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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百四十七話 四日目の終わり

 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第二層・巨人の国・ヨトゥンヘイム・巨人の館・スリュムヘイム"。


 日が完全に落ち、月が真上に移ろうとする時間帯。巨人の国では残った主力たちが休息を取っていた。

 殆どの者は明日に備えて寝静まり、起きている者は先に行った陣を気に掛けているか見張りとして起きているかである。

 今日だけで全ての陣が行けた訳では無い。なので残っている主力も多かった。まあ最も、残っているほとんどの主力は魔族であるが。


「御眠りにならないのですか? シヴァ様」


「ん? ああ。俺は暫く眠らなくても良いからな。お前こそ良いのか、シュタラ」


「ええ。支配者の側近として御世話をしなくてはならないので」


「俺は餓鬼か」

あながち間違ってはおりませんね。その性格からして」


「……」


 "スリュムヘイム"内にて、シヴァとシュタラが会話する。

 その内容は他愛の無いものだが、その会話とは裏腹に二人は恐らく警戒が高いままの状態だろう。シヴァは元々それ程眠らなくとも良いが、敵への警戒によってシュタラは眠れないのだ。

 しかしシヴァに対する言葉から、余裕は感じられるのであまり心配は要らなそうである。


「それはさておき、第一陣と第二陣、第三陣の皆様は御無事でしょうか。いずれも強者つわもの揃いですけど、やはり心配です」


 しかし警戒しているが、警戒よりも気になる事は先に行った者たちのようだ。

 ライたち第一陣。フェンリルたち第二陣。孫悟空たち第三陣。かなりの実力者揃いだが、それでも気になるものは気になるのだ。

 対し、気を取り直したシヴァは言葉を続ける。


「ハッ、まあ気にし過ぎる必要は無いだろうよ。アイツらがかなりの実力者って事を知ってんだ。余計な心配は身を休めるに当たって不要だからな。信頼してんなら心配も必要ねェだろ」


「彼らを信頼していますけど、心配しない理由にはなりませんよ。信頼しているからこそ心配になるのです」


「ハッ、やっぱお前には敵わないな、シュタラ」


「なら、私が次期支配者という事で」

「それとこれとは別だ。まあ、取り敢えず今は休んどけ」


 シヴァとの会話で多少落ち着いたらしく、普段の調子に戻っていたシュタラ。どうやらシュタラ自身の心配は要らないようだ。

 しかし心配している事に変わりはないので、本調子という訳では無さそうである。だが敵の気配は無いので、休んで欲しいというのがシヴァの心境だろう。


「ふふ、御構い無く。私も休める時には休んでいますから。それに、もうすぐ帰る事になるこの世界。偽物とはいえ、この世界の星と景色を目に映しておくのもまた一興でしょう」


「ハッ、ロマンチストだな。俺にはよく分からねェ感覚だ」


「そうですか」


 現在地は"スリュムヘイム"の建物の中では無く上の階にあるバルコニー。

 そこからならば星と周囲の景色を見渡せるので目の保養にしても見張りにしても丁度良いのだ。

 しかし景色の方はあまり重要視していない様子のシヴァ。シュタラはそれに笑って返す。


「こんな所に居たんですか、シヴァさん。そしてシュタラ。確かに見張りにゃ丁度良さげですけど、何だかシュタラが不安そうだな」


「敬語なのか敬語じゃないのかハッキリしたらどうだい? まあそれはさておき、オターレドも行っているし心配なのは大体分かるかな」


 そこへ二人、シヴァの収める街"ラマーディ・アルド"のズハルとウラヌスが姿を見せた。

 第三陣としてオターレドが向かっているので此処に居る"ラマーディ・アルド"の主力はこの四人だけである。

 幹部クラスの主力ならばまだ居るが、少なくとも此処に集まったのは"ラマーディ・アルド"の者たちだけだ。


「ハッハ。そうだな。さっき妙な暴風が一瞬吹き抜けたし不安になるのも分かる。だが、不安なんてものは払った方が良い。折角来たんだ、お前たちものんびりしておけ」


「そうですね。休めるなら休んでおくべきですから」


「んじゃ、お言葉に甘えさせて貰うか」

「そうだな。共に過ごすのも悪くない」


 ズハルとウラヌスへ、共に休まないかと話すシヴァ。二人で居るよりは数人で過ごした方が見張り役としても良い。

 なのでシュタラも賛成し、ズハルとウラヌスもバルコニーからの見張りに加わった。巨人の国"ヨトゥンヘイム"での四日目が過ぎ去ろうとしていた。



*****



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第三陣・炎の国・ムスペルヘイム・跡地"。


 ロキとの戦闘によって大部分が消え去り、時間帯からして周りも暗くなっている"ムスペルヘイム"にてフェンリルたち第二陣が集まっていた。

 ロキとの戦闘から数時間は経過しているが、今日はこの場で野宿をする事にしたのだ。

 居る者はフェンリル、ドレイク、ジルニトラ、アスワド、ラビア、シター、ルミエの三匹と四人。そのメンバーに変わりは無く、既に治療も終えているので仮に再びロキが攻めて来たとしても敵の主力が来たとしても対応する事は可能だろう。


「すっかり日も落ちましたね。少し休むつもりでしたけど長時間休んでしまいました」


「私的には休めて良かったけどねぇ。あのまま進んでいたとして、ライ君たちの居場所も分からないから休めそうな場所を見つける事で苦労しそう。それに、瓦礫のほとんどを吹き飛ばす程の暴風がさっき起こったし、何かあったのかもしれないからね」


『そうだねぇ。暴風の件は置いといて、野宿って事に変わりは無いけど、此処には建物の瓦礫があるから身も隠せるし、国があっただけに立地も悪くないからね』


 瓦礫の山に身を潜め、空を眺めながら話す二人と一匹。全てが消えた訳では無いが、炎は消えたので暑さもマシになり過ごし易さはある。

 それなら建物の中で休んでも良さそうだが、主力と兵士たちが共に居る事で何らかの事態などが起こっても対応出来るように外の瓦礫多数の場所で休んでいるのだ。

 余熱が少し残っているので寒くなく、冷めているので暑くない。先程届いた変な暴風を除けば過ごし易い環境となっていた。


『しかし、日が落ちてきたとなると今日は迂闊に行動しない方が良さそうだ。明日あす、改めて進むとしよう。そしてこの姿では少々目立つ。人化となろう」


 此処で野宿する理由は現在が夜であるという事も要因の一つである。

 夜には魔物が活性化し、他の主力たちも夜が本領発揮となる者も居る。それに加えて夜が故に道に迷うというシンプルつ最も恐ろしい事柄になりうる可能性もあるので明日に向かうのだ。

 主力は元々昼夜問わずかなりの力を使えるので主な理由は道に迷うという事だろう。その様な事をフェンリルは人化しながら話した。


『そうだな。確かにこの姿では少し目立ちそうだ。敵も主力クラスなら俺たちの気配から分かるだろうが、巨大過ぎると普通の兵士たちに見つかる可能性もあるからな」


『そうだねぇ。私も賛成かな」


 人化したフェンリルに続き、ドレイクとジルニトラも人化する。

 少々目立つ幻獣の姿。人化する事でそれを消せるのだ。

 そしてそこには、数ヶ所に灰色を織り交えた長髪を揺らす鋭い目付きの人化したフェンリル、リルフェン。

 赤い髪に人にしては高い背丈を誇る筋肉質な身体を持つ人化したドレイク。

 黒の長髪に健康そうな褐色の肌を持つジルニトラが現れていた。

 巨体が小さくなる事で一瞬だけ広くなったような感覚が生まれる。それはさておき、続いてシターがリルフェンへ話し掛けた。


「それで、今日は此処で休むなら見張り役とかも必要よね。風雨は無いから目立ちそうな建物は造らなくても良さそうだけれど」


「そうだな。一先ず俺が請け負う。それから二時間起きに二人一組みの交代制にするか。俺は三時間程見張っているから、お前たちはゆっくり休んでいてくれ」


 シターの気になった事は見張り役について。建物などは無くとも問題無いが、見張り役はかなり重要である。

 ロキが来るかも知れなければ、ヴァイス達。魔物の国。百鬼夜行が来るかもしれない。そして孫悟空の仕業だが、吹き抜けた暴風も警戒の一つに存在している。なので交代制の見張りという事になり、一先ずリルフェンがそれを請け負うらしい。


「じゃ、任せたよ。フェンリルさん。いや、今はリルフェンさんだっけ」

「色々と迷惑を掛ける。リルフェン殿」


「いいや、迷惑では無いさ。任された」


 対してジルニトラとドレイクが返し、リルフェンは少し高い位置にある瓦礫の上に立つ。

 それに続いてアスワド、ラビア、シター、ルミエが別の場所に移動した。第三陣炎の国"ムスペルヘイム"での四日目も、終わりを迎えるのだった。



*****



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第三層・森"。


 觔斗雲きんとうんに乗り、"ムスペルヘイム"の遥か上空を抜けた第三陣は森の中を歩いていた。

 そこでは孫悟空と合流しており、第三陣の主力たち孫悟空、沙悟浄、ユニコーン、ブラック、サイフ、モバーレズ、オターレドの全員が揃っている。

 当然他の兵士たちも揃っているがしかし、全員歩みを止めているのでどうやら今日は此処で野宿となるらしい。


『百鬼夜行はけたが、まだ追って来る可能性はある。夜は奴らが本領発揮するには十分な時間帯だからな。だから、森に紛れて隠れても良いだろう。そして見張りも必要だ』


 集まるや否や、他の者たちに向けて話す孫悟空。

 というのも、今の時間は夜中。百鬼夜行が力を上げる時間帯なのでのんびりはしていられないのだ。しかし先に行った部隊を追い掛けようにも連絡手段が無く場所が分からない。なので後日改めて捜索をするつもりなのである。

 他の主力から反論の意見も上がらず、それからするに今の行動が一番の得策という事は理解しているようだ。


『まあ、元々この第三陣は夜に向けて結成された部隊。それ程心配する事も無さそうだ』


「ああ、そうだな。今日は野宿ってのには賛成だ。仮に敵が攻めてきても迎え撃つ事は可能だしな」


 孫悟空の言葉に賛成しつつ、仮に敵が来てもあまり大きな問題ではないと話す沙悟浄にブラック。実際、第三陣は夜を行動する為の部隊。なので敵が来てくれるならば相応の対策もある。

 つまるところ、此処で野宿しても敵が攻めてきても無問題という事だ。


「なら、さっさと見張りを決めて休むとするかァ。負傷者たちの治療もまだ終えてねェしな。朝まで数時間。休める時に休ンだ方が良いのは確かにその通りだ」


「そうね。百鬼夜行の相手も思ったより手古摺てこずったし……少し疲れたわ」


「そうッスね」

『そうですね。休むに当たって私も一先ず人化しておきますか。この方が目立ちにくいですし」


 他の者たちも改めて同意する。そしてユニコーンは人化し、角のような癖毛のある白紫色の長髪の女性となった。

 そして、第三陣は何処の国にも属さない森の中で休息を取る事となる。その後話し合いを行い、見張り役には一先ず孫悟空がつくらしい。

 第三陣の四日目も、多少の落ち着きを見せ過ぎて行くのだった。



*****



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第三層・ヘルヘイムの近隣"。


 向かうべき方向と目的地を決めたライたちは暫く進んだ所で一時的に歩みを止め、野宿の準備をしていた。

 というのも、入り組んだ道の多い"ヘルヘイム"へと続く道。これから本拠地へと入り込めば確実に戦闘となる。なので全力で戦えるよう、此処で休む事にしたのだ。

 当然此処には第一陣の全主力──ライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテ、ニュンフェの七人が全員揃っている状態である。


「妙だな。さっきの場所から数キロしか離れていないけどヴァイス達が追って来ないなんて」


「うん。もう少し執念深く追って来るかと思ったけど、意外とすんなり諦めたのかな? さっき吹き抜けた暴風は別の要因みたいだけど……」


「暴風はさておき、諦めたという可能性はあるな。だが恐らく明日あす、全力で挑む為に今日は諦めたという線が一番あり得るものだ」


 準備をしつつ、ヴァイス達の行動を気に掛けるライたち第一陣。ライ、レイ、エマはヴァイス達の行動を話していた。

 ヴァイスは兎も角、グラオ、シュヴァルツ、ゾフルはあのまま諦めるとも思えないので意外だったのだ。

 しかし明日戦えると分かっているならばどうだろう。明日に備え、休んでいるかライたちが来るのを本拠地で待ち構えているという線も出てくる。

 何はともあれ、確実に戦えるならばそのチャンスを此処で潰すのでは無く待機しているという線が高いという事だ。


「まあ、来ないなら来ないで良いけどな。今日のうちに決着を付けるつもりで昨日から覚悟を決めていたから……それが不発に終わった事は少し残念だが、休めるならそれで良い」


「うん……。そうだね……」

「そうだねー!」

「ええ、そうですね」


 しかし、敵が来ない事で休める機会が増えるのは利点となりうる事柄。この四日間連戦続きだったのでそれに甘んじても良いという考えなのだ。

 全員がそれに賛同し、ライたち第一陣も此処で休む事となった。


「さて、明日は移動がメインだった今日よりも忙しい日になりそうだ。ある程度の見張りを付けて休むとするか」


「「うん」」

「「ああ」」

「うん……」

「ええ」


 レイとキュリテ。エマとフォンセ。リヤンとニュンフェがライの言葉に頷いて返す。

 休むと決まれば、念の為の見張りを数人残して休んでも構わないだろう。森の中なので見渡し難いが、見張りを付けるに越した事は無い。夜風が少しあるので建物を創造するが、それは少々目立つのでライたちは簡易的な魔法・魔術で済ませた。

 第二層。第三層。そこにある諸々の場所では、主力全員が休息を取る。快晴の星空と白く輝きながら浮かぶ月。これにて全チームの四日目が終わりを告げたのだった。

 そして明日、主力が更に揃う事で最終決戦が行われる事になるだろう。

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