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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百三十六話 第二陣

 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第二層・巨人の国・ヨトゥンヘイム"。


 全てが巨大な第二層の世界。巨人の国"ヨトゥンヘイム"には今、ライたちとは別の主力たちが集まっていた。

 支配者であるシヴァを始めとし、魔族の幹部と側近たち。そして幻獣の幹部たちが此処に居る状態という事である。

 ライたちが第三層へ向かってから数時間は経過しており、東から昇り始めていた朝日が真上に昇ろうとしている時間帯だった。

 そんな中、主力たちは外に出て体制を整え警戒しつつもある程度はくつろぎながら話し合っていた。


「さて、そろそろライたちは第三層に着いたか?」


「さあ、どうでしょうね。宇宙サイズのこの世界。一層の差とはいえ、時間は掛かる筈ですからねェ」


「ええ。ライさんたちが如何程の速度で進んでいるかは定かではありませんが、この世界の広さから考えればかなりの時間が掛かると思います」


 その内容は、ライたちの動向について。

 ライたちがこの国をったのは早朝。それから数時間が経過し昼を過ぎそうな時間帯になっている。なのでライたちが何処まで行ったのか気になっているのだ。

 この広い"世界樹ユグドラシル"の世界。数時間とはいえ、本来ならば第二層からも抜け出せない程の距離がある。一層一層が銀河系よりも広大な土地を誇っているので当然と言えば当然だろう。


「しかしまあ、そろそろ第二陣も準備をした方が良さそうだな。敵の拠点が何処にあるかは分からないが、第三層の世界は炎の国。氷の国。死者の国。過酷な環境の国が多いからな。そこに辿り着くまでも中々大変だろうし、さっさと向かうのが得策だ」


 そして、此処に居る者たちも第三層へ進む準備をした方が良いと話すシヴァ。

 本人の言うように、過酷な環境が続くであろう第三層の世界。そこへ行く事を考えれば、明るいうち。そして早い段階で先を目指す事が重要だろう。

 そうしなくては思わぬ事態が起こるかもしれないからだ。思わぬ事態というのは、此処が敵地である以上暗くなり視界が悪くなれば動きに支障が生じるかもしれないという事である。

 闇は魔物と妖怪の専売特許。魔族も夜の行動には慣れているが、この世界に置いての地の利は敵にある。なので不意を突かれる可能性もあるのだ。

 気配を常に感じるよう警戒はするつもりだが、休みなく気配を感じ続けるのは矢張やはり疲れが生じてしまう。"終末の日(ラグナロク)"に置いてそれはあまりよくない事だろう。

 何はともあれ、日があるうちに行動する方が都合が良いのだ。


「分かりました。では、そろそろ第二陣の方々へ指示を出します。後陣は更にその次。他は明日以降になりそうですね」


「そうだな。兵士も含めて全員が元の世界に帰れるかは分からねェが、今日のうちに三つ。明日以降に残りの陣を送るのが最善の策だな。距離もあるし、二、三日じゃ終わらなそうだ」


 シヴァの言葉を聞き、それに了承して別の陣へ向かうシュタラとその方が良いと話すズハル。ズハルの言うように、確かにそれが一番の行動だ。

 味方の数は多い方が良い。なので残った後陣を送り、先陣を切ったライたちの手助けをする事が今回の戦争を有利に進められる事になるのである。

 何はともあれ、次の陣を送るのならば前述したように早く次の行動を起こすに越した事は無い。


「ハッハ。その通りだな。先に行ったアイツらなら心配は無さそうだが、援軍はあった方が良い。ある程度場が整った今なら邪魔にもならなそうだからな。まあ元々、数が多過ぎるから別動隊に分けたんだしな」


 シュタラとズハルに返しつつ、軽く笑うシヴァ。

 チームを分けたのはその方が様々な利点があるから。数時間が経過した今なら利点をそのまま、増援を寄越せるという形になるのでその方が良いだろう。


「なら、俺たちも準備をするか。元より第二陣は我ら幻獣の国の者たちだからな」


『ま、同じ幻獣の国でも俺たちは後続だけどな』


 そのやり取りの横で、準備を始めるフェンリルが人化した姿のリルフェン。

 そして斉天大聖こと孫悟空と数人の主力は第二陣以降の陣に入っているのでまだ暫くは"ヨトゥンヘイム"に留まっている事だろう。


「じゃ、第二陣は任せたぜ。フェンリルと支配者ドラゴンの息子、ドレイク。お前たちが第二陣のリーダー格となっているからな」


「相分かった。シヴァ殿たちも引き続き待機を任せる」


『数時間後、いつになるか分からないが再び会おう』


 第二陣のリーダー格。フェンリルとドレイクがシヴァの言葉に返した。

 第二陣はフェンリル、ドレイクを始めとしてジルニトラ、アスワド、ルミエ、ラビア、シターというチーム構成である。

 それはジルニトラ、アスワド、ルミエのように魔法・魔術を中心とした力を持つ者とラビア、シターのように遠距離からの援護や近距離の守護などサポートに徹する力を秘めた者たちが散りばめられていた。

 それは第一陣のライたちを信用した上で、第二陣は戦闘ではなく主にサポートを中心とした立ち回りを行うつもりなのである。

 しかしフェンリルやドレイクが居る事からして主戦力にもなりうるだろう。

 サポート役がこんなに居ては後続の回復などが不安になるが、当然他にも選りすぐりのメンバーが居るので一つのチームにサポート役を多くしても問題無く行動出来るのである。


「んじゃ、任せた。精々死ぬんじゃねェぞ」


『フッ、要らぬ心配を。サポート役の多いこのチーム。そう簡単に死んではサポートの意味が無いだろう』


 最後にシヴァが言い、元の姿になったフェンリルが笑って返す。これ程のメンバーが居るのだ。そう簡単にられるチームでは無いだろう。

 ライたちが巨人の国"ヨトゥンヘイム"をってから数時間。新たに第二層の世界へ向けて、第二陣が歩みを進めるのだった。



*****




 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第二層・第三層へ続く道"。


 巨人の国"ヨトゥンヘイム"を抜けた第二陣は、それなりの速度で第二層の世界を進んでいた。

 第三層へ行くまでにかなりの時間は掛かるだろう。しかしそれは百も承知。なるべく早く、そして確実に第三層へ行く為、第二陣は歩みを止めずに先を進む。


『しかと掴まってくれ、皆の者。お前たちの体力を温存する為、俺はこの姿でお前たちを運ぶ』


『『『はっ!』』』

「「「うす!」」」


 ──主にフェンリルが。

 全員分とはいかないが、本来の大きさに近い程の巨大化をしてフェンリルが駆けていたのだ。

 今のフェンリルには何百人、何百匹が乗れる筈である。それでも乗れない余りは出てくるが、それは魔法使い・魔術師が多い他の主力が補うだろう。結果として全員がフェンリルに乗れていた。

 それに伴った移動も含め、ライたちが第三層へ行った時よりも早くに到達するかもしれない。


「かなりのペースで進んでいますね。これならば思ったよりも早く第三層へと行けそうです」


「うん。フェンリルさんと私たちの魔法・魔術。これを合わせているから移動も早まるね」


 因みにアスワド、ルミエやジルニトラが使っている魔法・魔術は加速魔法や加速魔術では無く、守護魔法に守護魔術の類いである。

 というのも、フェンリルの背にアスワド、ルミエ、ジルニトラが乗る事で移動の疲労が抑えられる。その分魔法・魔術に集中出来るので壊れにくい箱を魔力で形成し、フェンリルの幅を更に倍増させる事で全員が乗る事に成功しているのだ。

 その分フェンリルへの負担がかなりのものになりそうだが、当然身体のケアも済ませている。微量な回復魔法・魔術を使い、リラックスさせる魔法・魔術を使う事で半永久的に走り続ける事が出来ているのだ。


『フッ、まだまだ加速出来そうだな。昼を回って数十分。後二、三時間でライ殿たちへ追い付くとするか』


「あまり無理はしないで下さいねフェンリルさん。私たち主力の魔力は他の魔法使いや魔術師よりも遥かに上を行く量を誇っていますが、永遠ではありませんから。フェンリルさんの負担が掛かれば掛かる程、それを回復させるのに必要な魔力も増えるので。まあ、それは私たちが少し気力で堪えれば良いだけ。最も重要な事はフェンリルさん自身に影響が及びそうという事です。欠けてはならぬ戦力。無理は為さらずに」


『ああ、理解した。しかし今のペースは既に先程述べた二、三時間で追い付くペースだ。悪魔で今よりも早く出来るに過ぎん』


「ふふ、それは頼もしいですね」


 一歩。また一歩と駆け抜けるフェンリル。今よりも更に速くなれるそうだが、アスワドたちに掛かる負担も増えるのでそれはしない。

 アスワドもフェンリルの言葉に笑って返していた。確かにフェンリルの速度は速い。故に、早く着くかもしれないというのは頼もしい事だろう。


『しかし、本当にお主だけに任せても良いのか、フェンリル殿。俺は支配者の息子として国民を護る義務がある。無論、それら自国の国民のみならず他国の民も含めてだ。つまるところ、フェンリル殿に任せ切りというものは少々思うところがある』


 そんな、先を進むフェンリルに対して任せ切りで良いのか気に掛けるドレイク。

 幻獣の国の支配者であるドラゴンが第二層。または他の場所に居ない事を踏まえ、息子である自分が民などを護るべき事と考えているのだろう。

 ドレイクは跡継ぎなので後々は支配者になるかもしれない存在。だからこそ幹部であるフェンリルに便り続けても良いのか考えていた。


『フッ、気にせずとも良い事だ。ドレイク殿。幹部は支配者の手伝いをするもの。まだ支配者では無いドレイク殿だが、支配者になれる器を持ったドレイク殿の手伝いをするのは至極当然の事だ』


『そうか……。しかし、やはり気になる。フェンリル殿がそう言うのなら今回は頼るが、今度何かあった時はフェンリル殿だかではなく俺も共に行こう』


 フェンリルの言葉を聞き、渋々だが納得するドレイク。

 今回はフェンリルに頼り、次からは自分も進んで行動すると誓っていた。

 何はともあれ、これにて話は終了する。そしてそんなフェンリルたちの前に、少しばかり寒い気配の感じる道が映った。

 そこの奥からは冷気が漂っており、見て分かる程の寒さがある場所に続いていると理解出来る。恐らく、此処が第三層へと続く道だろう。巨人の国"ヨトゥンヘイム"をってから一時間余り。もう第三層に続く道が見えたのだ。


『此処が第三層へ続く道か。漂う冷気からして、この奥には氷の国"ニヴルヘイム"か死者の国"ヘルヘイム"がある筈だ。彼処あそこの国々は兎に角寒い。気を付けてくれ。何を気を付ければ良いか分からないかもしれないが、かく自身の熱を逃がさぬように気を付けるのだ』


 第三層へと続く道が目に映り、他の者たちよりは"世界樹ユグドラシル"に詳しいフェンリルが注意を促した。

 本来の"世界樹ユグドラシル"と色々異なる点は多いが、冷気を感じるならば氷の国かその国と同一視される死者の国くらいだろう。なのでそう推測していたのだ。


「では、私たちに支障が無いように軽い熱魔法と熱魔術を纏いましょう。それならば寒い場所だろうと少しは持ちます。後はその間に氷の国を抜ける事が優先ですね」


『ああ。宜しく頼むアスワド殿。此処からは更に過酷な環境……体温を高める力はあった方が良いからな』


 それならばと、アスワドが簡単な熱魔法をもちいてフェンリルの周りを温暖な魔力が覆った。これならば氷の国と言えどそう簡単に寒さで凍える事は無いだろう。

 それはフェンリルにとっても主力や兵士ちにとっても有り難い事。フェンリルは礼を言い、改めて第三層へと続く道に踏み込んだ。



*****



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第三層・氷の国・ニヴルヘイム"。


 そしてそれから数十分。道を抜けて氷の国"ニヴルヘイム"に到達したフェンリルたち第二陣。

 全てが凍り漬いた極寒の国"ニヴルヘイム"。その寒さは保温の魔法・魔術をもちいている主力や兵士たちですら寒いと感じる程だった。


「うぅ……。冷える……ジルニトラちゃん、抱き付いて良い……?」


『そうだね、ラビアちゃん……。もう少し近付こうか……』


「何をやっているんだお前たちは……」


 その寒さの中、ラビアとジルニトラが身を寄せて寒がる。それを見ていたルミエが呆れたように返していた。

 それはさておき、目的地の一つには到着した。此処には第一陣の者たちが居ないのでどうやら既に"ニヴルヘイム"からの移動は終えているようだ。それはそれで良いだろう。

 そして此処から先へ進むとして一、二時間程となると考えればフェンリルの言ったようにってから二、三時間で到達出来そうである。


『さて、後一息だ。此処から"ギンヌンガガプ"を抜け、炎の国"ムスペルヘイム"へ行くぞ』


「「はい」」

「「うん」」

「「ああ」」


 こんな寒い場所に長居は無用とフェンリルは指示を出し、他の主力たちは頷いて返した。その速度もあるが、場所に詳しいフェンリルが居るからこそ早くに到達出来たのだろう。

 "終末の日(ラグナロク)"の四日目。ライたちがってから数時間。第二陣が第三層にある氷の国"ニヴルヘイム"へと辿り着いた。フェンリルたち第二陣は、これから更に先へ進むのだった。

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