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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百五十話 捕まっていた者たち・三人と一匹の戦闘

 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第三層・ヘルヘイムの近隣"。


『まさか……此処に居たとはな。ドラゴン殿。そして他の主力たちよ』


『ふむ、此処まで来たかフェンリル。つまりこれは、不測の事態が起こりつつあるという事か』


『捕まっているのか。その割りには余裕がありそうだな。ドラゴンさん』


 "ヘルヘイム"の近隣を探索していたフェンリルたち第二陣と第三陣の連合チームは、その近くに捕らえられているドラゴンたちの元に来ていた。

 そこには見えない仕切りがあり、それなりの広さは確保されているようだが捕まっている様な状態である。

 しかしドラゴンたちが捕らえられている事を知らないフェンリルたちからすれば、何故なぜ此処に居るのかよく分からない状態だった。だが一応推測ではドラゴンが捕まっていると考えているらしい。


『ああ。いち早く此処に来て捜索するには捕まった方が良いと思ってな。余計な戦闘を避けつつ、ある程度の広さがある場所で捜索する事が出来れば此方こちらとしても探し物がしやすいという事だ』


『探し物……。成る程、元の世界に戻る為の出入口を探しているのだな。成果は如何程のものだ?』


『何とも言えないな。捕まってからほんの一日二日。探せる範囲も限られていて怪しまれぬように行動しなくてはならないからな。今のところは何も無しだ』


 そんなドラゴンは、元の世界に戻る為の道か穴か。一先ずそういったものを探していたようだが成果はまだ無いと訊ねたフェンリルに返した。

 戦闘や捜索と、やはり目的遂行は一筋縄ではいかないのが世の常なのかもしれない。


『上手くいかないものだな。来るのは簡単だが帰るのは難しいこの世界。これからドラゴンたちはどうするんだ?』


『一応捜索は続けるつもりだが……不測の事態に限り俺の自由も約束されている。此処の範囲は既に捜索済み。別の場所を探すのも良いだろう』


『そうか。しかしこの仕切り、それなりに頑丈なようだが抜け出せるか?』


『ふっ、愚問だ。お前も知っているだろう。これくらいのモノなら容易く砕けるさ』


 そう言い、仕切りを腕の一振りで打ち砕くドラゴン。砕かれた仕切りは光の粒子となって散り、捕らえられていたドラゴンたちと兵士たちが解放された。

 ドラゴン、ワイバーン、フェニックス、猪八戒の主力を筆頭に、他の者が揃って第三層の"ヘルヘイム"近隣を進む。

 此処につどった者は先程述べたドラゴンたちを始めとし、第二陣のフェンリル、ドレイク、ジルニトラ、アスワド、ルミエ、ラビア、シターの三匹と四人。

 第三陣の、孫悟空、沙悟浄、ユニコーン、ブラック、サイフ、モバーレズ、オターレドの六人と一匹と、計七匹と十一人の主力。

 この世界を探索する為だけのメンバーにしては少々贅沢なメンバーだろう。


『我はまだ、敗北を認めた事を許しておらんぞ、ドラゴン……! 今は状況が状況だから置いておくが、国に帰ったら覚悟しておけ……!』


『ああ、心得ている。龍は古来より誇り高き種族。元の世界に戻る為とはいえ、それをけがしたのだからな』


 仕切りの外に出つつ、ドラゴンへ誇りについて話すワイバーン。それはドラゴンも理解している事。話し合いは行うつもりである。

 そして揃った出口の捜索組みは"ヘルヘイム"近隣を探索するのだった。



*****



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第三層・死者の国・ヘルヘイム"。


 そしてフェンリルたちのやり取りの近隣で、"ヘルヘイム"に揃った強大な主力たちは既に互いを討ち滅ぼすつもりで戦闘をおこなっていた。

 事の発端ほったんはその中でも飛び抜けた実力を秘めるライ、グラオ、テュポーン、ロキが同時にけしかけた事である。一瞬にしてこの三人と一匹が近付き、能力を使わずに純粋な力で殴り掛かった。それによって爆発的な衝撃が生まれ、その場に居た一部を除く全員が"ヘルヘイム"の国を吹き飛んだ。


「「きゃ……!」」

「「「……っ!」」」

「わっ……!」


「流石、凄い衝撃だね」

「そうだね……!」

「ああ。そうだな……!」

「クソッ……!」

「……ッ!」


 そして他の主力たちは強制的に距離を離され、ライ、グラオ、テュポーン、ロキ以外の主力たちが国の何処かへ散りばめられる。

 まだ小手調べにも至らない所業でこの破壊力。本当に"世界樹ユグドラシル"が消滅しても不思議では無いだろう。


「レイたちが何処かに行っちゃったな」

「ヴァイスたちもだ」

『フン、どうでも良かろう。さあ、歯を食い縛れ!』

『フム、この者達ではリハビリには少々強敵過ぎるかな』


 拳を打ち付けた三人と一匹は即座に拳を離し、テュポーンが腕を伸ばして鞭のように薙ぎ払う。レイたちを心配するライとヴァイス達の事を気に掛けるグラオはそれをかわし、ロキは身体を炎に変えて避けた。

 空を切った腕はそのまま衝撃を伝えて真空を生み出し、暴風と共に周囲の枯れた草木を消滅させる。そこから魔王の力を六割纏ったライが空へ飛び出し、グラオ、テュポーン、ロキに向けて拳を構える。


「レイたちが居なくなったなら、纏めて吹き飛ばしても迷惑を掛ける事は無さそうだ!」


 そのままライ自身の力も上乗せした拳を放ち、下方に居る二人と一匹に衝撃を与えた。

 対し、グラオはそれを正面から砕き、テュポーンも正面から粉砕する。炎その物になっても魔王によって無効化されてしまうロキもライの衝撃を己の力で消し飛ばした。

 周囲には巨大なクレーターが生まれ、そのクレーターを余所に無傷のグラオ達が空のライへ視線を向ける。


「成る程ね。仲間は心配だけど、逆に言えば仲間の存在を気にする必要も無くなった。だから遠慮無く叩けるのか」


「ああ。仲間を巻き添えにする訳にはいかないからな。お陰で早く片付きそうだ」


『早いかどうかは分からないだろう。余は肉体的な耐久力も高いと自負している。貴様程度の攻撃、本気で無ければ容易く防げる』


『私はどうかな。身体を炎に変えて逃げながら戦うという戦法になりそうだ』


 そのまま二人と一匹も跳躍し、ライの眼前に躍り出る。ライは空気を蹴って下へ加速し、それを読んでいたグラオがライの横について不敵な笑みを浮かべる。

 次の刹那にライの脇腹に鋭い蹴りが入り、ライの身体を吹き飛ばす。その身体には地面に叩き付けられるよりも早くグラオが追い付き、顎を蹴り上げた。それで一時的に動きを止め、次いで回し蹴りを放ってライの身体を上へ吹き飛ばす。

 地面に叩き付けてもどの道無傷である事は容易く理解出来る。グラオが直々に蹴った方がダメージが入ると踏んだのだ。


『早くに終わるのは貴様か、ライ!』

「……!」


 そこへ入り込む、テュポーンの両腕。その腕は浮き上がったライの身体を捉えて触れ、勢いよく下方へ押し付ける。

 そのまま下方に居たグラオを巻き込み、辺りに巨大な粉塵を巻き上げた。


「横取りと同時に僕を狙うか。とんだ不届き者だね、魔物の王」


『フン、元より貴様らを葬るつもりだ。カオスよ。お前達とは協定関係にあるが、お前が消えてもリーダーであるヴァイスが残れば協定は確立されたままだからな』


「滅茶苦茶な理論だ。けどまあ、一理あるね。君を挑発したのは僕だ殺したがっていても受け入れよう。殺せる訳が無いからね」


『貴様……!』


 粉塵から現れ、テュポーンを睨むグラオ。テュポーンは鼻で笑って返し、グラオは更に挑発する。

 その挑発にまんまと乗ったテュポーンは更に身体を巨大化させ、腕を伸ばす。先程までのテュポーンは4~5m程度。今はその倍程度の大きさとなった。


「さっきから俺を弾代わりにしてんじゃねえよ!」


「『……!』」


 そのやり取りを横に、グラオとテュポーンによって弾代わりとされていたライが痺れを切らして拳を放った。

 それによって生じた拳の風圧が加速し、巨大な大砲となってグラオとテュポーンを狙う。次の瞬間に着弾して破裂。周囲が大きく砕け散った。


「おっと、ごめんよ。ライ。あのまま君を打ち砕くつもりだったけどテュポーンに邪魔されちゃったからね」


『すまんな、ライ。お前と共にカオスを滅ぼすつもりだったがかわされてしまったからの』


「そういう問題じゃねえ!」


 魔王の力を七割に引き上げ、自身の力を上乗せして実質十割の力となる。

 それは一歩踏み込むだけで世界が崩壊し兼ねない力だが、慣れてきたライの調整によって最小限の破壊に収まっていた。破壊の範囲を抑えられず余計な破壊をしていた前のライは愚鈍だっただろう。今は大分マシになったと見ても良い筈だ。


『私は完全に無視されているな。まあ良いか。不意は突ける』


 ライ、グラオ、テュポーンが向き合う中、身体を炎に変換させたロキが全体を包み込む程の業火を生み出した。

 その炎はライたちの居る場所近くの"ヘルヘイム"全体を包み、底無しの高温になって焼き尽くす。そしてその炎は次の瞬間に掻き消された。


「残念、不意なんてものは俺たちに存在していない」


『成る程。厄介だ』


 そこには片手を突き出すライがおり、ロキは面倒臭そうにため息を吐く。既にグラオとテュポーンの姿は無く、一方がロキ。一方がライとロキの近くへ迫っていた。

 それはつまり、グラオがライへ、テュポーンは両腕をライとロキへ放ったのだ。迫り来る二本腕と一人。対してライは拳で弾き、ロキは炎となってかわす。


『無視して悪かったの、ロキよ。責任持って消し去ってくれる』


めて頂きたいな、そんな事』


「僕はライの相手で良いかな。ロキは後ででも良いからね」


「やれやれ、迷惑だな。いや、俺の自業自得か。周りの所為にしながら達観しても意味が無い」


 テュポーンとロキ。ライとグラオが正面から衝突して破壊を引き起こす。それによって"ヘルヘイム"半径数キロが吹き飛んだ。

 本来なら国その物が吹き飛んでもおかしくない破壊力だが、相殺し合ったので数キロ程度の破壊で済んだのだろう。そして余計な破壊は生まぬライだが、敵を打ち倒す為の力は抑えないので周りに衝撃が伝わったのだ。

 何はともあれ、ライ、グラオ、テュポーンの戦闘にロキが加わりより激しさは増して行く事だろう。一応、加わっているという意味では始めから居たが。


『仕方無い。焼き払うか』

『フッ、炎など誰でも放てる』


 ロキが炎を展開させ、ライたちを含めて全員を巻き込んだ。対するテュポーンも炎を吐き、炎と炎が衝突して全体に伝わる。それによって周りが灰と化した。

 その灰を貫き、ライとグラオが拳を交える。その衝撃で灰は消し飛び、二人に近付くテュポーンの巨腕。ライとグラオはそれをもかわし、テュポーンの腕にてせめぎ合う。


「巨大な身体っていうのは便利だね。僕達を纏めて相手に出来るみたいだ」


「アンタは小さな身体でも俺達を相手にしているだろ」


「君よりはこの姿でも大きい方さ。まあ、僕達の領域になると大きさが力の証明にはならないからね。気にしなくても良いか」


 身体の巨大な者程力のある。それは自然的に考えればそうである。しかし、自然を超越した存在のライ、グラオ、テュポーン、ロキ。テュポーンは身体も巨大だが、ライたちを含めて自然という領域から脱した存在──他の主力は身体の大きさに関係無く凄まじい力を秘めている。

 野生に近い幻獣・魔物は大きさも力の要因だが、ライの仲間たちや魔族たちは小柄ながらも幻獣・魔物の主力に匹敵する力を有しているのでライやグラオのような領域ならば大きさなど関係無いのだろう。


『フンッ、ちょこまかと!』

「っと……!」

「おっとっと……」


 だが、巨大に越した事は無いのかもしれない。自身の力が広範囲に届くテュポーンの巨体。ライの放つ拳の衝撃波のように威力が下がっての攻撃では無く、自身の身体から放つ正真正銘の一撃。遠距離に届くこの一撃はかなりのものだろう。

 しかしライとグラオはそれをかわし、お互いに距離を置いた。


『広範囲に仕掛けられるのは便利だな』


 そこへ向け、ロキが灼熱の炎を放つ。ライ、グラオ、テュポーンを巻き込まんとばかりの炎だが、その程度の炎はあまり効かないので軽く払いけた。

 払われた炎の中からライたちが姿を現し、ほむらに包まれた状態で三人と一匹が立ち竦む。ほんの数分だけの戦闘だが周囲は既に灰まみれとなっている。小手調べにもならぬ力だが、これ程の破壊を生むとは恐ろしいものだろう。


「ほら、ライ。折角力を解放したんだ。この程度じゃなくてもっと力を出してくれよ」


「アンタもな、グラオ。けどまあ、アンタに力を出されたら離れているレイたちにも迷惑を掛けてしまいそうだ」


『そんな事はどうでも良かろう。余は纏めて捻り潰したいだけだからの』


『血の気が多い者が多いな。私が本調子に戻っても苦労しそうだ』


 周囲に散った炎の欠片をバックに、三人と一匹が構え直す。その構えから今までは様子見だったが、少し力が解放されるかもしれないこの戦闘。

 ドラゴンたちが元の世界の出口を捜索する中、ライ、グラオ、テュポーン、ロキの戦闘は続くのだった。

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