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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第三章 最初の街“レイル・マディーナ”
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五十話 幹部の街・征服完了?

 ──ライが魔王の力を使い、ゾフルにトドメを刺したその時、『二人と二匹の権力者』がピクリと反応を示した。



*****



「……何だァ? 今の気配……。何かが……」


「……? ……どうかしましたか? ───様」


 先ず反応する一人。

 その一人の近くに居た側近のような者がその様子を見、尋ねるように聞いていた。

 それに対し、尋ねられた───は側近に言う。


「……いや、何かが……な。……まあ、多分気のせいだろうな。だから気にしなくたも良いさ」


 ───は言葉を濁して返す。


「……左様さようですか?」


 側近は"?"を浮かべていたが、あるじである───が別に良いと言うので気にしない事にした。



*****



「…………これは……」


 次いで一匹が魔王の気配を感じ、快晴の青い空を見上げる。


「……うん? どうかした? ────?」


 そしてこちらも側近。というより家族や友人のように話す者が────に聞く。


「……いや……分からない……。が、一瞬……本当に一瞬だけ何かの気配が……」


「……?」


 ────に聞いたその者は、家族か友人か、それとも側近か分からないが────を見て訝しげな表情をする。


「まあ、何かの気配を感じたなら警戒はしなくてはな……」


「……そう」


 ────の言った言葉に返す家族か友人か側近のような者。

 警戒はするが、別に気にしない様子の二匹? だった。



*****



「……!」


 続いて反応したのは、またもや一匹の方の権力者。

 その者は眠っていたのか、近くに側近のような者達は居なかった。


「…………」


 目が覚めて辺りを見渡すが、特に反応を示さずに再び眠りにつく一匹。

 何とも楽観的な者だろう。



*****


「……うん?」


 最後に反応したのは、優雅に本を読んでいる一人。

 窓から日の光が射し込む、豪華で空気が綺麗なな空間でゆっくりと本を読んでいたようだが、魔王の気配によって意識が移ったようだ。


「……へえ……。中々の実力者でも現れたのかな……? ……ライ・セイブルか……」


 パタン。と本を閉じ、座っている椅子から光が射し込む窓の外に目をやり、呟くような独り言を言う者。

 その者は何故か、見た事も無い筈のライの名を知っていた。理由は分からないが、その者にとってはこの世の事は大体分かるのだろう。



 二人と二匹の権力者達はそれぞれで魔王の気配を感じていた。

 二人と二匹の権力者──支配者。

 支配者にとっては天下泰平てんかたいへい、世は全て事も無いこの世界。

 天上天下てんじょうてんげ唯我独尊ゆいがどくそん。彼らの上は存在しない。

 下には下がいるが、上は無し、肩を並べるのは同じ支配者のみ。

 そんな思考を持っている彼らは、今日も怠惰にのんびりと生活し、刻が過ぎるのをただただ待ち続けるのだった。



*****



 ──"レイル・マディーナ"、近隣の森。


 ライはゾフルを消し去り、一段落付いた所で自分が思い当たる場所に向かっていた。

 それは、ダークの傷を治療する為に例の湖へレイたちとオスクロ達が向かったと推測したのだ。


(となると……ここら辺に……)


 ガサガサと、自分の背丈以上ある草を掻き分けて湖に向かうライ。

 別に走っても良いのだが、ゾフルと戦って割りと疲労していた為ライはのんびり行くことにしたのである。

 しばらく進む。すると、ライの予想は見事に的中して聞き覚えのある声が聞こえる場所に辿り着く。


「お、帰ってきたぞ」

「あ、本当だ! おーい! ライー!」

「……ふふ」

「あ、お帰り……ライ……」


 ライが辿り着くと、歓迎するように迎えるレイ、エマ、フォンセ、リヤン。

 他の者達もライを見る。


「やはり生きてやがったか……まあ、うちの幹部を倒した奴が、漁夫の利で何やかんや幹部になった程度の奴に負ける訳ねェか」


「だな。所詮は雑魚以上、幹部未満の実力だ」


「相変わらず二人は言い方がキツいねえ」


 オスクロ、ザラーム、キュリテの順番でライに言う。

 そしてもう一人──


「ああ……『面倒』だが……まあ、一応礼は言っておくかァ……。ありがとよ……」


 ──首が完全に繋がり、出血も止まって火傷も無い状態のダークだ。

 どうやら治療は上手くいったらしく、傷は完治していた。

 ライはそんなダークを見、フッと笑って話し掛けるように言う。


「どういたしまして……ダークさん?」


 ダークの礼に返すライ。 礼を言い終えた後、ライは不敵な笑みを浮かべて言葉を続ける。


「まあ、何はともあれ……傷が治ったなら良かった。……じゃ、早速アンタの街に攻め込むかの話をしようじゃないか」


 それは"レイル・マディーナ"に攻め込むかどうかという事だ。

 マンティコアの毒にやられていたダークはそれどころではなかったが、傷が完治した今ならば話し合いを進めることが出来ると考えたライ。

 ダークは面倒臭そうに頭を掻きながら、ライの言葉に返した。


「ああ……そうだな……。じゃ……、その街はライ・……何だっけ? ……が『征服完了』って事で……あとは街を拠点にするなり、遊ぶなり好きにしろ……」


「……………………………………。…………はァァァッッッ!!??」×7


「……!?」


 ダークの言葉に対し、一斉に声を上げるライ、レイ、エマ、フォンセにオスクロ、ザラーム、キュリテ。

 リヤンは七人の様子を見てその声を聞き、ビクッと肩を竦ませて驚いた。

 ダークは今、この瞬間、みずからの敗北を宣言し、ライによって支配される事を了承したと言ったのだ。

 周りが焦るのも当たり前だろう。話を聞いたライ本人ですら焦ったのだから。


「……お、オイオイ……ちょっと待て、まだ完全な決着は付いていないよな……? そう簡単に敗北を認められちゃ……何と言うか、気が抜けるんだが……?」


 突然の敗北宣言に慌てている様子のライは、両手を忙しなく動かしてダークに問い詰める。

 ダークは面倒だな。と、呟いてライの言葉に返す。


「気が抜けるったってよ……。この街の"元"・幹部が決めたんだ。別に文句は無ェだろ? これからはアンタの支配下だよ。俺たち、"レイル・マディーナ"の幹部とその部下110人は」


「いや……けどよ……。……ん?」


 ライは慌てて考える中、"110人"という部分が気に掛かる。

 確かにゾフルは死んで消滅したが、ダークはゾフルが死んだ事に気付いていたのかという事だ。

 そんなライの表情から読み取ったのか、ダークは言葉を続ける。


「まあ、おおむねお前が考えている通りだ……。『俺は気付いている』……。まあ、いずれ『そうなる』事は確定していたんだ、今更だろ……」


 ダークの言葉を聞き、動きを止めるライと、その意味を分かっていない様子でキョトンとしている周りの者たち。


「……そうか」


 ダークの様子を見て納得したライは、一旦ゾフルの事を置き、ダークに話す。


「……アンタの街……"レイル・マディーナ"……だっけ? そこを征服するのは……まあ、俺的には構わない。俺の目標は世界征服だからな。……が、アンタらはどうするんだ……? 当たり前だけど……魔族の国も支配者が居る筈だろ……? その支配者が幹部レベルの実力者を易々見過ごすとは思えないが……?」


 ライが気になったのは魔族の国全てを治めている支配者の事だ。

 一つの街を征服出来た? という事は別に良いが、それによって支配者と早過ぎる対決が起こってしまう可能性も少なからずあるだろう。

 たった六人しか居ない幹部の所持する数少ない街を征服したとなれば、流石の支配者も慌てるだろうからだ。

 それによって戦力がダウンしてしまい、仮に別の支配者や力の強い幻獣・魔物が攻め込んできた場合その国を乗っ取られる可能性がある。

 支配者はそれを何としても阻止したい筈だ。

 ライはまだ見た事が無いが、戦争を起こしている国にもある筈、エマから聞いた事だが、生物兵器の開発が頻繁に行われている国もあるという。

 そんな争いが絶えない世界で一大戦力を失うのは自殺行為に等しいだろう。

 ダークはライの質問に気だるそうな態度で返す。


「まあ、そうだろうな。うちの支配者はそのうちお前をターゲットにするだろうよ……。そのうち……な。……まあ、別に気にする事は無ェ……。うちの支配者は結構楽観的な性格でな……。そこが傷だが……良いところであり……穴でもある……。まあ要するにだな……多分、最低でも半分以上の戦力を奪わなきゃ、注目すらしねェだろうな。ターゲットになりたきゃ、魔族の国をもう少し荒らせ……ってことだ……」


「そうか」


 つまり、幹部の一角を撃破した程度では支配者(みずか)らは動かないという事。

 ライは、なら大丈夫か? といった感じの訝しげな表情をしているが、取り敢えずは良しとするのだった。



*****



 ──それから、改めてライたちは"レイル・マディーナ"に招待され、宴の席がもうけられた。

 まずライが一番注目したのは、


「……早いな……復興が……」


 復興の早さである。

 何故なら、マンティコアの騒動があってから僅か数時間。たったそれだけの時間で大きな建物や細かい彫刻以外の物は修復されていたのだ。


「まあ、魔法と魔術や、科学が発達してりゃこんなもんだろ……。今実際に目にしている訳だしよ……」


「まあ、そうか」


 それだけ交わしてライとダークの会話が終わり、宴会場に向かうライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤンとダーク、オスクロ、ザラーム、キュリテの九人。

 宴会の会場となる場所は、奥にあったお陰で被害が最小限に抑えられたという、いつぞやの貴賓室きひんしつだ。



*****



 ──"レイル・マディーナ・酒場の奥"。


「うわあ……凄いなあ……」

「うん……けど……チカチカして……クラクラする……」

「この街にはこのような場所があったのか……」


 感嘆の声を上げる、レイ、エマ、フォンセの三人。

 豪華絢爛ごうかけんらんな品々と、全体的に黄金をふんだんに使った部屋を目にすれば当たり前の反応だろう。

 普段入れない貴賓室きひんしつとあって、町人達も興奮している者が多い。


「うおー! スゲー!!」

「ここがVIPルーム……!!」

「アイツにも見せてやりたかったなあ……」


 はしゃぐ人々を横に、ライたちは指定席へと向かう。


「ようこそお越しくださいました。ライ様、レイ様、エマ様、フォンセ様、リヤン様。……では、こちらの席となっております」


 席の近くに来ると、前にも会った事のあるメイドがライたちを迎えた。

 上品な態度を取り、頭を深々と下げるメイドの仕事振りは見ているこっちが疲れそうだ。


「ああ、ありがとう」


 ライは軽く礼を言い、レイ、エマ、フォンセ、リヤンも頭を下げたあと席に向かう。


「……な、何だか……落ち着かないなあ……ここにいる人達って……全員魔族何だよね……?」


 席に腰を下ろしたレイは、ライとフォンセの方を見て尋ねる。

 この街に入ったのはこの二人だけだからだ。

 ライはレイの方を見てレイの質問に返す。


「……ああ、まあそうだな。魔族の国にある街だし……多分魔族じゃないのはレイとエマ……そして……。……そういやリヤンって人間と魔族……どっち何だ?」


 ライはレイの質問に頷いて返したが、返している途中で一つ、リヤンの種族が気になった。

 レイとエマ、フォンセも言われてみれば。と、リヤンの方に目をやる。


「確かに……リヤンの種族って分からないなあ……」


「ああ、見た目はどちらにも当てはまるが、戦闘好きという訳で無ければ、人間のような雰囲気も無い……どこか不思議で神々しい雰囲気をかもし出していた」


「その理屈なら……僅差きんさで人間か……? いや……しかし、住んでいる場所から魔族の可能性もあるな……」


 レイが言い、エマの推測にフォンセが付け加える。リヤンはキョトンとした顔で質問に答えた。


「えーと……ゴメンね……私もよく分からないんだ……」


 質問に答えたが、リヤン本人すら自分がどの種族かを理解していない様子だった。

 それを聞いたライはそうか。と頷いて言葉を発する。


「まあ、仕方ないさ。物心付いた時から森に住んでいるって訳だし、知らない事の方が多いだろう。俺だって本を好んで読んでいたけど、外の世界にはまだまだ知らない事も多いしな」


「そうだよね。リヤンはこれから色々分かると思うよ。……まあ、私も知らない事の方が多いけど」


「まあ、私たちの中で一番物を知っているのはエマだろうな。数千年も生きている奴自体が僅かしかいないだろうからな」


「ふふ……そうか。確かにそうかもな。まあ……私に近い年の奴も近くに居るがな……?」


 ライとレイ、エマとフォンセがリヤンに向け、笑いながら言った。そんな四人につられ、リヤンも笑う。

 そんな事を話していると、宴の準備が整ったらしい。

 時刻はまだ昼。魔族にとってはそろそろ起き始める時間だろう。

 しかし、そんな時間にライたちを歓迎してくれる"レイル・マディーナ"の人々。

 余談だが、ダークの演説によって"レイル・マディーナ"の人々は街が征服された事を知ったらしい。

 それによって暴動などは起きなかったという。



 ライ・レイ・エマ・フォンセが魔族の国に着いて始めに寄った街──"レイル・マディーナ"。

 この街で起こったマンティコアとゾフルの騒動を抑えて征服し終えたライたちは、再び新たな街に向けて出発する。

 この街は支配者のもとに集う、一つの街でしか無い。

 魔族の国にある幹部の街はあと五つ。

 その街全てを治め、支配者と戦う事すら……世界征服のごく僅かな一部だけなのだから。



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