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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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五百九話 腕試し終了

 古城の瓦礫に立つロキは風を炎の全身に感じ、フッと笑ってライたちとブラックたち。マギア達に言葉を発した。


『なら、それらを有言実行してみろ』


 大きな炎の渦を生み出し、全てを飲み込む。周囲の風や水滴。石造りの瓦礫をも巻き込んで更に巨大化し、ライたちブラックたちマギア達へと迫り行く。

 存在するだけで熱風が生じ、周囲が業火に包まれる。灼熱の轟炎が包み込む火炎の大嵐。それの中に放り込まれれば最後、骨も残らず消し炭となってしまうだろう。


「ああ、実行してやるよ!」

「遠方のライと同じだ"巨大な剣(キビーラ・セイフ)"!」

「ライ君や魔族の幹部さんと同じかな? "洪水フラッド"!」


 その炎に向けて拳を放つライと、巨大な剣魔術を放つブラック。そして水魔術を更に高め、洪水の災害魔術へと変化させて放つマギア。

 全てを消し去る拳と空気すら切り裂く剣。そして多大な量の水。それらが文字通り、自身に振り掛かる火の粉を全て消し去った。

 ロキが変化した炎その物を切断する事は出来ないが、普通の炎はブラックも消せるらしい。切り裂くと同時に真空が生まれるので、酸素を元とする炎は消え去るのだ。

 そして全知全能を目論むリッチのマギアも相応の力があり、災害魔術を扱う事も可能らしい。敵ながら厄介なものである。


『これくらいはやってくれなくてはつまらぬ。まだまだ時間はあるのだからな。楽しませよ』


「生憎、俺はそんなに時間を掛けている暇が無いんだ。どうやら此処、"ミズガルズ"には俺の目的は無かったからな。そろそろ終わりに近付ける……いや、終わらせる……!」


『ほう?』


 楽しむロキに返しつつ、魔王の力を引き上げるライ。ロキは面白そうにライの方を見ていた。

 因みに先程まで使っていた力は三割。ライの力と合わせ、実質六割の力で戦闘をおこなっていた。それではロキに遠く及ばないので、今は五割。実質八割並みの力である。

 しかし今の力に本来の八割である銀河系を砕く力は込められていない。悪魔で実質なので、本来の魔王の八割とは違うのだ。


「さて、もう一度言っておくか。有言実行するってな」


『フッ、生意気な』


 光の領域を超越し、ロキの元へと向かうライ。それを見切ったロキはライの進行方向となっている炎の身体に意図的な穴を空けてかわす。

 空気を抜けたライの移動による衝撃で幾つかの炎は消え去ったが、ロキ自身は当然消えていない。


「成る程な。直撃すれば攻撃は食らうけど、自分の意思で穴を作ればそこから抜けられるって事か」


『ああ。私の身体に穴を空けるも塞ぐも自分次第。私が動いて避けるのでは無く、見切ったのならその場所に穴を空けるだけでかわせるから楽なものよ』


 すり抜けたライは振り返り、着地して瓦礫の上に居るロキを見やる。

 視線の先に居るロキは揺らぐ炎と共に悠然と立っており、まだまだ余裕のある表情だった。


「っと、先を越されちまったな。テメェが誰か知らねェけど正直のところ俺は力不足かもしれねェが、やれるだけやってみっか。"真空の剣(ファラ・セイフ)"……!」


 珍しく自身無さげなブラックが魔力を込め、炎を切り裂く事に特化した真空の剣を生み出した。

 その剣を軽く振るっただけで周囲から空気が消え去り、周りの空気がそれを埋める為に寄った風でブラックの黒髪が揺れる。


『真空の剣……? というより、真空を作る鋭さの剣か。確かにそれならば私にも通じるかもしれないな』


「やってみなくちゃ分からねェけどな」


 剣を片手に構え、踏み込むと同時にロキの元へ肉迫するブラック。移動するだけで剣尖や刃に触れた空気は消え去り真空と化すが、周りの空気が埋めるので関係無い。

 瞬く間にロキとの距離を詰め、ロキの居た古城の瓦礫を足場に真空の剣を振るう。それによって周りの炎が消え去り、真空を埋める暴風が巻き起こった。


『やってみた結果はどうだ?』

「見ての通り、失敗だったな」


 切断された炎が揺らぎ、そこから無傷のロキが姿を現す。周りの炎は消え去ったが、やはり本体はそう簡単に消えないらしい。

 理解していた事ではあるが、身を持って実感したのでまた思うところがあるようだ。それを見たロキは軽く笑ってブラックへ返す。


『フッ、そうか。それは残念だ。やはり魔術とはいえ、剣は私に通じぬという事か。それを改めて実感した。だが、効く剣もこの世に存在すると知れたから先程のダメージも捨てたものではないな』


「ハッ、よく喋るな。優越感に浸っているところ悪いが、俺は何も純粋な剣魔術だけって訳じゃねェんだ。この世にはまだまだ上が存在するのは分かった。魔族の国に居ただけじゃ分からねェ程にな。だから、最低でも四大エレメントくらいは自由に使えるよう特訓したんだぜ?」


『ほう? それは良い事だな。私がどれ程の攻撃を受け流せるのか、それを知る良い機会だ』


「減らず口を。俺も少しはやるんだぜ、一応魔族の国で幹部を努めているんでな"元素の剣(オンスル・セイフ)"……!」


 上を指差し、火、水、風、土のエレメントを纏った剣を示すブラック。

 どうやら魔力からなる剣だからこその出来で、刃の部分をそれぞれのエレメントに変化させる事で炎の剣。水の剣。風の剣。土の剣を創造したようだ。

 素のままでもそれなりの威力を秘める剣。それにエレメントを纏えば威力が高くなる事だろう。

 しかしブラックの言葉からするに、それはまだ覚え立て。文字通り付け焼き刃という事だ。なのでロキに通じるかどうかは分からないだろう。


「"切断スィッキーン"!」


 その瞬間、エレメントを纏った剣が勢いよく振り下ろされた。

 火と水。風と土。それらの四大エレメントが合わさった剣魔術。全てが炎となっているロキに向かい、エレメント同士が融合して大きな爆発が起こった。

 ただの爆発では炎その物のロキには通じない。魔力からなるエレメントの爆発。それがブラックの狙いである。


『成る程、理解した。確かに中々の強さだ。これなら私にも通じるようだ』


「ハッ。やっぱ覚え立てじゃ駄目かよ」


『いいや、私にも傷は付いた。傷も付けられぬ他の剣魔術よりは有効になりうる技だった』


 ──そして、掠り傷を負ったロキがブラックの身体を炎で包み込む。

 一応ダメージは負ったらしいが、掠り傷程度。ブラックは周囲の炎を切り裂いて飛び退き、ロキから距離を置いて古城の瓦礫の上に居るロキへ視線を向けていた。


「次は、私の番かな。炎なら……炎でやってみよっと! "炎の光線(ファイア・レーザー)"!」


『炎で炎は消せぬだろう』


 古城の瓦礫に向け、光速で炎を放出するマギア。ロキは光の速度へ直ぐに反応を示して腕を炎に変化させ、炎の光線に炎をぶつけて相殺した。

 ぶつかった炎は周囲に広がって更なる炎で辺りを上書きする。その炎を突き抜け、マギアが加速してロキへ迫った。


「それから近距離で……水! "水の大砲(ウォーター・キャノン)"!」


『成る程、遠距離からでは防がれる。だから近距離で攻めたのか。悪くない考えだ』


 近距離にて放たれた、巨大な水の大砲。

 それを見たロキは成る程と納得し、眼前に迫る大砲へと炎状態から解除したてのひらかざした。


『しかし、所詮は少し大きなだけの水。私には関係無い』


 刹那、てのひらに触れた大砲が即座に蒸発して消え去った。

 近距離なので破壊力も勢いもかなりあったが、ロキの放つ炎の前では無意味に等しいようだ。

 しかしそれによって水蒸気が生じた。それならば視界が互いに見えにくくなるので、炎の光で大凡おおよその位置が分かるロキの攻撃も当たりにくくなるかもしれない。


『この水蒸気。少し邪魔だな』

「まあ、こうなるかな……」


 瞬間的に水蒸気を全て炎で消し去るロキ。

 マギアはそれも予想していたらしく、既にロキの正面にて魔力の込めたてのひらを構えていた。

 その刹那、どのエレメントともつかない白い光の魔力が放出された。ラビアの光魔術とも違う白い光の光線。ただの光では無く、その光に多くのモノ。すなわち多数のエレメントが混ざっている事だろう。


『先程の魔族のように、複数の力で討つか。先程見たからそれはもう良い』


「ふうん、そう?」


 白い光に向けて炎を放ち、それを消し去るロキ。ただの炎にしてはとてつもない破壊力だが、ロキの操る炎なのでこれくらいは当然だろう。

 それによって周囲に光が満ち、轟音と共に古城の瓦礫ごと炎が消し飛んだ。


「そら!」

『ほう? 私の場所を直ぐ様見抜いたか、エラトマを連れる少年よ』


 当然、その程度の爆発でロキが消え去る筈も無い。ライは瓦礫の無くなった古城跡地に居るロキへと蹴りを放った。ロキの位置を予測していたのだ。

 姿が眩み、マギアの前からは見えなくなったが、全体を見渡せる場所に居るだろうという事は分かるので予測出来たのだ。

 しかしロキもただ者ではない。故にライの動きを推測しており、その蹴りを己に風穴を空けてかわしていた。


「言っただろ、そろそろ終わらせるってな!」

『言っていたな。無論、覚えていた』


 蹴りをかわされたライは直ぐ様体勢を立て直し、背面蹴りを放つ。ロキはそれもかわし、両腕を轟炎に変化させてライへ放った。

 それをライは裏拳で消し飛ばし、振り向き様に回し蹴りを放ってロキを打つ。炎に姿を変えたロキは幻のように消え去り移動する。だがライはその方向を予測して拳の風圧を放つ。その風圧は光の速度を超え、"世界樹ユグドラシル"を一瞬にして数周した。だが、ロキには不発だったようだ。


『速く、重い一撃となっているな。これはまた面白……』


「やあッ!」

「"魔王の水鉄砲サタン・ウォーター・ガン"!」


『……!』


 言葉を続けようとしたロキに向け、勇者の剣と魔王の魔術を放つレイとフォンセ。ロキはそれに気付いたが少し反応が遅れ、半身が消し飛んで鮮血が周囲に散る。

 そこへブラック、サイフ、ラビア、シターの魔族の国の主力たちとマギア、ブラッド、ヘルのアンデッド達が迫っていた。既に力は込められており、彼らの放つ攻撃が半身のロキを打ち砕く。


『っと、流石この数の差は不利だったか? 寝起きだしブランクあるし、少し私の力を過信し過ぎていたな。炎になれるから大抵の攻撃は効かないと思っていたが、各々(おのおの)にそれなりの手段があった訳か。ならば、これは私の実力不足では無く色々と不利だっただけ。うむ、そういう事にしておこう』


「何をブツくさと!」

「"神の水(ゴッド・ウォーター)"!」

「畳み掛けます!」

『果たしてどちらの炎が上か──カッ!』

『妖術・"大妖水"!』


『休みなし。いや、これくらいが丁度良さそうだ』


 身体を変化させ、再生するロキ。何やら呟いているがそれを気にせず、エマたちがけしかける。

 対してロキは再び炎となってそれをかわすが、半身を再生させたばかりでまだ動きがままならぬようだ。直ぐにその姿が人のものとなった。


「流石にその炎の状態維持にも限度があるのか?」

『いいや、炎は無限だ。あまり離れ過ぎるのも問題と思ったに過ぎない』

「そうか。なら、近くに現れた事を後悔させてやるか」

『私は後悔などしない』


 実質八割の力で攻め入るライと、それを受け流して行くロキ。光の速度は既に何段階も超越しているが、やはりユラユラ揺れて当たりにくいのが牴牾もどかしい。

 なのでライは大地を踏みつけ、その場を大きく粉砕した。それによって大地が浮き上がり、ロキの周りを囲む。刹那に浮き上がった大地へと飛び乗り、ロキの周囲を地面で囲んだまま拳を打ち付ける。


『……ッ! 強烈な一撃だな……! 確かに場が狭まっては私の自由も利きにくくなるもの……!』


「ハッ、ようやく一撃を入れられた。けど、恒星くらいなら一瞬で消滅させられる一撃でも大したダメージじゃないのは思うところがあるな。まあ、通じていたら通じていたでこの国が消し飛んでいたからその点では良かったけど」


 周りに炎を展開させ、自身を囲む土塊を消し去るロキ。恒星を砕く一撃もロキの前では大したダメージにならないようだ。

 だが、この場合のダメージというものは意識を失う程の攻撃の事。重い一撃と本人が言っているので、それなりのダメージはあるのだろう。


『フム。一先ず理解した。寝起きという事と数百年のブランクもある。そろそろこの場から去るとしよう。面白いものも見れたからな』


「そうかい。で、どうするんだ?」


 炎から再び実態を持ち、首を鳴らして軽く動くロキ。大分感覚も戻ったので、そろそろこの場を終わらせるつもりのようだ。

 ライもそれに返し、訊ねるように相手の行動をうかがう。それに対し、ロキは──


『この国を消しておこう。偽物の人間の国"ミズガルズ"。あっても無くても同じだろうからな』


 ──数億度に到達するである巨大な火球を作り出し、それを空からライたちの方へ振り落とした。

 存在するだけで数百万キロ以上の場所を蒸発させる火球。それがこの場で破裂したら最後、とてつもない被害を生み出す事だろう。


「成る程ね。そう来たか」

「なら、俺たちが破壊すりゃ良いだけだ。いや、ライだけで十分か?」


「なら、私たちもこの隙に逃げちゃおうか」

「ああ、それが良いかもな。エマにも会えた。チームも理解した。やる事はもう無いだろう」

『そう。なら、帰りましょうか。お父様の気も済んだのなら安全に帰れるもの』


 火球を見、破壊する為に跳躍するライ。ブラックは手伝おうとしているが、その必要も無さそうだと眺めている。

 その横でマギア、ブラッド、ヘルの敵主力も乗じて帰ろうとしていた。


「おや、もう帰るのか? 本当に何が目的だったんだ貴様ら」


嗚呼ああ、愛しきエマ。そうか。それ程俺の旅立ちが辛いか。なら、俺と共に」


「帰れ」


 それを見て返すエマだが、ブラッドの反応を見て面倒臭そうに即答する。既にマギアとヘルの姿は無く、残ったのはブラッドだけのようだ。

 マギア辺りはまだライたちに興味を示していても良さそうだが、ロキという想定外の存在が居た事の方が優先。それが全員の敵となれば、報告しなくてはならない事なので早々(はやばや)と帰ったのだろう。


「そらよっと!」


 そのやり取りの一方で、拳を放って火球を消滅させるライ。一気に気温が上昇し、巨大な爆発が生まれて全ての瓦礫が消し飛んだ。

 しかし今までに受けてきた攻撃に比べれば大した事は無い。何故ならこの様な火球並みやそれ以上のものは多数あったのだから。なので難なく消し去れたのだろう。


「やはり俺たちの手出しは無用だったな」

「そうッスね。さっきの炎使いもいつの間にか居なくなっているみたいです。出たり消えたりを繰り返すのでは無く本当の意味で」


 その下方にて、ライの消し去った火球の火の粉を払うブラックとサイフ、ラビア、シターの四人。

 巨大なものはブラックたちが消し去り、小さなものはシターが広範囲の盾魔術で抑えていた。


「さて、と。じゃあもうこの国に用は無さそうだな。兵士たちは一人も居なかった。後、ブラックたちにはさっきの奴の事を教えておくよ。今後も必要になりそうな事だからな」


「ああ、分かった」


 火球を消し去り、着地するライはブラックたちの方を見てロキの事を教えると言う。その情報はブラックたちも知りたかった事なので全員がライの元へ集まる。

 これにて九つの世界・"世界樹ユグドラシル"の第二層・人間の国"ミズガルズ"にて起こったマギア達。そして突然姿を現したロキとの戦闘が終わりを迎えるのだった。

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