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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百六十三話 崩壊の前兆

 ライ、グラオ、シヴァ、ドラゴン、テュポーン、ロキ。

 レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテ、ライたちの完成品、魔族の完成品、幻獣の完成品、魔物の完成品。

 フェンリル、ニュンフェ、ドレイク、孫悟空、沙悟浄、猪八戒、ワイバーン、ガルダ、ジルニトラ、ユニコーン、フェニックス、ヴァイス、シュヴァルツ、マギア、ゾフル、ハリーフ、ぬらりひょん、大天狗、九尾の狐、酒呑童子しゅてんどうじ、牛魔王。

 ブラック、アスワド、サイフ、シター、ズハル、シャバハ、ウラヌス、ヘル、ブラッド。

 オターレド、モバーレズ、ルミエ、ラビア、シュタラ、ナール、ファーレス、ダーク、ゼッル、シャドウ、ヒュドラー、ヨルムンガンド。

 そしてアジ・ダハーカ、ヴリトラ、スルト、ニーズヘッグ。

 今、この世界のこの国にて主力と戦闘をおこなっている者たち。主力と戦わず、邪魔をせぬよう敵の兵士達と戦っている此方こちらの主力を含め、"世界樹ユグドラシル"に居る全勢力が"ヨトゥンヘイム"につどった。

 その勢力は両軍ともに世界や宇宙を容易く崩壊させる事が可能な程のものだが、それらが相対する"世界樹ユグドラシル"はただじゃ済まないだろう。

 元々時間と共に崩壊してもおかしくないバランスだが、少なくともこの五日間ではまだ崩壊していない。というのも、何らかの影響はあるのだろうがライやグラオ、テュポーンが第一層と第三層の世界を打ち砕いてしまったのでその変化に気付けないのだろう。



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・最下層・泉地帯"。


 そしてライたちが"ヨトゥンヘイム"に居る時、泉地帯にヒビが入った。

 そのヒビは更に広がり、巨大な亀裂となって"ミーミル泉"と"ウルズの泉"の水を吸い込む。

 そこには、亀裂に吸われ流れる滝を彷彿とさせるような光景が生まれていた。その水によって泉のかさが徐々に減る。

 次いで泉を囲む土の壁が崩落し、更に水を飲み込んだ。その水の速度は更に増し、轟々と音を立てて何処かへ消え去る。

 ──そう。今この瞬間、泉地帯の崩壊が始まってしまったのだ。

 一番の下層にある泉地帯。そこから崩壊が始まると考えれば、第一層は六日目。第二層は七日目に崩壊するのかもしれない。しかし既に消え去った第一層。それがどう影響するかは分からないが、第二層の崩壊もあと一日二日の時間しかないのはほぼほぼ確定だろう。


 後の問題はそれにライたちが何時気付くか、である。

 宇宙程の大きさがあるこの"世界樹ユグドラシル"では、泉地帯と第二層まで数光年程度では無い数億光年程の広さがある。

 なのに何故ライたちはほんの数時間で行けたのか疑問だが、それは本題に関係無いので置いておく。何はともあれ、それ程離れている場所の変化に気付くのかが問題なのだ。

 気付かなければ刻一刻と迫る"世界樹ユグドラシル"の崩壊を見届けるか、奇跡的に出口を見つけて逃げ出せるかしかない。だが敵にも多くの主力がおり、このままでは崩壊に巻き込まれるのが関の山だろう。

 ライやグラオ、各支配者や匹敵する者たちなどは生き残るだろうが、他の主力たちが問題である。

 崩壊の破壊力がどれ程かは想像も出来ない事であるが、少なくとも超新星爆発は軽く超越する筈だ。


 どちらにせよ、今のライたちは"世界樹ユグドラシル"の崩壊に気付いていないのが現状。

 ついには此処にある二つの泉からほとんどの水が無くなり、常人の膝下程度にまで下がっていた。元々生き物がおらず水による周囲への影響なども無い世界だが、この減り方は尋常ではない。

 この亀裂が何処に繋がっているのかは不明だが、少なくとも世界の崩壊に繋がっている事は事実である。


「やはり偽りの"世界樹ユグドラシル"。早くも崩壊の前兆を見せているか……!」


 ──そんな、誰もいない筈の泉地帯にて一つの声が響き渡った。

 その声の主は長い髭を蓄え片手に槍を持っている者で、髪と髭が何処からともなく吹き抜ける風に揺れていた。そして減りつつある泉を見下ろしており、泉の水を一掬ひとすくいする。

 その手の隙間から水が流れ落ちて量の少ない泉の中に返った。そして立ち上がり、再び風に髪と髭を揺らして何処か遠くを見つめる。


「激しい戦いは続いているみたいだな。カオスにテュポーン。ロキも参加しているとなると、エラトマの力を持ってしても苦戦は強いられるだろう……。私自身、確実に勝てるとは言い切れない者達だからな。だが、早く終わらせなければ世界が崩れ行くか……。カオスめ。暇潰しの為だけに不完全な"世界樹ユグドラシル"を創造するとはな。はたまた厄介……。一つの宇宙規模の範囲となると、久し振りに一仕事が来そうだ」


 その髭を蓄え、槍を携える者──"世界樹ユグドラシル"の主神、オーディン。

 独り言を呟いているが、呟きたくもなるのだろう。

 此処が偽物とはいえ、宇宙規模の大きさを誇る"世界樹ユグドラシル"の範囲が消え去る事を考えれば、神々の中でも色々と問題が発生するようだ。本物の"世界樹ユグドラシル"の主神なのでこの手の問題が自分に来ると分かっている。故に独り言も自然と口から出てしまうのだろう。


「加勢するというのも一つの考えだが……突然手出しをするというのも無粋かもしれぬ。ロキが居る以上、私にも何かしなくてはならないが、エラトマ達から去った手前。難しいものだな」


 泉からそむけ、ゆっくりと歩みを進めるオーディン。事の事態は思ったよりも重要。なので何もしないよりは一先ずライたちの居る第二層に向かおうと考えたのだろう。

 穿てば必ず勝利する槍"グングニル"を携え、オーディンは泉地帯から姿を消した。



*****



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第二層・巨人の国・ヨトゥンヘイム"。


 一つで国程の大きさはある複数の建物が同時に地上から消え去り、空を舞って消散した。

 続いて複数の瓦礫が形成されて下方に放たれる。その瓦礫が全て消滅し、周囲に粉塵が漂う。


「向こうは盛り上がってんな。シヴァさんたちか」


「その様ですね。けど、そちらに気を取られるよりも目の前の敵に集中しましょう」


『全く。面倒な相手ね、彼らは』

「しかしそれも天命。戦う事は天によって始めから定められていたんだ。過去や未来じゃなく、現在だけが結果だからな」


「なんか面倒臭い性格だな、このヴァンパイアは。ライたちの所に居た奴の方がまだりやすかった」


 周囲には斬撃の跡や焼かれた跡、瘴気しょうきの含んだ風の名残。そして複数の肉片に何か重い物が落ちたのでは無いかと錯覚するクレーターが造られていた。

 それらは此処に居る主力、ブラック、アスワド、サイフ、シター、ズハル、シャバハ、ウラヌス、ヘル、ブラッドによって付けられたものである。

 戦闘が始まってから数分でこの有り様という訳だ。


『苦戦しているようだな、ヘルにブラッド』


『自分たちも手伝おうか? 見たところ数が倍以上違うからな』


 戦闘の途中に話し掛けてくる、ヴリトラとスルト。ブラックたちはそれに反応を示して視線を向け、ヘル達もそちらを見やる。

 シヴァと戦っていた筈の二匹だが、向こうで行われている戦闘からズハル、シャバハ、ウラヌス、ヘル、ブラッドは理解する。ブラックたちは誰が誰と戦っていたのか知らないので特に気にせず構えた。


『それは助かるわね。相手に支配者クラスはいないけれど、小粒でも無い。結構大変だわ』


「ああ。此処で貴方たちが参加するなら、それも天命。断る理由は無い」


 構えるブラックたちの横で、ヘルとブラッドはヴリトラとスルトの参戦を望む。それならばと、ヴリトラ達もこの戦闘に参加した。

 此方こちらがそれを断っても意味が無いという事を理解しているブラックたちは、再び複数の魔法・魔術を顕現させた。


「魔物の幹部が二匹……面倒な相手だな」

「ええ。とても……!」

「だが、やるしかねェって事だな」


 ブラック、アスワド、ズハルの三人が構えを解き、刹那に込めた魔力を放つ。

 一方では複数の剣魔術。一方では四大エレメントのいずれか。一方では震動の災害魔術。それらが一直線に進み、ヘル、ブラッド、ヴリトラ、スルトに直撃した。


『フン、下らぬ技だ』


 しかしそれをヴリトラが黒い塊で塞ぎ、内部で全て散らす。全ての空間を塞ぐヴリトラにとって、守護する必要もない技などその場で防げるのだろう。

 そして黒い塊が消え去り、無傷のヴリトラ達が姿を現す。その瞬間にブラックたちへ近付き、巨腕でけしかけた。


「成る程、手強いじゃねェか"震動の護りハザ・オーリア・タフゼィール"!」


 震動の災害魔術を使い、空気を震動させてヴリトラの巨腕を弾いた。

 それによってお互いの距離が離れ、互いに向き合う形となる。


「そういや、他の二匹は居ないんだな。シヴァさんたちの所に向かったのは四匹だった筈だが」


『当然よ。支配者だから四匹で挑んだが、お前達程度取るに足らん相手だ』


「成る程、舐められたもんだ」


 そして、アジ・ダハーカとニーズヘッグの存在が気になるズハルと返すヴリトラ。

 シヴァが相手では確かに魔物の国の最高戦力が居なくては話にならない。なのでシヴァには四匹が挑んだのだろう。

 しかし今此処に居るブラックたちはシヴァに劣る。故に二匹だけが来たのだ。

 そして当のアジ・ダハーカとニーズヘッグはというと、


『手を貸そうか、ヒュドラーにヨルムンガンドよ』


『退屈してんだ。手伝わせてくれ』


『フム、構わないぞ我は』

『同じく』


 ──シュタラ、オターレド、モバーレズ、ルミエ、ラビア、ダーク、ゼッル、シャドウナール、ファーレスの前に居た。

 アジ・ダハーカは苦戦している様子を見て、ニーズヘッグは暇潰しに参戦する。ヒュドラーとヨルムンガンドもそれを断らず、参戦を受け入れていた。


「また、面倒な相手が来ましたね」

「まあ……此方こっちにも俺たちが増えた……。面倒だが……そこまで差は無いだろう」

「そうだな。第三層から来た私たちも居る」


 それを見、肩を落とすシュタラと面倒臭そうに問題無いと話すダーク。そして此方も問題無いと話すルミエ。

 確かに主力の数ならば此方が圧倒的に多い。相手は個々の強さを持ち合わせているが、何とか数でカバーする事が出来そうである。


 ──そして魔族の主力と魔物の主力はさておき。他の場所は既に戦闘を行う主力が出揃っている。

 ライたちもレイたち、幻獣の主力。そして支配者やヴァイス達に百鬼夜行。

 世界を軽く消し去れる者たちのつどいがあるからこそ、この世界の崩壊には気付けないのかもしれない。


「オラァ!」

「甘いよ!」

『邪魔だ!』

『やれやれ、血気盛んなものだ』

「ハッ、面白ェ!」

『何という力か……』


 ライ、グラオ、テュポーン、ロキ、シヴァ、ドラゴンの主力の中でも随一の力を持つ者たちがぶつかり合った。

 それによって更に広範囲の建物が消滅して吹き飛び、大地が空中に浮き上がって漂う。ただ衝撃で浮き上がっただけなので重力に従って落ちてくるのだろうが、数秒は落ちないだろう。

 そしてライたちにとっての数秒となれば、体感ではかなりの長時間浮き上がっている事になる。そしてその大地は、次の瞬間に消滅して消え去り再び元の空へと戻る。


「もう何度この光景を見た事か……やっぱり決着は中々付かないな」


「そりゃもう互いに力を抜いているからだろうな。下手したら仲間を巻き込んじまう。テュポーンや仲間の居ないロキは気にしていないみたいだが、俺たちが力を出さないから相手も出してねェんだろうよ。それに、決着を付けさせるかどうかは好きに決められるだろ?」


「それはどうだろうな」


 戦闘が始まってから既に何度も行われている破壊と創造。創造はシヴァだけだが、何はともあれまだ戦いは終わらずに続いていた。

 仲間が居るので力を出せないのだが、それならばライは始めから第三層の世界を砕いていない。

 というのも、出口さえ見つかれば全てが済む話なのだ。なので時間を稼ぎ、戦闘に決着を付けさせない事で出口の発見を待っているのである。味方にシヴァとドラゴンがいる事で力を抜いても戦えているので、逆に都合が良いのである。


『フン、それがそういう作戦という事も分かっている。余が主らの仲間を殺せばそんな気も起こらなくなるだろう』


「やっぱ、もう気付いていたか。けど、仲間に手は出させねえぞ」


『なら、止めてみよ……!』


 そして無論、支配者にして様々な経験をしているテュポーンが気付いていない筈もなかった。

 仲間が狙われる可能性も勿論ある。なので力を抜きつつも、テュポーンを自由にしない程度の力は必要である。

 ライは一瞬にして駆け出し、テュポーンに拳を打ち付けた。それをテュポーンは受け止め、周囲が再び崩壊する。


「ハハ。更に盛り上がって来たね。……まあ、この世界が後どれくらい持つかだけどね……」


 ライとテュポーンのぶつかり合いを見て軽く笑いつつ、誰にも聞こえないような声音で話すグラオ。

 此処はグラオが創った偽りの"世界樹ユグドラシル"。なのでその寿命も大凡おおよそは分かっているのだ。不完全だった一部はシヴァも修正したが、シヴァに寿命は分からない。

 崩れ行く泉地帯と、その遥か上で戦闘を行うライたち両軍の全主力。

 崩壊が始まったこの"世界樹ユグドラシル"での戦闘は、幾つか波乱の前兆を感じさせながらもまだ続くのだった。

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