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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百二十五話 魔族たちの合流

 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第二層・森の中"。


 時を数時間程(さかのぼ)り、昼前程の時間帯。小人の国"ニダヴェリール"からかなりの距離を進んだシヴァたちは森の中を駆けていた。

 その速度はかなりのもので、音の領域は当の昔に追い越している事だろう。

 当然兵士や主力たちの中には着いて来れない者も居るので、その者たちは他の主力が共に行動をしていた。


「それでシヴァさん。俺たちは何処に向かって居るんで? 主力や兵士たちの中にはロキの話を聞いたばかりでまだ困惑している者は多いですけど」


「あ? まあ適当に気配を探って兵士たちの捜索だな。確かに困惑している奴らも多いが、主力や兵士はそれなりの修羅場をくぐっている。直ぐに落ち着くだろ」


「それを言い続けて数時間が経過しましたけど、まだ落ち着いていませんね」


「あァ? たった数時間じゃねェか。俺たち魔族は数百年生きるんだ。そのうちの数時間なんか一瞬だろ一瞬」


 森を進みつつ、兵士たちの捜索をおこなっているシヴァたち一行。その会話からするに、どうやらロキが現れた事を告げてから直ぐに"ニダヴェリール"を抜けたようだ。

 なのでロキに対面したシヴァたちを覗く兵士たちは困惑しているらしい。他の主力は流石というべきか、もう既に落ち着いている状態である。


「……。確かに思い返せば一瞬となりうる出来事ですけど、今体感している数時間は一瞬ではありません」


「お、おう。まあ先を急ぐのは別に悪い事じゃねェだろ。取り敢えずロキについては一旦保留って事だ」


「そうですか。ならばそういう事にしておきましょう」


「ああ、そうしてくれ」


 数時間を一瞬というシヴァの言葉に同調しつつ、今についての数時間は一瞬では無いと返すシュタラ。シヴァはそれに気圧けおされつつも、先を急ぐ事を優先としているので詳しく説明している暇は無いと告げた。

 それを聞いたシュタラは何とか納得したらしく、困惑している兵士たちは各々(おのおの)の対処で済ませる。それから更に数時間。シヴァたちは一つの街を見下ろせる程の高さがある丘で立ち止まった。


「お。あれは街か。でっけー街だな」

「その様ですね。確かに大きな街です。巨人族の国でしょうか」

「となると、彼処あそこは巨人の国"ヨトゥンヘイム"か」


 その街、巨人の国"ヨトゥンヘイム"。

 シヴァたちは人間の国"ミズガルズ"の外側に位置するその国へ、小人の国"ニダヴェリール"を通って到達したようだ。

 その大きさから巨人の国と推測するシュタラに、シヴァは補足を加えるように告げた。"ヨトゥンヘイム"についてシヴァたちも伝承程度の知識ならば当然持ち合わせている。なので理解するのにそう時間は掛からなかった。


「街の方から幾つかの気配も感じるな。つかかなり多い。これ全部味方か?」


「さあ、どうでしょう。敵も味方も多いですからね。全てが味方の可能性もありますし、全てが敵の可能性もあります。もしくは敵と味方が織り混ざっている可能性も。何はともあれ、油断は出来ませんね」


 そんな"ヨトゥンヘイム"に感じる複数の気配。それが敵のものか味方のものかは分からないシヴァたちだが、此処で待っていても意味が無いので一先ず行くしか無いだろう。

 次いで丘を降り、シヴァたちは"ヨトゥンヘイム"へと向かって行った。



*****



「此処が門か。かなり巨大な門だが、ひらかれた形跡があるな。足跡の数は複数。しかしそれは全て門の真ん中。そして一つだけ離れた場所に別の足跡がある。その位置は片方にある門の場所……成る程な。獣のような種族も交えて複数人が数時間前にこの門に入ったみてェだ。そして片手でこれ程の門を開ける奴と来たら、それなりの力持ちとうかがえるな」


「その様ですね。魔法・魔術とかならば片方に寄る必要もありませんし、魔力の欠片すら感じませんから魔法・魔術と肉体的な力で協力して開けたという訳では無さそうです」


 "ヨトゥンヘイム"の門前にて、シヴァは周囲を調べていた。

 というのも、誰かが居る事は気配で分かっているがその実力が分からないからだ。

 この様に巨大な門ならば、それの開け方次第である程度の実力は分かる。複数人で開けたのならば兵士クラス。魔法・魔術で開けたのならばそれ相応の魔力を秘めている。一人で物理的に開けたのならば力が強い。と、この様に開け方だけで複数の選択肢が生まれるのだ。開け方は他にも多数存在するが、今回は三番目に述べた一人で物理的に開けたという線が高いだろう。

 その事から、シヴァはそれなりの力を誇る者が自分たちの来る数時間前に"ヨトゥンヘイム"へ入ったと推測したのだ。


「ハッ、力自慢って事か? それなら、出会って敵だった場合は此方も力の強い幹部……ダーク辺りが戦うのはどうだ?」


 その推測を聞き、ズハルが軽く笑って共に行動している幹部のダークへと話し掛けた。ダークは魔族の幹部でも肉体的な力が一番。なので自分が戦うのでは無く、それを観戦するのも面白そうだと考えているのだろう。

 当然自分にも戦いたい気持ちはあるが、たまには傍観者になってみるというのもまた一興という事だ。


「寄せよ……面倒臭い……。俺はそこまで戦いたくないからな……」


「ハッ、何時も通り辛気臭ェ顔してんな。いや、ただ面倒なだけか」


「ああ……ただ面倒なだけだ……」


 気ダルそうに戦う気はあまり無いと告げるダーク。

 一応魔族なので戦闘にはそれなりの興味を持っているが、それを面倒臭いという気持ちが制してしまっているのだろう。その返答にズハルは呆れていた。


「力は強ェのに勿体ねェ性格だな。ライに負けてから一応鍛練は積んでいるんだろ?」


「ああ……まあな。今なら光の速度に近いくらいは何とか出せる……。面倒だから一日三時間くらいしか鍛練していないけどな……」


「ハッ、鍛えりゃ直ぐに成長する程の力を持っている割りには、この性格だからな。数ヵ月でそれ程までに成長したテメェがもう少しやる気を見せりゃ、今頃は次世代の支配者候補になれたと思うんだがな」


「面倒臭いから俺はいい……。幹部ですら面倒なんだ。支配者なんかやったら過労死しちまう……」


 以前の本気は第三宇宙速度程度だったダークだが、今では光の領域に迫る程の速度、つまり亜光速は出せるというダーク。速度だけではなく、力の方も相応のものとなっている事だろう。

 たった数ヵ月でこれ程の成長を遂げたダークなら、もう少しやれるとズハルは少し残念そうだった。


「それにしても、一体誰なんだろうね。此処に来ているのは」


「さあな。しかしまあ、分かる事は俺たち以外の誰かが居るって事だけだ」


 気になったキュリテが疑問を呟き、耳に入ったシヴァが返す。

 今此処。というより、この場に居るのはシヴァ、シュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレドの"ラマーディ・アルド"メンバーとダーク、キュリテ、ザラーム、オスクロの"レイル・マディーナ"メンバー。

 そしてゼッル、ジュヌード、チエーニ、スキアー、シャバハの"イルム・アスリー"メンバーである。なので他の主力たちが来ている可能性もあるのは否めないだろう。

 なのでシヴァたちはさっさと"ヨトゥンヘイム"に入り、中の捜索をおこなおうと──



「──あら? シヴァ様方。奇遇ですね」

「お、アスワドたちじゃねェか。お前たちもこの層に来ていたのか」



 ──した、その直後。第一層と第二層に分かれていた捜索メンバー。

 アスワド、シター、ナール、マイ、ハワー、ラムルの"タウィーザ・バラド"メンバー。

 モバーレズ、ファーレス、サリーア、ロムフ、ラサースの"シャハル・カラズ"メンバー。

 そしてシャドウ、ルミエ、ジャバル、バハル、アルフの"ウェフダー・マカーン"メンバー。

 その、計三つの街を収める主力たちと合流した。


「「……え?」」


 アスワドたちはシヴァとは逆方向の正面から来ており、ほんの少し。数百メートル程度進んだ所で合流したのだ。

 暫しの妙な間を置き、ハッとしたアスワドは此処へ来た経緯を説明する。


「……となると、強い気配の一つはシヴァ様たちでしたか。えーとですね……この街に着いた時、強い気配が至るところから複数感じまして……最も気になった所に来たのです」


「ああ、そういう事か。俺たちは今から探索をしようと進んでいたんだ。で、テメェらが来た。これで複数の気配の一つは解消されたな」


「アハハ……お互い様ですね……」


 どうやらアスワドたちはシヴァたちよりも数分程早く"ヨトゥンヘイム"に到達しており、強い気配を感じたので警戒しつつ確認しに来たらしい。

 それを聞いたシヴァは納得し、他の主力たちに目配せをする。


「んじゃ、取り敢えず此処に居ても埒が明かねェ。一先ず俺たち"マレカ・アースィマ"を除いた魔族で探索を進めるか」


「あ、はい。そうですね。シヴァ様たちが居るなら心強いです」


「よろしくねー♪」

「こら、キュリテさん。一応皆様は真面目なのですから」

「わ、私だって真面目だよ!」


 此処で会ったのも何かの縁。元々頼れる仲間である事は変わらないので、ついでに協力して捜索する事をシヴァは提案した。

 アスワドはそれに乗り、他の主力たちからも異論は無く互いに頷いていた。

 これにて、アスワドたちと合流したシヴァたちは改めて探索を開始するのだった。



*****



「なんと……! あの悪神ロキとお会いしたのですか……!」


「ああ。俺も驚いたね、ありゃ。まあこの世界は何が起こっても不思議じゃねェから、本物のロキが居たと直ぐに理解したがな」


 探索を開始して数分。何人と何匹かの兵士たちを見つけたシヴァは、アスワドたちにロキに会った事を話していた。

 やはりロキという存在は驚異的らしく、アスワドたちは連れた兵士も含めて全員が驚愕の表情を浮かべる。しかしそれはこの世界に居る者ならば当然の事だろう。ロキというものは、それ程までの存在なのだから。


「むむ……新たな敵対勢力ですか……。私たちと白髪の侵略者。魔物の国。百鬼夜行。そしてロキ……敵がどんどん増えてきますね……」


「まあ、俺たち以外にも恐らく幻獣の国の奴らも居るし、二つの国と三つの組織。一人の悪神の三竦みって考えりゃバランスは悪くねェ。ま、幻獣の主力とはまだ会ってねェから分からねェけどな。それに、ロキは中立の立場だ。どちらの敵でもあり、どちらの組織とも戦闘を行う。本人がそう言っていたからな。つまり、二つのチームとロキ。どちらが先に潰れるかは分からねェって事だ」


 ロキの存在は予期せぬ事態だが、ロキは中立の立場にある。

 両方の敵である以上、所謂いわゆるジョーカー的な役割と成りうるだろう。出方次第では此方にとって有利になる事もある筈だ。


「お、何か建物が見えてきた……つーか、何時の間にか山間に来ていたんだな」


「あ、そうみたいですね。館……ですかね」


「なら、"スリュムヘイム"辺りでしょうか……巨人の国の山間にある館は基本的にそれですからね」


 ロキの事を話しつつ、他の兵士を探しながら進んで行き着いた先は巨大な館。山間に位置し、周りで一番目立つのがこの館だった。

 当然"世界樹ユグドラシル"についての知識を持つシヴァたちはその館が"スリュムヘイム"だと見抜いた。そしてその中からは、多数の強い気配を感じる。


「敵か味方か……何か居るな」

「ええ、そうみたいですね。気を付けましょう」

「ハッ、腕が鳴るぜ」

「まあ、取り敢えず行ってみるのが良いかな……?」

「そうね。行ってみましょうか」


 その館から感じる、複数の強い気配。それからするに、かなりの力を秘めた者たちが居る事だろう。

 それが敵か味方かは分からないが、シヴァ、シュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレドの五人という、主力の中でも力のある者たちがその館の中へと入って行く。


『……。誰だ、貴様ら?』

「……。おっと、いきなり来たか?」


 ──その瞬間、シヴァたちの背後に巨大な影が立つ。シヴァはフッと笑い、敵かと期待して振り向いた。

 シヴァの視線の先には、巨大な巨人の館にも拘わらず天井に迫る程の背丈を持った巨狼だった。


「……。なんだ、テメェフェンリルじゃねェか。俺だよ俺、シヴァだ」


『……む? 確かにシヴァ殿ではないか。成る程、シヴァ殿たちもこの国へ来ていたのか」


 その巨狼、フェンリル。しかしシヴァはフェンリルの姿を見るや否や、顔見知りではあるので普通に接する。

 フェンリルはシヴァの姿を確認し、縮みながら人化しつつ返した。そんな中、フェンリルの態度が気に掛かるシヴァ。


「その言い方、"この世界"じゃなくて"この国へ来ていた"って事は魔族の主力の存在は既に知っているみてェだな。俺は幻獣の国の主力は知らなかったが……誰かと会っているのか?」


「ああ。この国には今ブラック殿たちやマルス殿たち、ライ殿たちが居る。彼らが居るならば、シヴァ殿たちも居ると判断した次第だ」


「え!? ライ君たち居るの!?」

「ああ。今此処には居ないがな」


「成る程な。ブラックたちが俺たちよりも先に来ていたのか。しかしライやマルスが居たってのは意外だった」


 気に掛かった事は他の魔族を知っているような態度について。シヴァたちは他に幻獣の主力が居る事を知らなかったが、フェンリルはシヴァたちの存在を知っていた。それが気になった事である。

 しかしその理由も直ぐに教えてくれた。マルスの存在は意外そうなシヴァだが、居たならばと納得していたようだ。


「そうだな。ブラック殿たちなら居るぞ。今はこの館を探索している。折角だ、会ってみるのも良いだろう」


「ああそうだな。魔族の国の主力はこれで全員揃ったって事だ。ドラゴンたちは居るのか?」


「ああ。居るには居たな。今は第三層を探索中だろう」


「オーケー、分かった。一日振りに会ってみるか」


 そして、今この館にはブラックたちなら居るらしい。

 アスワドやブラックたちと別れたのが昨日の事なので、一日の出来事の情報交換も含めて会ってみると話すシヴァ。それが今の最善の事なので他の者たちも納得していた。

 そのまま、シヴァたちはフェンリルに教えられた場所へと向かうのだった。



*****



「よォ。ブラック、サイフ、ラビア、シター。お疲れさん」


「あ、シヴァさん。いきなり何ですか……」


 そして、教えられた場所に向かったシヴァはブラックたちと合流する。これにて魔族の国の主力たち全員と再会する事が出来た。しかしシヴァの態度から、ブラックは少し困惑している様子だ。


「ああいや、何でもねェよ。分かれていた間の事について聞いておこうと思ってな」


「ああ、そうですか。けど、特に収穫などはありませんね。ライたちやロキと会ったくらいです」


「ああ。ロキなら俺たちも会った。ライたちが居た事はさっきフェンリルから教えられて知ったばかりだけどな」


「成る程。もう会ってるんですね。なら特に与える情報も無いですね」


「成る程。まあ、一日じゃこんなもんか。俺たちも特に成果は上げれてねェしな」


 そんな中、情報交換をしようとしたが互いに得られた情報は少なく、特に成果は無いようだ。なので会話はそこで終わってしまった。

 しかし敵に誰が居るかも大凡おおよそは分かっているのでそんなものだろうとシヴァは割り切る。


「んじゃ、俺たちは少しこの館を調べてみるぜ。多分"スリュムヘイム"だろ?」


「そうですね。私たちもお供します」


「ええ、"スリュムヘイム"で間違いないと思います。俺たちは此処で幻獣の国のエルフやドラゴンの息子、斉天大聖と話してるんで何か聞きたい事あったら聞いてください」


「おう。分かったぜ」


 そしてシヴァたちは"スリュムヘイム"の探索へと向かう。他の魔族の主力たちや兵士たちも、シヴァに着いて行く者。自分たちで自由に探索する者と、各々(おのおの)で別の行動に移った。

 これから数時間後、ライたちとマルスたちが戻ってくる事となる。これにて九つの世界巨人の国"ヨトゥンヘイム"にて、魔族たちが全員揃ったのだった。

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