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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百十八話 "ヨトゥンヘイム"

 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第二層"。


 速度を上げて第二層の世界を奔走していたライたちは、数時間前まで居た人間の国"ミズガルズ"からかなり離れた場所に来ていた。

 その道中でも魔族・幻獣問わず召喚させられた兵士たちを拾い、戦力を増やしつつ第二層の世界を進む。魔物や妖怪の兵士達もたまに見るが、勢いのあるライたちの前では無意味。有無を言わせずに吹き飛ばしては構わず突き進み、ひらけた場所に飛び出した。


「此処は……街か。第二層にある街……」


 目の前には、多数の建物からなる街が広がっていた。その建物類は全てが通常よりも遥かに巨大であり、数時間前に見ていた人間の国よりも威圧感がある。見て分かるように、紛れもなくそこは巨人の国だった。


「巨人の国──"ヨトゥンヘイム"か。巨人の国の名が示すように、全てが巨大だな」


「ええ。すごい広さです。僕たちの"マレカ・アースィマ"よりも圧倒的に大きい街並みですね……」


 此処はまだ入り口付近だが、遠目からでも分かる程に巨大な建物。道幅も広く、横に主力たち全員が並んでもまだ余りがある程の広さ。それはかなりのものだろう。

 しかしこうも広いとなると兵士たちの捜索も中々に大変そうである。気配を集中すれば一つの国にある気配を捜索するのは容易い。だが、その集中力は無限に続く訳では無い。なのでどの道、兵士たちの捜索は面倒で大変なものとなる事だろう。


『ああ、かなりの大きさだ。俺も幻獣の中ではそれなりの大きさだが、この国と並ぶには少し本来に近付ける必要がある』


「ハハ、本来のアンタならこの国でも小さい筈だろ。けどまあ、確かに広さはあるから……捜索や探索とか、色々と大変そうではあるな」


 国の広さを見、自身と比べてもかなりの広さがあると言うフェンリルに、軽く笑って返すライ。

 しかし本当に広いので、一言で捜索・探索といっても上手く行くものでは無いだろう。


「一先ず国に入ろう。悪魔で此処は国を見渡せる程度の高さがある丘でしかない。広さに圧倒されるのではなく、私たちが国に入って調べるのが良さそうだ」


「ああ、そうだな。エマ。確かに見ているだけじゃ始まらない。国に入ってから色々と話し合った方が効率も良さそうだ」


 国を眺めるライに向け、エマが先を促す。ライもそれが良いと考えていたので、先ずは巨人の国"ヨトゥンヘイム"内へと入る事になった。

 ライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、ニュンフェ、ドレイク、孫悟空を筆頭に、マルス、ヴィネラ、ブラック、サイフ、ラビア、シター。そしてフェンリル、ガルダ、ユニコーン、沙悟浄。魔族と幻獣の兵士たち数百人と数百匹が"ヨトゥンヘイム"の街中へ進んで行く。



*****



 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第二層・巨人の国・ヨトゥンヘイム"。


 巨人の国の街に入ったライたちを迎えたのは、巨大な門だった。

 正面から左右を挟むようにたたずむ巨大な柱とそこから伸びる門。当然柱だけではなく扉もあり、その扉は閉ざされている状態。丘の上から見た時は閉ざされた門までよく見えなかったが、確かに考えてみれば門が閉ざされていても何ら不思議ではない。

 しかし、門を閉める意味があるのかは疑問である。グラオが再現した世界なのでノリで門を閉ざしたのだろうが、ライたちにとっては意味の無い門。ライは片手で軽く押し、数十トンはあろう門を容易くじ開けた。


「そういや、門が閉まっていたけど……仮に此処へ兵士たちが来ていたとしても入れたのか?」


 門を開け、巨人の国の内部へ入ったライは小首を傾げながら思案していた。

 というのも、ライにとっては大した事の無い重さだが通常よりも鍛えられただけの兵士たちがこれ程の門を開けれるかが気に掛かっているのだ。

 魔族や幻獣たちならば数十人が押せば開くかもしれないが、開かれた形跡のようなものはない。なので中に誰も居ない可能性があった。


「さあ、どうだろうな。だが、門の高さはかなりのものだが周りに私たちのサイズならば足場となりうる箇所もある。兵士たちも数十メートル程度なら跳躍だけで進めるだろうし、門を潜ったのではなく門を飛び越えた可能性もあるだろうさ」


「確かにそうだな。何もわざわざ門から入る必要も無いんだ。誰かが居る場合は門から入るのが礼儀だけど、この国……いや、この世界には俺たちの様に連れて来られた者と相手みたいな者しか居ない。飛び越える方が楽かもしれないからな」


 エマの言葉に納得し、改めて門をくぐり抜けるライ。それに続く仲間たち。高さだけでなく長さもあり、門の入り口から出口まで数百メートルはありそうなものだった。

 だが、此処は巨人の国。ライたちにとっての数百メートルなど、巨人にとっては数歩で辿り着く距離だろう。

 そのまま暗い門の中を進み、光の差し込む方へとライたちは進み抜けた。


「此処が巨人の国。その街か……!」


 ──そこに広がっていたのは、丘から見た時よりも遥かに巨大に感じられる建物や道だった。

 煉瓦レンガ造りの建物と石畳の道。それはライたちの世界にある国や先程通った"ミズガルズ"と同じもの。しかし遥かに巨大なので、全くの別物と錯覚してしまう程だった。

 一つ一つの建物がライたちにとっての城以上の高さがあり、辺りを囲むように連なる。そこに風がぶつかっては吹き荒れ、常にライたちの周りはそれなりに強い風が吹いていた。

 それに加え、巨大故に建物を見上げているので首が少々疲れそうである。小人から見た通常の建物はこんな感じなんだろうなとライは思っていた。


「さて、これからこの街の探索だけど……建物一つ分だけでもちょっとした街並みはあるサイズだな。この国はまた何時もみたいに幾つかのチームに分かれて探索するか」


「うん。それが良さそうだね。私たちは主力や兵士たちの数も多いし、三、四チームに分かれてもまだ余裕があるくらいだもん」


『ならばそうするか。確かに数は多い。各個に分かれて探索してもまだ余裕がある程にな。なら、それを実行に移した方が良さそうだ』


「ああ。賛成だ。俺たちにとっての本題ももう終わっているし、それに乗ってやろうじゃねェか」


 ライとレイが話、フェンリルとブラックが返す。このやり方が一番手っ取り早く効率が良いと理解しているので、各々(おのおの)のリーダー格であるこの一人と一匹が返したのだろう。

 実際、ライたち、魔族の国、幻獣の国と主力も多いので分かれても大した影響は無いと見れる。実力者ならば少数の方が行動に効率も生まれるので、特に反論は無いようだ。

 その後、分けられたチームが決定し、ライたちは巨人の国"ヨトゥンヘイム"にて行動を開始した。



*****



「さて、この広い街を何処から探すか……」

「広いから迷っちゃうね」

「まあ、他の場所でも探しているんだ。適当で良いだろう」

「そうだな。それなりの数とそれなりの広さ。私たちは私たちの出来る範囲内で探した方が良さそうだ」

「うん……そうだね」


「ええと、僕たちは此処に居ても良いのでしょうか……」

「良いんじゃないのかな、兄様」


 先ず決まった一つ目のチームは、ライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン。マルスとヴィネラの七人だった。

 ライたちが今後について話し合う中、少々不安そうなマルス。逆に、ヴィネラの方が落ち着きを見せている状態である。そんなマルスに向け、ライが近寄り話し掛ける。


「ハハ、緊張しているみたいだね。マルス君。当然、居ても問題無いよ。それに、兵士たちの捜索には数が多い方が良いからね。俺たちは俺たちだけだからかなり少数だけど」


「はあ。けど、やはりこの実力者の中に僕が居るのは足手纏いになりそうで……」


「気にしなくても良いのに。兄様は結構緊張しやすいんだよね」


「ヴィ、ヴィネラだってさっきまで不安そうだったじゃないか……」


「もう慣れたもん♪」


 マルスに話すライと、返すマルス。ヴィネラが呆れたようにマルスを見、マルスはそれにも返す。と、一先ずヴィネラのお陰で緊張はほぐれたようだ。

 なのでもう大丈夫そうだと、ライは一歩踏み出した。


「じゃ、そろそろ行くか。他のチームも既に巨人の国の探索をしているだろうからな。遅れは取れないさ」


「「うん」」

「「ああ」」

「はい……」

「うん、分かった!」


 進むライへ返すレイとリヤン。エマとフォンセ。そしてマルスとヴィネラ。ヴィネラは年相応で、元気よく返事をした。

 恐らくマルスやライたちと、知っている顔が多いので安心しているのだろう。


「ヴィネラちゃん。一緒に行こ!」

「うん!」


 その中でも、レイは特にヴィネラを可愛がっている様子だ。元々子供好きなのか分からないが、口元を緩めながら微笑んでヴィネラの相手をしていた。

 その隣ではエマとフォンセが微笑ましそうに見守り、リヤンが何時も通り眺めている。

 ライたちはその様なやり取りをしつつ、改めてスタートを切った。


「さて、兵士たちが居そうな所はやっぱり建物の中とかが候補かな。見たところ、此処の街はかなりの広さがあって他より発展しているから……巨人の国にある街──"ウートガルズ"かな?」


「そうみたいですね。城壁のような物も入り口にあった物より遥かに巨大。一番かは分かりませんが、ライさんの言うように発展している。いえ、この街を過去の物とするなら発展していた街のようです」


「となると、此処を治めていたのはウートガルザ・ロキか。昨日のロキとはまた違った巨人の王だな」


「そうなりますね。伝承によっては同一視される事もありますけど、恐らく別人でしょう」


 街の景観や雰囲気。諸々の観点からこの場所を巨人の国にある都市"ウートガルズ"と推測するライとマルス。やはり親戚だからか、意気も合って互いに頭が回るらしい。

 二人は横並びに歩き、兵士たちの捜索をしつつ街の探索・推測をしていた。その後ろではエマたちも街を眺めており、レイはヴィネラと手を繋ぎながら街を見渡す。


「ふふ、流石にライの親戚だな。力はまだライ本人の力にも程遠いが、状況や場の判断力は同じ年頃の魔族よりも頭一つ抜けている」


「ああ。それに、魔王の力無くして数ヶ月で数年の鍛練を積んだであろう一般的な兵士よりも強い力を身に付けている。成長性も高いようだ」


「うん……初めて会った時よりも強くなってる……。それに、王様の風格も出ているみたい……」


 そんな親戚同士を見、頼もしそうに見守るエマとフォンセ。リヤンは表向きのものだけではなく内に秘められた可能性も見ていた。

 やはりかつて世界を創造した神の子孫。他人よりも見えているモノが多いのだろう。


「……。むずかしい……」


「アハハ。大丈夫だよ、ヴィネラちゃん。今話している事は私たちの目的には関係していない事だから」


「そうなの?」


「あの二人、マルス君は分からないけどライは本が好きだから結構色々知っているんだ」


「あ、兄様も本はよく読んでいるよ」


「じゃあ、多分似た者同士なんだね。あの二人は。だから本の中の世界みたいなこの世界に興味があるんだと思うよ」


 ライとマルス。エマ、フォンセ、リヤンの会話を横に、レイとヴィネラが会話をする。親戚だからか分からないが、二人は似ている。なので話も弾むのだろう。

 といっても、話の内容は真剣なものなので弾むという表現には少々語弊ごへいがあるかもしれない。仲は良さそうなので、それは別に良いだろう。


「じゃあ、多分兵士たちが居たとしたらここら辺にある建物じゃなくて、もっと目立つ所にありそうだな。豪邸とか城の方が良さそうだ」


「はい。此処が敵地である以上、身を隠す場所は必要。豪邸や城などのように目立つ建物はまとになる事もありますが、その分広さや物の多さがあるので身を隠しやすい筈です。それに、仲間から見つけられる可能性もあるので利点の方が多い」


「この国では普通の建物も小さな街くらいの大きさはあるだろうけど、家具とかは豪邸や城の方が多いからね。その線で探すか」


 暫く話していたライたちは、どうやら何処ら辺を探すか決めたようだ。

 それは身を隠し易いという理由から豪邸に目標を定めたらしい。此処がただ巨大なだけの人間の国と変わらぬ景観である以上、通常の家には必要な物しか無いからである。

 家具が少ない分、己の身を隠す事も難しく街並みの広さがあってもあまり意味を成さない。なので家具や日常生活ではあまり使わないような物のある豪邸や城などに狙いを絞ったのだ。


「行き先が決まったみたいだな」

「ああ。割りと早かった」

「うん……」

「じゃ、行こっか。ヴィネラちゃん」

「うん、レイお姉ちゃん」


 ライとマルスの様子を見、行き先が決まったと分かったエマたちとレイたちがその後を追う。リーダーはライなので、決まったならばそれに従うだけである。

 第二層にある国、巨人の国"ヨトゥンヘイム"にて、ライたちは兵士たちを捜索する為にこの国の更に奥へと歩みを進めるのだった。

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