と飛行能力がある。リーチのある炎剣は厄介だが、それを受けても完全に消滅しなければ反撃の隙もある事だろう。


『残ったのは二匹。此方も同じ……纏めて相手にするか』


『そうね。まあ、牛魔王が二人分引き受けているから数も丁度だし。兵士も居るけどその差はあまり関係無いかしら』


『随分と余裕がありますね。舐められたものです』


『けど、それくらい自信を持っていてくれた方が私からしてもりやすいよ……!』


 最後に残った、ヘルとヒュドラーにユニコーンとジルニトラ。他に兵士も居るが、それはあまり大きな影響では無いだろう。

 幻獣の国と魔物の国の主力たち。"終末の日(ラグナロク)"に置いての戦争だが、また別の意味合いがありそうな戦いも始まった。



*****



 幻獣の国と魔物の国の主力同士の戦闘。それらとは別に、百鬼夜行も他の主力。魔族の主力たちの様子をうかがっていた。

 といっても、昼間の百鬼夜行は思うよように力を出せない。なので隙が生まれるのを待っているのだ。

 主力たちならば姿が見えずともその気配から分かるのだろうが、完全に分かっている訳でも無いので行動に移れないのだろう。


「なあ。禍々しい気配があちこちに漂ってんな。感覚からして妖怪共か」


「その様ですね。既に囲まれています。此方が気付いていると、向こうは分かっているのでしょうか……」


「さあな。だが、敵の幹部クラスの実力者が居るのは確かだ。しかも、妖怪って事は何処かにぬらりひょんが紛れているかもしれねェ。油断は出来ないな」


 そこに居る魔族の主力たち。今会話をしているのはブラックとアスワドだが、他の幹部たちも全員揃っている。

 二人は周りを囲む妖怪達に聞こえぬような声音で話していたが、自身を主と思い込ませる力を持つぬらりひょんが居るかもしれないと警戒を高めていた。


「一先ず、側近たちは別の場所に移動させるか。妖怪達が前だと数が多けりゃ良いってもんじゃねェからな」


「そうですね……。全員に魔法を使って伝えましょう。私たち幹部の数は六人。一人多ければ、それが仲間でも容赦なく討ち滅ぼします……!」


「ああ。それが良い。そして出身の街と名前を教え合えば誰が偽物か分かる。……早速行動に移るか……!」


 ヒソヒソ声で話、魔力を言葉に乗せて他の幹部や側近たちへ伝えるように行動するアスワド。

 それで幹部が六人残るとして、一人でも多く存在している事に違和感が無ければぬらりひょんであると、名前を名乗るなど様々な方法をもちいて見抜く為の算段を細かく話し合っていた。


「んじゃ、早速……」


 ──次の瞬間、ブラックの指示と共に全側近は目にも止まらぬ速度で駆け抜けた。

 それと同時に残りの主力たちが互いの顔を見渡し、名前を訊ねる。


「俺はブラック。"マレカ・アースィマ"の幹部だ……!」

「私はアスワド。"タウィーザ・バラド"の幹部です……!」

「面倒だが……俺はダーク。"レイル・マディーナ"の幹部だ……」

「俺はシャドウ!! "ウェフダー・マカーン"の幹部だッ!!」

「俺はザラーム・モバーレズ。"シャハル・カラズ"の幹部だ……!」

「俺はゼッル。"イルム・アスリー"の幹部だ……!」

「…………」


 側近たちの移動と共に、話し合ったように名と街を告げる六人。そして答えない一人。

 その数、七人。ブラックたちは一斉にその一人へと構えた。


「悪いな、お前。味方かもしれねェが、この場で打ち倒す……! "セイフ"!」

「すみません、名前は……分かりませんけど、大切な仲間である貴方を倒します……! "四大元素(アルバァ・オンスル)"!」

「悪い……。面倒だが……テメェを倒す……」

「ハッ! 大事な仲間だった気がするが、これも見分ける為だ……! "影の力(ディッル・クッワ)"!」

「同じく……!」

「俺もだ! "四大元素(アルバァ・オンスル)"!」


 そして各々(おのおの)の小手調べ用の技を使い、その一人へと放った。

 全員がその者を仲間だと思っているので心苦しそうな表情だが、大きな被害を食い止める為にも決めた事を実行する。

 その仲間へ向け、幹部たちの力が一直線に進む。一応殺さぬように手加減した力だが、食らえばかなりのダメージを負うだろう。


「やれやれ。無効化以外にもワシの見抜く方があったか」


『"妖術・旋風"!』

『"狐火(フー・ホゥ)"!』

『始めから回りくどい事をしなくても良いという事だ!』

「同感だ! "破壊ブレイク"!」

「そうだね! "終わりの炎(ラスト・ファイア)"!」


 六つの技に向け、二つの刀と二つの妖術。破壊魔術に禁断の炎魔術が放たれ、それらを相殺する。

 それによって周囲には大きな爆発が起こり、その者達の姿が明らかになった。


「……! 思い出した……! テメェは敵だ、ぬらりひょん!」


「幹部達も勢揃いですね……! うち二人は白髪の仲間……!」


 現れた者──ぬらりひょん。大天狗。九尾の狐。酒呑童子しゅてんどうじ。そしてシュヴァルツ・モルテにマギア・セーレ。

 敵の主力、百鬼夜行とヴァイス達の最高幹部だ。

 攻撃と同時に己の能力は無駄と悟ったぬらりひょんが能力を解除し、ブラックたちに正体を明かす。そして向き直り、六人と六人が自分たちの相手を見ていた。


「まんまと騙されたぜ、ぬらりひょん。そして幹部達。俺たちの相手はテメェらが努めんのか!?」


「そうなるな。偶然か必然か、側近の去ったお主らの数と妖怪兵士を除くワシらの数は同じだからな」


 姿を現した者達に、ブラックたちは再び魔力や力を込めて構える。対するぬらりひょん達も構え、ブラックたちを見ていた。

 幻獣の国と魔物の国。魔族の国と百鬼夜行。他二人。これにて残る相手の主力はごく僅か。

 九つの世界"世界樹ユグドラシル"にて行われる"終末の日(ラグナロク)"は、もうじき全主力が出揃う事になるだろう。

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