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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第三章 最初の街“レイル・マディーナ”
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四十八話 ライvsゾフル

 パチパチと音を立てて燃え続ける灼熱の火炎。

 それを見ながらゾフルは、突然の出来事に固まっているライたちとオスクロ達を見て言う。


「これで……幹部を倒した俺が新たな幹部だ」


「幹部を倒したら幹部になれる……? そんな制度があったのか……この国は……?」


  それを聞いたライはハッとし、訝しげ表情を浮かべてゾフルに聞いた。それは初耳だった事であり、ゾフル曰く幹部を倒した者が新たな幹部になるというよく分からない事だった。

 そんやライの質問に対し、軽薄な笑みを浮かべてゾフルは返す。


「クハハ、実力主義者だからな魔族の国はよ。……ま、雑魚には雑魚の居場所がお似合いだ」


「……そうかい」


 ゾフルの言葉を聞き終えたライはゾフルに近寄り、ゾフルと向かい合う。そんなライを見、ゾフルは軽薄な笑みを消してライに問うた。


「…………? ……どうした? まさか俺とろうってのか……? クク……何だ? 共闘して仲間意識でも芽生えたか? ……下らねェなァ……!!」


「オイオイ……ダークさんよォ……。どうやらアンタは、本当にとんでもない問題児を抱えていた見たいだな……」


 意識を失っているダークに対して呟くように言葉を発するライ。突然の不意討ちで勝利したと告げるゾフルが解せなかった。確かに幹部へとなりたがっていたが、何かが違う気がしたのだ。


「つー事で……俺は新たな幹部を倒してこの街を手に入れるかあ……取り敢えずは幹部の一角を倒せれば良いからな……!」


「ククク……良いね良いねェ……!! さっきの戦いから決着が付いてねーし、丁度良いじゃねえか!! 早速()ろうぜェ……?」



*****



 ライとゾフルは同時に跳躍した。

 そんな二人が地面に踏み込んだ衝撃によって大地は砕ける。

 しかしそのは石の道ではなく土の道だった為、小さなクレーターが出来上がる程度で済んだ。


「オラァ!!」

「ゴラァ!!」


 そして二つの脚がぶつかり、空気が大きく揺れる。上空を漂う雲はそれによって形を変え、幾つか消え去った。そしてその風圧によって土が煙のように舞い上がる。

 そのまま重力に伴い、蹴り合ったライとゾフルは空中から落下した。そして大地に脚を付け、地に着いたあと一旦距離を取り互いを睨み合う二人。


「ククク……やっぱお前は強いな……今の蹴りで俺の脚がイカれそうだ……」


「……そうか? お宅の元・幹部は普通に俺とぶつかり合えたぞ……? やっぱお前が弱過ぎるだけなんじゃないか?」


 先ずゾフルが言った事は、ライの蹴りに対する感想。それはゾフルにとってかなり痛かったらしく、足に中々のダメージを負ったようだ。そんな言葉に挑発を交えて返すライは、ゾフルの強さを低く見る。それに対してゾフルはイラついたのか、片眉をピクリと動かして反応を示す。


「弱過ぎるだァ……? ちょっと聞き捨てならねェなァ……? 俺はダークの野郎を殺した。……まあ、それでもしぶとく生きてやがるかもしれねェが、それでも奴をやった……! そんな俺が弱ェだと……!?」


 ピキピキと血管が浮き上がるゾフル。

 弱く見られた事に対して相当腹が立ったのだろう。その証拠にどんどん言葉が荒くなる。そして、それと同時にゾフルの両腕が熱を持ち始める。


「だったら今、俺の強さを証明してやろうじゃねェか……!! クソガキィ!!!」



 ──刹那、灼熱の轟炎がライに向かって放たれた。



「だからアンタは弱過ぎるんだよ……。簡単に挑発に乗りやがる……。こんな炎は……」


 そんな灼熱の轟炎を見ながら話すライの腕に漆黒の渦が纏わり付き、ライは──


「簡単に消せるんだよ!!」



 ──殴って消し去った。



「……な!?」


 ゾフルは炎を消された事に驚愕の表情を見せる。

 そんなゾフルを無視し、消した炎の感覚を確めるライは誰に言う事も無く、ボソリと呟いた。


「……やっぱ必要無いか……」


【……そーかよ。まあ、俺も小物には興味無ェ……。好きにしな】


 誰に言うという事でも無い。

 それは敵やそのほかの人物達の事で、自分の中に宿している者の事ではない。

 ライが言った事は、この程度の実力ならば自分だけで勝てるという事。ダークのように、魔王の力を纏わなくてはならない程では無いという事だ。

 そしてライは片手から漆黒の渦を消した。


「テメェ……一体どんな術を使った……!? 炎に水や他の物質をぶつけて消し去ることは出来るだろうな……が、しかし! ただ殴って消し去る事なんか出来ねェだろ!?」


 ゾフルは気付いていないのだろうか、ただ単に自分の能力が消された事に腹立てているのか。ライを包み込んだ漆黒の渦には反応せずに自分の炎が消された事へ未だに疑問を抱いていた。


「……何だ……。気付いていないのか?」


「……あ?」


 本当にそうか試しにライが聞いてみるが、その反応からやはり気付いていない様子のゾフル。

 ならば別に無視しても良いだろうと判断し、再びライは構える。


「まあ良いか……。アンタを倒すのは変わらない決定事項何だからな……?」


「ハッ! 抜かしてろォ! 上等だァ! テメェが死ぬのも決定事項なんだからなァ!?」


 ライの言葉に返したゾフルは炎で加速し、更に速度を上げてライの元へ向かう。


「俺が死ぬ……?」


 そんなゾフルが言った言葉に対し、ライは呟くように言う。

 ゾフルは凄まじい速度で大地を焦がしながら真っ直ぐライに向かって来、そしてそのまま正面からライの言葉に返す。


「そうだよ! お前が死ぬのは決まってるんだッ!!」


「……そうか」


 ライは加速しながら攻撃を仕掛けようとするゾフルの姿を確認し、横にかわしながら──


「まあ、無理な話だけどな」


「……ッ!」


 ──天地を砕く威力の蹴りをゾフルの横腹に放った。

 強烈な一撃を受けたゾフルは嘔吐感を催しながら吐血し、その蹴りに弾かれ遠方まで吹き飛んで行く。

 ライはそれを確認し、ゾフルの後を追い掛けて行く。



*****



 ライとゾフルがそのやり取りを僅か数分で行い、レイ、エマ、フォンセ、リヤンとオスクロ、ザラーム、キュリテは唖然としていた。

 一応全員、ライとゾフルの動きを追うことは出来たが、如何せんテンポが早くてただ見ている事しか出来なかった。

 暫くしてリヤンが口を開く。


「えーと……その人……大丈夫……?」


 リヤンはダークを心配していた。一応フォンセとキュリテで応急措置を施したが、一向に良くなる気配がないのだ。

 その言葉を筆頭に、他の者たちも言葉を発する。


「そうだ。早くダークを何とかしねェと……!」


っても……この炎じゃ持つのも大変だぞ……」


  まずはザラームが未だに燃え盛る炎を見て言い、次いでそれを見ていたオスクロが言う。

 そう、ダークは何とか生きているだろうが介抱しようとしても炎が包んでいる為、触れることすらままならないのだ。

 仮に炎を消したとしてもそれによって首そのものが取れてしまう可能性もある。

 そしてどうしようか分からない側近達に向け、ふと思い付いたエマがレイ、フォンセ、リヤンとオスクロ、ザラーム、キュリテに言う。


「なら……"空間移動"か"テレポート"で湖に運べば良いではないか。多分お前達ならその効果を悪用する事も無かろう」


 それは、ライの傷を治した湖にダークを運ぶという事だ。

 確かにその湖の治療効果ならばダークの傷が治る可能性もある。

 しかし、普通ならば傷を簡単に治療できる事から悪用する者もいるだろう。だが、オスクロ、ザラーム、キュリテはそんな事をしないと考えるエマ。


「……湖……?」


 キュリテはエマの言葉に訝しげな表情で返す。

 まあ普通の反応だろう。昨日まで敵だった者が提案した事など信用できない。


「……。分かったわ。そこに案内して!」


 しかし、今は信用しなければダークが絶命してしまう為キュリテは同意した。

 レイ、エマ、フォンセ、リヤンも頷き、フォンセの"空間移動"と、キュリテの"テレポート"を使い、森の湖に向かう七人だった。



*****



 ──"レイル・マディーナ"、廃墟街。


 ここは"レイル・マディーナ"に属する廃墟街。

 にわかには信じがたいが、かつては色んな人々や魔族、幻獣・魔物が共に暮らしていたらしい。がしかし、人間と魔族や幻獣・魔物の仲が悪くなり、決別して別れたあとそのままの状態で残っているという。


「クソ……!!」


 街から吹き飛ばされたゾフルは何とか体勢を立て直そうとするが、アンバランスな状態で近くの木にぶつかり、勢いが止まる。


「イテェじゃねえか!」


 そんなぶつかった木に八つ当たりし、木を砕くゾフル。

 ライはそんなゾフルに近付いており、嘲笑うような表情で言う。


「ハッ、お似合いだったな。木にめり込むアンタの姿はよ。それにしても……こんな所に廃墟街があったのか……。……ま、それは良いとして……アンタの炎は殆ど俺には効かないって事は理解したろ?」


「…………」


 ライが言った、炎が効かないという言葉。その言葉に対し、ゾフルはニッと笑ってライへ言う。


「ああ、お前に炎"は"効かねェのかもな……なら……!」


「……!」



 ──刹那、ライの身体に激しい痺れが奔る。

 その痺れは振動や衝撃によって起こるようなものではなかった。



「…………これは……!」


 ライはその痺れの原因を理解した。振動や衝撃でなく、ピリピリと痛みが走るような痺れ。それは──


「驚いたよ。アンタ……"雷"も操れるんだな……? ……まあ、自然の雷そのものって感じじゃ無いけど……」


 ──ゾフルが操るのは炎のみでは無く雷も扱えるという事。先程から炎魔術でのみ攻撃していたゾフルだが、ゾフルはいかづちも操るらしい。

 そんなライの言葉にゾフルはクッと笑い、不敵な笑みを浮かべながら返す。


「ククク……ああそうだ。誰も炎しか操れないとは言ってないぜ? そもそも、"四大エレメント"だけが魔法・魔術じゃねェからなァ!」


 両手を広げるゾフル。

 片手からは紅蓮の炎、もう片手からは青白い光の中に金色こんじきが混ざったようないかづちが放出されていた。

 あまりの明るさに目がやられ兼ねない程の光を放つ二つの術は、空気を大きく揺らしていた。


「さあて……第二ラウンドと行きますかァ……ライ……だっけか……?」


「そうだな……お手柔らかに?」


 次の刹那、二人は大地を粉々に踏み砕き、お互いの元へ音速を超越した速度で駆け寄る。そしてその衝撃によって周りの物は砕け散った。


「「オラァッ!!」」


 それが生み出す轟音と共にライとゾフルは、生き物という事にもかかわらずにソニックブームを撒き散らしながら激突しする。

 その衝撃と風圧と爆風によって自然災害の如く木々や建物が薙ぎ払われ、数百メートルが更地となった。


「食らいやがれ!!」


 そしてライに触れているゾフルは触れている方の手に魔力を込め、ライの身体を通して電撃を放つ。


「おっと……!」


 それを見たライは直ぐにその場を離れ、電撃から逃れる。

 魔王(元)を纏っているのなら四大エレメントやその他の術を受けても何とも無いが、ライ自身の持つ耐性はどうやら物理攻撃らしい。

 耐性といっても、ザラームの斬撃を防いだときに見せた片鱗へんりんだけだが、成長し続ければあらゆる物理耐性が身に付くだろう。

 そんな事は露知らず、ゾフルはライに向かって言葉を発する。


「クハハ……! どうやら炎は防げても、やはり電撃は防げないようだな!」


「……」


 しかしライは魔王(元)の事を明かす訳にもいかず、再びゾフルへ構える。

 因みに、魔王(元)の事を知っているのは今のところレイ、エマ、フォンセだけである。


「まあ、ご託は良いか……行くぜ?」


 ゾフルは、大地を蹴り砕く事『無く』ライに向かう。


「…………?」


 ライは一瞬でおかしい事に気付いた。

 またもや音速を超越した速度を出すゾフル。それなのにその衝撃で大地が砕けないのはおかしいのだ。

 物体がそれ程の速度で動くには、必ず何かしらの重みが加わる。だがしかし、ゾフルの足元はゾフルの速度に合わず無傷だった事に違和感を覚える。


「……っと」


 しかし、音速を遥かに凌駕しているその速度はライに考える時間を余り与えてくれないらしい。

 ライは真っ直ぐ向かってきたゾフルを捉え、紙一重でかわす。

 しかしその速度を完全にかわす事は出来ず、ライの頬から少し出血してしまった。


「ククク……やっぱ気付いたか? 俺の変化に……」


 そして、不敵な笑みを浮かべてライの方を振り向きながらゾフルは言う。"俺の変化"という事から、ライの予想は正しかったようだ。

 ライは警戒し、頬の傷を拭いながらそれに応える。


「ああ、そうだな。……それに、俺が少し考えていたからといっても完全に避けきれ無かったし……全体的に速度も上がっているな……?」


「その通りだ……。音速を越えた速度の変化に気付けるたァ……中々やるじゃねえか……ま、そうこなくちゃ……くそつまらねェけどな……?」


 質問に返すや否や、その場から消え去るゾフル。

 消えたような速度で動いたのだ。残像も残さない程の超スピードでライの視界から消え去った。


「ククク……」


 そしてライの背後に回り込んだゾフルは、再び加速してライへ向かう。


(死にやがれ……!)


「……。……そこか!」


 しかしライはそれをしっかりと確認できていた。


「……チッ!」

「ラァ!」


 ゾフルの攻撃を防ぐライ。そしてそのまま流れるようにゾフルの腕を掴み、遠方に向けて投げ飛ばす。

 ライに投げ飛ばされたゾフルは建物を砕き、大地に軌跡を残しながら更に遠方へ吹き飛んだ。


「ダアッ! クソッ!」


 ようやく動きが止まったゾフルは荒ぶり、自身の上に落ちてきていた建物を苛立ち交じりに粉砕する。

 そしてライはゾフルの前に立ち、尻餅を付いている状態のゾフルを見下すように眺める。


「……よし、理解した。……アンタ──『電気を身体に纏っているな』……?」


「……! ……ほォ……?」


 ライが放った言葉に笑みを浮かべながら相槌を打つゾフル。その反応を見て確信したライは推測した言葉を続ける。


「まあ、纏っているって言っても……触れたら身体が少し痺れるだけとか……そんな小さなモノじゃ無い……。電撃……、いや……近いと言えば……自然の雷か……雷の性質……それをアンタの身体に纏っているんだろ?」


「ククク……ああ、そうだよ。お見事だ。一瞬にして俺の技? 能力? ……を見抜きやがった。……そうだ。俺は雷の性質を身体に纏い、通常よりも遥かに上をいく能力を使えるんだ」


 つまりゾフルは、自分に触れた者や自分で触れたモノを感電させて破壊したり、雷速で動くことが可能という事である。

 要するにゾフルは、『雷その物になった』。とでも言うべきだろうか。

 ゾフルの言葉を聞いたライは顎に手を当て、呟くように言う。


「……まあ、雷速『程度』なら簡単に捉える事が出来るし……問題無いな……」


「クク……言うじゃねェか。……が、その自信が何処まで持つか……完膚なきまで叩きのめしてやるよ……!!」


 その言葉を聞いたゾフルは、力を込めてライに向けて言い放つ。

 魔王を操るライvs炎と雷を操るゾフルの戦いは、まだまだ白熱していく。

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