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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第一章 魔王の力
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四話 vsオーガ

 ──まずライは手始めに、一つの草影へ魔王を纏って丸めた中指を向けていた。

 それを見たレイは訝しげな表情で質問する。


「……何をしているの?」

「……今から敵を炙り出す……!」


 ライは即答で一言だけ言い、指を弾く。

 刹那、──轟音と共に奔る衝撃が森に響き渡り、『眼前の森を消し飛ばした』。


「…………!? こ、この力は……!?」

「…………」


 レイは、指だけで放った攻撃とは思えない、予想外の威力に驚愕の表情を見せる。

 ライはと言うと、やはり指だけで良かったなー。とでも考えてそうな表情だ。


「ねえ……ライ……この……とんでもない力は……」


 そしてレイがライの逸脱した力を聞き出そうとしたとき、遂に敵が姿を現す。


『ウオォォォォォォォ!!!』


「現れたか……!」


「くっ……! 後で聞くからね……!」


 それを見たライとレイは戦闘の構えを取る。続々と姿を現すその魔物。

 敵の正体は──


「「オーガ……!!」」



 ──オーガとは、人智を凌駕した凄まじい力を持つ種族である。


 その姿は人間よりも大きな身体を持ち、頭に一本から二本の角が生えている。


 古来から人間の敵として現れ、被害が報告される。人肉を好み、生で食すと謂われており、ライがよく読んでいた本にも描かれていた。


 力自慢であり、人間よりも大きな身体と頭に角を持つ魔物、それがオーガだ。



 ライとレイを囲うような陣を取っているオーガ。その連携は整えられており、規則的に動いていた。

 しかしライは、それを見てある一つのことが気にかかる。


(おかしい……何故オーガがこんな所にいて、こんなやり方をするんだ? オーガが棲むのは主に廃墟と聞くが……そして普通は正面から来るはずなんだが……)


 それは、オーガの生息地・棲み家と、オーガの戦闘方法の事だ。


 本来、オーガという魔物は森には棲まない。

 棲んでいる話もあるが、それは子供向けに作られた物で、分かりやすくしているという。

 元々は廃墟や城に棲み、そこに迷い込んだ人や獣を食らって生きている魔物。食料が迷い込まなかった場合にだけ人里へ降り、人や家畜を食すという。


 そして戦闘方法だが、実を言うとオーガは、あまり賢くない。その為、罠などにめれば軽く討伐できるという。

 しかし、力はとてつもなく強い為、掴まれば最後、人間など一瞬でミンチになるだろう。


 ライがおかしいと思ったのはその二点だ。

 何故、森に潜んでいたのか、何故力しか脳のない怪物が、わざわざ遠方から岩を投げて攻撃し、ライとレイを広場へと誘い込んだのか。ということだ。

 それらの事柄から考えられる筋は──


「まさか……『操られている』……?」

「……え?」


 ライがボソリと呟き、その言葉に反応するレイ。

 ライは反応を見せたレイを一瞥し、レイに向けて自分の推測を話す。


「恐らくだが……奴らは操られている可能性が高い……。鬼神などの例外を除けば、オーガはこんな事をする筈がないんだ……。まあ、このオーガの中に鬼神が居たら別の話だけどな……」


「……そんな。何の為に……?」


「いや……それは……」


 ライは、まだ確信には至っていない様子だった。何故操るのか、操る必要があるのかが分からなかったからだ。

 考えれば投げ込まれた岩も、最初の数石を除けばライとレイを狙っている感じではなかった。

 ライが悩んでいると、魔王(元)が適当に言う。


【お前の予想は当たっているぜ。知った気配を感じる。まあ長生きの一族だしおかしくはねえな】


(……な!?)


 魔王(元)が言い放った言葉は、それだけで操り主が相当の実力を持っているといってもおかしくない。

 何故ならば、『魔王の知った気配』ということは、『数千年生きている』ということになる。

 魔王(元)は、長生きの一族と言ったが、数千年も生きる種族はほぼ限られている。

 目の前のオーガと言い、催眠術と言い、それらを踏まえたライは真っ先に浮かんだ種族の名を言う。


(まさか……不老不死の怪物……『ヴァンパイア』か……!?)


【おー。そうだそうだ。確かそんな種族だった。いやー、懐かしいな。本当に弱点以外で死なないのかを色々実験したもんだ】


 魔王(元)はまた物騒な事を言っているが、ライは無視する。

 まさかヴァンパイアほどの大物がこの森に居るとは思わなかったのだから当然だろう。


 ──吸血鬼ヴァンパイアとは、もう説明するまでもあるまい。世界中で知られている有名な怪物の一つだ。


 その肉体は──弱点以外で死ぬことがなく、あらゆる生き物に変化し、時には姿を消せる。

 その牙は──血や精気を吸い、味方を増やす。

 その力は──鬼と渡り合える怪力。

 その眼は──他の生き物を操り。

 その脳は──森羅万象、自然をも操る。


 弱点が多い反面、これ程の能力を秘め、この世界でも上位に名を上げる怪物。

 それがヴァンパイア。


(人間の支配で人里離れた場所に移り住んだと本に書いてあったが……何でこんなところに居るんだ!? おい! 魔王!)


 取り敢えず詳しいようなので魔王(元)に尋ねるライ。ライは必死だった。それもその筈、ヴァンパイア程の怪物となるとかなり厄介な者だからだ。

 魔王(元)は面倒臭そうに答える。


【オイオイ……そんなに興奮するなよ……。多分あの女を餌としておびき寄せたんだろ。そこにお前が来たから急遽変更し、お前を潰すか、お前を食ったあとに、女もゆっくりと味わうつもり……まあこんなところか。お前が俺を宿しているなんて俺とお前しか知らねえからな。多分勝てると踏んだんだろ。魔族の血は人間よりも強いからヴァンパイアにとってはご馳走だしな】


 成る程、と納得するライ。

 まだヴァンパイアが命令していないのか、オーガ達は距離を置いている状態だ。

 ライは魔王(元)に教えてもらった事を伝えるべくレイの方を振り向く。


「レイ! コイツらが何に操られているのか分かった。ヴァンパイアだ!」


「ヴァンパイア!? まさか……!」


 ライが放った言葉に対し、予想通りの反応を示すレイ。

 そんなレイを見たライは冷や汗を流しながら頷いて返す。


「そうだ。オーガだけなら楽だったけど……ちょっとばかし骨が折れる……。取り敢えずオーガを先に片付けて親玉を引きずり出そう」


「うん。分かった……!」


【ククク……良いね良いねえ。ノッてきたぜ】


 コクリと頷き、オーガに向けて剣を構えるレイと身体に力を込めるライ。

 取り敢えず二人は、一先ずオーガを倒す事にした。

 ようやくやる気になったライを見、魔王(元)は楽しそうにしている様子だ。

 そしてライは、魔王を片腕と両脚に纏わせた。


「怪我には気を付けろよ!」


「分かってるわ!」


 そして二人は大地を蹴り、一気にオーガとの距離を詰める。

 ライが地面を蹴った衝撃で粉塵が巻き起こり、地面に巨大な窪みが出来上がる。

 この粉塵は二人の姿を隠すのに持ってこいだ。

 無論ライは、ヴァンパイアの目的であろうレイを見失わない様、注意している。


「オラァ!」

「ハァ!」


 そして、林や森を切り裂く斬撃と、街や山を消し飛ばし、地図を書き換える拳がオーガにぶつかる。

 それらを喰らったオーガは、粉々になって吹き飛んだ。

 それを見たライが、思わず魔王(元)に言う。


(──っておい。殺す必要があったのか!?)


 そう、ライの目的はヴァンパイアを引きずり出す事で、オーガを殺害する事ではないのだ。

 もしかしたら殺してしまったのでは無いかと気になったライ。

 それを聞いた魔王(元)は呆れながらライへ言う。


【大丈夫だ心配すんな。お前とあの女が吹き飛ばしたオーガは既にヴァンパイアの血を入れられていた。眼が紅かったからな。まあ、一回粉々になった程度じゃ死なないだろ。昔に何度も実験した】


(そうなのか……)


 つまり先程のオーガは既に不死身になりつつ合ったとの事。それを聞き、ライは内心ホッとする。

 しかし、レイが吹き飛ばしたのも半吸血鬼だったとは。と驚いていた。

 偶然だろうか、はたまた必然かと考えたいところだ。


『ウオォォォォォォォ!!!』


 がしかし、オーガ達は休んだり考える暇を与えさせてくれないらしい。催眠術か何かで操られているが、持って生まれた闘争心は変えられないのだろう。


「チッ、面倒だ……!」


 ライは大地を蹴り砕き、自分の身体を広場の中心に戻して腕を掲げる。

 オーガが近付く中、腕を掲げたライはレイの方を見て叫ぶ。


「おい! レイ! 何か頑丈なものに掴まってくれ! オーガ達を纏めて吹き飛ばす!」


「え!? ……わ、分かった!!」


 レイは一瞬聞き返したが、直ぐに理解し、剣を腰に差し込み、近くの大木に掴まる。

 それを確認したライは星を破壊さぬよう、ある程度力を抜きつつ腕を振り下ろした。


「オラァ!!」


 ライの声と共に放たれた拳、その威力、衝撃、風圧は、一瞬にして、波紋のように広がり、木々や大地を揺らしてオーガ達の元へと伝わった。


(あ、やべ。これってレイも巻き込んじまうか……?)


【大丈夫だろ。あの"剣"を持っている訳だしな】


(…………?)


 ライはレイの安否を気に掛けるが、魔王(元)が大丈夫と言ったあと、意味深長な事を言う。

 そしてその広場はライの立っている場所とレイが掴まっている木以外の全てが消滅し、オーガは全て風圧で何処かへ飛んで行く。

 ライが作った穴は、巨大なクレーターか、枯れた湖、池を彷彿とさせる程の大きさだ。

 レイはその威力に驚愕するが、ライもレイの無傷に驚愕した。


「……凄い破壊力……貴方は一体……?」


「……本当に無事だ……いや、無事で良かったけど……あの剣は一体……?」


 互いに驚きつつ、互いに聞こえない声で言う二人。

 無音の空間が暫し続くが、それは夜空から降り注ぐ声によって終わった。


「凄い力を持つ人間と『魔族』だな……。これはちょっと予想外だ……オーガ達だけで終わると思っていたが……考えを改めなければならんか」


「「…………!?」」


 同時に見上げるライとレイ。

 そこには二人を見下ろし──嘲笑う一つの影があった。

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